水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

驚くユーモア短編集 (99)明日(あす)

2024年02月29日 00時00分00秒 | #小説

 あっ! 明日(あす)だったと思い出し、月日の巡りの速さに驚くことがある。とくに、余り気にしていなかったときは、したくもないのにバタバタするに違いない。^^
「お、おいっ! い、如何(いかが)致すっ! 九月十日…九月十日は明日ではないかっ!!」
 上田攻めの負け戦(いくさ)に時を過ごされた秀忠公は、家康公からの早馬の密書をお読みになり、驚く様相でそう言われたらしい。
「こうは、しておられんぞっ!」
「御意(ぎょい)っ! 殿、お急ぎをっ!!」
 急遽(きゅうきょ)、上田を出立された秀忠公率いる精鋭三万五千有余ではあったが、かかる長雨に進軍ままならず、関ヶ原の戦いにはついに間に合わなかった。
 このように、いつの時代でも急に差し迫った事態を知ったときは、驚くことになるのです。皆さん、驚くことのないよう、明日のスケジュールは確認しておきましょう。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

驚くユーモア短編集 (98)原因2

2024年02月28日 00時00分00秒 | #小説

 (48)でタイトルにした原因の別話である。
 そんなことが…と、考えてもみなかったところにコトの原因があったことで驚くことがある。そうなった原因を考えてはみたが、どうしても分からなかったとき、特にその驚く度合いは大きくなるだろう。ということで、今日は見過ごされた些細な原因に驚くお話にしてみました。^^
 とある市役所の財務課である。
「妙だな…。どうしても額が合わない…。それも一円だ…。おいっ!! 楢林(ならばやし)君っ!!」
 課長の樫岡(かしおか)は、前のデスクで仕事をする担当係の楢林を大声で呼んだ。楢林はギクッ! として手を止めると、恐る恐る席を立って課長席の樫岡に近づいた。いつもカミナリを落とされていたからである。
「あの…なにか?」
「なにか? じゃないよっ! この額、一円違ってるじゃないかっ!」
「いや、そんなことはないと思いますが…」
「思うんじゃ困るんだよっ! 現に、何度やっても一円少ないじゃないかっ!」
「どこです?」
「ここの予算残額だっ!」
「どうもすいません…。もう一度、突合(とつごう)してみますっ!」
「ったくっ! 頼んだよっ! 三日後は決算議会なんだから…」
「はい…」
 席へ戻った楢林は、ふと考えた。
『そういえば、あのとき…』
 原因は昼のチャイムにあった。空腹感に堪えられず中断した昼食後、再開したのだが、食後の眠気でうっかり入力ミスをやったんだ、きっと…」
 コトの原因は腹が減っていた自分にあったと気づかされ、楢林は自分の空腹感と食後の眠気に自己嫌悪した。
 原因はつまらない、ほんの小さいことが多いものです。皆さん、欲望に負けず、慎重に仕事をしましょう!^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

驚くユーモア短編集 (97)知らず知らず

2024年02月27日 00時00分00秒 | #小説

 知らず知らず、日々、創作していると、驚くことにこの短編集も百話完結の残りが四話となった。本作を除けば残りが三話だから、知らず知らずの心身の条件反射的動きは恐ろしいものだと気づかされる。心身が惰性で動くというのは、いい場合も当然あるが、悪い場合も否応なく生じるから注意を必要とする。
 とある国会の衆議院本会議場である。申し合わせたように議員の一人がスクッ! と立ち、いかにも目立ちたいような出さなくてもいい驚く大声を張り上げた。議事進行係である。明治期の帝国議会から続く習慣らしく、知らず知らずのうちに現在に至るまで踏襲されているというから驚く。
「議長ぉ~~~!!」
「〇〇君…」
「ホニャララのホニャララはホニャララとし、本日は、これにて散会することを求めまぁ~~~す!!」
「〇〇君の動議に御異議ございませんか?」
『異議なしっ!』
「御異議なしと認めます。本日は、これにて散会致します…」
 議事進行係の動議を受け、議長がすでに決まりごとのような声で告げる。
 場内の国会議員達はザワザワと決まりごとのように立ち、ザワザワとした騒音を残して知らず知らずのうちに場内から消え去る。
 これが議事堂で知らず知らず続く慣行なのです。ですから、誰も驚く議員の方々はおられません。^^
 知らず知らずやったり言ったりしていることは、場当たり的な内容で驚くことから駆逐しているのです。これを[悪貨は良貨を駆逐する]のグレシャムの法則モドキと私は呼んでいます。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

驚くユーモア短編集 (96)時

2024年02月26日 00時00分00秒 | #小説

 なんだ、まだこんな時間か…と時計を見ながら驚くときと、しまった! もうこんな時間かっ! …と時計を見て驚く瞬間の違いがある。むろん、前者の場合はゆとりの時間がある訳だが、時とはこのように見えず得体が知れない存在なのである。
 とある高校のとある教室のホームルームの時間である。このクラスを受け持つ担任の潮(うしお)が出席点呼を行っている。
「提山(さげやま)っ! …」
 返事がなく、潮は出席簿から視線を上げ、教壇から一段下の生徒達を見回した。
「先生、提山は今日、休んでます…」
「ほう! 珍しいな。あいつが休むとは…」
「なんでも、身内の結婚式らしいですよ」
「それは、お目出度いじゃないか…。よしっ! 今日はコロナ禍で世の中が冷え切ってるから、お目出度い話を一つ先生がしようっ!」
 語り出した潮は時の経つのも忘れ、ゴチャゴチャとしたお目出度い話を一席、打(ぶ)った。生徒達は勝手に話していれば…という心境で、どうでもいいように一応、聞いていた。しばらくすると、校内チャイムが鳴り響いた。
「なんだ、もうこんな時間か…」
 潮は腕を見て驚くと、もう一度、教壇下の生徒達を見た。教室の全員が、受験勉強用の自習をしている姿が潮の目に入った。誰も潮の話を聞いていなかったのである。
 このように没頭し過ぎて驚くのも考えもので、時と場合があるというお話です。^^

                    完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

驚くユーモア短編集 (95)意志

2024年02月25日 00時00分00秒 | #小説

 なにがなんでもやり遂げるんだっ! という強い意志があれば、驚くような成果を上げることが出来る。これは、人が持ち合わせた不思議な力である。(91)で馬鹿力(ばかぢから)というタイトルのお話を掲載させて戴いたが、その力も強い意志が齎(もたら)す人の潜在力に違いない。
 とある町役場の、とある課である。
「コレとコレ、明日までに頼むよ…。まあ、余り期待してないがね…。ひと月先は人事だよっ! 分かってるねっ!」
「はい…」
 とある課の課長、大席(おおぜき)に念を押された係長の小結(おむすび)は否応なく小声の返事をした。とても一人でやり切れる量とは思えなかったこともある。
「ははは…分かってりゃいいんだ、分かってりゃ!」
 大席は分かってりゃ! を繰り返して強調した。小結にしてみれば、『フンッ! 偉そうに…』くらいの気分である。ただ、この大席の念押しが小結の闘争心に火を点けた。
「やってやろうじゃないかっ!」
 小結は小声でそう呟くと、一心不乱に命じられた仕事をやり始めた。
 小結が命じられた二つのファイルをやり遂げたとき、窓の外は漆黒の闇に閉ざされた夜の八時だった。不屈の闘志に燃える小結の強い意志が、驚く結果を齎したのである。
 このように、物事をやり遂げる背景には驚くほどの強い意志が関係しているのです。皆さんもコトを処す上で、強い意志でチャレンジされれば、至難の扉は開かれることでしょう。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

驚くユーモア短編集 (94)人の心

2024年02月24日 00時00分00秒 | #小説

 女心と秋の空・・とかなんとか言われるが、人の心ほど複雑で変わりやすいものはない。突然の豹変ぶりに、なにっ! と驚くことも数多くあるに違いない。
 とある料亭である。背広姿の二人が意味深に杯を傾けている。
「まあ、そこのところを一つよろしく…」
「フフフ…分かっています。いつものだね…」
「はあ、いつものようにお願いを…」
 とある省庁のお役人と、とある大企業のトップとの間で、数億の取引の認可がまた了承された瞬間である。その取引の事実は検察庁特捜部の極秘裏の調査ですでに解き明かされようとしていた。ただ、この料亭で杯を傾ける二人は、この段階でその動きを知らなかった。
 数日後、この大企業に特捜部の強制捜査のメスが入った。その結果、大企業のトップは、いとも簡単に贈賄の疑いで逮捕されたのである。
「私は、そんな人物は知らんよ…。〇〇が勝手にやったことだっ!」
 とある大臣は省庁のお役人に司直の手が伸びたのを察知し、そのお役人を切り捨てた。
「ぅぅぅ…」
 お役人は、とある大臣の豹変ぶりに、驚いた。
 人の心はこのように変わりやすく、驚くほど残酷なのです。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

驚くユーモア短編集 (93)嘘(うそ)から出たまこと

2024年02月23日 00時00分00秒 | #小説

 嘘(うそ)から出たまことに驚くことがある。その嘘が途方もなく大きい嘘であればあるほど、その驚く程度も大きくなる。ということで、でもないのですが書きたいと思います。正確には、苦手な[誤字入力の多さには泣かされています^^]キーを叩(たた)くことになります。^^
 とある近い未来の一日である。二人の男が通勤バス中で話をしている。
「核戦争が起こるって話だっ!!」
「なんだとっ! お前、その話、誰から聞いたっ!」
「誰とは言わんが、そう言ってたぜっ!」
「そうかっ! こりゃ偉いことになったぞっ! 急いで核シェルターを買わにゃならんっ! 高くつくな…。そうなると、住宅ローンもあるから、毎日、食パン一枚の生活か…。ああ侘(わび)しいっ! 実に侘しいっ!!」
「おいっ! 核が落ちてからの食糧はどうするんだっ!」
「そうか…。今から多量に買い込んで、核シェルターの中で保管しとかないとな…」
「日持ちする物しかダメだぜ…」
「そうだなっ! こうなりゃ、会社で勤めてる場合じゃないっ! おいっ! お前も一緒にこれから買い出しに行くぞっ!!」
「核シェルターは、まだ買ってないだろっ!?」
「ああ、そうだった…」
 二人がブツクサ話していると、そこへ後ろから通勤客の同僚が声をかけた。
「おい、お前らっ! 今日は四月一日だぜっ!」
「あっ、そうかっ! 嵌(は)められたなっ、お前っ! ははは…」
「みたいだ、ははは…」
 その日の午後、世界の核戦争が突如として勃発(ぼっぱつ)し、地球は死の星へと変貌(へんぼう)したのである。嘘から出たまこと、だった。
 こんな嘘から出たまことの話で驚くのは嫌ですよね。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

驚くユーモア短編集 (92)予想

2024年02月22日 00時00分00秒 | #小説

 予想していたことがスムーズに運ぶ場合、首尾よくいかない場合は当然、出てくるだろう。自分では何もしていないのにトントン拍子に進行したり、逆に何をしても全然、進まない場合は、妙だな…と思うに違いない。そして、その訳が、ほんの小さな内容だったりした場合は驚くことになる。
 とある家の前の舗装路で必死に独楽(こま)を回しているこの家の主人がいる。幸い、その家の前は車が通れない程度の細道で、歩くか自転車でしか通行が出来ない。その細道を偶然、対向から二軒先のご主人が買い物帰りに自転車で通りかかり、ギギィ~! っとブレーキをかけた。
「ははは…独楽ですか。懐かしいですなぁ~。子供の頃はコレでよく遊んだもんです…」
「さようで…。いやね、天気がいいもんで虫干ししようと部屋の押入れを開けてみましたら、コレが出てきましてな。、し回してみようかと思いまして回してみますと、いやぁ~予想外に手古摺(てこず)りましてな。ははは…お恥ずかしいところをお見せしました」
「いやいや、私もそうです。昔、出来ていたことが今は出来なくなっております。驚くというかガックリするというか…」
「独楽なんてもんは今の時代、誰もしやしない化石ですが…」
「当時はゲームとか遊び道具がなかった時代でしたからなぁ~」
「ええ、よく作ったもんです」
「…でしたな。で、どうです?」
「それがなかなか掌(てのひら)の上に乗りません…」
「どれ、一つ私も…」
「どうぞ、どうぞ…」
 自転車を止めたご主人は独楽を受け取ると独楽紐(こまひも)を独楽に括(くく)り、勢いよく回した。独楽は掌の上に吸い寄せられるかのように乗った。乗せたご主人も見事な出来栄えに驚くことになったが、見ていたご主人のテンションはガタ落ちとなった。出来ると予想して回した自分の出来なかった技を呆気(あっけ)なく他人がして、余計に情けなく思えたのである。
 思わず驚くような昔の物を発見したときは、懐(なつ)かしさに溺(おぼ)れないように注意した方がいいようです。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

驚くユーモア短編集 (91)馬鹿力(ばかぢから)

2024年02月21日 00時00分00秒 | #小説

 火事場の馬鹿力(ばかぢから)などと言われるが、いざというとき、いつもは出なかった力が出るのには驚く以外にない。ということで、余り時間がないのですが、馬鹿力を出して(91)を書きたいと思います。正確には入力で、打ち間違いがないか心配なのですが…。^^
 とある家事現場である。
「おいっ! 消防はまだかっ!!」
「妙ですねぇ~? もう着きそうな筈(はず)なんですがっ!」
「全然、着かないじゃないかっ!! 音も聞こえんぞっ!!」
「はあ…」
「はあ、じゃないっ!! 益々、炎が強くなるじゃないかっ!!」
 そこへ一人の野次馬が話しかけた。
「そりゃ、来ませんよっ! ここへの道は一本ですが、この前の台風で橋は流されましたから…」
 そう聞かされ、家人の二人は青ざめた。
「よしっ!! バケツリレーだっ!!」
「はいっ!!」
「皆さんもお手伝い、お願いしますっ!!」
 野次馬や近所の家人にも加勢を頼み、大がかりなバケツリレーが始まった。すると、いつの間にか火の勢いは衰え、消えたのである。
「フゥ~~! やればやれるもんだなっ! 皆さん、有難うございましたっ!!」
 家人二人は加勢してくれた人々に礼を言った。まさに、火事場の馬鹿力だった。鎮火して十分後、ヘリコプターが到着し、鎮火した現場の上空から消化剤を撒(ま)き始めたが、後の祭りの消防団だった。
 いざというとき、驚くほど出るのが馬鹿力なんですね。^^

                    完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

驚くユーモア短編集 (90)それでも、やる

2024年02月20日 00時00分00秒 | #小説

 人は負けると分かっていて、それでも、やる・・という不屈の精神を持ち合わせている。むろん、諦(あきら)めが早い人も多い訳だが、やはり人として生まれたからには、負けると分かっていても努力して欲しいものだ。私も微力ながらその精神を心がけている一人である。ものすごく微力です。^^
 とある病院の診察室である。
「本当のところ、先生、どうなんでしょ!!」
「どうしても! とおっしゃるなら、お話しますが…」
「是非、お願い致しますっ!」
「そうですか? なら言いますが、このままですと…いい場合で、あと数ヶ月ってとこでしょうか。今のうちにやれることはやって、会いたい人には会っておくことですな…」
 患者に執拗(しつよう)に訊(き)かれ、病状を告知した。
「このままだということは、手術をすれば?」
「ええ。手術が成功すれば、また話は変わります。ただ、成功の確率は10%程度なんですが、それでも、やられますか?」
「10%でもなんでも、生きられる望みがあるんなら、やりますっ!!」
「上手(うま)くいかず、90%の方ですと、余命は一ヶ月になりますが…」
「それでも、やりますっ!!」
 医者は、内心で『それでも、やるんだ…』と朴訥(ぼくとつ)に思った。
 やがて手術の日が巡り、手術は驚くことに10%の確率で奇跡的に成功し、患者の病状は回復へと向かった。手術成功後の患者のひと言である。
「それでも、やってみるもんです」
 それでも、やる・・という精神は、驚く結果を起こす原動力になるのです。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする