水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (6)参詣(さんけい)

2020年01月10日 00時00分00秒 | #小説

 願いごとがあると、人々はどういう訳か神社や寺院に参詣(さんけい)する。参詣したからといって、別にどうなるものではないのだろうが、人々はそうする。ある種の気休めにも思えるが、よくよく考えれば、こうした行為には疑問が生じる。まあ、願いごとがなくても参詣する人々は多いのだが、参詣すれば必ずといってよいほど両手を合わせたりなんかして、古式ゆかしく参詣するパターンが一般的だ。誰が、そうしろっ! と言っている訳でもないのに、人々が条件反射のようにそうするのは疑問である。外国の観光客なんかが神社、仏閣に訪れれば、ほう! そうするんだ…くらいの気分で、キョロキョロと建物を見回した挙句(あげく)、スゥ~っと通過するに違いない。むろん興味本位(きょうみほんい)の見よう見真似(みまね)で両手を合わせる観光客もいるのだろうが…。^^
 とあるお寺である。二人の参詣客がなにやら話をしている。
「前々から疑問に思っとったんですがな。神さまをお護(まも)りするこのお寺ですと、神さまと仏さまは当然、連絡し合っとるんでしょうな?」
「さあ~? その辺のところは、私には…」
「いや、私は当然、あると踏んどります…」
「踏んでおられますか? 確かに、私の足を踏んでおられますが…」
「おっ! これはこれは、失礼いたしました。お痛いことを…」
「いえ、先っちょでしたから、さほどのことは。ははは…」
 いつの間にやら参詣客の疑問は消え失(う)せ、神さまと仏さまは、どこかに忘れ去られていた。^^

                                完


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