山崎浩子『愛が偽りに終わるとき』はタレント本だという先入観があったが、なかなかのもので、カルト問題の入門書としてオススメではないかと思う。
統一協会の勧誘の手口その他が具体的に書かれており、その手口は省略するが、正体を隠して勧誘する団体は怪しいと考えて間違いない。
最初から正体を明らかにして普通に勧誘してたら、入信はもちろんのこと、話を聞く者などいない。
まして、詐欺的募金、献金強要、物売りをしてもらいますと正直に説明したら、誰も相手にしないことを統一協会はよく承知しているから、正体を隠し、嘘をついて勧誘する。
『自立への苦闘 統一協会を脱会して』によると、ビデオ・センターでの受講をした人のうち5%が献身者(家や仕事を捨てて統一協会に生活を捧げる人)になるそうだ。
入信したなら、自分のお金を献金するだけでなく、サラ金から借金し、夫名義の預金を無断で解約などして献金する。
そして、信者は正しいことと信じて、正体を隠しての勧誘、霊感商法、着物や宝石や珍味などの物品販売をするようになる。
こうして、お金を失うだけでなく、人間関係を破壊し、信者自身の心身はぼろぼろになって将来が破壊すると、『自立への苦闘』に書かれてある。
では、統一協会はどういう教えを説いているのか。
山崎浩子氏によると罪の意識を植えつける。
「人類始祖、アダムとエバは、それぞれが人間的に十分な成熟をし、個性を完成させたあと、神が定めた時に結婚して夫婦となり、子女を産み増やし、神の愛に包まれた家庭を築くべきであった。
それなのにエバは、サタンの誘いにのって、サタンと淫行を行った。そして、その後エバとアダムは、時ならぬ時に淫行を犯し、それが罪の根、原罪となった。それによってサタンの血が受け継がれ、その罪は、人類歴史上とぎれることなく綿々と流れてきているというのだ。
だから、この世はサタン世界となり、愛は乱れ、不倫がはやり、性犯罪が頻発するのだと」
キリスト教の素養がもともとない日本人がこういう考えを信じるのは不思議だと思う。
脅しの次はアメである。
「今はまさに終末であり、メシアはもうこの世に来られている」
それが文鮮明である。
自分自身や先祖を救うためには、文鮮明が選んだ人と結婚(祝福)する以外に道はない。
霊感商法について山崎浩子氏はこのように説明する。
「神のもとへと帰るためには、万物復帰が必要なのである。それが救いの第一歩なのであると統一原理では教えられている。だから、印鑑やツボを買うことは、買う側の救いになるのだ。たとえ、この世ではだまされたと言っている人でも、霊界に行けば、「よくぞ、あの時ツボを売ってくださった」と喜ぶに違いないと思っていた。それは霊界に行けばわかることなのだ」
ポアと同じ論理である。
こういう教えや霊感商法など、おかしいんじゃないかと疑問を抱かせないために、自分で考えることはサタンの誘いに乗ることであると教え、信者同士の横のつながりを禁じる。
「この世では、神側とサタン側の熾烈な闘いが行われている。サタンは実に巧妙で、いつもいつも神側から引きずり落とそうとしている。神側の考えで、神側の言動をしていくことが、唯一守られる手段なのである。
しかし、今私自身が思っていることが神側の考えなのかどうかは、私自身ではわからない。自分の行動、やろうとしていること、考えをアベル(上司的役割)に報告、連絡、相談することが必要なのだと教わった」
これを「ホーレンソー」と言う。
講義中に隣同士の男性がヒソヒソ話をしたので、講師が「横的(おうてき)になるんじゃない」と怒ったと山崎浩子氏は書いている。
「「横的になってはいけない」というのは、人間関係で横のつながりを縦のつながりより重視してはいけないということだ。横的に走ると、サタンが入りやすくなるという」
ということで、「このような生活を長年、実践してきた信者にとって、自分の判断力で統一協会のぜひを考え直してみること自体が恐怖なのです」(『自立への苦闘』)
こうして要約すると、なぜそこまではまってしまうのかわからないので、『愛が偽りに終わるとき』を読んでもらいたいと思います。