水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <31>  気分

2018年12月31日 00時00分00秒 | #小説

 人の気分を細(こま)かく分析すれば、多岐(たき)に分かれる。そんなもの、分析しなくていいっ! と言われる方は、カレンダーを見ながら、今年も残り少なくなったなぁ~などと気楽に欠伸(あくび)をしていただいていればいい。^^
 さて、気分だが、その人の心の在(あ)りよう、性格、取り巻く外的環境の状態、健康状態etc.種々(しゅじゅ)の要素が微妙に絡(から)まることにより変化することが分かるが、その変化のメカニズムは非常に難解なのである。というのも、外的環境の状態の一つをとってみても予測不能なくらい先々で変化をするからだ。当然、その影響を受ける人の気分も、その時々で様々(さまざま)な変化を見せることになる。
 とある漁港である。多くの小型漁船が係留(けいりゅう)されている。
「ああっ! 気分がいいやっ~~!!」
 夜の漁(りょう)から帰ってきた若者が茹(ゆ)で上がった蛸(たこ)のような日焼けした顔で両手を広げ、ひと声、張り上げる。どうも豊漁(ほうりょう)のようだ。そこへ一匹の猫がヒョコヒョコと貫禄よく現れ、小さく「ニャァ~~~」と低い声で鳴いた。
「おう! 父(と)っつぁんっ! お前も気分がよさそうだなっ! ホレッ!」
 若者は船べりに放置された数匹の魚をヒョイ! と船上から岸壁へ軽く投げる。父っつぁん・・と名づけられたその猫は、その魚をゆっくりと慌(あわ)てることなく、食べ始める。どうも、この辺(あた)りを領分(りょうぶん)[テリトリー]にしているボス猫のようだ。その証拠(しょうこ)に、他にも数匹の猫が遠くから様子を窺(うかが)うが、決して近づこうとはしないからだ。それが分かっているのか、父っつぁんは軽く食べ終えると、半分ほどを残し、満足げに気分よく歩き去る。人の場合だと、波止場のマドロスは格好よく立ち去る・・とかだろうが、猫だから、そう格好よくはいかない。とはいえ、猫達を気分よく一瞥し、『あとは、お前達で食いなっ!』とでもいう感じで貫禄(かんろく)十分だ。それを見る若者が、またひと声、気分よく張り上げた。
「よっ! 千両役者!! 日本一(にっぽんいち)っ!!」
 数匹の猫は、我(われ)先にと残された魚に食(く)らいつく。食いそびれた猫は、気分悪げに歩き去る。
 気分は、こんな感じで現れるようだ。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <30>  疲れる

2018年12月30日 00時00分00秒 | #小説

 人の疲れる原因を探(さぐ)れば、それは心身の二面で起こると分析できる。気疲(きづか)れ・・と呼ばれる心理面の疲れは、表立(おもてだ)った身体(からだ)の異常ではないから、傍目(はため)には分かりにくい。恋の病(やまい)と呼ばれる状態に至っては、本人がその気配(けはい)を見せない限り、他人にその気疲れは、ほぼ100%の確率で分からない。^^ 一方、身体の疲れも同様に、他人には分かり辛(づら)いが、疲れが溜(た)まると、次第に表面化して、「おいっ! 顔色が悪いぞっ! 大丈夫かっ!」などと声をかけられるようになるから、まだ気づかれる機会もある。しかし、近年の過労死という過酷(かこく)な労働災害は、他人を気づかせはするが、それ以上、どうにも出来ない社会の歪(ひず)みを感じさせずにはいられず、腹立たしい! …と、私が腹を立てても、どうにもならないのだが…。^^
 ある会社の事務室である。二人の男がロッカー室の前で背広上の作業服を脱ぎながら、語り合っている。
「あいつ、タフだなっ! これで、三日続けて残業だぜっ!」
「俺達と違って、課長代理補佐候補だからなっ!」
「飽くまで、課長代理候補じゃぁ~ない!」
「当然、課長候補でもないっ!」
「ははは…三日続きゃ、疲れるだろうがなっ!」
「いや、もう十分に疲れてるさっ! ははは…」
「まあ、俺達は疲れることなく美味(おい)しく食べ、美味しく飲んでと…」
「意識せずになっ!」
 出世を意識しない二人は大笑いしながら退社した。
 分析の結果、何事も意識すれば疲れるようだ。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <29>  万事休(ばんじきゅう)す

2018年12月29日 00時00分00秒 | #小説

 どんな人でも進退窮(しんたいきわ)まる・・という状況がある。このような最悪の状態を、人々は万事休(ばんじきゅう)す・・と表現する。今の造形語風に略せば、バンキュ~である。^^ 決してオバQではない。^^
 この危機的状況を分析すれば、意外とそうではないことが多い。その事実に気づくためには、[1]として、まず冷静に落ちつくことが求められる。[2]として、最悪の事態に立ち至ったとき、冷静に落ちつける心の鍛錬(たんれん)が必要となる。ダメになってから落ちついても意味がないからだ。
 とある居酒屋である。一人の男がいい気分で酒を飲んでいる。いつも寄る店ならいいのだが、生憎(あいにく)その店が臨時休業だったため、その近くの店へ入ろうとした。ところが、その日に限って知り合いから頼まれた用事があった。用事といっても、多寡(たか)が知れた買い物だったが、念を入れられたのは今夜の八時までにという時間制限があった。腕を見れば6時過ぎだったから、まあ、時間はたっぷりある。あとにしよう…と男は軽く踏んで店へ入った。ところが、これがいけなかった。その店は多くの客で込んでいて、席が空(あ)くまで入口で待たされる破目になったのである。この時点でも、まだ男はそんなに困ってはいなかった。しかし、そう思った直後、異変が起こった。俄(にわ)かに男の体調が怪(あや)しくなったのである。まず、全身に悪寒(おかん)が走り、体熱が上昇、男は知らない店先で身動きが取れなくなった。万事休す・・である。
「ど、どうされましたっ!?」
 店を出ようとした客がフラついて今にもその場へ倒れそうにしている男に声をかけた。偶然にもその客は医者で、こういう事態に場馴(ばな)れしているのか、落ちついていた。
「うぅ! 調子が…」
 男は、身体(からだ)の異常をその医者に訴えた。医者はすぐに手持ちの往診かばんを開け、必要な応急処置を施(ほどこ)した。
「私の医院はこの近くですっ! 歩けますかっ!?」
「はあ。まあ、なんとか…」
 男は医者に抱きかかえられながら医院へと向った。
 一時間後の八時過ぎ、男は医院で回復した。
「し、しまった!」
 男は目覚めた診察ベッドの上で頼まれた用事を思い出した。
「ど、どうされましたっ!?」
 ふたたび、医者は男に訊(たず)ねた。
「万事休す! です、先生っ!」
「なにがっ!?」
 訝(いぶか)しげに医者は男を見ながら、その訳を訊ねた。
「なんだ…」
 医者は、その訳を馬鹿馬鹿しく思った。
 分析の結果、万事休す事態は、他人には分かりにくく、意外と万事休さない。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <28>  遠き道

2018年12月28日 00時00分00秒 | #小説

 ━ 人生は遠き道を行くが如(ごと)し、焦(あせ)るべからず ━ と家康公が口にされたかどうかは定かではないが、そんな格言めいた古い言い伝えがある。他にも、━ 急がば回れ ━ とかいう言い方もあるが、孰(いず)れにしろ、先の道が長ければ、余り急がず、自分のペースで慌(あわ)てずに進もう・・という意味が込められている訳だ。今の時代、遠い道はバイク、自動車、新幹線、さらにもっと早いリニア・モーターカー、さらにさらに早い飛行機が重んじられているが、果たして遠き道へ着くために本当に早いのか? を分析してみるのも面白い。^^ 馬鹿野郎! 早いに決まってるじゃないかっ!! と問答無用にお考えの方は、美味(おい)しい河豚鍋(ふぐなべ)を賞味(しょうみ)していただいていればいい。^^ ただし、河豚に当たって河豚[ふぐ、と、すぐ、をかけたダジャレ^^]に死んでも、責任は一切、持てないから、そのつもりで…。^^
 とある一品料理店である。二人の男がカウンター席で熱燗(あつかん)の徳利(とっくり)を傾けながら肴(さかな)の小鉢(こばち)を突(つつ)いている。
「いやぁ~、ここの料理はいつ来ても美味(うま)いよなっ!」
「そうですかぁ~?」
「ああ、美味いっ! 親父さん、なにか秘伝(ひでん)でもあるのかいっ?」
「ははは…秘伝なんてもんはありませんよ、お客さん。まあ、あるとすれば、拘(こだわ)ってるってことですかね…」
 カウンター前で手を動かす店主が一瞬、その手を止め、訊(たず)ねた男を見て言う。
「と、言うと?」
「ええ、まあねぇ~。他の店と違い、材料の仕込みに3倍はかけますから…」
「3倍っ!!」「3倍っ!!」
 二人は異口同音(いくどうおん)に口を揃(そろ)えて驚いた。
「ええ、まあ
…」
 店主は少し照れて小声で暈(ぼか)した。
「この味に至るまでが遠き道なんだなぁ~…」
「まあ…」
 店主はふたたび照れて暈したが、照れ過ぎて蛇口を閉め忘れた。
 遠き道を分析すれば、慌てず急がないのが一番だが、からといって、着いたあとも油断してはいけないということになるだろう。着いて兜(かぶと)の尾を締(し)めよっ! なのである。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <27>  虫の知らせ

2018年12月27日 00時00分00秒 | #小説

 上手(うま)い言い回しに、虫の知らせ・・というのがある。なにも虫が態々(わざわざ)出向いて、『ホニャララですよ…』などと知らせる訳がない。^^ 飽くまで、そんな微(かす)かな霊感(れいかん)のような感じを指す言葉なのである。
 花瓶(かびん)に風雅に挿(さ)された芒(すすき)の穂。三宝(さんぼう)の上へピラミッド形(がた)に見映(みば)えよく盛られた月見団子。蒼白(あおじろ)く照らす満月の光。そして静かさの中に聞こえる虫の集(すだ)き。そんな中、一人の男がドッペリと縁側(えんがわ)に腰を下ろし、何を思うでなく無我の境地(きょうち)で満月を愛(め)でている。そこへ一匹の猫がニャァ~~! と鳴くでなく楚々(そそ)と現れる。男は、ふと、その猫の動きで我に返る。と同時に、団子を猫に食われそうな虫の知らせを知る。^^ 結局、お月見相場の話ではなくなり、雑念が巡るのである。ところが猫は団子を食べることなく、男の横へドッペリと腰を下ろし、毛繕(けづくろ)いを始める。
 分析すれば、虫の知らせも結局のところ、当(あ)たり外(はず)れがある訳だ。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <26>  順序(じゅんじょ)

2018年12月26日 00時00分00秒 | #小説

 物事には順序(じゅんじょ)というものがあるっ! と、まあ杓子定規(しゃくしじょうぎ)にそう言ってしまえばそれまでだが、順序という行為を冷静に分析すれば、以外にもそうでない部分が見えてくるから不思議である。
 分かりよい例では、そうなることが分かっていながら渋滞した高速道を順序よくジィ~~っと辛抱強く待つ男が、[こなた]にいるとする。^^[かたや]、分かっているからか下の地方道をスイスイ~~っと飛ばす男が同時にいるとしよう。^^ 高速道なら目的地まで小1時間だが、地方道なら倍の2時間は見なければならない距離で、高速道を選択するのは常識的には間違ってはいない。しかし、結果がどうだったか? を知れば、順序も時によりけり・・だと納得出来るのである。地方道を選んだ[こなた]の男は途中で寄り道をし、美味(おい)しい食事を済ませた上で目的地へ3時間で着いた。気分が悪かろうはずがない。[かたや]もう一方の男は、渋滞がなかなか解消せず、6時間後に着いた。しかもヘトヘトに心身とも疲れ、気分の良いはずがなかった。
 この話は、飽くまでも一例である。そんなことを書いている私も、つい先だってPC[パソコン]がフリーズ[機能が停止し、画面が凍ったように動かなくなる状態]し、回復を要したが、こりゃ、かかるぞっ! と踏んで、PCの回復を待たず、先に美味しい寒鰤(かんぶり)の魚スキをポン酢て味わってから作業を継続したが、ちょうどPCが起動を始めたのだった。むろん、機能回復措置を入力したあとで食事をしたのは申すまでもない。
 このように、順序を変えた方が上手(うま)くいくことが時折りある・・というのが分析結果である。時と場合で…ということだろう。漏(も)れてしまう前にやっていることはあと回しにしてトイレへ駆け込もう! 漏らせば、あとあと、大変だっ! ^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <25>  成(な)りゆき

2018年12月25日 00時00分00秒 | #小説

 やろう! と思ってもいないのに、ついつい、その場の雰囲気に流されてやってしまうことがある。人はその状態を、成(な)りゆき・・と表現する。成りゆきを分析すれば、そこには本人の主体性の欠如、心の不安定な乱れなどの条件に、哀(あわ)れみや同情心が加わることにより発生する確率が高いことが窺(うかが)えるのである。
 とある喫茶店である。一人の男が、のんびりとコーヒーを啜(すす)っている。そこへ、もう一人の男が外から入ってきた。
「おおっ! 久しぶりだなっ、村川(むらかわ)!」
「なんだっ! 町山(まちやま)じゃねぇ~かっ!」
「偶然(ぐうぜん)ってのは、あるもんだなっ!」
「ああ…。よかったら、どうだっ、これからっ! 具合悪いかっ?」
 村川は手指を猪口(ちょこ)に見立て、飲む仕草(しぐさ)をした。 
「いや、そんなことはない。小一時間、潰(つぶ)そうと思ってたところだ…」
 よし、決まった! とばかり、二人は店を出ると、行きつけの飲み屋へと歩(ほ)を進めた。
「小一時間って、ゆっくり出来ねぇ~のかっ?」
「いや、そんなこともねぇ~んだがっ。うちのカミさんが五月蝿(うるさ)くってなっ!」
「ははは…相変わらず敷(し)かれっぱなしかっ?」
「ああ、相変わらずなっ! ははは…」
 二人は、成りゆきで飲むことになり、成りゆきに任(まか)せて時(とき)を過ごした。そうこうするうちに酔いもいい具合に回り、二人は成りゆきのように出来上がっていった。成りゆきとは恐ろしいもので、町山にすれば小一時間のつもりだったものが、三時間を優(ゆう)に超していた。
「こ、こりゃいかんっ! 俺、帰るわっ!」
 町山は腕を見て時の経過を知り、ギクッ! と驚いた。
「そうかっ? せっかく盛り上がったのになっ!」
「ああ、またなっ! ぅぅぅ…今日はこの後(あと)が辛(つら)いっ!」
「ははは…今日もだろっ! 支払いは俺がっ!」
「すまねぇ~なっ! いつも…」
「ははは…いいってことよっ!」
 町山は村川と飲むとき、いつも成りゆきに流れることにしていた。その訳は単純で、支払いの心配がなくなるからだった。
 成りゆきを分析すれば、格好いい股旅時代劇ではないが、足の向くまま気の向くまま・・そのまま流れに任せた方が割合、スムーズにいく確率が高く、好結果が得られるようだ。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <24>  実行

2018年12月24日 00時00分00秒 | #小説

 言うは易(やす)く、行(おこな)うは難(がた)し・・と、よく言われる。それほど物事を実行するのは難(むずか)しいということだ。
 実行という言葉を分析すれば、いろいろなことが分かってくる。言うことは口だけの動きだからそうでもないが、実行は当然、身体のいろいろな部位を駆使(くし)して動かすから体力を消耗(しょうもう))することになる。消耗すれば、どうなるか? 言わずもがなで、疲れる訳だ。また、言うだけなら失敗はしないが、実行に失敗はつきものなのである。だから、実行に決断する勇気は欠かせない。あいつは風呂屋の釜(かま)だ! とは誰も言われたくはないだろう。言うばっかり→ゆうばっかり→湯(ゆ)ぱっかり・・ということだ。^^
 とある観光地で、料金制のバンジージャンプが行われている。もちろん観光客の娯楽を目的として設けられたもので、下は断崖絶壁(だんがいぜっぺき)の地だ。そんな中、ビクついて戸惑(とまど)う参加者を見ながら、二人の観光客が話し合っている。
「フン! あんなの簡単さっ!」
「ははは…お前は昔(むかし)の床屋(とこや)かっ!」
「昔の床屋? …なんだ、それはっ?」
「床屋だよっ、散髪(さんぱつ)の!」
「分からん!!」
「結(ゆ)うばっかり・・言うばっかりっ!」
「おお!! それならやってやろうじゃねぇ~かっ!」
 売り言葉に買い言葉、からかわれた男は料金を支払い申し込んだ。だがしかし、である。いさ゜、自分の順番になると、震(ふる)えて足が竦(すく)み、手にしたロープを投げ出した。
「お客さん、お金は返しませんよっ!」
「はいっ! 結構ですっ!」
 係員に念を押され、からかわれた男は青菜に塩のような小声で言った。
 実行を分析すれば、決断する勇気がないとショぼくなる・・ということだろう。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <23>  社会的習慣

2018年12月23日 00時00分00秒 | #小説

 社会的習慣は様々(さまざま)な形で私達の生活に影響を及ぼしている。この事象を分析してみよう。
 とある一例である。
『そろそろ年も終わりか…』
 と、思い、年賀葉書を購入して書く。この社会的習慣は当然ながら個人の時間を費(つい)やすから影響を与える。と思っていると、書いた相手から[喪中(もちゅう)につき年賀欠礼]の葉書が舞い込む。
『しまった! 書いてしまったぞっ!』
 と、口惜しがり、
『また寒中見舞いの葉書を書かねばっ!』
 と、意気込む。そして、夢中で[喪中と夢中のダジャレです^^]寒中見舞いの葉書を書く。書き終わって、
『これでいいだろっ!』
 と、思った途端(とたん)、<寒中見舞いは社会的習慣として1月8日以降に出すものです>という検索情報をネットで知る。さらに、料金が上がっていて追加料金の切手が必要なことに気づく。
『まあ、仕方がないっ! 明日(あす)、切手を買うか…』
 と、増えた手間に溜(た)め息を一つ吐(つ)く。そうこうするうちに、時間が刻々と過ぎていく・・というのが、社会的習慣の目に見えない軋轢(あつれき)なのである。
 社会的習慣は必ず守らねばならないものではない。だが、守らないと社会から異端視(いたんし)される。タメ口を叩(たた)く馬鹿も出るくらいだ。^^ ある種、無言(むごん)の社会的強制でもあるのだ。それが、人々に益(えき)を齎(もたら)しているうちはいいが、負担となっている場合が多い。結果、その社会的習慣によって人々は益々、疲弊(ひへい)する。早く断ち切り、廃止するのが得策だが、慣習による商慣習法という法律があるくらいで、なかなかそうはならない。
 これが社会的習慣の悲しい分析結果だ。ただ、皆さんにお読みいただいているこの拙(つたな)い短編集は、飽(あ)くまでも個人的習慣で書いている文章である。^^

                                 


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分析ユーモア短編集  <22>  法律

2018年12月22日 00時00分00秒 | #小説

 小難(こむずか)しい話になるから、顎(あご)が外(はず)れない程度に欠伸(あくび)でもして読んでもらえばいい。睡眠不足の方はウトウトと眠っていてもらっても、いっこう構わない。
 法律は人々が社会生活を営(いとな)む上で規範(きはん)となるルール・・だと分析できるが、その一方、個人を拘束(こうそく)する目に見えない手錠のようなものにもなるから過度や誤って成立すればド偉いことになる。なかなか廃止されないからだ。この事実は戦前の軍部によって成立した幾つかの法律を紐解(ひもと)けばお分かりいただけるだろう。
 とある未来生活の一場面である。父親とその息子が話している。
「2キロから3キロ地帯は走っちゃいけないんだって言ってたよ」
「ああ、新しい交通法が施行(せこう)されたからなぁ~、セコい話だっ!」
「笑えない、笑えないっ! そんな親父ギャグ」
「ははは…申し訳ない。それにしても、空の上も混んで渋滞(じゅうたい)するようになったからなぁ~。じいちゃんが、俺の頃はお日さまには清々(すがすが)しい青空だった・・とか言ってたな…」
「青空に車は似合わない、似合わないっ! 空を飛べるようになった法律が悪いんだよっ! 車は地上を走らなくっちゃ!」
「だなっ! 法律が悪いっ! 父さんも、そう思うぞっ!」
 二人は、庶民にはどうにもならないことで意気投合(いきとうごう)した。
 法律を分析すれば、結果として捉(とら)えどころのない話となる。^^

                                 


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