三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

若宮健『なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか』

2019年12月19日 | 

ずっと以前はパチンコに時々行ってましたが、機種がフィーバーになり、あっという間に玉がなくなってしまうようになってからは足が遠ざかってしまいました。
今はやり方すらわかりません。

韓国では2006年にパチンコを禁止したことを知り、それで若宮健『なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか』を読みました。
2010年の本ですから、今とは状況が違っているかもしれません。

パチンコといっても、韓国ではメタルチギといい、日本の中古パチンコ台を輸入して、盤面と液晶はそのままで、クギは根本から切断してある。
メダルを台の中央部に設けられた皿に流し込んでスタートボタンを押し、大当たりになると商品券が出る仕組み。
ネットでメタルチギの画像を見ることはできますが、どういう仕組みになっているかチンプンカンプンです。
http://kyoumomake.blog.fc2.com/blog-entry-880.html

2006年8月、韓国ではパチンコによる依存症の危険性を認識して禁止に踏み切り、パチンコ台を約100万台没収した。

韓国が健全なのは、被害が多くなれば迅速に対処する誠意を持っていることである。対処するスピードが日本と比べたら格段に速い。パチンコも、あっという間に禁止してしまった。


人口が日本の半分の国で、日本と同じくらいの店数があった。
禁止になる前は、認可を受けた店だけでも全国で1万5000軒はあり、無認可の店を含めると2万軒はあったという説もある。
一方で、パチンコがらみの自殺や犯罪が増えて社会問題となった。

2006年、不当な高配当が出るように変造した機械の許認可、禁止されている換金行為をめぐる贈収賄事件が発覚し、当時の盧武鉉大統領の甥の関与が疑われ、野党やマスコミによるパチンコ批判が高まった。
8月に警察庁がパチンコ台の一斉撤去の命令を通達し、同年中にはほぼすべてのパチン台が撤去された。
2007年には、ゲーム機(パチンコ台)の製造・販売業者も逮捕起訴され、実刑と、販売で得た金の没収を命じる判決を下している。

韓国がパチンコを禁止したことによる経済効果は、消費に対しては間違いなくあった。
ゲームセンターの売り上げが約3兆円もあったのだから、禁止によって一般消費に3兆円が流れた。
特に車の販売額が伸びた。

ところが、韓国でパチンコが禁止されたことを報じた日本のメディアは皆無だった。
若宮健さんは、ギャンブル依存の問題は韓国よりも事件が多発している日本のほうが深刻だ、年金受給者、生活保護者、主婦、社会的な弱者がターゲットになっていると指摘しています。
韓国では、ゲームセンター(パチンコ店)利用者の42.7%が月収200万ウォン(約20万円)以下の低所得者。

日本のパチンコ店には「打ち子」というサクラがいて、打ち子の報酬は1日で1万5000円から2万円ぐらい。
角の目立つ台に打ち子を座らせ、ドル箱を20箱を積ませて、客をその気にさせる。
今は遠隔操作と顔認証システム。
遠隔操作はパソコンでできるので、経営者が自宅にモニターを設置して、自由に出玉を操れる。
顔認証システムとは、店の入り口にカメラを設置して、客の顔を検知すること。
顔画像をデータベース化し、他の店と共有すると、最近勝っているか、負けているかなど、正確な情報を知ることができる。
これじゃ客が勝つわけがありません。

パチンコの問題に、この国(日本)の政治、行政、マスコミの病根が凝縮されている。一言でいえば、「数千人の莫大な利益のために、数百万人を泣かせる行為」が、パチンコなのである。この国では、一部の人間の利益のために、法的には違法なバクチが、長年放置されてきたのだ。
日本のマスコミは、パチンコ依存症による犯罪が多発しても、ほとんど問題にすることはない。日本の新聞で、パチンコ業界を批判する記事は、ほとんど見ることはない。

ギャンブルがらみの事件、事故が絶えず、被害が大きなパチンコの問題に対して、正常な国であれば、韓国のようにマスコミがキャンペーンを張り、世論が共鳴し、政治家を動かし、パチンコ禁止に追い込んでいるはずである。
それなのに、韓国よりも事件が多発している日本では、マスコミからはパチンコを糾弾したり、禁止の声がほとんど上がらない。
パチンコ店が何事もなかったように営業でき、違法な賭博を放置している国は、世界中で日本ぐらいだろう。
若宮健さんの慨嘆はもっともです。

2009年1月のデータでは、年間の広告宣伝費の1位がトヨタで4845億円。
パチンコ機械大手のSANKYOの2010年3月期の広告宣伝費が67億9000万円。
パチンコ店の最大手のマルハンの2010年3月期の売り上げが2兆1209円。
広告収入がほしいマスコミにとって、パチンコ業界は大切なわけです。

パチンコの経営者を小作人とするならば、パチンコ台のメーカーが地主で、その上に悪代官という警察が君臨している。


警察だけでなく、行政全般がパチンコ業界に甘いようです。
https://blog.goo.ne.jp/a1214/e/a334b95d32ceeb19213d3ca5d59a1de9

パチンコ店にATMを設置する店が多い。金融庁監督局では、ATMの設置場所について届出などは必要がないとしている。

違法な賭博場に、ATMの設置を認めるなどは、日本の常識が世界の非常識と言われても仕方がない。金融庁も警察も、関係する機関はすべて黙認なのである。
ATMまで設置して、国民をバクチ漬けにする国がまともな国とは思えない。


ソウルのCBS放送のプロデューサーの発言。

業界には、政治家からマスコミ、官僚たちがぶら下がっています。これまたお金です。お金が手に入るならば、マスコミも官僚も政治家も、国民の不幸を考えようとしません。


日本はカジノを解禁しました。
行政、民間、業者のいずれも金が儲かればいいという考えなわけで、これは原発と同じです。
2003年、韓国に江原ランドというカジノがオープンした。
「韓国速報」2008年10月14日の記事。

江原ランド開場以後、カジノ関連自殺者と路上生活者、および詐欺・窃盗が毎年増加し、売春まで行われるなど、社会的副作用が深刻化していることが明らかになった。


韓国がパチンコを禁止できて、なぜ日本はパチンコを禁止できないのかと思うし、ましてやカジノを公認するなんて狂気の沙汰です。
日本より韓国のほうがましなのかと思ってしまいます。

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