三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

浜井浩一『2円で刑務所、5億で執行猶予』5

2011年04月02日 | 厳罰化

加害者に罪の意識を持たせることは更生のために必要だと私は思っていた。
ところが、浜井浩一氏は「罪の意識は、科学的に見て再犯を防止できるかということです。これは科学的な結論だけ言うと、罪の意識は再犯を防止できないということです」と否定する。
ビクティム・インパクト・プログラムというプログラムらしいが、徹底的に被害者の心情を理解させるプログラムは、再犯防止どころか、再犯率を上げることがアメリカで実証されているそうだ。
ここは大切だと思うので、長々と引用します。

「あくまでも仮説であるが、犯罪者の多くは、自己イメージが悪く、自尊感情の低い者が多い。だからこそ、なかなか自分の過ちが認められない。被害者の心情を理解させることは、ある意味では彼らがいかに社会的に非難されることをしたのかを理解させることであり、自己イメージを低めさせ、心に大きな重荷を背負わせることになる。被害者が死亡している場合には、被害者の心情を本当に理解できれば、自然と「自分だけ生きていていいのか?」と思うはずである」
殺人や強姦事件で、「加害者のことを許すことができる」と回答した人は約5%、強盗では約23%、窃盗22%、恐喝約13%。
「殺人などの被害者が死亡している犯罪の遺族や性犯罪の被害者については、時間が経過しても被害感情が宥和しないことも確認されている」そうだ。

「犯罪者が更生する上で一つ大事なのは、自尊感情が高まっていくこと、つまり、自分が社会にとって有用な存在であり、社会から受け入れられている存在だということが重要なのです。しかし、このプログラムは、場合によっては、「あなたなんか絶対に幸せになってほしくない、不幸のどん底に落ちてほしい、あなたはそれだけのことをしたんだ」という被害者の激しい思いを伝える場合もあります。これは人間すべてそうだと思いますが、我々だって、いろいろな人生の中で罪の意識を感じることがあります。犯罪に限らず、人を傷つけるようなことを言ってしまった経験とか、そして、そういうことをずっと重荷に思っていることがあります。ましてや、その相手から恨みをぶつけられるととてもつらい思いをします。その重荷をずっと背負い続けると、最後はうつ病になってしまいます。うつ病のひとつの原因は、いろいろな意味での後悔や自責の念です。犯罪被害者遺族の方がなかなか立ち直れないのも、自分たちが家族を助けられなかったという罪の意識です。罪の意識は、よく考えると、非常に自尊感情を低くする作用があるのです」
このあたり、機(罪悪生死の凡夫)と法(衆生を摂受)の関係、あるいは12のステップの1と2に似ているように思う。
機の自覚だけでは自分を責めることで終わってしまう。
認められ受け入れられることで回復していく。

でも、悪いことをしたのにケロッとしているほうがいいのかと反論する人もいるだろう。
「罪の意識というのは、確かに倫理的には犯罪を起こした者が持つべきものです。倫理的には犯罪者が自分の犯した罪を忘れて更生していいというわけではありません。犯罪者は自ら犯した罪の重大性は理解しなくてはいけません。しかし、罪の意識は社会復帰を阻害します。したがって、罪の意識を感じさせつつ心の負担をどうやって取り除いてあげるかが重要です。罪の意識を持ちつつ、心の負担を一緒に支えてあげるということが大事かもしれません。本当は、人は許されると心の負担は非常に軽くなって、自尊感情を高めることができます」
「受刑者が、被害者の方から、あるいは家族殺の場合、たとえば母親を殺した場合には父親から手紙をもらった瞬間からものすごく変わります。それまでとても拒否的で、もう満期でいいと何に対しても投げやりだった受刑者が大きく変わっていくので、そういった意味では罪を謝罪し、許されるという経験は更生にとってものすごく意味のあることなのです」
許しが更生につながるというわけだが、被害者にとっても許しは救いだと思う。

重要なことは「被害者の心情を理解すれば再犯も防止できるという安易な思い込みを捨て、被害者の心情を理解させ、自らの罪と向きあわせつつ、再犯を防止するためには何が必要であるのかを考えることにある」と浜井浩一氏は説く。
では、何が必要なのか、である。

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