水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (13)自然と強制

2020年01月17日 00時00分00秒 | #小説

 物事には成りゆきに任せた自然な進行と、強制して進行させる二つのやり方がある。どちらも完成を目指すのは同じだが、自然な進行は、どうなるか分からず不安定で、いつ結果が出せるか分からない難点がある。ゆとりがあるときは、いいが、緊急時には不向きだ。それに対し、強制で進行させる場合は結果が案外早く、確実でもある。それなら、すべて強制で…という疑問が湧くが、それがいいとも言えないのだ。強制は長続きせず、頼れば偉いことになるデメリット[不利]を抱(かか)える。その点、自然は長続きするメリット[利点]があり、時と場合で使い分けられるか? ということだ。私は自然も強制もしない…という自由主義者の方は、美酒に酔い痴れて下されば、それでいい。^^
 とある高校のサッカー部の部活である。競技場で二人の選手がサッカーのパス練習をしている。それを遠目でコーチと監督が見守る。
「あんな自然に任せたパス回しなのに得点率が高いのが疑問なんですよ」
「返って計算していないからじゃないか。計算し尽くして、強制してパスを通しても、相手は計算どおり動いてくれるかは分からないだろ」
「ああ、なるほど。それは監督が言われるとおりですね」
「だから、なんじゃないか」
「強制は、ある種の賭(か)け・・ですからね。裏目に出りゃ、潰(つぶ)されます」
「ああ。そうなりゃ、結果的にボール・ポゼッションは相手チームが上回るよな」
「はい…。強制より自然ですか?」
「ははは…まあな。そういや、君の強制力は失敗に終わったそうじゃないか」
「知ってられたんですか。もう少し、告りは遅らせた方がよかったようです。彼女に逃げられた理由です」
「ははは…俺は自然に任せて、なるようになったぞっ!」
「今の奥さんですか。私も見習います、ははは…」
 二人はサッカーに関係ない話で盛り上がった。
 どうなるか先が分からない疑問は、急がず自然に任せた方が好結果を得られるようだ。^^

                             完


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