元・芸人の上岡龍太郎さん。5月19日で死去から、1年が経った。
上岡さんは1960年、横山ノックさんに誘われ、「横山パンチ」の芸名でトリオ芸人「漫画トリオ」としてデビュー。
トリオは「パンパカパーン、今週のハイライト」のフレーズの時事漫才で人気となった。
1968年、ノックさんの参院選出馬により、トリオは活動を停止。
その後、「上岡龍太郎」の芸名で『探偵! ナイトスクープ』の初代局長など、司会者として活躍した。
知的でユーモアも潜ませた歯に衣着せぬコメントが興味深く、全国的な人気を博した。
芸能生活40周年となる2000年に、芸能界を引退すると発言していた上岡さんは、“公約”どおり芸能界を引退、まだ58歳だった。
その後は芸能界に復帰することなく、公の場にも姿を現していなかった。
上岡さんの愛弟子であるタレントのぜんじろうさんが生前、上岡さんの哲学について聞いている事によると、『お酒は飲んだから楽しくなるんじゃないですよ。楽しいから飲むんですよ。人生もそうです。
『何かがあって楽しい』のではなく、『楽しいから何かがある』んです。
芸能界も同じです。芸能界でウケたから、レギュラーが増えたから楽しいのではなく、楽しいから芸能界でやっていくんですよ』
「壁にぶち当たったり、あまり結果が出ていない時こそ、楽しくしていないといけない」その言葉がいまでも残っているそうです。
その他残された名言としての数々がある。
「夏の暑い日は道の真ん中を歩け。冬の寒い日は道の端っこを歩け。そうすれば、世の中は受け入れてくれる」
「エスカレーターに乗っても歩きなさい。自分を機械に任せたら終わりです」
「苦しい時は登っている時。自分が凄いと慢心した時は、下っている時だから気を付けろ」
「若い時の苦労は買ってでもしろと言いますが、それは違います。苦労なんか買わんでもどんどん向こうからやってきます」
「結婚して10年経って結婚前より妻が不細工になったとしたら、その8割は男の責任である」
「テレビで何が面白いか言うたら、素人が芸をするか、玄人が私生活を見せる、この、二つに一つ」
「スポーツっていうのはね、上手い人ほど楽しいんです」
「悪い事をした連中を責めるのは、バカでも出来る。しかし、悪い事を仕出かす仕組みを解析するのは、バカではまず出来ない」
「誰にも伝えようと思わなければ、見たまま、聞こえたままの実像が、脳内を自由自在に駆け巡り、それがつぶやきとなって出てくるのだから強烈になる」
「人間は死ぬ。必ず死ぬのだけれども、今すぐに死ぬわけではないということだ。
死ぬには、間がある。この間があるということを、決しておろそかにしてはいけない」
「お金がいるから働くというけれど、逆だ。働くからお金がいるのであって、働かなかったらお金はいらない。見事にいらない」
「生きることは、どこかで世の中に貢献することです。お笑い芸人にでも、人々に、ものの見方を変え、価値観を点灯させてみせると、世の中が違って見えることを示唆する、極めて形而上学な役割があります」
「フツーの人のレベルの定価の原因の一つは、「内と外」の区分けがなくなったことにある。とりわけ「外」の意識が若い層にない。みんな、どこでも家の中のように振る舞っている。それが美しくない。
最後の最後まで「芸」にこだわって、青年期を疾走し、壮年期の途中で引退し、実年期を楽しんだ。
鋭い洞察、切れ味のいい毒舌、社会的風刺は小気味よい。
「僕の芸は20世紀まで、21世紀には新しい人生を歩みたい」とタレント自身がいうのは珍しい事。
人気の低迷という事実を突きつけられてからではなく、また病気による断念でもなく、自らの意志で断っている。
長い間、自分を励まし、芸を磨いてきて、これ以上の自己刷新は無理だと判断したのだろう。