水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (1)疑問

2020年01月05日 00時00分00秒 | #小説

 幼い子供は「なぜっ?」と、よく訊(たず)ねるが、そんなとき、大人はすぐに答えられず、「ははは…まあ、そうなってるからさ」とかなんとか適当に誤魔化(ごまか)して逃げることが多い。よくよく考えれば、大人もその疑問が分かっていないのである。^^
 さて、この短編集では、日常のそうした疑問に思える四方山話(よもやまばなし)を書き連ねていきたいと思う。あんた、この師走(しわす)のクソ忙(いそが)しいときに、なんて暇(ひま)なんだっ! …と思われる方もお有りだろうが、実はこれでも結構、忙しいのだ。だが、なぜ忙しいのか? という疑問が解けないでいる。^^ まあ、それはそれとして、一応、お読みいただければ有り難い次第である。今日はその(1)として疑問という総論的なお話を語りたい。講談のようにはいかないと思うが、グッ! と我慢をお願いいたします。^^
 とある公園である。一人の老人がベンチに座り、買ったカップ酒の小瓶を片手に中秋の名月を愛(め)でている。グビッ! とひと口飲んでは小瓶をベンチに置き、買ってきた木箱入りの寿司を摘みながら月を愛でる。そして、愛でたあとは、グビッ! とまた、ひと口飲む。この繰り返しである。この繰り返しが何度も繰り返され、やがて男は酔いが回り、いい気分へと誘(いざな)われていった。そのときである。男の脳裏(のうり)にふと、『なぜ私は、こんなことをしているんだ? という素朴な疑問が浮かんだのである。
「分からんっ…」
 老人は、ひと言そう呟(つぶや)くとベンチを立って帰ろうとした。そこへ別の老人がコンビニ袋を提(さ)げて現れた。
「おおっ! 今日は先を越されましたな、ははは…」
「んっ? ああ、これはお隣の…」
 老人は、自分はいつも、こうしていたからこうしているんだ…と、深く考えず素朴な疑問が解けた。
 日常の小さな疑問は、このように、そうしていたからそうする・・といった疑問に思っていない疑問が多々ある訳だ。^^

                                完


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