水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (4)風

2020年01月08日 00時00分00秒 | #小説

 風は吹いてよい場合と悪い場合がある。同じ風なのにそれはどうしてか? という疑問が生まれるが、それは決して吹く風の所為(せい)ではなく、すべてが私達の勝手な理由によるところが大きいことに気づかされる。
 とある町の街路である。一人の男が、ブツブツと不満を漏らしながら通りを歩いている。
「どうして俺が外に出ると、風はアゲインスト[向かい風]なんだっ!」
 男は必ずそうなる自然に吹く風に対してトラウマになっている疑問を愚痴った。
『そう言われましてもねぇ~。なにも私ゃ、あんただけに吹いてる訳じゃねえんでねっ!』
 男はその声にギクッ! とし、立ち止まると辺りを見回した。だがそこには、某グループが歌う歌詞ではないが、♪ただ風が吹いているだけ♪だった。^^
「んっな訳ねえよな…」
 男はふたたび歩き出した。そのときやや強めの風がアゲインストからフゥ~~っと吹いた。
『んっな訳はありますよ』
「え、ええ~~~っ!!!」
 男はまたまた立ち止まり、怖々(こわごわ)と辺りを見回した。だが、そこには、やはり、♪♪ただ風がぁ~吹いているだけぇ~♪だった。
『ははは…疑問にお答えしましょう。すべてはあなたの心が生み出した映像であり、声であり、そして、この私、風なのです…』
 風は男に格好よく囁(ささや)いた。いや、囁いたように男には感じられた。そしてどういう訳か、男の風に対する疑問は、いつの間にか風のように消え去っていた。
 まあ、疑問など挟(はさ)む余地はなく、ただ風は♪吹いているだけぇ~♪なのです。^^

                                完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする