水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (98)元気

2022年09月30日 00時00分00秒 | #小説

 元気が足らないと病気になる。^^ 病気は元の気ではない訳で、気自体の体質に問題がある訳である。現在、流行しているウイルス性疾患も、元を正せば、病気→元気となり、終息する訳である。では、その元とはっ!? ということになるが、この解明は、研究する人々の手腕にゆだねる以外に、私達には手の施しようがない。^^
 とある公園に設置された日陰のベンチで二人の老人が語り合っている。梅雨の中休みなのか、空気はさっぱりとして小気味よい。
「相変わらずお元気そうでなによりです…」
「そういや、ここしばらくお会いしてませんでしたな…」
「はい。感染症もようやく終息しましたからな…」
「いい治療法が発見されてよかったですなっ!」
「そうですっ! もう人類は終わりかと一時は思っておりましたが…」
「いるんですなっ!? 諦(あきら)めない方が…」
「それが元気ですよっ! 諦めれば病気ですっ!」
「そうですな…」
 元気は、諦めなければ病気を寄せ付けない。足らないと病気が発生するようです。^^

                    完


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足らないユーモア短編集 (97)完璧(かんぺき)

2022年09月29日 00時00分00秒 | #小説

 完璧(かんぺき)は、いつやらの短編集にも登場したが、これはまた別のお話である。
 完璧ではなく曖昧(あいまい)で物事が上手(うま)くいくということが最近、多い。Aという考え方の人もいれば、Bという考え方の人もいるのだ。双方が闘牛のように角を突き合わせれば、争いとなる。そこはそれ、大同小異はお互いに認め合い、曖昧(あいまい)に纏(まと)まることで物事が円滑(えんかつ)に進むのである。完璧を個々に主張すれば、社会は混迷の一途を辿(たど)るだろう。
 二人の論客がテレビ討論をしている。
「だって、この前、割れたばかりじゃないですかっ!」
「仕方がないでしょ! 党内の考えが完璧に違うんですから…」
「そこへいくと、長期政権の党は割れませんねっ!?」
「こじんまり割れても、いいことは何もないっしょ!!」
「疲れるだけですか…」
「ええ! そうですよ。政権が取れっこないんですからっ!」
「テレビに登場する場面は増えるようですが?」
「それそれっ! 目立ちたいんですよ、きっと! 世間の認知度が足らないと…」
「困るのは国民ですかっ!?」
「そうそうっ! 政権政党に対する託せる力のある党がないっ!」
「受け皿がなければ、ムダですから投票しない…」
「そうそうっ! 棄権しますなっ!」
「完璧な一致を求めず、纏まってこそ政権政党にとって代われる…」
「そうそうっ! 国民を真に思う党は割れないっ!」
 完璧より曖昧がいいという一例である。^^

 ※ 考え方には個人差があります。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (96)根回し

2022年09月28日 00時00分00秒 | #小説

 私達が暮らす社会では、根回しが足らないと物事が成就しないことが多々ある。サラリーマン諸氏の方々には、よくお分りのことと存じる。
 いつやらの短編集にも登場したとある中央官庁である。
「次官! そこのところを、何卒(なにとぞ)、よろしく…」
 事務次官に揉(も)み手で頼み込んでいるのは、次期次官の呼び声が高い黒丸(くろまる)である。
「ああ、分かっとるよっ! まあ、私一人の力で、どうなるって話でもないがねっ!」
「ははは…それは分かっております」
「根回しはやっとるんだろうねっ!」
「はっ! それはもう…。法律に触れない範囲で…」
「頼むよっ! 蜂のひと刺しは、もうこりごりだからねっ! 私が今の地位に昇進するまで、何回、刺されたと思ってるんだっ!?」
「いや、そこまでは存じ上げませんが…」
「五回以上だよっ! 腫れが引くまでどれだけ辛抱したことか、ぅぅぅ…」
 事務次官は突然、よよと泣き始めた。
「だ、大丈夫ですか!? 次官っ!!」
「ぅぅぅ…泣きたくなかったら、根回しを十二分(じゅうにぶん)にすることだっ! いやっ! それでもダメだな…。最低でも十三分(じゅうさんぶん)っ! 十分(じゅうぶん)くらいではダメなんだよっ、君っ!」
 分かっとるのかっ! という顔で次官は黒丸をチラ見した。
「はっ!!」
「これから私が、そのノウハウを言うから、早くメモりなさいっ!」
 次官が手短に話すノウハウを黒丸は必死に手帳鉛筆をナメナメ書き記(しる)した。
 翌年の春、人事異動が内示され、めでたく黒丸は白丸になった。根回しをやり過ぎた挙句、御用になったのである。^^
 足らない根回しや足り過ぎる根回しは、しない方がいい・・というお話である。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (95)トラブル

2022年09月27日 00時00分00秒 | #小説

 トラブルが生じるには、生じるだけの理由がある。その理由を取り除けばトラブルは生じなくなるのだが、その理由を知ろうとする注意が散漫で足らないと、トラブルとなる。トラブルはトラがブルブルと震(ふる)えながら大きく口を開けた感じだろう。顔見知りなら、トラもそう怖がらさないだろうが、一面識もなければ、ガォ~~!! と大口を開かれ、食われることになる。^^
 とある道路である。オリンピックの聖火リレーが走るらしく、至る所で交通規制が実施されている。
「あっ! すいませんねっ! 聖火リレーが走りますんで、アチラの道を…」
「コロナでもやるんですかっ! 東京がロックダウンしないことを祈ってますっ!」
「あっ! どうもっ!」
 ボランティア係員の青年は、内心で、そうだな…とは思ったが、係員ということで同調できず、スルーして暈(ぼか)した。
 聖火リレーは無事に走り去り、事なきを得たが、ボランティアの青年はオリンピックの開催中にトラブルが起きないことを、ただ祈るのみだった。
 トラブルが生じないための対策は、用意周到でも足らない場合が多いから、要注意する気構えが求められる。WARNING[警告]! だ。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (94)作曲

2022年09月26日 00時00分00秒 | #小説

 大作曲家、琴徹也(ことてつや)は新曲を作曲していた。だが、途中までスムーズに浮かんでいた曲想が、どういう訳か突然、途絶えたのである。その後、いろいろと浮かんではくるのだが、今一つ何かが足らないメロディになってしまい、どうも満足出来なかった。
「ダメだな…」
 琴は愛用のギターを置くと部屋を出た。そして応接室へ入ると、テレビのリモコンを何げなく押してみた。映った映像は演歌番組だった。リモコンを押してすぐ、チャンネルも変えず、しかも、放送される時間帯も知らなかったのだから、偶然にしては上手(うま)く出来過ぎている…と、琴は思った。司会のアナウンサーがなにやら話している。耳を澄ませば、次に歌われる曲の紹介だった。
『それでは歌っていただきましょう! 守水かおるさん! ♪予讃線♪ !』
 ♪予讃線♪は、琴が作曲したヒット曲だった。守水の歌声を聴いているうちに、琴の脳裏に積乱雲の湧き出るがごとく、俄(にわ)かに途絶えていた曲想が閃(ひらめ)いたのである。
「お、おおっ!」
 ひと声、小さく呟(つぶや)くと、琴は自室へ足早で引き返した。そして十数分後、のちに大ヒットする新曲♪吉野川♪が完成したのである。
 このように、足らない部分の閃きは、何でもない小事から突然、湧くこともあるようです。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (93)休息

2022年09月25日 00時00分00秒 | #小説

 休息が足らないと疲労や病気の原因になるから注意が必要だ。息を休める訳であり、止める訳ではない。止めたままでは死んでしまう。^^
 とある山道である。ハイキングコースを男女二人の山登り愛好家が歩みを進めている。急な勾配(こうばい)でもない登りルートである。
「少し行ったところに谷水が湧くいい場所がありますから、そこで休息しましょう!」
「あらっ!? 詳しいわねっ!」
「いつだったか、一度、登ったことがありますから…」
「そうなんだ…。でも確かに、エネルギーの補給は大事よねっ!」
[そうですよっ! 休息は欠かせませんっ!」
「あなたは休息し過ぎなんじゃないっ!?」
「また、そんなことを…」
 二人が笑いながら歩いていると、湧き水の音が聞こえてきた。
「湧き水の音だわっ! それにしても音が小さいわね…」
 湧き水の音にしては、どこか物足らない音である。設置された休息場のベンチに腰を下ろしながら、先輩女性がそのことを指摘した。
「渇水期なんじゃないですか?」
「そうみたいね…。なんか、音が侘(わび)しい」
 二人はブツブツとベンチで語り合いながら休息を取り、自然の癒(いや)しで疲れを回復していった。とはいえ、渇水期の音では、今一つ回復しなかった。
 この(93)のお話も全然、面白くなく、私の反省材料の一つなのですが、何分にも家事が多く、時間の許す限りでの創作活動ですので、ご理解をお願い致します。
 …ということで、休息が足らないと、支障を来たす・・という一例のお話でした。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (92)インパクト

2022年09月24日 00時00分00秒 | #小説

 最近は便利になって、ボルト一つを外(はず)すのにも手を使わず、インパクト・ドライバーで簡単に外せるのである。手だと締め付けが足らない場合とかで、緩(ゆる)んで外れたりする。インパクトなら締め付けが足らないということはないから、滅多なことで外れる心配はない。ただ、インパクトで締め付けた場合は、手で外すのが厄介になることもあるから軽く、軽~~ぅく締める注意が必要となる。
 とある町のとあるベーカリーである。朝から焼きたてのパンが店頭に並べられる。開店を待つかのように店の前は黒山の人だかりだ。ここのパンは美味しい・・と評判が広がり、今では開店約二時間で完売してしまう繁盛ぶりだ。この日も黒山の人だかりが開店前から出来ていた。
 並ぶ二人の奥様の会話である。
「すごい人ですことっ!? 」
「ここのパンは、すっごくインパクトがあるでしょ?」
「奥さまっ! それも言うならボリュームっ!」
「もちろんボリュームもありますわ。加えて食感にインパクトがねっ!」
「それは言えますわね、ほほほ…」
 寒い朝である。二人の奥様はボリュームとインパクトを兼ね備えた厚着で並んでいた。
 対するコトに備えるには、ボリュームがあってもインパクトが足らないと物事は首尾よくいかないように出来ているのである。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (91)終息

2022年09月23日 00時00分00秒 | #小説

 物事は終息しなければ一件落着しない。新型コロナ対応も同様で、蔓延(まんえん)防止の予防措置だけでは終息しない。考えが足らない国トップの甘さは、非常に危惧(きぐ)されるところだ。国連の事務総長さんが、もはや戦争状態にある・・と明言された事実を見ても、すでにウイルス対人類の戦いは現実に始まっているのである。映画のターミネーターならいいのだが…。^^
 二人の男がとある喫茶店で話している。お邪魔しないように、少し覗(のぞ)いてみることにしよう。
「もう、そろそろ返してくれると思って電話したんだ。それがなんだっ!? もうひと月待ってくれっ!? 呆(あき)れてものも言えん…」
「言ってるじゃないか…」
「なにっ!?」
「いや、だからさっ! 月一割の利息は、こうしてチャ~~ンと返してるじゃないかっ!」
「それは当然だろっ! これじゃ、いつまでたっても終息せんっ!」
「まあ、そう言いなさんなっ! 国だって俺と変わらんのだから…」
「大きく出たなっ! 国とお前か…。そりゃ、話が違うだろっ? …同じかっ!」
「そうさっ!」
「まっ! その国に俺も住んでんだから、もう半年、待ってやるよっ!? 利息はきっちり、もらうぜっ!」
「はいはいっ! 二次国債でなんとかします…」
「二次国債か…。これじゃ、終息は期待薄だな、ははは…」
 貸し手の男は諦(あきら)め顔で暗く笑った。
 終息することで、次の段階へと進めるのである。初段から飛び越えて九段には、すぐなれない。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (90)運動

2022年09月22日 00時00分00秒 | #小説

 運動が足らないと、人は支障(ししょう)を来たす。とくに年老いてからは尚更(なおさら)だ。私なんか最近、頓(とみ)にそのことを思い知らされている一人である。と、いうことで、でもないが、今日は運動が足らないとどうなるか? を描いたお話である。^^
 とある競技場である。柔道のとあるアスリートが大会に向けた練習[オリンピックではありません^^]をしている。世界的に流行した感染騒ぎもようやく終息し、世界大会は盛り上がりの気配を見せている。
「そうそう! なんだ、やれば出来るじゃないかっ!!」
 強化コーチが乱取り中の選手に大きな掛け声をかける。選手は一端、動作を止め、笑顔でコーチにお辞儀する。
「有難うございますっ! しかし、どうしてなんですかねっ!? あれだけ出来なかったのに…」
「ははは…そりゃ~簡単だよっ! 騒ぎが終息したからさっ! 運動も心が集中できる環境だなっ!」
「なるほどっ! それで、ですかっ!?」
「ああ、それで、さっ!」
 乱取りの後輩は、分かりきってるじゃないかっ! 早くしてくれっ! …とは思ったが、そうとも言えず、黙って二人の話を汗を拭きながら聞いていた。
 運動は心が集中できれば、実力を発揮できるようである。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (89)十六日目

2022年09月21日 00時00分00秒 | #小説

 立行司さんが渋い声で『この一番にて、千秋楽にござりますぅ~~~』とかなんとか呼び上げられ、この場所の最後の一番も終わり、『もう、終わりか…』という冷(さ)めた気分で観客や聴衆は土俵上の両力士を見守る。そして、両力士の取り組みが行われ、結果は一差をつけていた力士が破れ、相星の優勝決定戦となる。すると、立行司さんが、『優勝決定戦にござりますぅ~~』とかなんとか、ふたたび渋い声を聞かせてくれる。明日は? と考えれば、十六日目というのはないようだ。誰が決めたのかは知らないが、大相撲は十五日と決まっているらしい。^^ 十五夜の満月はあっても、十六夜(いざよい)の月はない訳だ。欠けるから・・とも考えられるが、今一つ、何かが足らない気分でシックリとはしない。^^
 国技館を出ていく、とある二人の観客の言葉だ。
「明日は十六日目だな…」
「ああ、俺達はな…」
 一般社会は十六日目以降もズゥ~~っと続き、休みはない訳である。^^

                   完


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