水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (10)黒白(こくびゃく)

2020年01月14日 00時00分00秒 | #小説

  黒白(こくびゃく)をつける・・という言い回しがある。申すまでもなく、その行為が間違っているか否(いな)かを明確にする意味である。だが、人の世では曖昧(あいまい)な行為が認められ、善悪どちらも通用しない・・というのが疑問だ。偏(かたよ)れば生き辛(づら)いのが世の中・・ということになる。^^

 高校生の息子とその父親が、いがみ合っている。
「そこまで言うなら、黒白をつけようじゃないかっ!」
「ああ、いいよっ!」
 父親の勝負に、息子はあっさりと乗った。
「じゃあ、お母さんを呼んできなさいっ!」
「分かった!」
 息子は勢いよくキッチンへと消えた。しばらくして、母親と息子が居間へ入ってきた。
「母さん、今夜は石狩鍋だよな」
「石狩鍋ってことはないよ、絶対っ! 鳥スキ!」
「えっ? なにっ? 二人とも違うわよっ! 魚スキ!」
「…」「…」
 親子の黒白はつかず、灰色で終った。
 まあ、こんな平和な黒白のつけ方なら、大いに望むところで、疑問が生まれる余地はないだろう。^^

                             完


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