三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

『聖フランシスコ・ザビエル全書簡』(2)

2016年11月12日 | キリスト教

ザビエルの僧侶批判は性の乱れについてだけではありません。
僧侶の無知を指摘しています。

書簡96[ボンズとの討論]
17 (略)私たちは毎日、彼らの教義や論証について質問しましたが、ボンズも尼僧も、祈禱師も、神の教えをよく分かっていない人たちも、[私たちの質問に]答える術がありませんでした。(略)


どういう質問かというと、地獄と極楽についてです。

書簡96[地獄と極楽]
7 この九つの宗派のうちで、天地創造や霊魂の創造について話している宗派は一つもありません。地獄と極楽があることについてはすべての宗派が説いていますが、極楽とは何であるかについて説明する者は誰もいませんし、誰の掟によって、また誰の命令によって霊魂が地獄に落とされるかを説明する者もいません。(略)

キリスト教と仏教とでは教義が違っているわけですが、キリスト教を絶対視するザビエルはその違いを認めることができなかったのでしょう。

ザビエルの批判は5点あります。
①「天地創造や霊魂の創造について話している宗派は一つもありません」
仏教は創造神のような絶対者を否定するのだから、話さないのは当然です。
②「誰の掟によって、また誰の命令によって霊魂が地獄に落とされるかを説明する者もいません」
善悪の業報によって輪廻をするわけで、誰かの命令によって地獄に落ちるかどうかが決まるわけではありません。
③「極楽とは何であるかについて説明する者は誰もいません」
いくらなんでも極楽には阿弥陀仏がいるとか、蓮の花が咲いているとか、その程度の説明ぐらいできただろうと思いますが。
僧侶がザビエルの質問に答えることができなかったのではなく、僧侶の答えをザビエルが理解できない、もしくは理解する気がなかったのではないでしょうか。

ザビエルによると、仏教には地獄に堕ちることを防ぐ2つの方法があります。
①「宗派の創始者の名を唱える」こと

書簡96[創始者の名を呼べば救われる]
8 これらの宗派がいっている主なことは、自分の罪について[自分自身で償う]苦行をしなかった人でも、もしもその宗派の創始者の名を唱えるなら、すべての苦しみから救い出されるということです。そしてもしもこれを深く信じて少しも疑わずに自分のすべての希望と信頼をかけて、創始者の名を唱えるなら、たとえ地獄に陥ちた者でも救い出されると約束しています。(略)


②僧侶が「災難を引き受ける」こと

書簡96[僧侶が俗人に代わり戒律を守る]
10 [普通の人たちが]この五戒を守らないために身に降りかかってくる災難を、自分たちが人びとに代わって引き受けるのだと[僧侶は]説明しています。[その代わり]人びとが[僧侶のために]建物や僧堂を献納し、[僧侶の]生活を維持するために所得や金銭を献上し、とくにボンズを尊敬し、その名誉を重んずることを条件にします。(略)人びとはボンズやボンザが地獄へ行く[呪われた]霊魂を救う能力を持っていると信じきっています。それゆえボンズは人びとから尊敬を受けるにふさわしい[生活をし]五戒を守り、その他の祈禱をする義務を負っていると思っています。


普通の人びとは五戒を守ることができないために地獄に堕ちるが、五戒を保っている僧侶が悪業を肩代わりしてくれる(オウム真理教の言葉を使うとカルマの浄化)、そのお礼に人びとは僧侶に布施をするわけです。

書簡96[僧侶の偽り]
12 また、五戒を守らない女たちは地獄から救われる手段がないと説きます。そして月経があるために、どの女も世界中のすべての男[の罪を合わせた]よりももっと罪が深く、女のように不潔な者が救われるのは難しいことだと言います。女たちが地獄から救われるために残された最後の方法は、女たちが男たちよりももっとたくさんの布施をすることで、そうすれば、[地獄から]救われるのだと言います。[僧侶が]されに説教するには、誰でもこの世で金銭をたくさんボンズに与えれば、あの世で生活するのに必要な金銭をこの世と同種の貨幣で10倍にして与えられると言うのです。それで男も女もあの世で支払いを受けるために、たくさんのお金をボンズに施します。ボンズはあの世で支払うために、誰からお金を受け取ったかという証拠書類を男にも女にも渡しています。(略)

証拠書類とは免罪符みたいなものでしょうか。
それとも三途の川の渡し賃でしょうか。
どういう名称なのか知りたいです。

コメント (4)
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