水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分からないユーモア短編集 (39)夢の正体

2020年08月31日 00時00分00秒 | #小説

 よく分からないものの一つに夢がある。その正体は、いったいどういったものなのか? という疑問を紐(ひも)解(と)いてみたい。別に紐解かず、括(くく)っておいて貰(もら)ってもいいよっ! という方もおられようが、ここでは紐解くことにしたから、お気を悪くされないよう、冷酒を嗜(たしな)みながら、美味(おい)しい料理でも摘(つま)んでいて欲しいと思う。^^  正夢(まさゆめ)だった! などと、あとあと言われる方がおられるが、夢は不思議な存在で、夢の正体を探(さぐ)るのは並大抵(なみたいてい)のことではない。科学的には、よく眠れない状態だと見やすい・・などと説明されるが、こういう夢を見ますよっ! と、予言できないのが夢の正体だ。今日は、そんなお話である。
 とある普通家庭の朝である。息子が父親と、ばったり、洗面所で出会った。
「パパ、おはよう!」
「ああ、おはよう! ははは…流石(さすが)に今朝(けさ)は早いじゃないかっ!」
「よく眠れたからねっ! パパも早いねっ?」
「ああ、どうもよく眠れず、嫌な夢で起こされたんだ」
「そうなの? どんな夢?」
「実は…いや、それは言わないでおこう」
 父親は息子が受験で落ちた夢を見たのだ。しょげて帰った息子が列車に飛び込み、自殺するという惨憺(さんたん)たる夢だった。しかも受験する日が今日だったから、余計に言えなかったのである。
「今日だったな? 受験は?」
「そうだよ。それがどうかしたの?」
「いや、なんでもない。よく眠れてよかったじゃないか。頑張れよっ!」
 それ以上は語らず、いつもと同じように朝食を済ませ、父親は会社へと出勤した。当然、息子も受験校へと向かった。  日は巡り、受験発表の当日が来た。父親としては、悪い夢を見た蟠(わだかま)りが記憶に残っているから、気になってはいたが、外見では知らない態(てい)を装(よそお)い続けた。そして、息子から電話が入った。
『ママ、合格したよっ!』
「そう! よかったわねっ!! パパ、…だって!」
 父親は知らない態を覆(くつがえ)し、知っていた態へと急変した。
 分からない夢の正体とは、まあ、この程度の当てにならないものなのである。^^ 
 
                               


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分からないユーモア短編集 (38)体質

2020年08月30日 00時00分00秒 | #小説

 よくは分からないが、どうもその人その人に合った体質があるように思える。好き嫌いもその一つで、こんなモノが? と他人が思うモノが好きだったり、嫌いだったりするのは、やはりその人の体質によるものではないか? ということだ。異性の好き嫌いだってその一つである。よくもまあ、あんなお多福がっ! とか、あんなひょっとこが…と他人が思ったとしても、本人の体質がその異性を好んでいるのだから、どぉ~~~しようもない。^^
 とあるデパートである。まだ結婚して日が浅い、熱々(あつあつ)のカップルが買い物をしている。仲、睦(むつ)まじく物色している二人の傍(そば)へ、近寄らなくてもいいのに若い女性店員が近寄ってきた。
「何をお求めでしょう?」
「えっ!? ああ、揃(そろ)いのセーターを、と思って…」
 少し恥ずかしかったのか、夫は笑って語尾を暈(ぼか)した。
「…これなんか、いかがでございましょう? お値段も手頃かと…」
 店員は価格の安そうな揃いのセーターを示した。店員の軽率なこの判断が、妻の気分を逆撫(さかな)でした。体質が気分を逆撫でしたとも言える。妻としては貧(まず)しく見られた…と、カチン! ときたのである。
「いくらなんでも、これは安過ぎないっ!」
「はあ…でも、お似合いでございますよっ!」
 店員も負けてはいない。意固地(いこじ)に言い返す。これも体質が言わせた言葉で、『ふんっ! 昼間からイチャイチャとっ! やってらんないわっ!』くらいの気分だ。
「そうかしら?」
「店員さんが似合うって言ってられるんだから、似合うんだよっ! これにしよっ!?」
「だって…」
「ははは…安くて似合うなら、いいじゃないかっ!」
 夫は融和(ゆうわ)を旨(むね)とする体質らしく、素直に応じた。
「そおう? なら…」
 渋々(しぶしぶ)ながらも妻は夫に従(したが)った。♪妻は夫に従いつぅ~~夫は妻をぉ慕(した)いつつぅぅ~~~♪だ。…んっ? というのは検索した結果、私の錯覚(さっかく)で、正確には♪妻は夫をいたわりつぅ~~夫は妻を慕いつつぅ~~~♪なのだが…。^^
 孰(いづ)れにしろ個人の体質は、分からない環境や諸事情によって抑圧(よくあつ)される・・という結論が導(みちび)ける。^^ 
 
                               


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分からないユーモア短編集 (37)運命

2020年08月29日 00時00分00秒 | #小説

 運命・・こればっかりは、生きている間にどう変わるか分からないから怖(こわ)ぁ~~い。^^ まあ、怖いといっても、幽霊なんかのビクつく怖さではないから安心されるとよい。^^  運命は英語で言えぱDESTINY[デスティニィ]だが、目に見えるものではなく、長年経って、『君と僕は、こうなる運命だったんだね…』などと、後々(のちのち)になって、しみじみ思えるものなのである。こうなる運命とは、どんな運命なのか? は私には分からない。^^   運命がよくなった場合は感謝し、悪くなった場合は呪(のろ)うのが人である。だが、結局のところ、自業自得(じごうじとく)な面も多々あるのだ。それが私達には分からない運命というものなのである。^^
 とある音楽事務所である。
「君! よかったなっ! いい曲じゃないかっ!」
「有難うございますっ!」
「こんないい曲に、この時期、巡り合うなんて、ほんと、ついてるよっ! 君の運命は素晴らしいっ!」
「いい先生にお出会い出来たのも…」
「そうだな。実は、も一人いたそうだ。この曲、早くもミリオンセラーだと、さっき携帯が入ったよっ!」
「社長っ! ぅぅぅ…辞(や)めずに頑張った甲斐(かい)がありましたっ!」
「泣く奴があるかっ! ぅぅぅ…そうだなっ!」
 所属プロの社長と演歌歌手、遅咲桃花(おそざきももか)は手を取り合って嗚咽(おえつ)した。去年のCD売り上げ枚数が620枚だったこともある。^^
 こんな分からない結果を齎(もたら)すのが運命・・といえるだろう。^^ 
 
                               


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分からないユーモア短編集 (36)風情(ふぜい)

2020年08月28日 00時00分00秒 | #小説

 よくは分からないが、世界の国々にはその国独特の風情(ふぜい)というものがある。他の国の人々からすれば、その風情はどこか異質で、自国にはない味わいが感じられるに違いない。最近の我が国は? と観点を戻(もど)せば、どこか西欧化され、自身の文化を失(な)くしつつある感がしないでもない。その国独特の風情は、コレっ! と指摘できる形ある物ではなく雰囲気的なものだから、まあ仕方がないとも思える。^^ 今日、お話するユーモアも、そんなお話だ。^^
 とある市街である。どこにでもいそうな二人の老人AとBが真夏の強い陽射しを避(さ)け、冷房が利いた喫茶店で話し合っている。コーヒー一杯で三時間がいい。^^
「最近は、この辺(あた)りも風情が消えましたばいっ!」
「最近とは、もはや言えんくらい前からでっしょ…」
 BはAの振りに嫌(いや)みで返した。
「はあ、それはまあ、そげですが…。あの頃は、まだ蛍(ほたる)が舞い、蝉(せみ)も飛びよりましたっ!」
「かなり前ですばい…」
 BはAの話に、あんたの話も風情がなかっ! とは思えたが、そうとも言えず、右から左へと聞き流す態(てい)で軽く応じた。
「はあ、それはまあ、そげですが…。あん頃の風情は、戻(もど)らんがでしょうか?」
「無理ですばいっ!」
 BはAに、それは無理だっ! と、はっきり言い切った。
 一度、失(な)くされた風情は、自然と同じく回復が非常に難(むずか)しい。それが私達には分からない、幽霊のような風情の存在なのである。^^
 
                               


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分からないユーモア短編集 (35)死後(しご)

2020年08月27日 00時00分00秒 | #小説

 生前と同じく、死後(しご)がどうなるか? は誰にも分からない。だから私達にとって、死後は最(もっと)も怖(こわ)い世界となる。どうなるか? が分かっていれば、今の世に生きることが馬鹿馬鹿しくなるだろうし、空(むな)しくなるに違いない。まあ、ある意味では安心出来るのだろうが…。^^
 二人の男が話している。
「入川(いりかわ)、亡(な)くなったんだって!?」
「ああ、らしいな…」
「そうか…、また物入りだっ!」
「どうしてっ!?」
「包まん訳にはいかねぇ~だろうがっ!」
「別にいいだろう。知らない態(てい)にしてるぜ、おいらはっ!」
「そうか…。俺も知らねぇことにしておくかな…」
「そうしろ、そうしろっ! 外国じゃ、そんなこたぁ~しねえそうだっ!」
「らしいな。まあ、そのかわり、チップってぇ~のがあるっ!」
「ははは…チップは小銭(こぜに)だっ!」
「ああ、そうだった、そうだった。ははは…」
『チェ! なにが、ははは…だっ!!』
 それを聞いていた死んだ入川は、腹が立ったから、手持ちのあの世線香をポキリと折り、二人の鼻をコチョコチョと弄(いじく)った。堪(たま)らず二人は、くしゃみをした。
「フィ! フィ! …フィックション!!」「ハクション!!」
「いけねぇ~やっ! また、花粉症のやつ、返ってきやがったぜっ!」
「違(ちげ)ぇ~ねぇっ! ははは…」
「ははは…」
『なにが、ははは…だっ! ったくっ!!』
 腹が立った入川は、ふたたび二人の鼻をコチョコチョと弄った。
「フィ! フィ! …フィックション!!」「ハクション!!」
「いけねぇ、いけねぇ~!」
 二人は慌(あわ)てて、その場から去った。
『ざまぁ~みろってんだっ!!』
 溜飲(りゅういん)を下げ、入川はあの世へと舞い戻(もど)った。
 よくは分からないが、どうも花粉症は死後の人々の悪戯(いたずら)によるもの? という新しい仮説が浮かんでくる。死後? 四(し)の五(ご)の言わないっ! と窘(たしな)めるお方も中には、おられる。^^ 

                               


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分からないユーモア短編集 (34)善人と悪人

2020年08月26日 00時00分00秒 | #小説

 善人と悪人を見極(みきわ)めるのが困難な時代に立ち至ってる。善人だな…と思っていた人物が、実は相当な悪人だったり、あいつは悪人だぜっ! と決めてかかっていた人物が、実は社会悪をやっつける正義の味方だったり・・と、分からないのである。今日はそんなお話を書いてみようと思う。^^
 とある会社のとある課である。課長による朝礼が課員達の前で行われている。
「そういうことですから、熊肝(くまぎも)通商との取引は、今後、停止し、新たに角鹿(つのじか)物産との取引を優先する方向で臨(のぞ)みたいと思いますっ! 何か、質問はっ?」
「課長!」
「なんです、鮭川(さけがわ)君?」
「僕が知ってる熊肝の社員は善人が多いですよっ!」
「ははは…鮭川君。いくら社員の多くが善人でも、会社の上層部が悪人だったらどうなる?」
「ダメですよねっ!」
「だろっ! 現に熊肝の執行役員がインサイダー取引で捕(つか)まってるじゃないか。そんな会社と取引できるかい?」
「はあ、まあ…」
「個人と組織は別の意思を持つんだよ。社員の多くが善人でも、会社組織としては悪人ってこともある訳さっ! 分かった?」
「はい! 分かりましたっ!」
「ということで、我が社は善人企業を目指(めざ)そうじゃないかっ!」
 課員一同から一斉(いっせい)に拍手が湧き起こった。
 善人と悪人の線引きは分からないが、心がけ次第でどちらかへ傾(かたむ)く・・ということになる。^^ 
  
                               


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分からないユーモア短編集 (33)犯罪

2020年08月25日 00時00分00秒 | #小説

 最近、頓(とみ)に訳が分からない犯罪が増えている。身近な例だと、通り魔殺傷事件、放火殺人事件などというテレビドラマ以上の凶悪犯罪があった。通り魔殺傷事件の場合、その犯人は自殺しているから、本人にとっての利益は何もなかったことになる。なぜ、そんな凶悪犯罪が起こるのか? 私には分からないが、一つの仮説を立てれば、魔の犯行・・という見方が成立する。魔が行為者を自殺させ、犯行の隠蔽(いんぺい)を図(はか)った・・という見方だが、これなら事件経緯の辻褄(つじつま)が合うことになる。犯人は自殺しているから、当然、人の警察では歯が立つ訳がない。冥府(めいふ)十三王庁の裁判官の方々にご足労を願って、犯罪者を逮捕していただくしかないのでは? と思われる。^^
 とある普通家庭の居間である。
「僕が買って冷蔵庫に入れておいたソフトクリームがないんだけど、食べたの、お姉ちゃん?」
「馬鹿、言わないでよっ! 私がそんなことする訳ないでしょ! 食べたんじゃないのっ!」
「パパは知らない?」
「ははは…俺は甘党(あまとう)じゃない。一日三合の辛党(からとう)だからなっ!」
「あらっ!? お医者さまに止められてたんじゃないのっ!?」
「んっ? ああ、まあな…。いやいや、だから、俺じゃないって言ってんのさっ!」
「ママは知らないわよっ!」
「じゃあ、誰!!」
「私も知らないよっ!」
「誰も婆(ばあ)ちゃんだなんて言ってないよっ!」
 そこへ離れから犯罪者が、ゆったりと現れた。
「えらく賑(にぎ)やかだなっ! フフフ…何かいいことでもあったか?」
「あっ! 爺(じい)ちゃんがいたっ!」
「儂(わし)? そりゃ、儂はいるぞっ!? それが、どうかしたかっ?」
「僕のソフトクリームがないんだ」
「ソフトクリーム? ああ、あれはニ時間ばかり前、美味(おい)しくいただいた。それがどうかしたかっ!?」
「いや、べつに…」
 事件は解決ではなく消滅した。
 こんな犯罪めかない訳が分からない事件は、ほのぼのとしていて、とってもいい。^^ 
  
                               


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分からないユーモア短編集 (32)今日のところは…

2020年08月24日 00時00分00秒 | #小説

 会話の途中で遣(つか)われる言葉に、今日のところは…という言い回しがある。『納得は出来んが、この場は一端(いったん)、引こうじゃないかっ!』というような相手の立場も一部、認めた日本人的な言い回しだ。納得できないのに引く? というのも、よく分からない気分だが、相手の立場を慮(おもんばか)る古風な日本独特のいい感性である。まっ! 今日のところは…のあとに続く気分は、これ以上、催促(さいそく)しませんが、次はきっちり支払ってもらいますよっ! みたいな言葉に違いない。^^
 とある地方の花火大会を準備する花火師の師匠と弟子の会話である。
「台風が近づいてるようです。どうなんでしょう?」
「…らしいな。長年の勘(かん)だと、今日のところは…だなっ!」
「と、言われますと!?」
「ったくっ!! 勘の鈍(にぶ)い奴だっ! 今日のところは…と言えばっ! なっ!!」
「中止ですかっ!?」
「まあな…。この雲の流れだと、恐らく打ち上げ時(どき)にゃ暴風雨だっ!」
「花火見物相場の話じゃありませんねっ!」
「馬鹿野郎!! こっちだって、打ち上げ相場の話じゃねぇ~やなっ!」
「確かに…」
「こういう場合は、ここじゃどうなってんだっ!?」
「来週に延期・・となってますが…」
「なら、それでいいじゃねぇ~かっ!」
「はいっ! じゃあ、今日のところは…」
「撤収(てっしゅう)だっ!」
「はいっ!!」
 師匠の読み通り、打ち上げ時は大荒れの暴風雨となった。
 よくは分からないが、今日のところは…と引いた方が、その後の展開がいいようである。^^ 
  
                               


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分からないユーモア短編集 (31)置いた場所

2020年08月23日 00時00分00秒 | #小説

 物を置いた場所が分からないとき、あなたならどうされるだろう? むろん、お探しになるだろうが、それでも分からないときは? という場合である。どこかにある・・それは分かっている訳だ。ただ、その置いた場所が分からない・・というだけのことだが、この場合、その対象物の重要性が問題となってくる。今回は落とした場合は除外した話である。^^
 風呂上がりの一人の男が、あられもない姿で家のあちこちを探し回っている。あちらにもない、こちらにもない…と探すが、いっこうにその物は見つからない。
「妙だなぁ~。風呂に入っただろ…で、冷蔵庫から缶ビールを出したと。…そのときは手に持っていたわな。…それから、ああっ!」
 男は前の庭を徐(おもむろ)に見たとき、ふと思い出した。
「そうだ、そうだっ! いい花が咲いたから、ここで花見をしながら一杯飲もうと思ったんだ。んっ? そんなこたぁ~どうでもいい。問題はコップを置いた場所だった…」
 捜査は振り出しに戻(もど)った。そしてまた、あちこちと探し回りかけたが、男の動きがピタッ! と止まった。
「まっ! コップに注(そそ)がないでも…」
 コップはそのうち出てくるだろう…という結論に到達し、男は缶ビールのプルトップを引き抜き、グビッ! と一口やった。冷えたビールは生温(なまぬる)くなっていた。置き忘れられたコップが、『ザマァ~ねぇ~やっ!』と、冷蔵庫の中で呟(つぶや)いた。
 置いた場所が分からないときは、余り長びかさず探すことが肝要(かんよう)となる。^^ 
  
                               


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分からないユーモア短編集 (30)疲れ具合

2020年08月22日 00時00分00秒 | #小説

 自分では疲れたな…と思ってもそれほどではなく、逆に、疲れていないな…と思ったときは、結構、疲れているということがある。この疲れ具合だけは分からないから注意する必要がある。遊び過ぎて疲れた人の場合は、まあ、ご勝手に…とだけ言っておこう。^^
 オリンピックに向けた猛練習が、とあるプールで行われている。コーチと選手の会話である。
「…どうも最後がパテるな君はっ! まあ、昨日(きのう)のレースじゃ金メダルだったが…」
「そうなんですよ、コーチ! 疲れ具合で、ですかねっ!」
「いや、疲れ具合ってこっちゃないさっ! 泳法とスタミナ、それに時間配分だっ! まだ、日はたっぷりあるっ! 一に練習! ニに練習 ご飯を食べたら、また練習っ!!」
「ははは…コーチ、上手(うま)いこと言いますねっ!」
「俺の現役の頃、コーチに、よく、そう言われたもんだっ!」
「そうでしたかっ! じゃあ、僕もコーチになったときは選手にそう言いますよっ!」
「いやいやいや、それはやめた方がいい。少しダサいっ!」
「ははは…」
「疲れは取らなきゃいかんが、記録は疲れ具合じゃない・・ということだっ!」
「はいっ!」
 選手は返事したあと、プールへ勢いよく飛び込んだ。
 疲れ具合とスポーツの記録は、また別ものという話だが、本当のところは、私にも分からない。^^ 
  
                               


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