三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

死刑の残酷さ

2007年10月22日 | 死刑
余録:死刑執行
中国、イラン、パキスタン、イラク、スーダン、米国。この国々には意外な共通項がある。昨年、死刑を執行した件数の上位6カ国だ(アムネスティ・インターナショナル調べ)。だが3350人の死刑囚がいる米国で、先月から執行の直前中止が相次いでいる▲致死薬物の注射で処刑する方法の合憲性を連邦最高裁が審理すると決めた。憲法が禁止する「残酷かつ異常な刑罰」に当たるか、最高裁が判断を下すまで事実上の死刑中止が続きそうだ▲このニュースを読んで、01年に訪れたオクラホマシティーを思い出した。168人が死亡した連邦ビル爆破テロ事件の死刑囚の処刑が迫っていた。立ち会いを求める遺族・被害者が多く、抽選で10人が選ばれた。その一人に聞くと「直接、この目で彼を見たい」という▲抽選にはずれた232人は執行の日、政府施設に集まった。4分間の注射でゆっくり死んでいく生中継の映像を見るためだ。一方、バド・ウェルチさんも忘れられない。23歳の娘を殺されたが、死刑廃止運動に取り組むようになった。「復讐の思いを乗り越えるのに1年かかった。報復に喜びはない。怒りで人間は破壊される」▲米国は執行日を発表し、遺族や記者、さらに死刑囚の家族らに公開する。死刑囚本人への取材も認める。最後の食事、最後のことば、死の瞬間が報道される。愛する家族を殺した人間が国家によって殺されるのを見たい人がいる。許す人もいる。その思いも記事となる▲昨年の死刑執行国は25カ国だけだ。日本は処刑した死刑囚の氏名すら公表しない。死刑は「回復不能な極刑を執行し人の命を奪う大変重大なこと」(鳩山邦夫法相)だ。だからこそ、執行にかかわる具体的な事実を私たちが知った上で考えたい。(毎日新聞2007年10月211日)


薬物注射による死刑が「残酷かつ異常な刑罰」だったら、絞首刑はもっと「残酷」だと思う。
絞首刑は窒息死ではなく、首の骨が折れて即死というタテマエだが、心臓が停止するまで12分から15分かかるらしい。
それに大小便を失禁するし、眼球が飛び出し、鼻血が噴き出すこともあるそうだ。

薬物注射の場合、死刑囚は眠るようにして死ぬ。
25年前から死刑囚と交流を持ち、6人の処刑に立ち会ったシスター・プレジャンはこう言っている。

薬物で死刑を執行する場合、最初の薬は死に至らしめる薬、二番目に注入する薬は身体を完全にマヒさせ、何も感じなくさせるための薬です。ですから、死刑囚が身体をよじったり、叫んだりして苦しむ姿は見られない。死刑囚は指一本動かさずに亡くなるわけです。

見た目だけなら「残酷」ではないと思う。

しかし、なぜ死刑囚をマヒさせなければいけないのか。
シスター・プレジャンは「それは苦しむ姿を見なくてすむようにするためです」と言い、死刑囚の苦しむ姿を見せないだけではなく、「死刑本来のあり方を見えなくしている」とも言う。

アメリカでも死刑執行は少数の人たちだけで秘密裏に行われる。

死刑が本当に犯罪の抑止力となるのであれば、人々に公開して、抑止力としての効果を高めるべきです。(略)
なぜ見えなくしているのか。見るに堪えないからです。死刑のおぞましさを、私たちは顔をあげて、目を見開いて、正視することができないからです。

このように、アメリカでは死刑は「非常に秘密的な儀式」だとシスター・プレジャンは言うが、執行日を前もって発表し、執行を公開している。

ところが日本の場合、死刑囚ですら執行の当日になるまで知らされない。
だから、死刑囚は毎日おびえながら暮らさなければならない。
死刑囚の家族には執行の後に通知がある。
日本のほうがずっと「残酷」だと思う。

死刑の賛否を問うアンケートでは死刑に賛成の人が多いが、それは死刑についての情報があまりにも少ないので、死刑のことを知らないこと、そしてそもそも死刑について特に考えたことのない人がほとんどだからだと思う。

シスター・プレジャンが、

アメリカでも公開処刑にすれば、死刑はすぐにでも廃止されるでしょう。見えないからこそ、人々は「死刑によって正義が全うされた」と言えるのです。死刑がより身近になれば、それだけ早く死刑は廃止されると思います。

と言うように、死刑囚がどういう生活をしているか、死刑はどのように執行されるのか、死刑を執行する刑務官どう考えているのか、こうしたことを知るならば、「死刑に賛成」とは簡単に言い切れなくなると思う。

コメント (2)
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