水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (10)生き方

2021年05月31日 00時00分00秒 | #小説

 人の生き方にも甘(あま)い辛(から)いがある。むろん、生れ落ちたる星の下(もと)と言われる先天的な宿命や、後天的な運命は致し方ないが、^^ 同じ星の下に生まれ、同じ運命を辿(たど)ったとしても、個人個人の考え方により、その後の人生に大きな差異が生まれることになる。むろん、人生を甘く捉(とら)えてファジー[曖昧(あいまい)]に生きるか、辛く捉えてクリアー[明確]に生きるかは個人の自由なのだが…。^^
 とある町はずれの道である。道に財布が落ちている。先に通ったAは財布が落ちていることは分かったが、甘く無視して通り過ぎた。そのあとに通ったBは、さて、どうしたものか…と一瞬、立ち止まって考えたが、辛く考え、警察に届けようとした。財布の中身は数千円だったが、他にカードが入っていたからである。
 そして、数年が経過した。先に通り過ぎたAは、その後の人生に何の変化もなく、そのまま普通の人生を過ごした。一方、そのあとに通ったBの人生は大きく変化した。その財布の落とし主が現れ、Bと落とし主の間に人脈が生まれたのである。落とし主はとある財閥の大富豪で、Bはその傘下の会社で働くことになったのである。その後、出世して悠々自適の人生を送ることになった。が、しかし、とあるアクシデントで失脚し、奈落の人生を辿っていった・・と、まあ話はこうなる。^^ さて、ここで皆さんにお考え願いたい。先に通り過ぎたAの甘めの人生と、そのあと通ったBの辛めの人生で、どちらの生き方が幸せだったか? という質問である。何もない無味な甘い生き方のAが幸せと考えるか、波乱万丈の辛い生き方のBが幸せと考えるか? の二択問題である。
 正解を言えば、どちらが正解とも言えないのである。^^ 馬鹿かお前はっ! と怒られる方もあろうが、どう生きるかの生き方には正解などないからである。甘い生き方もいいだろうし、また辛い生き方も、それはそれでいい訳である。甘く生きようが辛く生きようが、生き方は皆さんのご自由だから、ご自分でお考え下さい。^^


                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (9)時間配分

2021年05月30日 00時00分00秒 | #小説

 時間は万人(ばんにん)に公平に流れている。時間をどう使おうと個人の自由である。要は、一人一人の時間配分の違いとなる訳だが、その違いによって、結果は自(おの)ずと変化することになる。物事を辛(から)く見る人は、時間配分を上手(うま)く組み立てて完成させるだろう。甘(あま)い人は、その限りではない。^^ 暑い最中(さなか)の外の作業を避(さ)けようとすれば、朝早くから行動し、暑くなる頃には終われるに違いない。作業に費(つい)やす時間は同じなのだが、結果は汗をかいて体力を消耗するか、否(いな)か・・という違いとなる訳だ。むろん、汗をかいたあとの美味(おい)しいビールを念頭に入れて汗する人は除外される。しかし、これとて身体には決してよくないだろう。^^
 とあるタクシーの中の客と運転手の会話である。
「そりゃ、馬尾(うまお)から牛首(うしくび)経由の方が断然、早いですよ、お客さんっ!」
「そうですかっ!? 僕は豚山(ぶたやま)から河馬口(かばぐち)経由の方が早いと思うんですがねっ!」
「豚山から河馬口は込むでしょ! 込まないと早いんですが…」
「僕は込まないのを念頭に、辛く時間配分してるんですっ!」
「辛く時間配分!?」
「そうです。早い分、河馬口の行きつけの店でラーメンを食べるんです」
「込んだらどうすんですっ!?」
「込めば辛口のラーメンが甘い菓子パンになるだけですよ、ははは…」
「なるほど…」
 時間配分はどちらに転(ころ)んでもいいように、甘辛(あまから)く考えた方がいいようである。^^

 
                  完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (8)作業

2021年05月29日 00時00分00秒 | #小説

 作業をするにも、甘口(あまくち)、辛口(からくち)のやり方の違いがある。要は、適当にやるか、完璧(かんぺき)にやるかの差なのだが、甘口の場合は手抜き作業となる危険性がなくもない。かといって、辛口な作業のやり方だと、堅苦(かたぐる)しくてやりにくく、嫌がられる場合も多々、生じる。例(たと)えば、落ち葉を掃(は)く場合でも、大よそを掃いて、『まあ、これでいいか…』と思う人は甘口の作業者で、数枚掃き残っていても満足できない人は辛口の作業者と言えるだろう。^^ 皆さんが上司に持つなら甘口の人の方がいいに違いない^^ ただ、完璧ではないから業績は上がらず、気楽な分だけ出世には遠くなる欠点が生じる。^^
 とある会社のデータ分析室である。二人の分析官がパソコンのグラフィック画面を見ながら話している。
「営業一課の方が前年度をより営業成果の作業効率がいいようですっ!」
「…いえ、そうともいえませんよ。二課は右肩上がり角が数度、一課に比べますと緩(ゆる)やかですが、その分、業績が伸びております。作業効率と業績とは相関関係が低いように思えますが…」
「なるほどっ! それは言えます。作業が甘くても業績が伸びる・・ってこともある訳ですか?」
「ええ、まあ、これは我が社の営業部の場合でして、全てが全てとは言えませんが…」
「コロナの検査作業と治療作業との関係に似てますか?」
「ははは…いや、それはなんとも…」
 作業は時として、甘い場合がいい場合もあり、辛い場合がいい場合もあるということのようだ。^^


                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (7)検査

2021年05月28日 00時00分00秒 | #小説

 甘辛(あまから)でその後の結果が大きく左右されることの一つに検査がある。いつだったか、国会で審議された案件の一つで、鋭い質問の野党議員さんに、ついには参考人招致に至ったことを記憶しておられる方も多いと思う。^^
 とある工務店である。朝から事務所の電話で対応しているのは最近、この工務店へ入った新人の男子事務員だった。
「はあ…そうは申されますが、昨今、耐震基準の関係が五月蠅(うるさく)くなりまして…」
『またまたっ! とかなんとか言って、あんたの会社の儲(もう)けにしようと思ってんじゃ!』
「いえ、決してそのような…」
『甘い甘いっ! それくらいはド素人じゃないんだから、私にだって分かりますよっ!』
「では、どうしろと?」
『どうしろも、こうしろもありません。私が頼んだ設計図面でお願いしますっ!』
「なんでしたら、私の工務店でもう一度、図面を引かせていただきますが…」
『するとなんですかっ! 私が頼んだ図面では建てられないとっ!?』
「いえ、決してそのような…」
 辛口の注文に新人の男子事務員は弱り果てた。そのとき、ベテランの事務員が口を挟(はさ)んだ。
「あっ! お電話変わりましたっ! この前、お世話になった薄毛(うすげ)ですが…」
『ああ! いいとこへっ! 薄毛さんなら安心してお任せいたしますんで、よろしくっ!』
「はあ、有難うございます…」
 工事は図面の変更もなく纏(まと)まり、施工の運びとなった。
 検査は甘辛に関係なく、信用がものをいうのである。^^

 
                  完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (6)予想

2021年05月27日 00時00分00秒 | #小説

 予想するのにも甘(あま)め、辛(から)めの読みがある。誰も間違った予想はしたくないだろうから、自分の意識を駆使してその後の展開の予想を立てる訳だ。外すと、少し自分を低く評価されたり笑われることを潜在意識で避けるのである。辛めの予想を立てる人はその自己意識が強い。一方、甘めの人は、どう思われようと構わない的で弱い・・と予想される。^^
 二人の大学教授が電話で会談をしている。
『いやいや、今回のコロナは終息したからいいんですがねっ! 問題は今後なんですよっ! 私の辛めの予想ですと、また起きそうな…しかも、今回以上に深刻な事態になるような気がしております。黒熊(くろくま)教授は、どのように思われます?』
『紅鮭(べにざけ)教授、私もそうなることを危惧(きぐ)は、しとります。危惧はしとりますが、私は甘めの考えを持っておりましてねっ! 人類はその都度、また打ち勝つ知恵を持つものと確信しとるんですよっ!』
『いや、それは黒熊教授の仰(おお)せのとおりでしょう! しかし、私はあなたの考えに食われる訳にはいかないっ! なにがなんでも、人類を残すために川を遡(さかのぼ)りますぞっ!』
『はいっ! 是非(ぜひ)とも遡ってくださいっ! そうして戴(いただ)かないと、私はあなたを食べられないっ!』
『私もそうは簡単にあなたに食べられる訳にはいきませんからなっ! 予想を立てて上手(うま)く遡ることにしますよっ!』
『ははは…お手並み拝見っ!』
 電話会談はその後の予想が立たないまま終息した。
 私にも今後の予想は目に見えないから甘くも辛くもなく、分からない無味である。^^

 
                  完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (5)考え方

2021年05月26日 00時00分00秒 | #小説

 甘(あま)い辛(から)いで一番分かりやすい例は人の考え方である。今の世の中、辛く強(したた)かに生きないと吹き飛ばされやすいようだ。^^ 甘いものを食べてそのままにしておくと虫歯になりやすい・・という話に似ている。^^
 とある会社である。課長と社員が話している。
「そりゃ君っ! 考え方が甘いぞっ!」
「そうですかねぇ~。この前はそれで上手(うま)く契約、取れたんですけど…」
「この前はこの前っ! 君は甘いっ! 世の中、そのまま通る訳がないんだ。他社は虎視眈々(こしたんたん)で辛いんだからっ! 次こそはっ! ってヤツだよっ、君っ!!」
「はあ…。それじゃ、どういうように?」
「どういうようにって、それは君が辛く考えるんだろっ!?」
「はあ、まあ…」
「君の考え方一つなんだから、頑張りなさいっ!」
「分かりました。辛く考えてみます…」
 その三日後である。
「課長! 契約取れましたっ!」
「やったなっ! 見ろっ! 考え方、一つだろっ!」
「それが課長…。先方の言うには、前の契約条件の方がいいんらしいです…」
「そ、そうかっ!? まっ! そういうことも、あるわなっ!」
 その後も以前の甘い考え方でこの社員は多くの契約を取っていると聞く。考え方が甘い方が首尾よくいく・・ということも多々あるというお話だ。^^


                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (4)捜査

2021年05月25日 00時00分00秒 | #小説

 捜査と聞けば、誰しもすぐに警察が浮かぶだろうが、実は捜査にも甘口(あまくち)と辛(からくち)があり、警察の場合だと辛口の捜査・・ということになる。ならば甘口は? ということだが、つい今し方までかけていた眼鏡(メガネ)をどこへ置いたかが分からず、探し回るといった場合を甘口の眼鏡捜査と呼ぶ。^^
 どこにでもある、とある普通家庭である。
「お父さん! 私のネックレス知らないっ!?」
「んっ!? そんなもん俺が知るかっ! そこら辺(へん)にあるだろっ!」
「そぉう? …怪(おか)しいわねっ! つい今、外(はず)したんだけど…。どこへ置いたんだろっ!?」
「よぉ~~く考えてみなっ! ネックレスが勝手に歩く訳ないんだからっ! ははは…逃げたかっ! 捜査、捜査、捜査しなっ!」
 ご主人は勤めの刑事癖が出たのか、しきりに捜査を連呼(れんこ)した。
「帰ってきたでしょ…」
「ああ…。玄関で靴を脱いだな。それは俺も目撃している…」
「問題は、そのあとよねっ!」
「ああ、そのあとだっ! どうしたっ!?」
「どうもしないわよっ! …服を着替えにクローゼットへ行ったわ」
「そうなのか? なら、クローゼットへ逃げたんじゃないかっ! なんなら俺の後輩の刑事(デカ)を呼ぼうか?」
「そんな…」
「ははは…辛口の冗談、冗談だっ!」
 奥さんはクローゼットへ行き、着替えた服を弄(いじく)り始めた。そして、十数分が経過した。
「妙ね…、ないわ…」
 そこへご主人がチラ見しながら現れた。
「どうだ、あったか?」
「それが、ないのよ…」
「ははは…甘い甘いっ! あったぞっ!」
「どこよっ!?」
「自分の首(くび)を見ろっ!」
「あっ!」
 奥さんはネックレスを外していなかったのである。捜査は辛く考え過ぎれば足元(あしもと)、この場合は首元だが、見誤(みあやま)るのである。^^


                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (3)好き嫌い

2021年05月24日 00時00分00秒 | #小説

 人により甘(あま)口、辛(から)口の味の好き嫌いは当然ある。
 とある老舗の鰻(うなぎ)専門店、鰻政(うなまさ)である。一人の客が店の暖簾(のれん)を潜(くぐ)った。
「あらっ! どうされてたんですっ!? 先生。随分、お見限りでしたが…」
「ははは…ちょっとね。最近は、なにかと忙(いそが)しいもんで…。いつものコースを…」
「へいっ! 他の店へ鞍替(くらが)えされたのかと気にしてたんですよっ! 実は…」
「いやいや、ここの甘口のタレに勝てる店はないでしょ!」
「そう言っていただけると、商売冥利(しょうばいみょうり)に尽(つ)きるんですがねっ! 中には辛口の方もおられるんで…」
「分かりますかっ!?」
「ええ、そりゃもう。食べておられる顔を見りゃ、大凡(おおよそ)は分かりまさぁ!」
「まあ、味にゃ好き嫌いがありますからねぇ~」
「そうそう! そうでございますよっ! 辛口が好きなお方は、ほれっ! 隣町の…」
「ああ、鰻善(うなぜん)ですか?」
「はあ、まあ…。こればっかりはっ! そうは言っても、人には辛口で、甘味が好みって方もおられますしねっ! ははは…」
「そらまあ、そうです…」
 客がそう言ったとき、鰻料理の数々が運ばれてきた。
「あっしは仕込みがありますんで、この辺で…。そいじゃ、ごゆっくり!」
「ああ、どうも…」
 店主が奥の厨房(ちゅうぼう)へ消えたあと、客は好きな甘口顔で食べ始めた。
 甘辛の好き嫌いは、顔に出るのである。^^


                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (2)見解(けんかい)

2021年05月23日 00時00分00秒 | #小説

 少し難しくなるが、見解(けんかい)という言葉がある。よく、「見解の相違だっ!」などと反論する場合に遣(つか)われる。相手の考えを辛口(からくち)で捉(とら)えると、そんな言葉になる。逆に、相手の考えを柔軟(じゅうなん)に甘(あま)く捉えれば、『まあ、そんな考えもありか…』などと右から左へ[左から右もある^^]軽く受け流すことになるだろう。こうした見解に対する受け止めようの違いが、その後の展開を大きく変え、多くの結果を変えることになるから怖(こわ)い。^^
 数人の論者が討論している。
「いや、その場合は鶏(にわとり)が先でしょ!」
「ということは、検査が大事ってことですかっ!? 私ゃ、卵(たまご)が先だと思うんですがねっ!」
「その根拠(こんきょ)はっ!!」
「だって、いくら検査したって、罹患者(りかんしゃ)は減らないでしょ! だんぜん、治療法、治療薬開発ですよっ!!」
「それも大事ですが、私は現況(げんきょう)の把握(はあく)が大事だと思いますよっ!」
 そこへ、別の論者が割って入った。
「まあまあ、お二方(ふたかた)! 私は鶏(にわとり)小屋を作る方が大事だと考えとるんですよっ!」
「…?」「…?」
 それまで論じ合っていた二人は訝(いぶか)しげに別の論者を見た。
 甘辛は程よい味を求める者もいる訳である。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (1)恋

2021年05月22日 00時00分00秒 | #小説

 皆さんにも甘(あま)いもの、辛(から)いものの嗜好(しこう)は、少なからずお有りのことと思う。これから綴(つづ)るのは、そういった甘辛(あまから)いお話の数々である。言っておくが、決して食べ物だけのお話ではない。あるときは心に沁(し)みる甘辛い出来事、そしてまたあるときは、人や社会との触れ合いの中で起こるユーモアのお話である。まず、その最初として恋のお話だ。風薫(かぜかお)る五月(さつき)となったが、決して鯉幟(こいのぼり)の鯉ではない。^^
 とある小学校の運動場である。小学二年生の男児二人が、なにやらヒソヒソと話している。
「平崎君、またチヨちゃんに振られたそうだよっ!」
「平崎君は、どうも振られ癖(ぐせ)がついてるみたいだねっ!」
「そうそう! すぐ好きになって、すぐ振られるっ!」
「ったくっ! あれが恋なのかなっ!?」
「僕に言われても…」
「まあ、そんな感じが平崎君なんじゃないっ?」
「そうかもっ! 草野球で三振ばっか、してるし、甘いんだよ、きっと!」
「甘いのが好きなんだ、平崎君…」
「うんっ!」
 恋は甘いと振られて辛(つら)くなるようだが、すぐ復活するらしい。^^

 
                  完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする