三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

チベット密教とオウム真理教 1

2010年06月03日 | 問題のある考え

羽田野伯猷「チベット人の仏教受容について」という論文で、Rwa翻訳官ドルジェタク(?~1110以降)という、敵対する人間を度脱(呪殺)し、若い女性(瑜伽母)とセックスするチベット僧の名前を知った。
正木晃『性と呪殺の密教』はこのドルジェタクを取りあげた本である。

ドルジェタクをゲルク派の宗祖ツォンカパも高く評価していた。
その理由の一つは、正木晃氏によると、ドルジェタクは「きわめて優れた仏典翻訳家だった。しかも、ただたんに翻訳家にとどまらず、彼自身がすぐれた霊的能力の持ち主であり、実践をなによりも重視する密教の導入にかかせない逸材といってよかった」ということ。
ドルジェタクの仏典翻訳は、当時から非常に優れているという定評があり、現在でもその評価は変わらないそうだ。
「ドルジェタクが本場インドの教えとチベット的に変容を遂げた教えとを混同しなかった点も大きい。つまり、ドルジェタクの翻訳は正確なのである」
というのも、ドルジェタクはナーランダー寺で7年間修学している。
「ドルジェタクが卓越した翻訳事業を展開できた理由は、まず第一に、彼がインドの超一流の学僧に師事して、本場の正統な教えを学びかつ的確に理解できたからである。ネパールやインドに留学したチベット人はあまたあるが、ドルジェタクのように、そのころ最高の仏教学府だったナーランダー大僧院に何年もとどまり、最優秀の師のもとで研鑽を積むことができた例はほとんどない」

また、当時は法の伝授には謝礼が必要だったため、ドルジェタクには莫大な収入があった。
その金銭の使い道だが、「ドルジェタクの金の使い方は、おおむね立派だった。彼は莫大な財産のほとんどを、仏法興隆のためにつぎ込んだ」
インドとネパールの師匠に何度も布施をし、僧院にたびたび献金している。
サムイェー寺の修復を何年もかけて行い、費用は自分一人で出した。
慈善事業や教化事業にも大いなる功績を積んでいる。

ここまではいいとして、ドルジェタクは性と殺というチベット密教の闇の領域に深く関わっていたと、正木晃氏は言う。
チベット密教には性的ヨーガという性を導入した修行、そして度脱(呪殺)という修法がある。

性的ヨーガとは性的パートナー(瑜伽母)との性行為によって真理を獲得する。
どんなことをするのかというと、インド後期密教では灌頂は四つ設定されて、そのうちの秘密灌頂では、「受者が導師に、「大因」と称される妙齢の女性を性的パートナーとして捧げ、導師は彼女と性的ヨーガを行ずる。導師はおのれが射出した精液を、女性の膣内から取り出し、受者の口中に「菩提心」として投入する。これで受者には菩提心が植えつけられたことになる。資料によっては、精液を女性の経血と混ぜて、投入するともいう」というように、何ともはやなのである。
当時は実際に精液や経血が用いられたが、現在では性行為をせずに瞑想によって同じ体験をするそうだし、また精液ではなくヨーグルト、経血ではなく赤サフランの粉末で染めたヨーグルトで代替されるとのことです。

ラマ・ケツン・サンポ、中沢新一『虹の階梯』にも、空性大楽の瞑想法についてこんなことが説かれている。
「大楽はへそから四、五センチ下のチャクラ(秘密チャクラ、道教の丹田にあたるところ)に生まれる。身体の熱はすべてここから発する。ここがツァンダリーと呼ばれるところである。普通、男女が性交する時には、このツァンダリーがわずかにふるえ、快楽をもたらす熱を発している。空性大楽の瞑想はこのツァンダリーを大きくヴァイブレートさせて、空性の体験に結びついた、とらわれることのない大いなる楽をもたらすのである。
まず秘密チャクラの位置に、八弁の白い蓮花を観想しなさい。その上に真紅の「ア」字があらわれる。特殊な呼吸法にあわせて意識を集中すると「ア」がふるえ、赤い火が燃えあがってくるようになるだろう。この炎は中央管をしだいしだいに上昇し、頭頂大楽チャクラにある逆さになった白い「ハム」字を溶かしはじめる。「ハム」字がわずかに溶けはじめた時には、性交の快感と同じ体験を得るだろう。しかし呼吸法にしたがって「ハム」字からさらに甘露が溶けだして中央管を下り落ち、各チャクラをみたしていく時には、その強烈さ、その持続性、その純粋さにおいて、性交とは比較にならない四つのすばらしい楽がもたらされるのである」
「この瞑想法の達人たちは、精液をもらすことなく、性交の快楽を空性大楽につくり変えることができる能力をもつようになる」
「実際の性交はこの瞑想のための単なる足がかりにすぎないのであって、多くの密教行者は性交など必要とせず、創造的想像力でこの空性大楽の瞑想を完成させたものである」

何やら瞑想法の達人になろうという気にさせる説法です。

関係ないけど、
『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』を見てて、白ゼブラと黒ゼブラの合体シーン、あれは性的ヨーガというか、ヤブユムだと思ったようなことでした。

ドルジェタクは妻が死んだあと、5人の若い女性をパートナー(瑜伽母)として性的ヨーガを実践している。
5人目の瑜伽母を迎えた時、ドルジェタクは80歳ぐらいの年で、瑜伽母は12歳だった。
「民衆の怒りが爆発し、あわや危機一髪というところまでいってしまった」
その時には、「強大無比の霊力を発揮して、またまたドルジェタクは危機を脱し去る」ということで、何とも波瀾万丈の人生なのである。

コメント (2)
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