水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

泣けるユーモア短編集-55- 世の中

2018年03月31日 00時00分00秒 | #小説

 世の中では不思議な現象が平然と起こる。正解が必ずしも正解とはならないのだ。だから怖(こわ)いし、実に恐(おそ)ろしい・・というのが世の中ということになる。ただ、そうかといって世の中が不正解でよくなるのか? といえば、決してそうではない。当然、少しずつ悪くなっていく・・と言った方がいいだろう。要は、ぅぅぅ…と泣ける暮らしにくい世の中になるということである。今の世の中である。^^
 退職後、しがない年金暮らしをする年齢となった、とある二人の凡人の会話である。
「年金が満額もらえる年になって喜んでたらさぁ~、泣ける破目(はめ)になったよ」
「増えただろ? 泣ける訳がない」
「それが泣けるんだよ、ぅぅぅ…とな」
「なぜだっ?」
「増えた以上に介護保険料を取られる」
「ああ、アレか…。アレは泣ける」
「だろ? 結果、満額もらえる年までの方が多かったって訳さ」
「可処分(かしょぶん)ってやつだな」
「そう、ソレっ! カショ、カショ! 国も、強(したた)かだ」
「まあ、カショが気にならない水準で暮らせる人には関係ない話だがな」
「そういうランクの人が暮らす世界は、世の中・・って言わないんじゃないか?」
「ははは…天上(てんじょう)の人々か?」
「天上までは無理でも、せめて五合目くらいは俺達も登りたいものだな」
「ああ…」
 世の中は天上まで登れない凡人以下が、ぅぅぅ…と泣ける世界なのである。

                               完


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泣けるユーモア短編集-54- 名実(めいじつ)ともに

2018年03月30日 00時00分00秒 | #小説

 実力もあり、その名も世に知られている・・こういう状況を、名実ともに・・と人は言う。名だけでは、なんの役にもたたず、微(かす)かに、そうだったのか…と名残(なご)りを留(とど)める程度なのだ。要するに、現実にはまったく意味をなさないのである。例えば、資格は持っているが、どうして取れたのか? と疑うほど、その技量がない・・とかの場合である。資格も何もないただの人が、大病院の医師でも治(なお)せない病気を治せた・・こんな逆の場合だってある。名(めい)はないが、実(じつ)がある・・というケースだ。あんな、へちゃむくれが芸能人? と自分の眼を疑いたくなるようなドブスやイケないメンが活躍しているといったケースもそうで、人の世は、ままならないのである。
 長閑(のどか)な春うらら、ご隠居、二人が公園のベンチに座り、日向(ひなた)ぼっこで語らっている。
「ほらっ! 毛が生(は)えてきましたよ・・アレは本物ですっ! 間違いないっ!」
「ははは…そんな馬鹿なっ! 気のせいでしょ。どれどれ」
「あっ! 確かに…」
「でしょ?! 名実ともにだっ!」
「こりゃ、いい。私もやってみますよっ! まだ、あります?」
「それが、あの名実とも・・いつ現れるか分からないんですよっ!」
 そのご隠居が語るのには、なんでも偶然(ぐうぜん)現れた胡散(うさん)臭(くさ)い薬売りに買わされた・・というものらしい。
「それって、大丈夫なんですか? 薬事法とか、いろいろあるんでしょ?」
「いやぁ~そらそうなんでしょうが、実際に生えてきている訳ですから…」
「名実ともに・・というより、実のみですなぁ~」
「そんなことは、どぅ~でもいいんです、私にゃ。生えさえすればっ!」
「そら、そうですっ! 生えさえすればっ!」
 二人は感(かん)極(きわ)まったのか、泣ける目頭(めがしら)を押さえた。
 分かりよい、名実ともに話(ばなし)である。

                               完


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泣けるユーモア短編集-53- 遅参(ちさん)

2018年03月29日 00時00分00秒 | #小説

 予定の時刻に間に合わず、遅(おく)れることを時代的に小難(こむずか)しく言えば遅参(ちさん)となる。現代なら遅刻(ちこく)と一般に言われるもので、学校、職場、デート・・などといった、いろいろな場合や場所で生じる。ただ、許して貰(もら)えるとか、そう大した損失(そんしつ)にならない場合はいいが、ぅぅぅ…と泣けるような本隊三万八千の精鋭を率(ひき)いた徳川秀忠公の関ヶ原遅参などといった状況になるのは戴(いただ)けない。取り返しがつかないからだ。
 このデートで決めるぞっ! と意気込んで小一時間ばかり早く家を出たにもかかわらず、どうした訳かその日は列車事故で、駅で待つ破目となった御門(みかど)は、イラつきながらタクシーへと切り替え、飛び乗った。腕を見れば、待ち合わせの時間にはまだ20分ばかりあったから、やれやれ、これでひと安心…と、後部座席に凭(もた)れ、御門は安心の荒い吐息(といき)を一つ吐(は)いた。だが、その御門の考えは甘かった。今度はどういう訳か、道路の渋滞(じゅうたい)である。俺は、運に見放されているのかっ! と、御門は、ぅぅぅ…と泣ける気分で焦(あせ)った。
「急いでるんですっ! なんとか、なりませんかねっ!!」
「はあ…。渋滞ですからなぁ~、ははは…」
 運転手の呑気そうな笑いに、御門は、何が、ははは…だっ! …と、怒れてきた。
「もう、いいですっ!」
 矢も盾(たて)も堪(たま)らず、御門は料金を支払うとタクシーを降り、走り出した。
 荒い呼吸で待ち合わせ場所へ御門が着いたとき、時刻はすでに40分ばかり過ぎていた。ダメだったか…と、御門は気力が抜けた諦(あきら)めの気分で、トボトボと歩き始めた。そのときである。ツカッ、ツカッ、ツカッ…と早足で近づく音がした。御門が振り返ると、一人の女性が荒い吐息で近づいてくるではないか。それは紛(まぎ)れもなく待ち合わせた公美に間違いなかった。公美も遅参したのである。双方が遅参した場合は、泣けることにはならず、笑いとなる。

                               完


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泣けるユーモア短編集-52- 強風

2018年03月28日 00時00分00秒 | #小説

 強風は、吹いていい場合と悪い場合がある。まあ、いい場合の方が少ないことは明々白々(めいめいはくはく)である。家屋(かおく)が壊(こわ)れたりして、ぅぅぅ…と泣けるような災害になりやすいからだ。
「ぅぅぅ…偉いことになりましたよ、蛸口(たこぐち)さん!」
「どうされましたっ! 烏賊尾(いかお)さんっ!」
「いゃ~、なんと言っていいのかっ! この前の強風で大事な盆栽鉢が…」
「割れましたかっ?!」
「いや、割れてはいないんですっ!」
「? …と、いいますと?」
「飛びましてねっ?」
「どこへ?」
「いゃ~、それがなんと言っていいのかっ! 行方(ゆくえ)知れずなんですっ! 家出なんですっ!」
「家出? ほう! どこかへ飛んでしまった・・ってことですか?」
「ええ、まあそんなとこで。ぅぅぅ…。戻って来るでしょか?」
「私に訊(き)かれましても…」
「辛(つら)いんです、私…」
「ええ、まあそうなんでしょうな? お気の毒です」
「この心中(しんちゅう)、分かっていただけますかっ!?」
「ええ、ええ。そらもう! ぅぅぅ…」
 強風は、訳が分からないことで泣けることもあるのだ。

                               完


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泣けるユーモア短編集-51- 手抜かり

2018年03月27日 00時00分00秒 | #小説

 人はどれだけ出来のいい人でも手抜かりをする。優秀な人で、まさかあの人が…と周囲の者を思わせる人ほど、本人にとって、その手抜かりが、ぅぅぅ…と泣けるような大打撃となる。というのも、メンツが丸つぶれとなるから、その口実を上手(うま)く考えなければならないからだ。それに比べ、普通の人の場合だと、別にどぉ~ってことはなく、周囲の者もそう気にしないから、なんだ! またミスか…くらいに軽く思われて終わる。
「あの人は,呑気(のんき)でいいねぇ~」
「ああ、田草(たぐさ)さんかっ。確かに…」
「あの人、出世したくないのかねぇ~?」
「そうそう。手抜かりばかりで、課長に怒られっばなしだしな。 それに、見ろよっ! 未処理のファイルだらけだ、デスクの上…」
「なのに、休暇だって? どういう神経なんだ?」
「さあ~俺に言われても…。たぶん、かなりズ太いんだろ!」
「肖(あやか)りたいぜ、まったくっ!」
「いや、会社じゃ、もう崇(あが)め奉(たてまつ)ってるそうだ。なんでも田草さんの手抜かりファンクラブ・・とかいうのが出来たそうだぜ」
「手抜かりファンクラブ?」
「ああ、手抜かりファンクラブ。手抜かりしてもまったく気にならない功徳が授(さず)かるらしい」
「あの田草さんがな?」
「ああ、あの田草さんが」
 職場は手抜かりニモマケズ、動じないズ太い田草の話題で盛り上がっていた。
 手抜かりは手抜かりと思うと、ぅぅぅ…と泣けるが、手抜かりと思わなければ手抜かりではなくなるから全然気にならず、泣けることなく楽しく生きられる・・ようだ。

                               完


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泣けるユーモア短編集-50- 泣きたくない

2018年03月26日 00時00分00秒 | #小説

 誰しも泣きたくはないだろう。だが、世の中は無常にも人を泣かせる。この泣ける場合も、二通りあり、心からぅぅぅ…と泣ける心情的な場合と、仕事で怒られて泣けるとかの一般的な場合がある。
 とある会社の商品開発課である。
「どうした? 竹川君! 最近、元気がないじゃないかっ…」
「あっ! 平松部長…」
「課長の君がそんなんじゃ、課の連中が困るじゃないかっ!」
「そりゃ、そうなんですが…。実はいよいよ春でして」
「ああ、そらまあ春だわな。それが? ああ! 花粉症とかで泣けるやつか?」
「いや、そうじゃないんです。私、いよいよ食われる季節なんですよっ!」
「…食われる? 言ってる意味が分からん」
「ぅぅぅ…食われるんですっ! 美味(うま)い美味いって…」
「ああ、竹の子か? ありゃ美味いっ!」
「部長までっ! ぅぅぅ…」
 竹川は、よよと泣く崩(くず)れた。
「ははは…君が食われる訳じゃなかろう」
 平松は竹川の肩を、やさしく撫(な)でて慰(なぐさ)めた。
「いや、それが…。次長にでもならないと食われるんです、妻に…」
「いや、益々(ますます)、分からん!」
「妻は出世しないと怒るんです」
「ああ、そりゃまあ、怒るだろうな…。それが?」
「怒ると食欲が増して出費が…」
「なるほど…それで?」
「小遣(こずか)いを減らされます。ぅぅぅ…」
「ああ、それで食われると、か。確かに、食われて泣きたくないわな」
「はいっ!}
 こんなユーモア溢(あふ)れる泣きたくない泣ける事情も、あるにはあるのだ。

                               完


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泣けるユーモア短編集-49- 騒音

2018年03月25日 00時00分00秒 | #小説

 誰しも快適に暮らしたいものだが、時として、騒音に苛(さいな)まれる場合がある。これだけ文明が進みながら、相も変わらず騒音を撒(ま)き散らす工事音。これは近所の住民にとって、いい迷惑以外の何ものでもない。だが、短に騒音がするから・・という理由では騒音を止めることは出来ない。極端な騒音以外は、個々の受け止めようによる心理的な不快感であり、そう気にならない人も当然、いる訳だ。しかも、実害がない。しかし、音を気にしながら物事をしている人にとっては、ぅぅぅ…と泣けるような不快感となる。
 とある家庭の一場面である。
「なんなんだっ! 朝からっ! ダダダダ、ダダダダとっ!」
「騒音? そんなこと、私に言われても…。ご近所の道路工事か何かでしょ」
「…まっ、そらそうだっ…」
 確かに…と思えたのか、夫(おっと)は溜飲(りゅういん)を下げ、押し黙った。
「それより今、手が離せないのっ? もう、お昼よっ!」
「ああ…ごらんのとおりだっ!」
 夫が指さす周辺は、いかにも見てくれっ! と言わんばかりにDIY[英語のDo It Yourselfから派生した略語で、一般的に、自身でやる日曜大工を意味する]の道具、材料で満ち溢(あふ)れていた。
「そう…」
「しかし、五月蝿(うるさ)いなっ! あの音はっ!!」
「あなただって相当、五月蝿かったわよっ!」
「そうかぁ?」
 夫は、いっこう完成しないDIYに、ぅぅぅ…と泣ける思いで呟(つぶや)いた。
 自分が出す騒音は、割合と気にならないようだ。サイレントな機器、工具の商品開発が望まれるが、ただ、奥様方の騒音はお父様方に我慢していただく他(ほか)はないだろう。^^

                               完


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泣けるユーモア短編集-48- トラブル

2018年03月24日 00時00分00秒 | #小説

 トラブルには目に見えたトラブルと見えないトラブルがある。見える方は修正しやすいが、見えないトラブルは厄介(やっかい)で、原因がなかなか判明(はんめい)せず、ぅぅぅ…と泣ける場合が多い。
 日曜の朝、とある普通家庭の居間である。
「何を朝からゴチャゴチャしてるのっ?」
 娘の真菜が父親の一樹(かずき)を訝(いぶか)しげに見ながら言った。
「お前、これどうすりゃいいか、知らないかっ?」
 一樹は目の前の長机の上に置かれたノートパソコンを弄(いじ)くりながら、偉(えら)そうに上から目線で言った。娘に弱みを見せたくないっ! という父親特有の物言いだ。
「パソコンがどうかしたのっ? お母さんがご飯にするからって…」
 真菜は肩透かしで用件だけを言った。
「ああ、そうか…」
 肩透かしを食らった一樹にすれば形(かた)なしである。といって、メンツもあるから頼む訳にもいかず、さて…と困った。
「フリーズか…」
 チラ見し、パソコンのトラブルに気づいた真菜が踵(きびす)を返しながら捨て台詞(ぜりふ)を吐(は)いた。親としては無視されたようで形なしである。
「お、お前な…。分かってんなら、なんとかしろやっ!」
 今度は強権発動である。
「そこは、お願いします・・でしょ?!」
「…お願いします」
 小声で一樹はボソッと返した。
「どれどれ…」
 真菜が弄り始めると、パソコンのトラブルは数分で、何ごともなかったように解消された。
「じゃあね…」
 真菜は格好よく立ち去った。
 トラブルは父親の威厳(いげん)をなくすのである。

                               完


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泣けるユーモア短編集-47- つい…

2018年03月23日 00時00分00秒 | #小説

 つい…と、知らず知らずのうちに無意識でやってしまうことがある。ぅぅぅ…しまった! と泣ける場合だが、これは身体が経験則で記憶している悪い例だ。よい場合は、瞬間に身を躱(かわ)す・・といった具合になる。
 春の木漏(こも)れ陽(び)が射(さ)すとある公園のペンチに、二人の老人が座っている。いつも散歩で出会う二人だ。
「鯖岡(さばおか)さんっ!」
「なんです? 鮒海(ふなうみ)さんっ!」
「実は…」
「どうかしましたか?」
「いえ、べつに…」
 いつも自分から話しかける習慣が身についていた鮒海は、話題もないのに話しかけたことを悔(くや)やんだ。内心では、つい…といったところだ。
「それにしても、いい天気ですなぁ~。春らしくなりました。ほら、紋白蝶が…」
 話しかけられたとき、必ず新しい話題で返す・・という習慣が知らず知らず身についたのか、鯖岡も話題を出し、蝶が優雅に舞う方向を指さしていた。
「おお! 珍しいっ! いや、実に長閑(のど)な風情です…。こういう自然が都会では少なくなりました」
 話題ができ、やれやれ…と、鮒海は安堵(あんど)して鯖岡に応じた。
「はいっ! 嘆(なげ)かわしいことです。ぅぅぅ…」
「そんな泣くようなことでも…」
 急に涙目(なみだめ)で声を詰まらせた鯖岡を訝(いぶか)しげに鮒海は見た。
「いや、失礼しました。私、花粉症でして…」
「この季節、泣けますか?」
「はい! 泣けるんですよ、つい…」
「泣くつもりじゃないんですね?」
「もちろん! これで泣ける訳がない! ただ、理由もなく涙を流していれば、格好がつかないじゃありませんかっ!」
「なるほどっ! それで…」
「はい。つい…」
 つい…は、いろいろ起きるという話である。

                               完


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泣けるユーモア短編集-46- 浅はか

2018年03月22日 00時00分00秒 | #小説

 余り深く考えず行動し、あっ! しまった…と悔(く)やむ。このことを、人は[浅はか]と言う。短慮(たんりょ)、軽率(けいそつ)・・とも呼ばれる性質のもので、総じて、うっかりミス程度のことなら、ははは…と笑い捨てられて済むが、取り返しがつかない大失態ともなれば、ぅぅぅ…と泣けるド偉(えら)いことになる。
「ソンナ~コトハ、マエモッテ・・ケイサンニ、イレテ~オクベキ・・ダッタンジャ~・・ナ~イデスカッ? ・・途端(トタン)サン!」
 工程表を見ながらイギリス本社から新(あら)たに赴任(ふにん)した設計技師で支社長のガスケットは工事をした現場監督の途端に苦言(くげん)を呈(てい)した。
「浅はかでしたっ! 短にガムテープを貼り合わせるバビリで済むだろう・・と、つい急がせたもので…。すぐ、やり直させます」
「アサハカ? ワタシハ~コーキング・ガスケット、デス。ココニ~アリマスッ! …マア、ワ~カッテ・・イタダケマスレバ、ソレデ、イ~~ン・・デスッ! スウジツノ~ウチニ、ヤ~ッテ・・イタダクコトハ、ワタ~シノ・・カオモ、タツト~オモワレマス…。スワル~ノハ、イタダケマセン・・デショ?」
「はあ? ええ、まあ…。では、急いでっ!」
 途端は慌(あわ)てて事務所を出て行った。
「アァ~! ヘルメット…」
 ガスケットが呼び止めたとき、途端の姿はすでになかった。
「アサハカ・・デスネェ~? ワラエテ、ナケマスッ!」
 ガスケットは忘れられたヘルメットを手にし、呟(つぶや)いた。
 浅はか・・は、笑えて泣ける場合も起こるようだ。

                               完


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