三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

大高未貴『アフリカに緑の革命を!』

2009年03月12日 | 

笹川アフリカ協会(SAA)というNGOが笹川グローバル2000プログラム(SG2000)というプロジェクトによってアフリカで農業指導をし、食糧生産を向上させているということを『アフリカに緑の革命を!』を読んで初めて知った。
笹川良一氏というといい印象はないが、こういうこともしていたのかと驚く。

「飢えた者に一匹の魚を与えるよりも、魚を釣る方法を教えるほうがずっと効果的で価値があるのではないか。飢えに苦しむ国の人々が、いつまでも他国の援助を求めず、自力で増産に取り組めるようになることが肝心だ」
というのが笹川良一氏の国際援助の理念だそうだ。
無料で種や肥料など、あるいはお金を援助するのではなく、種、肥料、機械をローンを組んで買ってもらい、世界各地から来たカントリーディレクター(指導員)が農業指導をする。
そうして自立を促すわけである。

大高未貴氏はエチオピア、ウガンダ、モザンビーク、マラウイ、マリでSAAの活動を取材する。
マラウイのカントリーディレクターはこういう話をしている。
「〝援助貴族〟という言葉がありますが、国連などの莫大な援助収入の大半が、政府高官たちのポケットに収まってしまうのです。
たとえば、こんな話があります。ずいぶん前のことですが、マラウィの大統領に産油国のスポンサーが『このお金で学校を建ててください』と10億ドル寄付したそうですが、いまだに学校は建たず、そのお金は大統領の愛人へのプレゼントに消えてしまったと噂されています。
これはナイジェリアの話ですが、年間外貨収入120億ドルのうち100億ドルは政府高官のポケットに入って消えてしまうといわれています。そこで、援助する側が『現金じゃだめだから、直接農民のためになるような肥料や種を援助しよう』と現物援助にしたら、今度は現物が消えて闇市で高く売られていたそうです」
「政府高官たちにとって、飢餓農民の存在は先進国の援助を引き出すための道具なのです。ですからアフリカでは、何十年経っても飢餓のニュースが絶えないのです」

そういう状況だから、SG2000も簡単に受け入れられているわけではない。
「援助慣れした農民は〝種や肥料〟は外国のNGOが無料でくれるものという思い込みがあります、SG2000はあくまでも農民の経済的自立を促すために無料配布はしません。貸し付けをして収穫があったときに返済することを義務づけているので、SG2000に入るのをためらう農民も多いのです」

また、ナイジェリアは治安が悪くて、このカントリーディレクターがナイジェリアに滞在していた5年ほどは、海外に出なかったし、妻は危なくて一人で外出はできないなかったそうだ。

それでもSAAが活動しているところでは、主要穀物収量が2.55~5.61倍になったという。
あるいは、エチオピアでは脱穀機を借金して買い、それによってかなりの所得を得た人がいる。
アフリカでは故障したらおしまいだが、SAAが関わっている職業訓練所で作られたものだから、すぐ修理してもらえる。

笹川アフリカ協会のことを初めて知った私としては、本当にそれだけの結果を生み出しているのがと、正直なところ邪推してしまった。
『おいしいコーヒーの真実』というドキュメンタリー映画を見ると、そう簡単にはいかないなと思わざるを得ない。

『おいしいコーヒーの真実』は、エチオピアの74000人以上のコーヒー農家を束ねるオロミア州コーヒー農協連合会の代表、タデッセ・メスケラが農民の生活を向上させようと奔走する姿を描いたドキュメンタリー映画である。
コーヒーは世界で最も日常的な飲物で、全世界での1日あたりの消費量は約20億杯にもなる。
大手企業がコーヒー市場を支配し、石油に次ぐ取引規模を誇る国際商品にしている。
コーヒー豆生産農家が手にするのは、コーヒー一杯分(330円)で3円から9円(1~9%)だという。
その原因は、国際コーヒー協定の破綻による価格の大幅な落ち込み、貿易の不公正なシステム。
農民たちは教育を受けることも、食べることもままならず、多くの農家が困窮し、農園を手放さなくてはならない。
エチオピアでは毎年700万人が緊急食糧援助を受けており、緊急支援に依存せざるを得ないという状況にある。
というわけで、アフリカへの援助は大海の水を汲み出そうとするようなものなのかと思った次第です。

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