水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分からないユーモア短編集 (100)肩書き

2020年10月31日 00時00分00秒 | #小説
 人々、特に我が国の国民は、どういう訳か肩書きに弱い。^^ それが何故(なぜ)かは分からないが、とにかく弱い。○○大学の教授・・と聞いた瞬間、あっ! お偉い方で知識人なんだなぁ~…と思ってしまう傾向が強いのである。まあ、私の場合は少しもそうは思わないのだが…。^^ 何故かといえば、その人のことをよく知らないからだ。何らかの接触があり、古くからその人となりを知っていれば、肩書きなどなくても尊敬する。皆さんは、どうでしょう?^^
 急成長した、とある小さな会社の部長室である。部長が机の内線電話で話をしている。
「なにっ! 副部長が今日は休んどるだとっ!!」
『はっ! 生憎(あいにく)体調を崩されたとかで、さきほど奥様からお電話が…』
「だったら、部長代理を呼びなさいっ!」
『はっ! 部長代理は、つい今し方、契約先の会社へ向かわれましたっ! すみませんっ!』
「なにも君が謝(あやま)るこたぁ~なかろう」
『はあ…』
「部長代理補佐がおるだろっ!」
『はっ! 部長代理補佐は昼食に出られました』
「課長はっ!!」
『はっ! 課長もご一緒です…』
『だったら、副課長はっ!!』
『はっ! 副課長も、課長代理も課長代理補佐もご一緒です…』
「まだ何も言っとりゃせんじゃないかっ! 先に言うなっ! まあいい…。ということは、係長兼社員の君、一人かっ!」
『はっ! そのようで…』
「じゃあ、君、すぐ部長室へ来てくれたまえっ!」
『いや、いけません、部長!』
「どうしてだっ!!」
『電話番が誰もいません!』
「…」
 部長は沈黙し、内線電話をガチャリ! と切った。
 よくは分からないが、むやみに肩書きを増やしたとしても、なんの意味もないということだ。要は、肩書きは自己満足のためにある・・という結論になる。^^

                    完

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分からないユーモア短編集 (99)もう一息(ひといき)

2020年10月30日 00時00分00秒 | #小説
 胸突(むなつ)き八丁(はっちょう)とも言われるが、目的に到達するまであと一歩のところが、もう一息(ひといき)と呼ばれる到達点だ。この、もう一息が、なかなか手強(てごわ)く、成否(せいひ)の鍵を握る重要なポイントになると言っても過言ではない。成否のどちらに転(ころ)ぶかは、人や場合で異(こと)なり、どうなるか分からない。そういう意味で考えれば、もう一息は成否の分かれ道とも言えるだろう。もう一息でどうするか? ここが当事者に問われる訳だ。この短編集も100話まで、もう一息のところへ、ようやく近づいた。最後まで完成させたいと思っている。^^
 オリンピックに向け、猛特訓を続けるとあるスポーツの合宿場である。
「君(きみ)っ! もう一息じゃないかっ! 頑張ろうっ!!」
「はい、コーチ!」
「しかし君の場合、もう一息が遠いなっ!」
「はあ、やることはやってんですがっ!」
「いや! もう一息が遠いところを見ると、もっとやらないと一息つけないんじゃないかっ!?」
「なにせ、世界新ですからねっ! やってはみますが…」
「やってはみますじゃなくって、やってみます! いや! やります! だろっ!?」
「はい、やりますっ!」
「それじゃ、もう一回やってみてくれっ!」
「はい、コーチっ!!」
 このように、オリンピックに向けた世界のトップを目指し、様々な種目で、もう一息は日々、続けられているのである。ただ、これを書いている今時点で、その成果のほど[メダル数]は分からない。^^

                    完

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分からないユーモア短編集 (98)三位決定戦

2020年10月29日 00時00分00秒 | #小説
 皆さんもよくご存じかと思うが、スポーツ競技では順位を決める決定戦というものがある。取り分け三位決定戦は、惜しくも決勝進出を逃(のが)した選手やチームが、ぅぅぅ…せめて三位はっ! と悔(くや)し涙で臨(のぞ)む失地回復(しっちかいふく)のリベンジ試合である。四位でも十分、凄(すご)いのだが、どういう訳か一位~三位はメダルが首から掛けてもらえたり、トロフィーやカップを頂戴できるからか? は、よく分からないが、注目されている。^^
 とある世界選手権が開催されている会場である
アナウンサーと解説者が語らなくてもいいのに、しきりと語っている。^^
「どうなんでしょうね?」
「えっ!? なにがですっ?」
「いや…やはり決勝戦じゃなく決定戦に回ったというのは体調とかでしょうかっ?」
「さあ? 私に訊(き)かれましても…」
「それはまあ、そうです…」
 アナウンサーは一瞬、たじろいで黙(もく)した。すると、悪いと思ったのか、解説者が助け舟を出した。なにせ、全国ネットで実況中継されている番組である。話の棒を折る訳にはいかない。
「三位決定戦でも十分、価値はあると思いますよっ! 私はっ! それに世界の選手相手に、ここまで勝ち上がったんじゃないですかっ! 大したもんですっ!」
「そうですよねっ! そうですそうです、そうですともっ!」
 萎(しお)れたアナウンサーの声が、ふたたび、シャキッ! と回復した。
 よくは分からないが、三位決定戦に出られるだけでも大したものだということに、疑う余地はないだろう。^^
 
                    完

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分からないユーモア短編集 (97)闘志(とうし)

2020年10月28日 00時00分00秒 | #小説
 よく、闘志(とうし)を燃やす・・とか言う。現代的なら、ファイトっ! ファイトっ! なのだろうが、よくは分からないが、ともかく闘志を燃やすことは生きていく上で重要な前向き思考なのは確かだ。もはや日本語になりつつあるアグレッシブという英語も、その気分を表(あらわ)したものである。まあ、闘志を燃やしたからといって、私のように必ず勝てたり成就(じょうじゅ)するものではないが、得心(とくしん)でき、悔(く)いが残らないのがよかった…と自負している。^^
 いよいよオリンピックが間近に迫ってきたとある競技場である。短距離選手二人が息を切らせながら、語らなくてもいいのに語り合っている。どうも走り込んだあとのようだ。
「やはり闘志がものを言う!」
「いや、闘志はものは言わんが、闘志は必要だっ!」
「あ、ああ…」
「闘志出し過ぎて故障したホニャララもいるがなっ!」
「故障しないくらいの闘志だなっ!」
「ああ、そうなるな…。闘志があっても結果がよくなるとは限らんが…」
「あ、ああ…」
 よくは分からないが、闘志の出し過ぎは故障するから注意が必要なようである。^^

                    完

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分からないユーモア短編集 (96)流れのままに

2020年10月27日 00時00分00秒 | #小説

 物の流れと同じように人の動きにも流れがある。そんなこと言ってると、時流(じりゅう)に取り残されるよっ!! とかなんとか言われるやつだ。^^ この流れは当然、私達の目には見えず、分からない。今日は分からないままに綴(つづ)るそんな当たり前のお話である。^^
 とある公園の一角である。一人のホームレスに警官が何やら話をしている。
「君ねっ! こんなところで寝ると風邪ひくよっ!」
「…ああ、いつぞやの旦那(だんな)でしたか。あの折りはお世話になりました」
「別にお世話したつもりはないが、君の話に、つい絆(ほだ)されてねっ!」
「私、旦那を絆しましたかっ!? 私もまだまだ捨てたもんじゃないっ!」
「ははは…まあ、ここで寝てゃ、捨てられたようなもんだがねっ! で、どうして、こうなったの?」
「あっ! まだそこまで話してませんでしたっ? 実は私、時流に取り残されまして…」
「と、いうとっ?」
「私ね、これでも社長やっとったんです」
「ほう! そりゃ大したもんだっ!! それが、どうして?」
「ぅぅぅ…旦那っ! それが聞くも涙、語るも涙の物語でしてねっ!」
「ほう!」
「長年の取引先ということもあり、流れのままに取引しておった会社の手形が焦(こ)げつきましてねっ! ぅぅぅ…」
「そ、それは、お気の毒なっ! ぅぅぅ…」
 警官ももらい泣きで泣き崩(くず)れた。
 このように、流れのままに生きていると辛(つら)い結果を招(まね)くから、注意が必要となる。^^

                    完


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分からないユーモア短編集 (95)弄(いじく)る

2020年10月26日 00時00分00秒 | #小説
 ある程度のことは、しよう! とすれば思いどおり[如意]になるが、全(すべ)ての事象が思いどおりになる訳ではない。すると、人は自分の意思を貫(つらぬ)こうと、しなくてもいいのにコチャコチャと弄(いじく)るのである。むろん、こりゃダメか…と、早めに見切りをつけられる冷静な人もおられるが、見切りをつけられない諦(あきら)めの悪い人は、さて、どうしたものか?… と解決策も見いだせないまま、無意識で手を動かされるのである。^^ 結果、思いどおりにならないばかりか、それ以上にダメにされ、最悪の場合はお釈迦さまのご誕生となる訳である。お釈迦さまのご誕生はお目出度(めでた)いが、物事がダメになるのは、少しもお目出度くないだろう。^^
 とある家庭の朝である。ご主人が、しなくてもいいのに朝から破れたTシャツの補修を始めた。ほんの少しの綻(ほころ)びだったから、すぐ済むだろう…と軽い気分で針と糸を出したのだ。ところが、そうは問屋が卸(おろ)さず、小売商が困った・・のではなく、ご主人が困り果てた。針に糸が通らないのである。ご主人は何度も針に糸を通そうと試(こころ)みたが、思うに任(まか)せず通らない。ご主人はついにイラッ! と切れ、針を弄り始めた。そしてついにチクッ! と針を指に刺してしまったのである。痛っ!! と声を出したご主人は階下にある救急箱のところへと急いで降りようとした。それが、いけなかった。バタバタ…と下りたため、階段で滑(すべ)ったのである。運よく下に近かったから軽く腰を打ち、背中を擦(す)り剥(む)く程度でコトは済んだ。よって、針糸通しは中断し、Tシャツは綻びたまま、今か今かと奥さんの補修を待つ状況が続いている。^^
 よくは分からないが、下手(へた)に弄ると、物事はより悪い方向へ進むようだ。皆さん、ご注意をっ!^^

                    完


 

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分からないユーモア短編集 (94)いつの間(ま)にか

2020年10月25日 00時00分00秒 | #小説
 これっ! ということを決めていないと、いつの間(ま)にか思ってもいなかったことをやっている場合がある。あれっ? 俺[私]、なぜこんなこと、やってるんだろう?[やってるのかしら?]などと、ふと自分の行動を訝(いぶか)しむことはお有りにならないだろうか? 実は、私も時折りあるのだ。要は、思いつきの深慮に欠ける軽はずみな行動なのだが、時として、失敗することがあるから要注意が必要だ。なぜ、そんな軽はずみな思いつきの行動をするのか? は、よく分からない。人によって多い少ないの差はあるだろうが、人は大よそ、そんな゜動きをするようだ。ただ、ボケて動くような場合は含まない。^^
 とある家庭の居間である。母親が学校から返されたテストの答案用紙を見ながら子供を叱(しか)っている。
「また下がってるじゃないっ! この前は76点だったわよねっ!!」
「わぁ~~っ! よく覚えてるねっ!」
「私を褒(ほ)めてどうすんのよっ!」
「ごめんなさい…。でも、ほらっ! こちらは上がったよっ!」
 子供は自慢げに別の科目の答案用紙を見せた。
「あらっ!? いつの間にか…」
 母親は感心しない。子供としては、ここは褒めてよっ! 気分である。
「ねっ!」
「これはこれっ! で、こっちはこっち!!」
「いつの間にか下がって、上がったんだからプラスマイナス、ゼロぉ~~!!」
「そんな訳ないでしょ!!」
「まあまあ、そう興奮されずに…」
「もうっ!!」
 大人びた子供の言葉に、母親は呆(あき)れながらキッチンへと撤収(てっしゅう)した。
 いつの間にか・・は、知らず知らず近づくから、よくも悪くも侮(あなどれ)れないのである。^^

                    完

       

 

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分からないユーモア短編集 (93)めげない

2020年10月24日 00時00分00秒 | #小説

 物事はどうなるか分からないから当然、失敗は起こる。だが世の中を生きぬくには、それにめげない不屈(ふくつ)の闘志(とうし)が必要だ。とかなんとか言っても、現実は人々を諦(あきら)めさせる社会となっている。例(たと)えば国会がそうで、軍国主義ではないものの、長期の独裁政治が蔓延(はびこ)っている。水が澱(よど)めばプ~~ンと臭(にお)い、腐る(くさ)訳だ。水は綺麗(きれい)なうちに氷(こおり)にするか、流し続けねばダメなのである。まあ、そんな例(たと)えはともかくとして、腐らずめげず、話を続けることにしよう。[下手(へた)なダジャレです。^^]
 どこにでもありそうな、とある普通家庭である。この家庭は確か…いつやらの短編集にも登場しているが、まあそんなことは、どうでもいい。^^
「あなたっ! もうお昼よっ!!」
「いや、もう少しだから、ちょっと待ってくれっ!」
「ったくっ! そんなこと言って、もう12時半よっ!!」
「分かってるっ!」
 夫婦の雲行きが怪(あや)しいのには訳がある。夫がついうっかりガラス戸を倒して割ってしまったのだ。目立たないところだったのが災(わざわ)いして、夫はなんとかしようと障子紙を貼って紛(まぎ)らわそうとした。しかし、その作業が滞(とどこお)り、昼どきになったのである。夫の修理の才の無さが原因だった。だが、それに気づかない夫は昼どきにもかかわらず、なんとかしよう! と、めげないで作業を続けていたのである。それからも小一時間が経過したが、ついにどうにもならなかった。夫は、フゥ~~っと溜め息を一つ吐(つ)くと、作業を断念した。
 よくは分からないが、めげない心も時と場合によりけり・・ということになる。^^

                   完


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分からないユーモア短編集 (92)追う

2020年10月23日 00時00分00秒 | #小説

 誰しも追われるよりは追う方がいいに決まっている。^^ 私も職場で上司に、『仕事を終え!』と言われた記憶がある。警察関連の事件なら当然のことだが、普通一般の事柄(ことがら)でも同じことが言えるようだ。よくは分からないが、どうも追う側の気分と追われる側の気分では、心にかなりの±[プラスマイナス]があるからだと解される。私も追う側の人間になりたいのだが、書きものや家事に追われ、さっぱりだ。^^
 とある有名作家の書斎である。
『先生~~っ!! 早くしていただけませんかねぇ~~!!』
 番記者は腕の時間を睨(にら)みながら、応接室で喚(わめ)くように言い放った。
「君ねぇ~!! そんなに追うこたぁ~ないだろっ!! 書こうにも書けないじゃないかっ!!」
 作家も負けてはいない。ペンを置くと頭の毛を掻き毟(むし)りながら喚き返す。
『はい、はいっ!! 分かりました、分かりましたよぉ~~だっ!!』
「君っ!! 僕を馬鹿にしてんじゃないだろうなっ!!」
『いえ、けっして!!』
「だったら、静かに待っていてくれたまえっ!!」
『はい、はいっ!!』
「はい! は、一度っ!!」
『はいっ!!』
 それから小一時間、原稿はようやく完成を見た。
 よくは分からないが、物事は追うことで成就(じょうじゅ)するようだ。^^

                   完


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分からないユーモア短編集 (91)比較

2020年10月22日 00時00分00秒 | #小説

 数(かず)では表せないから、よく分からないが、我が国が第二次大戦後、よくなったか? あるいは悪くなったか? を比較してみることにした。やっぱりアンタは暇(ひま)な人だ…と思われる方も大勢おられると思うが、これはこれで重要なので、真剣に比較してみたい。別に竹光(たけみつ)でもいいよ…と思われる方は、美味(おい)しい焼き豆腐の味噌田楽を肴(さかな)にビールでも飲んでいてもらっても、一向に構わない。[真剣と竹光の刀ギャグです]^^
 とある老夫婦の会話である。
「どうなんだろうな?」
「なにがっ?」
「戦後、この国はよくなったのかねぇ~?」
「そら、焼け野原からこんないい暮らしが出来るようになったんだから、よくなったのよっ!」
「そうかい? 俺にはそうは思えない」
「どうして?」
「確かに生活程度を比較すりゃよくなったよ。なったけど、悪くなったことも多いぜっ!」
「例(たと)えばっ?」
「例えば、悪質な事件が増えたとかポイ捨ててもなんとも思わない人が増えたとか…」
 そのとき孫娘が現れ、話に加わった。
「ポイ捨ては以前からあったでしょ?」
「いや、物資がなかった時代はなかった。拾う人は多かったが…。バ
タ屋なんて商売もあったんだぜ」
「…バタ屋?」
「ああ。拾った煙草(たばこ)の吸殻(すいがら)、そうそう! 確か…湿気(しけ)モクとか言ってたなっ! そいつの紙を取って煙草の葉を天日干ししたあと、また半紙で巻き直して、一本、いくらとかで売る商売だ」
「ふぅ~~ん…」
 孫娘は聞き流してスゥ~っと二人から消えた。
「まあ当時はフィルターがなかったから、捨てられても自然と消えちまったが…。今はフィルターがゴミでいつまでも残るからなっ! この点だけでも、比較すりゃ、かなり悪くなってるっ!」
「あなたの髪の毛も当時と比較すりゃ、かなり悪くなってる…」
「んっ!? ああ、まあな…」
 このように比較する内容は身近でよく分かるものから、社会のよく分からな事柄(ことがら)まで、様々(さまざま)ある訳だ。^^


                   完


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