水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (7)迷信

2020年01月11日 00時00分00秒 | #小説

 信が迷う・・というのが迷信である。^^ 信が迷う・・のは少し疑問だが、その迷信には人々をそう思わせる力があるのに違いない。でなければ、人々は信じず、迷信とはならないからだ。迷信には人々を説得させる力が必要・・ということだろう。
 とある宗教団体の集(つど)いである。興味本位で訪れた人々が教主のマジックに踊らされ、すっかりその気になっている。
「古くから私達は迷信と思ってきました。しかし、このように、現に迷信ではない事実を、皆さんは目(ま)の当(あた)たりにされたはずです。疑問など少しもないのです…」
 教主は入信しようとする人々を見回し、厳(おごそ)かな声で、そう言い放った。誰も話す教主の言動を疑問に思う者はなかった。しかし、そのときである。一人の子供がポツンと小さな声で言った。
「なんだっ! 僕、そのマジック、知ってるよっ!」
 マジックと言われた教主は形無(かたな)しである。その途端、人々から割れんばかりの拍手が湧き起こった。宗教団体の集いは、いつの間にやらマジックの集いへと変化したのである。
 このように、迷信への疑問は、いとも容易(たやす)く解(と)けることになる。^^

                                完


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