三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

「オウム真理教元信徒広瀬健一の手記」3 救済者としての麻原彰晃

2012年06月03日 | 問題のある考え

手かざしによる浄霊とカルマの浄化とは理屈としては似ていると思う。

櫻井義秀『霊と金』によると、浄霊とはこういうことである。
「(世界救世教教祖)岡田(茂吉)によれば、人間は日々の生活で心身に汚れたものを蓄積するため、霊が曇り、身体には毒素が溜まる。人間には自己治癒力があるので、毒素を排出しようとして病になったり、不幸や災難といった出来事に遭遇したりする。これが自然の浄化作用と考えられ、岡田は神から授かった力により、霊の曇りを取り除き、浄化を促進して病や災厄をなくすことができると語った。この浄霊の力と技法は岡田の高弟達に伝授されたが、教団が拡大する際に、治療の講習会に出席したものにおひかり(元々は治病観音力)と呼ばれる御守りが与えられ、おひかりを身につけたものには神の力を取り次ぐことができるとされたのである。今風にいえば、誰でもヒーラーになれる道が開かれた」
つまり、「心身に汚れたもの」がカルマ(悪業)であり、「不幸や災難といった出来事」はカルマ落とし、「霊の曇りを取り除く」ことがカルマの浄化になる。

しかし、オウム真理教のカルマの浄化と浄霊とは大きく違う点がある。
浄霊は研修会に参加することで誰もが習得できるが、オウム真理教ではカルマの浄化のためには麻原彰晃の存在が不可欠だということである。

広瀬健一氏はこう書いている。
「ここで、麻原について説明させていただく必要があります。麻原は教義上、カルマの浄化に不可欠な存在だったからです。
 輪廻の原理とカルマの法則が支配するオウムの宗教的世界において、麻原は「神=救済者」といえる存在でした。カルマを滅尽した最終解脱者であり、苦界に転生する運命にある私たちのカルマを浄化し、私たちを幸福な世界への転生、ひいては解脱に導くことのできる「神通力」を具有するとされていたからです。(略)
 麻原は人のカルマの状態を見極め、これを効率的に浄化する指導ができるとされていました。
 さらに麻原は、私たちに「エネルギー」を注入して最終解脱状態の情報を与え、また私たちが蓄積してきたカルマを背負う――つまり、カルマを引き受ける――とも主張していました。このようなカルマの移転は、「エネルギー交換」あるいは「カルマの交換」と呼ばれていました。このエネルギー交換は、接触でも、会話・思念でも――私たちまたは麻原の一方が相手を思念した場合でも――、さては麻原に対する布施でも、私たちと麻原の間に何らかの〝関係〟が生じれば、程度の差はあれ起こるとされていました」

カルマを金と考えたらわかりやすいと思う。
悪いことをすると借金(悪業のカルマ)が増える。
麻原は借金を肩代わり(エネルギー交換)したり、金を与える(イニシエーション)ことによって借金をなくしてくれる。

「また信徒は、麻原のエネルギーを得るために、「イニシエーション(秘儀伝授)」を熱心に受けていました。イニシエーションとは、麻原が信徒にエネルギーを注いで最終解脱状態の情報を与え、また信徒のカルマを背負う〝儀式〟です。加えて、イニシエーションを受けると、麻原との縁や絆が強まり、解脱に至る因が培われるとされていました。
 イニシエーションは種々ありましたが、最も代表的なのが「シャクティー・パット」でした。シャクティー・パットにおいて、麻原は信徒の額に親指を当て、一〇分間にわたってエネルギーを直接注入しました。このとき多くの信徒が宗教的経験を得、麻原に対する帰依を深めたのです」
シャクティー・パットなんてアホらしいと、私はバカにしていたが、手かざしと同じ理屈だとは知らなかった。

「カルマを浄化しないと苦界に転生するのですから、カルマを背負ってくれる麻原は、まさに「神=救済者」でした。その神の力を、信徒はイニシエーションによって体感していたのです」

では、麻原彰晃の力によらずに、自分が善業を作ることによってカルマを浄化することはできるのか。
功徳となる行為(善業)は麻原彰晃や教団に対する奉仕行である。
在家信徒の代表的な奉仕行は布施と布教(入信勧誘・チラシ配りなど)である。
しかし、自分の努力(善業を積む)だけで借金(カルマ)を減らせるわけではないらしい。

「布施を含む奉仕行は教義上、さらに重要な意味がありました。麻原が意思する善行の実践によって、彼との〝絆〟が強まるとされていたのです。その結果、麻原の「エネルギー」を得ることができ、それによって自身のカルマが浄化されると説かれていました」
いくら善行を積んでも、麻原彰晃がいなければカルマの浄化には結びつかないのである。

コメント (69)
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