原発が3基ある福井県美浜町は小中一貫で原発教育推進していると聞き、ネットで調べてみましたら、「美浜町菅沼小学校エネエコ新聞」(2009年2月25日)を発見しました。

「エコネコ新聞」にはどういうことか書かれているのでしょうか。
美浜町は、原子力発電所の立地地域という特色を活かした町づくりを進めています。「原子力と共生する町」を掲げ、エネルギー環境教育の推進を重点施策の一つとしています。
そこで美浜町では教育委員会が事務局となり、町内の各小・中学校から1名以上の推進委員を招集し、平成18年度に「美浜町エネルギー環境教育推進委員会」(以下推進委員会)を立ち上げました。推進委員会は、基本的認識として「自然と人間の共生する社会を構築し、みんなの住みよい地球にしていくために、児童・生徒一人ひとりが世界的な課題を自己の問題として考え、判断し、行動していくことが求められています。そのために町内の小中学校が一貫した系統性のもとに、環境教育の中核を担うエネルギー教育を展開し、そのことを通して、エネルギーと環境への『知的好奇心』及び『認識』を高め、実践的態度を培うこと」を掲げ、文部科学省からの支援も受けながら活動を展開することにしました。
3ページに「大切な原子力発電 5・6年生の学習成果から」とあり、4人の子供が書いています。

6年生の作文から。
もしも原子力発電所に事故が起こったら不安です。でも、今の時代には電気はかかせません。また、電気をつくるエネルギーとして原子力発電は日本の電力の3分の1をまかなっているのでとても重要です。
これからは、原子力発電所で使い終わった燃料をリサイクルして、再び原子力発電所の燃料として使用できるように高速増殖炉で研究しているそうです。いつまでも安全で地球に優しいエネルギーであってほしいです。
この「美浜町菅沼小学校エネエコ新聞」は2009年発行なので、福島原発事故の起きる前です。
現在はどうなのか、福井新聞にこんな記事がありました。
美浜町、エネルギー環境教育[6]将来への行動力養う(福井新聞2011年10月19日)
夏休みの美浜中に、町内の小中学校教員約70人が集まっていた。壇上に立った美浜町の大同保教育長は「東日本大震災はエネルギー環境教育を再考するきっかけを与えてくれた」とあいさつした。(略)
「原発立地地域の住民として、原子力についてきちんと知る必要がある」と山口治太郎町長。2005年に定めた町総合振興計画で、「原子力との共生」を目指した人材育成を掲げた。
この理念の下、翌年度から小中一貫のエネルギー環境教育が始まった。9年間で火力や水力、原子力などさまざまなエネルギーの仕組みや特徴、資源の埋蔵量、地球温暖化などの環境問題を、体験を交えて学ぶ。
「原子力を知る」という思いが始まりだったが、「『原子力を推進する』教育ではない」と山口町長は言う。目的は、美浜町や日本、地球の将来を考え、行動する力を養うことだ。(略)。
「『原子力を推進する』教育ではない」そうですが、はたしてどうなのでしょうか。
「美浜町菅沼小学校エネエコ新聞」の最終ページの下段にはこのように書かれてあります。

なんなんだ、これは!と思いましたね。
「エコネコ新聞」は菅沼小学校が作ったのかと思ってたら、なんと電力会社のヒモ付きで、全国各地の学校で作られています。
エネルギー環境教育推進委員会のメンバーは各小中学校の教員や町教委、そしてサポート委員として関西電力と日本原子力研究開発機構などが参加しているそうです。
おまけに、関西電力から講師派遣を受けたり、原発を見学したりしている。
一種の洗脳みたいなものですが、マイケル・サンデル『それをお金で買いますか』によると、公立学校では企業がスポンサーとなって、その企業に都合のよいことを教えているそうです。
1990年代に入り、企業が学校にかかわる度合いは劇的に増した。企業は無料のビデオ、ポスター、「学習キット」を山のように教師に提供した。こうした提供品は、企業イメージを向上させ、子供たちの心に商標名を刻み込もうとの意図でつくられていた。企業はそれらを「協賛教材」と称した。生徒はハーシーチョコレートやマクドナルドが提供する教材で栄養について学んだり、エクソンが制作したビデオでアラスカの石油流出の影響について勉強したりした。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が提供した環境学習カリキュラムでは、紙おむつがなぜ地球にやさしいかが説明された。
2009年には、世界最大の児童書出版社であるスコラスティックが、エネルギー産業に関する無料教材を、小学四年生を教える6万6000人の教師に配布した。「エネルギー合衆国」と題されたこのカリキュラムに出資したのはアメリカ石炭財団だった。業界をスポンサーとするこの授業プランでは、石炭の利点が強調される一方で、炭鉱事故、有毒廃棄物、温室効果ガスをはじめとする環境への影響については触れられていない。
美浜町のエネルギー環境教育推進委員会は、省エネと地球温暖化を強調しているようですが、石炭財団が金を出していたら、違った教育をしていたことでしょう。
児玉真美『死の自己決定権のゆくえ 尊厳死・「無益な治療」論・臓器移植』によると、脳死を人の死と認める法律ができてから、厚労省の関連予算を使った普及啓発の一環で、子どもたちに向けた「いのちの教育」が広がっています。
「いのちの贈りもの あなたの意思で救える命」というパンフレットが全国の中学生に配られ、「道徳教育や総合的な学習の時間などで臓器移植を題材とした授業が行われるよう」、教職員を対象に「いのちの教育セミナー」が3回開催されています。
「いのちの教育」を受けた子供たちはドナーカードに喜んで署名するようになるのかもしれません。
教育が金で買われている現状をこそ憂慮すべきだと思います。