ジンバブエ:ムガベ大統領「白人農地の強制収用を推進」
2月21日に85歳を迎えたアフリカ南部ジンバブエのムガベ大統領の誕生日を祝う集会が同28日、北西部チノイであった。欧米各国がジンバブエ制裁の根拠とする、白人農場主からの農地の強制収用について、ムガベ氏は「引き続き推進する」と宣言。与野党連立政権発足後、旧野党のツァンギライ新首相らが国際社会に対する再建支援要請に奔走する中、努力に水を差す形となった。
地元関係者によると、この日の誕生会には年齢に合わせて85キロのケーキが用意されるなど、約25万米ドル(約2400万円)が費やされた。コレラ禍や食糧難で国民の窮状が深まる中、誕生会を盛大に祝う大統領の姿勢に批判も出ている。(毎日新聞3月1日)
さすがにちょっとなあと思うニュースです。
これじゃジンバブエに支援したいと思う人はいないだろう。
サイクロンで被害を受けたビルマ軍事政権の対応もひどかったけど。
ロバート・ゲスト『アフリカ苦悩する大陸』は『エコノミスト』の元アフリカ担当編集長でありロバート・ゲストが7年間にわたり取材して書いた本。
「アフリカが貧しいのは、政府に問題があるからだ」
とゲストは書いているが、ジンバブエはまさにその典型である。
ジンバブエでは、レイプや殺人まである選挙妨害、物価を強引に下げるだけの経済政策、取り巻きによるビジネスの独占、白人農家の土地没収と仲間への二束三文の譲渡なんてことが行われている。
そのジンバブエも介入したコンゴ民主共和国の内戦は、ダイヤモンド、銅などの資源の争奪もからんで出口が見えない。
こうした問題はジンバブエやコンゴだけではない。
「あまりに多くの政府が国民を食い物にしている。政府は正しく統治するためでは、権力を行使する人間が私腹を肥やすためだけに存在しているように見える。官僚たちは仕事の見返りに袖の下を要求する。警察官は正直な市民から金品を奪い、犯罪者たちは野放しだ。多くの場合、国で一番の大金持ちは大統領だ。彼らは大統領に就任してから、地位にものを言わせて富を溜め込んできたのだ」
「富を手にする最も確実な道が「権力」だとなれば、人々は権力を求めて殺し合う。アフリカはしばしば内戦に悩まされ、おかげで開発もままならない」
「人々は強欲かつ無能な政府のもとで暮らし、その支配から抜け出すのは容易でない。政府はあの手この手で国民を貧困に押しとどめている―汚職、不適切な経済政策、そしてときには国民を恐怖に陥れている」
戦争と貧困の間には深い関係がある。
1999年にはアフリカの5人に1人が内線や隣国との戦争に揺れる国に住んでいた。
死傷者の90%が民間人で、1900万人が家を捨てて避難を余儀なくされていた。
アフリカには2000万発の地雷が埋もれていると推定されている。
内戦を引き起こす主要な危険要素は貧困と経済停滞である。
1人当たりの所得が倍増すると、内戦の危険性は半減する。
経済成長率が1%上昇するごとに紛争のリスクも1%下がる。
「多くの場合、貧困と低成長は政府が無能で腐敗していることの証拠であり、国民が反乱を起こす原因にもなる」
貧困が戦争を生むだけでなく、戦争も貧困を悪化させる。
内戦は平均所得を毎年2.2%押し下げる。
食事も4割減り、医療費は4倍に跳ね上がる。
「分かりやすく言えば、兵士たちに牛を奪われたら、農民は市場で売る商品がなくなるのだ」
エイズにかかったジンバブエの娼婦は「どうせいつか死ぬんだから」と言っている。
「貧困はある意味であきらめを生む。貧しければ生きていくのが困難で、いつ死に直面するかわからない」
「毎日がその日暮らしで、チャンスがあれば束の間の楽しみに浸る」
アフリカでは2002年までに約1700万人がエイズで死亡し、2900万人がHIVに感染している。
エイズで両親を亡くしたアフリカの孤児は推定1100万人。
夫がエイズにかかると、妻が食用作物の栽培にかけられる時間は60%減る。
エイズ患者を抱えた家庭は教育費が半減する。
どの国に、どのような援助すべきか、難しい問題である。
ゲストは現在の援助の仕方では意味がないと言う。
「援助と経済成長の間に、明確な相関関係があることを示す研究事例はほとんどない。ふんだんに援助を受け取る国と、ほとんどもらえない国とで、平均すればたいした違いは見られないのだ」
「援助によって、ダメな政府をしゃんとさせることができるだろうか? 多分できないだろう」
「政府は本当に重要なものは何かを見極めなくてはならない」
「初等教育、一次医療、まともに通れる道路、水道水、それにきちんと機能する司法制度などだ。こうした最低限のニーズこそ最優先されるべきなのに、軽視されていることが多いのだ」
それでも、少しずつではあるがアフリカも変わりつつあるそうだ。
選挙による政権交代が行われている国が増えている。
それはアフリカ諸国でも新聞やラジオが情報を伝えているからだ。
そして、1988年以降、WHOの援助によって20億人以上の子供たちがポリオの予防接種をうけた。
2001年に報告されたポリオの症例は537件で、実数もその倍は超えていないと推定されている。
天然痘のようにポリオも根絶されるかもしれない。
アフリカの優等生ボツワナの事例が紹介されているし、南アフリカのマンデラ元大統領についても述べられている。
すぐれた指導者がいることが大切だなとあらためて思う。
日本では漢字の読めない総理大臣、酔っぱらってばかりいる財務相がいても、世の中はちゃんと動いているわけで、考えてみればこれは大したことだなと思う。
皮肉ではなくて。