三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

格差社会 日本

2007年10月20日 | 

知り合いの知り合いである72歳の女性は、国民年金だけでは生活できないので、病院の掃除婦として朝の7時から昼の4時まで働いて、時給750円。
日本の格差はどうなのかと思い、毎日新聞社社会部『縦並び社会』を読む。

OECD加盟各国の貧困率(所得が全国民の所得の中央値の半分以下の人の割合)は、日本は5番目の高さで、世界でも格差の大きな国なのである。
1位メキシコ 2位アメリカ 3位トルコ 4位アイルランド 5位日本
貯蓄ゼロの世帯は1987年に3.3%、2003年には21.8%。

年20万円の保険料を払えないので保険証を使えない無保険者が、2004年に30万世帯以上に達している。
横浜は70万世帯のうち31592世帯、名古屋は43万世帯のうち15世帯だから、行政の対応の仕方によって大きく違ってくる。

母子世帯の2005年の平均就労年収は171万円で、児童扶養手当や生活保護費などすべての収入を加えた平均年収は213万円。
その児童扶養手当制度が改悪され、手当が引き下げられた。

格差拡大の大きな要因が規制緩和である。
規制緩和で参入が増えたため、トラック、バス、タクシーの運転手は労働条件が厳しくなっているのに、給料は逆に減っている。
2004年のタクシー運転手の平均収入は大都市部で308万円で、5年前より40万円下がった。

派遣社員はかなりピンハネされており、月90万円を仕事先の会社は支払っているが、本人は手取りで20万円を切ることもある。
正社員との給料の格差は大きく、年金、保険などは自腹。
財界の圧力で過労死などの規制が骨抜きになっている。
30~34歳の男性が5年以内に結婚する割合は、正社員が35.5%、フリーターは17.5%。
少子化が問題になっているが、収入が少なく労働時間が長いと、子供は無理。

派遣会社員(39)「派遣先では当初の時給が900円だったが、3年過ぎて派遣先から信頼を得ている今でも1000円だ。社員よりも給与が安いのに同等の業務をさせられ、時間外労働は無制限。労働基準法も労働者派遣法も私の派遣先では通用しない。今の状況は「ヒトを使い捨てにする時代だ」とつくづく感じる」


大店法の廃止されて大型店が次々とできたことによって商店街がダメになり、小売店がどんどん廃業している。
ところが、フランスやドイツでは大規模店の出店を規制している。
大店法の廃止はアメリカの圧力のため。

外圧を利用して規制緩和し、うまい汁を吸ってるのが宮内義彦や竹中平蔵たちである。

石原信雄元官房副長官「規制緩和自体は悪いことではないが、敗者は切り捨てご免になっている」

ある病院長「経済効率だけを考えれば切り捨てられる医療が必ず出てくる」


小林由美『超・格差社会 アメリカの真実』はこのように批判する。

アメリカにとって最大の問題であるはずの貧富の格差拡大や社会階層の固定化、教育の質の低下や職業訓練化、株価の上昇を最優先する経営すらも、まるで社会の活性化と変革への処方箋であり、アメリカから武器を買って軍隊を作ることが、国家の発言力を強めてステータスを高める方法であるかのような論調さえ、最近の日本では見受けられる。(略)
日本でも貧富の格差が拡大して階層化が進むことは、本当に経済活性化につながるのだろうか? 軍事力は本当に国家の発言力を強め、ステータスを高めるのだろうか?

教育制度、医療制度などを公教育が破綻し、保険を持たない人が多い格差社会アメリカをどうして見習うのか。

格差拡大によって利益を得る人たちは、格差は問題ではないと言う。

小嶌典明(規制改革・民間開放推進会議専門委員、大阪大学教授)「成果主義には評価の厳しさがつきまとうが、仕事の重要度や能力で差をつけなければ、労働意欲は高まらない。日本の企業は単純労働に高級を払いすぎている。米国は単純労働の給与を抑える代わり、キャリアを磨いて職や企業を渡り歩き、給与・待遇を向上させる自由度が日本よりはるかに高い」

高橋宏(首都大学東京理事長)「原材料(学生)を仕入れ、加工して製品に仕上げ、卒業証書という保証書をつけ企業へ出す。これが産学連携だ」

人をモノ扱いして平気な人が大学の理事長をしているのである。

なぜ自己責任容認派が増えるのか。

香山リカ「問題なのは、格差の下とされる若い人たちが、甘んじて受け入れてしまっていること。自分探しや身近な幸せは考えるが、社会のあり方については考えようとせず、声もあげない。一方、格差の上とされる人たちは同情や共感が乏しく、他者に厳しい視線を向ける」

小泉元首相の「格差は当然です」という発言に、下にいる人が支持するわけだ。

格差を生み出す一番の要因は、働いてお金を手に入れるよりも、株の売買などのほうが多くの収入を得ることができるという仕組みである。

神野直彦(東京大学教授)「株式などの金融資産にちゃんと課税できていないことを問題にすべきでしょう。(略)
勤労所得と合算したうえで所得の高さに応じて税率を上げていく総合課税方式が望ましいでしょう」


株式譲渡益と配当所得への課税は一律10%、そして働いて稼いだ所得と合算する総合課税ではない分離課税である。
給与所得で最高税率50%を負担している人は全納税者の0.5%、本当の金持ちは株によって高収入を得ている。
アメリカでは株主への配当が最優先され、会社の利益や長期的展望、社員の福利を考えないそうだが、日本も同じ状況らしい。

神野直彦(東京大学教授)「消費税の増税は格差が拡大している中で弱者への負担を重くします。法人税や所得税など、高額所得者に高い税率がかかるようにした方が、不公平は是正されます」

北野弘久(日本大学名誉教授)「税金は、国民から等しく能力に応じて徴収すべきであって、逆に言えば、取るべきところから取らなかったら憲法違反になる」。(ベンジャミン・フルフォード『イケダ先生の世界』)

それでも消費税は引きあげられると思う。

コメント (58)
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