水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (14)メディア

2020年01月18日 00時00分00秒 | #小説

 昨今、世の中はメディア[媒体]による意思疎通[コミュニケーション]で影響を、もろに受ける時代となっている。ラジオしかなかった時代に比べれば、情報媒体もかなり増え速い速度で私達の目や耳に届く時代である。そうすると、私達は別に思わなくてもいいのに、まったく関係がない出来事に思ってしまうことになる。^^ ニュースでアナウンサーが、「ドコソコの国道△□線で接触事故があり、タレントの○○○○さんはショックのあまり行き先を忘れました…」などというニュースは読まれないだろうが、^^ 余り関係のない事件や事故を報道されても、視聴者サイドは『…フゥ~~ン、そうなんだ。あのタレントが…』くらいの気分で終ってしまう。ところが、タレントの所属事務所は、それどころの話ではなく、ド偉いことが報道されたぞ…と人気落ちの心配気分になるのである。メディアによる影響だ。妙なことに、事実でない報道が、さも事実のように広がり、拡散するうちに虚偽事実が事実に変化するのには疑問が湧く。恋愛のスキャンダラスな話だと、飛ぶように売れるネタなのだろうが、事実でないから、いつしか下火となる。すると、上手(うま)くしたもので、メディアは、両者は破局! などの落ちにして、無かった話にしてしまう訳だ。^^ これは、メディアの力を利用した実に巧妙なお商売だが、それが成立する時代なのだから、そら怖ろしい。^^
 年明けの、とある都会の街通りである。福袋目当ての人の列でごった返している。その中を、まるで他人事(たにんごと)のように興味なさ気に楚々(そそ)と通り過ぎる二人の老人がいる。
「なんですっ? この列はっ?」
「ああ、福袋ですよ、福袋っ!」
「ああ! そういや、今朝のチラシ広告に出とりましたっ!」
「そう、それっ! メディアの影響ですなっ!」
「福袋って、そんなにいいんですか?」
「ははは…そうでもないんでしょうが、メディアによって、より以上によくなってしまった・・ということでしょうな」
「品物というより福袋を買うとか?」
「そう、それっ! メディアの影響ですなっ!」
「やはり、メディアの力ですか?」
「そう、それっ!」
 説明する老人は、そう、それっ! を多用してメディアを強調した。
 なぜメディアにそのような力があるのか? は疑問だが、人をその気にさせる影響力を持つのは確かなようだ。^^

                             完


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