水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (84)意固地(いこじ)

2022年02月28日 00時00分00秒 | #小説

 意固地(いこじ)とは、自分の意思に反して思い通りにならない物事を思い通りにしようと拘(こだわ)り続けることだ。この男、僧侶の梅丘減滅もそんな男だった。梅丘はその日、木魚の撞木(しゅもく)の持ち手が折れたのをなんとかしよう! と焦っていた。別に焦らなくてもいい訳だが、梅丘は焦っていたのである。よくよく考えれば撞木など、折れれば、代わりの撞木に換えればいいだけの話なのである。最初、ガムテープで補強したのがいけなかった。実は、補強した日は、一人の読経中だったからよかったのだ。問題は、檀家を後方に控えたその日の読経中に起きたのである。ポクポクポクポク…と、長く木魚を叩いていれば、いくら粘着力が強いガムテープでも剥(は)がれるのは道理だ。
「…」
 読経の途中で止(や)める訳にもいかず、仕方ないか…と、折れた持ち手の前を持ち、梅丘は叩き続けた。いつもの勤行(ごんぎょう)中は明るい気分で読経する梅丘だったが、その日はどうも今一つ、気分が暗かった。正解は意固地にならず、別の撞木に換えればよかったのである。後方に胡坐(あぐら)や正座で座る檀家の連中の手前、意固地になるのも仕方なかったのかも知れない。
「では、これにて…」
 少し早めに読経を終え、梅丘は折れた撞木を袂(たもと)の中へマジシャンのように鮮やかに入れ、格好よく退席しようとした。
「和尚(おしょ)さん、撞木の先が…」
 檀家の一人が梅丘の後ろ姿に声をかけた。
「? ああ、どうも…」
 梅丘は、しまった! 先を忘れたか…と悔(く)やんだ。
 物事は意固地にならないことが格好よく退席できる秘訣(ひけつ)のようである。^^

                   完


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明暗ユーモア短編集 (83)密談(みつだん)

2022年02月27日 00時00分00秒 | #小説

 ウイルスが世の中を『ウイルス、ウイルスっ!』と叫びながら走り回っている。ウイルスが観える星岡は、「また、走ってやがるっ!」と独りごちた。通行人が、…? と辺りを見回したあと、星岡をジロリと一瞥(いちべつ)し、通り過ぎていった。星岡は一瞬、しまった! と思ったが、もう遅い。なにせ、対向する人は自分以外、他にいないのだから、妙な人だな…と思われても仕方がなかった。それでも星岡は、ウイルスがどこへ向かっているか? が知りたい衝動(しょうどう)にかられていた。
「よしっ! どこへ向かっているか、つけてやるっ!」
 星岡は、一端(いっぱし)の刑事にでもなったように呟(つぶや)くと、ウイルスが走っていった方向へと速足(はやあし)で歩きだした。『感染しますよっ!』と忠告する心もなくはなかったが、『かまわんっ! 近づけるだけ、接近しろっ!』と、敵艦隊を双眼鏡で見る艦長にでもなったように、また独りごちた。
 しばらくすると、ウイルスは別のウイルスと、なにやらゴチャゴチャと話をしている。耳を欹(そばだ)てると、『兄貴(あにき)っ! どうもヤバいですぜっ!』と報告をしている。
『どうしてだっ!!』
『世の中がワクチンづいてやすぜっ!』
『そうか。はっはっはっ…、まあ、心配するなっ! 手は打ってあるっ!』
『と、言いやすとっ!?』
『新型が、ちゃ~~んと準備してあるんだっ!』
『変異の兄貴ですかいっ!?』
『フフフ…、ヤツじゃねぇ~やっ! もっと荒手(あらて)の新入りよっ!』
『そうですかいっ! そりゃ~楽しみだっ!』
『誰も気づいちゃいねぇ~だろっ!?』
『へいっ! 今のところは…』
 二匹のウイルスは、星岡が秘(ひそ)かに耳を欹てているとも知らず、暗く嗤(わら)った。
「フフフ…俺がいるがな」
 星岡は小さく呟くと、明るい顔で笑い返した。
 何事にも、上には上がいる訳である。^^

                   完


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明暗ユーモア短編集 (82)一時間

2022年02月26日 00時00分00秒 | #小説

 竹川は、どういう訳か休日のこの日、一時間ばかり早く目覚めた。昨夜、することもなく早めに寝たのが原因に思えた。毎日やっている身支度(みじたく)→洗顔(せんがん)→食事の準備と進めていったが、朝食を食べる頃、ふと時計を見ると、一時間ばかり早いことが分かった。よく考えれば、いつもと同じペースでコトを進めているのだから、そら、そうなる訳だ。
『なんだ! まだ、こんな時間か…』
 竹川は竹の皮のような顔で、思うでなく思った。竹の皮のような顔とは、ホッカホカのおにぎりを包む、あの竹の皮のような平たい顔である。^^ すると、どういう訳か、心にゆとりが生まれ、少し気分が明るくなった。いつも通勤に追われ、ソソクサと家を出る日々には感じられなかったゆとり気分である。
 食べ終え、竹川はやろう…と思っていたDIY[日曜大工]を始めたが、どういう訳かスイスイ~~と作業は捗(はかど)り、昼前には終わってしまったのである。午後三時くらいまではかかるだろう…と予想していた竹川としては御(おん)の字(じ)だ。竹川は、昼から何をやろう…と明るく巡った。そうそう! 大根がまだ一本、残っていたな…と竹川は思うでなく、また思った。竹川の脳裏(のうり)に、湯がいて温野菜にしよう…という思考リズムが完成を見た。竹川は昼食を食べ終えると、畑に残った太い大根を抜き、水洗いしてキッチンへと運んだ。葉の部分は古びていたから生ごみ処理機で裁断し、肥料用とした。根の部分は食べやすい手ごろな間隔に包丁で輪切りにし、鍋で湯がいた。まだ午後二時過ぎだった。竹川は得をしたような気分になり、ますます明るくなった。そうして、その日は、全(すべ)てのコトが前倒しするかのように順調に進んでいき、就寝前には身体が全然、疲れていないことに竹川は気づかされた。よしっ! コレだなっ! と、竹川は、きっちりと思った。きっちり思うとは、一時間、早く起きよう…と思うことである。
 次の日から、暗い気分でバタバタと出勤していたパターンが、明るい気分へと変化した。なにせ、ゆったりと流れるゆとり気分が出来たからである。
 皆さんっ! 日々、何げなく過ごしている無駄な一時間を有効に使ってみる・・というのはいかがでしょうか? たぶん、気分が明るく変化すると思いますよ。^^

                   完


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明暗ユーモア短編集 (81)影響力

2022年02月25日 00時00分00秒 | #小説

 最近の巷(ちまた)を窺(うかが)うと、見えない影響力が世間を席巻(せっけん)していることが分かってくる。昭和30年代なら全然、知らなかった細かな社会の出来事が、今ではホニャララの落ち葉の模様が奇麗だった・・などと、どうでもいいような細かなことまで知れる時代なのである。知れる訳だから、当然、受け手に及ぼす影響力も大きくなる。それが、いいニュースなら世は明るい気分になるが、悪ければ社会が暗く沈滞(ちんたい)するのは必然だ。むろんこれは、出来事に限らず、全ての分野にも通じて言えることだ。まあ、『Aさん宅のニワトリ、コケ子さん[Mrs. Cook]が一日、五個も卵を産みました』などという明るいニュースは流れないだろうが…。^^
 以前にも登場した[どの短編集だったか定かではない]二人の中年男が、とある専門店で鉄板焼きそばを頬張りながら話している。
「いやぁ~、株価が¥30,000超えしたらしいが、その実感、俺にはないなぁ~」
「だなっ! 俺もない。バブルの高値と、どこか違う…」
「俺もだが、世間の皆さん、どこか暗いぜっ!」
「コロナの過剰報道の影響力もあるんだろう…」
「うちの父ちゃんが、何したって死ぬときは死ぬってなっ!」
「よく言うよ。それで今、102の現役かよっ! ははは…」
「ははは…死ぬときがねぇ~んだ、きっと!」
 二人は明るい話題の影響力で、俄(にわ)かに明るくなった。
 人々は、巷の影響力で明るくなったり暗くなったりするようである。^^

                   完


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明暗ユーモア短編集 (80)デリバリー

2022年02月24日 00時00分00秒 | #小説

 お年を召された方なら、…? と疑問に思われるだろうが、今や社会を闊歩(かっぽ)している和製英語の一つに[デリバリー]という言葉がある。分かりやすく言えば、[出前]のことである。家に届けてくれるのだから、これはもう有難く、便利この上ない。ただ、いつ届くか分からず、「もう一時間以上経つぞっ!」などと苦情電話をかけねばならないこともあり、予定が狂いやすいのが難点である。ジィ~~っと届くのを待ち続ける時間は自由を拘束された時間であり、最初、「ははは…たまには奮発して、デリバリーにするかっ!」と、明るかった気分が、暗く萎(しぼ)むというものだ。
 とある家庭の一コマである。
「おいっ! もう小一時間だぜっ!」
 ご主人が腕時計を見ながら奥さんに愚痴る。
「そんなこと言ったって…。道が混んでるんじゃないんですかっ!」
 奥さんは迷惑顔でご主人の愚痴を一瞬の隙(すき)も見せず、サッ! と躱(かわ)す。お見事っ! と言う他はない。^^
「もう一度、電話してみなさいっ!」
「あなたが、おかけになればいいじゃありませんかっ!」
 たった鰻重(うなじゅう)のデリバリーの遅れ一つで、夫婦喧嘩(ふうふげんか)が勃発(ぼっぱつ)した。その喧嘩は、聞いたところによれば、今も続いているという。
 デリバリー・・侮(あなど)るなかれ! である。

 ※ ご主人の鰻好きにも原因の一端があるようです^^

                   完


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明暗ユーモア短編集 (79)いい国

2022年02月23日 00時00分00秒 | #小説

 いい国とは? と、考えたことはありませんか? いい国? …いい国[1192]作ろう鎌倉幕府・・である。^^ いい国に住んでいれば、自然と心は明るくなるはずだ。いい国に住みながら気分が暗い人は、まあ、余程の変わり者か、例外を除いては、いないはずである。^^ 最近のニュースでも流れたように、軍事クーデターが起こるような国が、いい国だとは誰も思うまい。
 どこにでもいるようなフツゥ~の中年二人が、とある街のとある歩道を歩きながら話をしている。^^
「お前、この国がいい国だと思ったことはないか?」
「んっ? …別に考えたこたぁ~ねぇけどなっ!」
「そうか…。俺はいい国だと思ってんだっ!」
「どうして!?」
「どうして!? って、美味(うま)いものも鱈腹(たらふく)食えるし、何でもある。言いたいことも言えるし、悪いこと以外は何でも出来るだろっ!?」
「… ああ、まあそう言われりゃそうだわなっ!」
「いい国に住んでいれば、自然と心は明るくなるっ!」
「そんなもんかねっ! 俺はちっとも明るくならねぇ~がなっ!」

「どうして!?」
「どうして!? って、ほらっ! また、ポイ捨てゴミだっ! いい国に住んでる…と思うヤツらがポイポイ捨てるかっ!?」
「思ってねぇ~ってことかっ!?」
「思ってねぇ~というより、考えてねぇ~んじゃねぇ~かっ!?」
「まあ、考える必要がねぇ~ほどいい国だってことも言えるがなっ!」
「ああ…。だが、そんなヤツらは暗いだろうなっ!」
「ああ、暗い暗いっ! ソマリアあたりに住みゃ~いいんだっ!」
「だなっ!!」
 二人の結論は出たようである。
 どうせ生きるなら、明るい気分で過ごせるいい国にしたいものである。暗い気分で暮らさねばならない国が、いい国である訳がない。…ということは、我が国は今、いい国ではないということになります。^^

                  完


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明暗ユーモア短編集 (78)進化と退化

2022年02月22日 00時00分00秒 | #小説

 とある町役場である。議会も無事に閉幕し、議事録の製本も終わった議会事務局の課長、猿渡(さるわたり)は、さし当たっての急ぎの仕事もなくなり、手持無沙汰の身でフゥ~っと大きな溜息(ためいき)を一つ吐(は)きながら、人類は果たして進化しているのだろうか? …と考えていた。考えれば考えるほど分からず、猿渡はすっかり暗くなった。元々、明るい性格の猿渡だったから、他人から見れば別人のように映った。
「…どうしたんです、猿渡さんっ?」
 偶然、デスク前を通った総務課の課長補佐、豚尾(ぶたお)がブブッ! とした声で訊(たず)ねた。
「ああ、豚尾君か…。何か用かい? 九日十日っ!」
 気分が暗くなったとはいえ、やはり元来(がんらい)が根明(ねあか)の猿渡である。ダジャレはいつものようにスイスイ~~っと、テンポよく飛び出した。
「ははは…九日も十日もありませんよ。河馬田(かばた)局長に頼まれてた父が採った松茸を持ってきたんです。先に1,200円受け取ってるもんですからっ!」
「ってことは、一本、ろ、600円っ! 600円で、この松茸、二本っ!?」
 どう見ても、一本が数千円する代物(しろもの)に思えた。
「ええ、まあ…。うちの父は出荷しませんから。父の小遣い稼(かせ)ぎですっ!」
「出荷しないのっ!? だったら、ぼ、僕にも二本ばかり頼んでみてよっ!」
「えっ!? ああ、いいですよ、明日、持ってきます。で、何かありました?」
「よく訊(き)いてくれた、豚尾君。実は、その局長のことなんだけどね。実は彼を見てさぁ~、ふと、人類は進化してるんだろうか? って思えた訳さ」
「河馬田さんを見て!? …フツゥ~の人のように思えますけどね、僕にゃ」
「いやいやいや、それがどうして、どうしてっ! 五年前に比べりゃ、完璧(かんぺき)に彼は退化してるよっ!!」
「ど~いうふうに?」
「局長さぁ~、いつも同じコンビニ弁当を僕に買ってきてくれって頼むんだよっ!」
「それは、ないだろっ!? てことですか?」
「僕だって、一応、ヒラじゃない課長なんだからさっ! 他に課の職員は大勢いるんだからっ! アンタはそんな発想なのかよってねっ!? 頭脳退化だよ、頭脳退化! 完璧にっ!」
「頼みやすい・・って理由じゃないんですかっ!?」
「それで、僕かい? いつも同じコンビニ弁当をっ!? 冗談じゃないよっ!!」
 課長の猿渡は表情が益々、暗くなった。
「まあ、あまり退化されず…。明るくいきましょ!」
 豚尾は猿渡を慰めるのが精いっぱいだった。
 人類は進化すると明るくなり、退化すると暗くなるようだ。^^

                   完


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明暗ユーモア短編集 (77)知識

2022年02月21日 00時00分00秒 | #小説

 知識に明るい・・などと言う。その逆なら無知で暗い・・ということになる。^^ ならば、━ 知らぬが仏(ほとけ) ━ というから、知らない仏さまは暗いのか? となる。いやいや! 仏さまは有難ぁ~~い光背(こうはい)の後光を照からせておられるから暗い訳がなく、明るいのである。知識に暗くても、たいそう明るい人はいっぱいいる。知識に明るくても、滅法、暗い人だっていっぱいいる。知識に明るくても明るい人だとは限らない。むろん、その逆も言える訳で、知識など頭の訓練ぐらいに考えておればいいのではないか? と、実は私には思えている。博学の知識人が必ずしも偉い人とは限らない・・ということだ。
 とある所で頭のいい人とおバカな人が話をしている。
「ほうっ! そうなんですかっ! ちっとも知りませんでしたっ! それなら帰りは遠回りして帰らせていただきますっ! 有り難うございましたっ!」
「いやいや、飽くまでも私の予想ですから、工事中とは限りません。限りませんが、付帯工事の時期と市職員の友人から聞いた話ですと、どうも工事中ではないかと…」
 忠告した頭のいい男は、待て待てっ! …そうとは限らんかっ! 俺はその道を帰ろう…と言った直後、思った。
 おバカな男は、頭のいい男が言ったとおり、別ルートで無事、帰宅した。ところが、頭のいい男が選んだ道は、自分が言ったとおり工事中だったのである。
 知識に明る過ぎると軽く考えられず、逆の暗い結果を導く場合もあるからご注意をっ! というお話だ。^^

                   完


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明暗ユーモア短編集 (76)お冠(かんむり)

2022年02月20日 00時00分00秒 | #小説

 お冠(かんむり)とは怒る意味で遣(つか)われている言葉だ。怒っているのだから、気分は明るいはずがない。この男、鰯(いわし)も、朝からたいそうお冠だった。というのも、祖父がブツブツと小言を鰯に八つ当たりしていたからである。鰯にしてみれば、他に当たりゃいいだろっ! なぜ自分が…気分である。
「じいちゃん、ちょっと用があるから、また帰ってから聞くよ…」
「おいっ! ちょっと待てっ!」
 祖父がお冠で呼び止めたとき、鰯はすでに表へ飛び出していた。じいちゃんに付き合ってたら、百年経っても終わらねぇ~やっ! 気分だった。格好の獲物に逃げられた祖父は、益々、お冠が大きくなった。
「父さん! どうされました? そんなに顔を真っ赤にされて…」
 居間で寛いでいた息子が明るく声をかけた。
「なんだ、お前かっ! まあ、いい。儂(わし)の話を聞けっ!」
 それから小一時間、息子は暗い気分で父親の話を聞かされる破目に陥ったのである。終わったころ、テンションはガタ落ちで、気分はすっかり暗くなった。居間で寛(くつろ)いでいたときは明るかったものが反転したのである。
 お冠の人がいたとき、近づかないのが気分を暗くさせない秘訣(ひけつ)・・という忠告めいたお話です。━
君子(くんし) 危うきに ちかよらず ━ という格言も、その意を示していますから、あなたも、ご参考になさって下さい。そうすれば、明るい気分で一日が過ごせますよっ! ^^

                   完


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明暗ユーモア短編集 (75)思いどおり

2022年02月19日 00時00分00秒 | #小説

 物事が思いどおりに進めば、気分は明るくなる。その逆ならば暗くなるのは必然だが、原因が分かっていれば対処の方法もあるが、思いどおりにならない明確な原因が分からないと、あとの物事に尾を引き摺(づ)って負のスバイラル[下降する渦巻]に陥(おちい)ることになる。こうなるのは誰だって嫌だろう。私だって嫌だ。^^
 とある会社である。
「店林(みせばやし)さん、課長がお呼びです…」
 女性事務員の豚野(とんの)にそう言われた店林は、頷(うなず)くとサッとすぐにデスクから立ち上り、課長席へと歩(ほ)を進めた。すぐに店林が立ち上がった背景には姓とは真逆に、豚野が社内でピカ一の美人だったことがある。店林は仕事が思いどおりに進んでいなかったから、本来なら嫌々、立つところだったのだ。
「課長、お呼びでしょうか?」
「ああ、店林君。君、すまんが昼、部長と食事に行ってくれないか? 生憎(あいにく)、取引先の鳥目(とりめ)専務に誘われてねぇ~」
「そうでしたか…。分かりましたっ!」
 気軽に引き受けた店林だったが、愛妻弁当を楽しみにしていたから、デスクへ戻る途中、どうしたものか…と思い倦(あぐ)ねた。結局、今日は思いどおりにならない日だな…と諦(あきら)め、今日は鳴かず飛ばずのローテンションでいこうと思った。すると、妙なもので暗い気分が軽くなり、明るく変化したのである。その後、物事が、どういう訳か店林の思いどおりに運び始めたというのだから不思議である。
 思いどおりにならず気分が暗いときは、深追いせず、軽く考えると気分が明るく好転する・・というお話だ。まあ、場合によりけり[cace by case]だが…。^^

                   完


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