水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (18)有利、不利

2020年01月22日 00時00分00秒 | #小説

 ふふふ…こりゃ、かなり有利だっ! と言うことがある。当然、その逆もありで、不利だっ! 諦(あきら)めるかっ! …とショボく思う場合だって起こる。どの時点で有利、不利が判断されるか? は疑問だが、個人差があることは確かだ。
 とある家庭の夜のキッチンである。鍋が美味(うま)そうに煮えている。
「もう、そろそろいいだろう…」
 今、威厳(いげん)を示さないと示すときがない…とばかりに、有利を確信し、偉(えら)そうに父親が言う。
「まだ、ダメよっ! パパっ!」
 娘に釘(くぎ)を刺され、父親の威厳は、たちまち吹き飛ぶ。
「そうよ、パパ。ソコ、まだ半煮えじゃないっ!」
 娘に加勢するかのように妻がダメ出しをする。防戦一方となった父親は不利を、しみじみと悟(さと)る。
「あっ! タレが出てないなっ! 取ってくるか…」
「馬鹿ねっ、パパは…。そこに、あるじゃないっ!」
 立ち上がった父親に娘の止(とど)めのひと言、右カウンターの強打が炸裂(さくれつ)する。
「おっ! おお…」
 小さな声でそう返すと、父親は借り物の猫のように小さくなる。完全なKO負けだが、父親にはなぜ負けたか? の疑問が解けない。10分後、解けないまま、父親も美味しく鍋を突(つつ)く。もちろん、借り物の猫状態だ。
 このように、有利、不利の変化は、原因がつかめないから疑問が解けず、残ることになる。^^  

                             完


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