水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (94)勝ちたい!

2021年11月30日 00時00分00秒 | #小説

 あなたは勝ちたい! 派か? それとも一生懸命! 派だろうか? 訊(たず)ねた方が答えるのが礼儀だから、私から言わせていただけば、私は一生懸命! 派である。どういうことか? といえば、一生懸命やって、結果が負けであれば、それはそれでいい…と思う派ということだ。とかく人は勝つことに拘(こだわ)る。一例をあげれば戦争がある。無論この場合、負ければ多くの犠牲者が出る訳だが、負けることで得る大きな結果もあるということだ。勝てばそれはそれでいいのだろうが、いつまでも争って勝ち続けねばならない。負ければそれがなくなる。修羅から解放される・・ということだ。戦後の我が国である。^^ で、それが分かっていて、どうして勝ちたい! のかをお話する九十四話の四方山話(よもやまばなし)だ。^^
 二人の中年男が語り合っている。話しているのではなく語り合っているのである。^^ 自分の主張で相手の主張をやっつけたいのだ。要は、勝ちたい! のである。
「いやいや、オリンピックは完璧(かんぺき)にやらないと、世界史で未来永劫(みらいえいごう)、恥をかきますよっ!」
「そら、そうでしょうけど、やるっ! と立候補し、決定したんだから、そこは、やるべきでしょ!?」
「やれますかっ!?」 
「そりゃ、やれるでしょうよっ!!」
 意固地(いこじ)に反論し合う二人だったが、内心ではオリンピックなどはどうでもよく、勝ちたい! のは新型コロナ! だった。!
 このように、勝ちたい! 気分は、表面から!は見えない訳である。^^
 九十四話は、勝ちたい! とは? を探る四方山話でした。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (93)いよいよ…

2021年11月29日 00時00分00秒 | #小説

 今日の九十三話は、物事が差し迫り、いよいよ…というときの四方山話(よもやまばなし)をしたいと思う。
 人によって違いはあるだろうが、いよいよ…というときの気分は、誰もが多かれ少なかれ緊迫感を抱くに違いない。ふぅ~~ん、そうなんだ…とお思いの方は、恐らく宇宙人なんだろう。^^
 とある試験会場である。多くの受験生が、今か今かと試験の開始を待っている。試験までには、あと十数分といったところだ。
 穆山(ぼくやま)は持ってきた鉛筆、三十本のどれで書こうか? と思い悩まなくてもいいのに思い悩んでいた。^^
『よしっ! 小っこいコレだっ! …いやいや、コレはチビ過ぎる…じゃあ、これなんかは? …いやいや、コレはデカ過ぎて態度が横柄(おうへい)だっ! となると…コレかっ?』
 穆山が思い悩んでいる間に、試験開始の時間は刻々と近づき、いよいよ…一分前と迫った。そのとき、隣の長椅子で穆山の様子を見ていた受験生が、見かねて差し迫った声を出した。
「ソレで、いいんじゃないですかっ!!」
 恐らく、このまま試験が始まれば、気が散って困るだろう…と思えたに違いない。
「はいっ!!」
 穆山は、素直な声で隣の受験生に従った。そして、チャイムの音とともに、いよいよ…試験が始まった。
 いよいよ…のときは、迷わない沈着冷静さが求められるようだ。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (92)さて…

2021年11月28日 00時00分00秒 | #小説

 ボケェ~~っとしていて、ふと我に返り、さて…と、思うことはないだろうか? 要するに先々のことを何も考えていなかった状況である。何も考えていなかったのだから、コレッ! と思うその後の行動がない訳である。こういう場合の人の行動で、その人の性格が読める・・というのだから、心理学者の考えることは面白い。^^ そんなことで、でもないが、九十二話は、さて…どんな話にしようか? と今、考えている四方山話(よもやまばなし)である。^^
 とある地方の町の一角である。退屈を持て余したご隠居が、さて…と家を出た。だが、家を出たのはいいが、目的という目的がない。要は、ブラァ~~と出たという感じで、何をしようというのでもなく、何のために・・というのでもない。時間は有り余っている訳だから、どうしようと勝手なのだが…。そのご隠居が歩く道路の片隅にダンボール箱に入った年代物の柱時計がホームレス状態で落ちていた。いや、そんなものが落ちている訳もなく、誰かが忘れた・・としかご隠居には思えようがなかった。ご隠居は、どこか自分に似ているような気がした。さて…どうしたものか? と、ご隠居は考えた。このまま放置しておくのも、自分が見捨てられたようで気が引けた。交番へ…とも思えたが、生憎(あいにく)、この近くにはなかった。幸い、ご曇り空だったので、ご隠居は傘を手に家を出ていた。ご隠居は傘を開くと、その落ちていた柱時計の入ったダンボール箱の上にソォ~~っと置き、さて…と考えた。空模様が怪(あや)しくなっていた。さて…と、ご隠居は家へとUターンした。ご隠居が家へ戻り、玄関に入ったとき、雷鳴が轟き、ザザァーー!! ときた。辺り一面がたちまち土砂降りで濡れそぼった。ご隠居は濡れずによかった…と、自分と柱時計を重ね合わせて思った。ふと、ダンボール箱が気になったご隠居は、雨傘を開け家を出た。落ちていた場所へ行くと、ダンボール箱は消えていた。あとに通りかかった誰ぞが交番へ届けたんだろう…と単純にご隠居は思った。ご隠居はふたたび家へと戻った。すると、不思議なことに、持ち帰らなかったダンボール箱が上がり框(かまち)の上に濡れずにおかれていた。辺りを見回すと、開けて置いて帰った雨傘が、それも濡れずに玄関戸に立てかけられていた。ご隠居は、さて…と考えた。これは現実化か? はたまた夢か? と…。^^
 九十二話は、さて…と考えた挙句のこんな四方山話でした。^^

                    完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (91)先を越す

2021年11月27日 00時00分00秒 | #小説

 どういう訳か、人が人の先を越したがるのはどうしてだろう? と今朝早く、考えなくてもいいのに考えた。^^ 先を越すと、いいことでもあるのか? を考えることにした訳だ。確かに、相手が予定することに変化を与えることは出来る。^^ これは非常につまらない発想に思えるが、まあ、考えるのも悪くはないな…ということで、今日の九十一話は先を越す・・というテーマに焦点[ポイント]を合わせた四方山話(よもやまばなし)にした次第である。お笑い下さい。^^
 ソヨソヨと、いい風が流れる図書館前である。ここは静かでいいや…と思いながら、この男、蒲山(かばやま)は図書館へ入った。ふと見れば、いつもは誰も来ていない時間帯のはずなのに、一人の男が静かな佇(たたず)まいで座っているではないか。楚々(そそ)として、何やら書物らしきものを開いてはノートに書き込んでいる。蒲山としては、誰もいない…という、いつもの想定できたものだから、少し要領が狂った。まあ、要領と言っても決めた動きではなく、いつもの決まったワンパターンの動きである。先を越すつもりはなく偶然、自分より先に来ていたのだ…と蒲山は思うことにした。そんなストーカーのような妄想(もうそう)を抱けば、蒲山じゃなく馬鹿山じゃないか…と蒲山は苦笑した。すると、そのときである。
「あの…蒲山さんですかっ!?」
「はあ…」
 その男に急に声をかけられ、蒲山はギクッ! とした。
「あの…これ」
 男から手渡されたもの、それは一冊の手帳だった。
「あっ! 有難うございます」
「昨日(きのう)、入り口に落ちていたもので…」
「そうでしたか。態々(わざわざ)、どうも…」
 やはりこの人は、自分の先を越すつもりはなかったんだ…と、胸を撫で下ろすほどのことでもないのに撫で下ろした蒲山は、いつもの席へと着席し、いつもの本を読み始めた。
 先を越す…と感じるのは被害妄想だという九十一話の四方山話でした。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (90)防止策

2021年11月26日 00時00分00秒 | #小説

 防止策は早ければ早いほどいい。アァ~でもないコォ~でもない・・と議論している間に手遅れとなるケースが多いことは皆さん、先刻ご承知だろう。伝染病、感染症なんかがそうで、今の新型ウイルスなど、その顕著(けんちょ)な一例だ。しかし、その防止策が完璧(かんぺき)なものでなければ何の意味も持たない。例えば、家畜の伝染病が発生したからといって、一帯の殺処分をして済ます・・という方法は完璧な防止策ではない訳だ。その伝染病、感染症を根絶する防止策とは根治させる終息方法なのである。これは現在、人感染している新型ウイルスにも言えることだが、話が難しくなったので、どうも疲れてきた。今日は、これくらいにして眠らせてもらう。…いやいやっ! そんな訳にもいかない。^^ もうひと踏ん張りして、九十話の四方山話(よもやまばなし)をお話することにしたい。^^
 とあるウイルス対策に余念がない厚労省から移管された医学研究所である。
「諮問の答申があり、寄せてもらいました。どうですかっ!?」
「ええ、まあ…」
 はっ!? なにが…? とも言えず、所長は中央省庁から派遣(はけん)された係官に、お茶を濁(にご)した。
「来年はオリンピックですから早急に頼みますよっ!」
「はいっ、分かっておりますっ!」
 そんなこと言われても…と思った所長だったが、そうとも言えず、素直に従った。そのあと、オリンピック開催は人類が終息宣言を出してからの方が…とも思った。心中に、我が国の歴史に禍根(かこん)を残す危険性…という憂(うれ)いが、ふと浮かんだからだ。
「それでは…」
 係官は、役目を終えたら早く帰庁しよう…と内心で思っていた。何事もなく済ますことが次期異動のポストへの布石・・と考えていたからである。これでは防止策は無策となる。現実がこうならないことを望むばかりである。^^
 物事が進捗(しんちょく)しない防止策は、早急さにある・・という提言をし、九十話の四方山話と致します。ご清聴、有難うございました。^^

                    完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (89)優先順位

2021年11月25日 00時00分00秒 | #小説

 同じ人物が同時に他のことをすることは不可能だ。・・をしながら・・をするという行為は、曲芸で三個の球を交互に回したり、料理家が鍋(なべ)に火をかけながら別の材料を刻む・・などのように同じ場所にいれば可能なのだろうが、離れた別の場所なら、私達が暮らす三次元世界では100%不可能なのである。ということは、一人の人物が幾つもすることがあれば、優先順位を決める必要があり、こればっかりは個人の能力差があるから、私からはなんとも言えない。^^ まっ! こんな前置きはともかくとして、今日の四方山話(よもやまばなし)は優先順位について語りたいと思う次第だ。^^
 いつやらの短編集にも登場した男が、DIY[日曜大工]をしているようだが、動かず、ジィ~~っと立ったまま腕組みをしたまま考え倦(あぐ)ねている。考え倦ねるくらいなら、最初から作らなければいいのだが…。^^
「待てよっ! 切って組み立ててから塗った方がいいか、塗ってから切るか・・だが…」
 よくよく考えれば、どちらでもいいように思えるが、その優先順位を違えれば、完成に大きな時間差が生じるのである。この男は塗料を塗ってから切り、組み立てよう…と考えた。優先順位の正解は、切って組み立てたあとに塗料を塗る・・だった。その訳は、塗料は二度塗りが大前提で、一度塗ったあと、乾くまで待たねばならないからである。優先順位の違いによる完成への時間差は明白だった。
 男は塗料を一度塗りしたあと手が止まり、ふたたび腕組みした。
「しまった! 二度塗りを考えなかったぞっ!」
 そうこうしている間に昼になった。
「あなたぁ~~!! お昼よぉ~~!!」
 聞きなれた奥さんの声がした。
「ああ! 今いくっ!!」
 男の作業は、この日もまた完成することなく先延ばしとなった。
 限られた時間で優先順位は大事になる・・という八十九話の四方山話でした。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (88)結果

2021年11月24日 00時00分00秒 | #小説

 (87)で取り上げた原因を探れば、当然、良くも悪くも結果が出る。今日の八十八話は、末広がりでお目出度い・・という訳でもないが、結果をテーマにした次第だ。^^
 (87)の次の日の朝である。昨日の貧乏神が、またスゥ~っと男の前へ現れた。
『どうだったかのう!』
「チェッ! 他人事(ひとごと)だと思って…。コチラは夜から朝と、漏洩検査で掘りまくってたのよっ!」
『で、原因はっ!』
「原因は旧バルブの接続口さっ!」
『そうか…。分かってよかったのう! 少し手伝った甲斐があったようだの…』
「何言ってんだっ! アンタが原因作ったんじゃねぇ~のかっ!? こういうのを、マッチ・ポンプってんだっ!!」
『そんな…』
 居辛(いづら)くなったのか、貧乏神はスゥ~っと男の前から消え去った。
 結果が出れば、良くも悪くも原因者は居良く、居辛くなる訳です。^^
 マッチ・ポンプとは、自分でマッチで火をつけ[原因を作り]、それを自分で消す[原因を隠蔽(いんぺい)して消去する]ということです。他人から見れば、いい人に見えますよね。^^ 今日は、原因を解明したあとに出る、結果の四方山話でした。読者のあなたは、居良い方ですか? それとも、居辛い方ですか?^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (87)原因

2021年11月23日 00時00分00秒 | #小説

 物事には、全(すべ)てに原因がある。この原因を取り除(のぞ)かないと物事がスムーズに流れないように私達の三次元世界は出来ているのだ。風邪(かぜ)を引くには引くだけの、コロナウイルスが蔓延(まんえん)するには蔓延するだけの原因が隠れている訳である。ということで、今日の八十七話の四方山話(よもやまばなし)は原因のお話だ。^^
 とある家庭である。一人の男がブツクサと小言(こごと)を垂(た)れている。
「チェッ! ガス湯沸かし器がつかないから修理してもらったら、今度は水道の漏水かよっ! この家には貧乏神が住みついてんじゃねぇ~のかっ!」
 するとそこへ、どこから現れたのか、貧乏神が現れた。
『そうだよっ! 私が住みついてるから、アンタは困ることが多いのさっ! ははは…』
「ははは…じゃねぇ~よっ! それが分かってんなら、サッサと出てってくれっ!」
『出てってくれって、それには、その原因を取り除かんとなっ!』
「原因が分かってんなら、苦労しねぇ~よっ!!」
『まっ! それも、そうだな…。それじゃ、お世話になったお礼だ。ヒントを一つだけ教えてやることにしよう!』
「ヒント!? そこは、ズバッ! と教えるという…」
『訳にはいかないのさっ! 貧乏神の決まりでなっ!』
「決まりか…。もう、これ以上、原因が分からず、苦しみたくねぇ~からなっ! まっ! 仕方ないかっ!」
『だろっ!?』
「ああ…」
 貧乏神は一つだけ男にヒントを教えると、スゥ~っと音もなく消え去った。
 原因を取り除くのには、原因を取り除くヒントが欠かせない・・というお話でした。神様、仏様、困って、お金がいるのは、やる気が出ず、困りものです。なんとかして下さい。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (86)順序

2021年11月22日 00時00分00秒 | #小説

 あいうえお、かきくけこ・・と続くが、いあうえお、きかくけこ・・とは言わない。^^ これは、順序がある、ということに他ならない。すべてのことに順序がある訳だが、では、順序が狂えばどうなるのか? それを考えてみるのも面白い。^^ 例えば、大相撲の大関が幕内の取り組みの最初に登場すれば、相撲ファンはド肝(ぎも)を抜かれることだろう。^^ まっ! この例は極端だが、やはり順序通りにコトが進めば安定感があることは確かなようだ。今日の八十六話は、順序を巡る四方山話(よもやまばなし)です。
 とある波止場である。汽笛が鳴り、主役のマドロスが格好よくカモメが飛ぶ岸壁に現れた。
「ダメダメダメッ!! そんなとこじゃないだろっ! 立ち位置っ、立ち位置っ!!」
 監督がダメ出しして、カメラが止まった。
「すみませんっ!」
「そこは彼女が登場して、君達が語るとこだろっ! 立ち位置の順序が逆なんだよっ!」
 そのとき、監督の横に座る助監督が口を出した。
「監督、アソコでいいんじゃないですかっ?」
「ええっ! そおっ?」
「はい…。二人が語り合う場所はアチラですよ、確か…」
「あっ! そうだった? 俺も年かな…」
 主役が登場して立った波止場の位置は正解だったのである。だが、監督にも面子(メンツ)がある。キャストに謝(あやま)る訳にもいかない監督は、ひと声、大声を出した。
「やめっ! やめ、やめぇ~~!! はいっ、次のシーンいくよぉ~~っ!!」
「次っ! シーン35、カット4っ!!」
 助監督は、勝手だな…とは思ったが、そうとも言えず、素直に従った。監督はカット3だろっ? とは思ったが、自分も間違ったから、まっ! いいか…と黙認した。
 順序を間違っても、スンナリいくときはスンナリいく・・という馬鹿馬鹿しい四方山話でした。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (85)故障

2021年11月21日 00時00分00秒 | #小説

 永久に故障しないものは、はっきり言って私達の世界には存在しない。故障の度合いは物によって違いがあるが、多かれ少なかれ故障することに変わりはない。私達だって故障すればお医者に診てもらって治療する[故障を直す]だろう。^^ ということで、今日の四方山話(よもやまばなし)は故障をテーマにしたお話にした次第である。
 とある大衆食堂である。二人の男が食べながら店のテレビを見上げている。
『現在、危機対策本部は、この未曽有の危機に対し、対策を立てようとしていますっ! 総理官邸より豚川がお伝えしましたっ!』
「そらまあ、危機対策本部だもんなっ!」
「だなっ! 危機には対策を立ててもらわんとっ!」
「で、未曽有の危機って、いったい何なんだっ!?」
「ウイルスだろっ?」
「ウイルスは以前から蔓延(まんえん)してるじゃないかっ!?」
「だから、その蔓延が限界を超えたからだろっ!?」
「俺達の社会が完全に故障しちまったってことかっ!?」
「まあ、そうなるな…」
「故障は直してもらわんとっ!」
「ああ。だが、この故障は根が深いぜっ!」
「どうしてっ!?」
「文明が引き起こした故障だからなっ!」
「そうなのか!?」
「ああ、そうだ。五十年前には、こういう故障はなかったろっ!?」
「だなっ!?」
 二人は結論が出たところで、ちょうど食べ終わった。
 文明が引き起こす、見えない故障もある訳である。
 今日の八十五話は、故障を掘り下げた四方山話でした。胡椒(こしょう)でクシャミが出るのは故障ではありません。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする