水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

それでもユーモア短編集 (51)雰囲気

2019年04月30日 00時00分00秒 | #小説

 同じ内容だとしても、周(まわ)りを取り囲む雰囲気が違えば、その時々に生じる結果は自(おの)ずと異(こと)なることになる。いい雰囲気ならいいが、悪いとコトは上手(うま)く運ばない。それでも! と抗(あらが)ってやろうとしたところで、相手は見えない雰囲気だから、人が敵(かな)う訳がない。^^
 とあるコンサートホールである。夕方近くより始まったクラシック演奏会は、いよいよ佳境(かきょう)[クライマックス]へ入ろうとしていた。当然、ホールはいい雰囲気に包まれ、観客は微動だにせず聴き惚(ほ)れている。ただ、その中のひと組の男女だけは少し様子が異なった。女性は聴き惚れていたが、男性はウトウトと首を時折り項垂(うなだ)れ、うたた寝をしていた。そして、ついに座席の前へ倒れ落ちそうになったとき、女性が慌(あわ)てて身体(からだ)を受け止めた・・と、話はこうなる。^^
「眠ってらしたのっ!?」
「ははは…どうもっ! 残業続きで少し疲れてましてねっ!」
 実のところ、男性にとってクラシックは余り興味がなく、管弦楽団が奏(かな)でる演奏は、もっぱらいい雰囲気の子守唄だったのである。
「あら、そうなんですの?」
「ええ、まあ…」
 このように、自分が好む雰囲気でない場合、それでも言い訳の口実(こうじつ)はなんとかつくのである。^^

                                  


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それでもユーモア短編集 (50)ノボォ~~

2019年04月29日 00時00分00秒 | #小説

 ノボォ~~という言葉は普通、使われない。というか、使われる機会が少ない・・と表現した方がいい擬態語の一つだろう。『あの人はノボォ~~としているな…』とかなんとか言われて使われる場合が多い。全国各地で使われるか? は疑問で、? と、首を傾(かし)げる人もあるだろう。ノボォ~~とは、まあそんなノボォ~~とした言葉なのである。^^ このノボォ~~は、なかなかのもので、周囲から急(せ)かされるように迫(せま)られても少々のことでは動じない強みがある。
 とある都会の大店舗の新商品売り場である。売り場の前には長蛇(ちょうだ)の列が出来ている。いっこう前へ進まない列に、ほとんどの人がイライラしている。そこへ一人のノボォ~~っとした人が現れた。この人も列に並ぶ人々と同じように新商品を買いに来た一人だ。
「あの…どれくらい並ばれてます?」
 ノボォ~~っとした人は、最後尾に並ぶ人に、ノボォ~~っとした声で訊(たず)ねた。
「もう小一時間ですよっ! 進んだのはほんの2mほどですっ! ちっとも進みゃしないっ!! おやめになった方がいいですよ」
「ああ、そうなんですか。どうも…」
 ノボォ~~っとした人は、それでもノボォ~~っと並び始めた。
「並ぶんですか?」
「はい、他にすることもないんで…」
 ノボォ~~っとした人は、バッグから折り畳(たた)み椅子をノボォ~~っと取り出すと、広げてノボォ~~っと座った。
 しばらくすると急に人の動きが激しくなり、人々は蜘蛛(くも)の子を散らすかのように消え去った。
「どうしたんです?」
 ノボォ~~っとした人は、最後尾から二番目に並ぶ人にまた訊ねた。
「売切れみたいですよ。…じゃあ!」
 最後尾から二番目に並ぶ人も消え、店の前はノボォ~~っと人だけになった。小一時間したそのとき、店の主人がシャッターを下(お)ろそうと出てきた。
「? お客さん、どうされました?」
「つい、ウトウトしてしまいました。そろそろ帰るとしますか、ははは…」
 ノボォ~~っとした人は、そう言うと折り畳み椅子からノボォ~~っと立ち上がった。
「なんだ、まだ並ばれてたんですか? そりゃ~お悪いことをしました。いいでしょ! 一つ、取ってあるのをお売りいたしましょ!」
「いや、それはそれは、どうも…」
 ノボォ~~っとした人はノボォ~~っとした声でそう言うと、新商品をノボォ~~っと買い、ノボォ~~っと帰っていった。
 このように、ノボォ~~は、それでも続ける持続力があり、しかも、目に見えないオーラのようなご利益(りやく)を得られる優(すぐ)れた力がある訳である。^^

                                  


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それでもユーモア短編集 (49)完璧(かんぺき)

2019年04月28日 00時00分00秒 | #小説

 ははは…これで完璧(かんぺき)な仕上がりだっ! と、したり顔で昼食にしたところ、デスクへ戻(もど)った瞬間、「課長っ! えらいことですっ! ワン! ともニャゴりませんっ!」と、仕上がりミスを指摘されることがある。
「ば、馬鹿なっ! 俺が確認したんだぞっ!」
 と、力んでみても、あとの祭りで神輿(みこし)は出ない。^^ それほど完璧は完璧ではない訳だ。それでも人は完璧を求めて、飽(あ)きもせず試行錯誤(しこうさくご)を繰り返している。どうも、これが人が持つ生まれた本性なのかも知れない。
 手術が終ったばかりのカンファレンス室である。患者の家族が心配そうに執刀医を待っている。しばらくして、徐(おもむろ)にスゥ~っと現れた執刀医が告げる。どうも頼りなさそうな医師だ。
「先生っ!!」
「手術は完璧に成功しましたっ!」
「完璧ですかっ!」
「はい、もちろん! 私が言うんですから間違いありませんっ!」
 自慢げな執刀医はその後、手術の詳細を家族に報告した。それでも不安な家族は、執刀医に繰り返して訊(たず)ねた。
「あの…ほとんどダメだというお話でしたが…。ほんとに大丈夫なんでしょうか?」
「諄(くど)いですなっ! 完璧ですよっ!」
 手術は完璧だったが、その医師は患者の家族を間違えていた。完璧ではなかったのである。^^
 このように完璧と思えることは、それでも完璧を追求する必要があるのである。^^

                                  


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それでもユーモア短編集 (48)ごく僅(わず)か

2019年04月27日 00時00分00秒 | #小説

 ほんの取るに足らない量や大きさだと、ごく僅(わず)かずつ増え[大きくなっ]たり減[小さくな]ったりしたとしても、大して変わったという実感には乏(とぼ)しいものだ。これは例えば、10分の1=10%という実感と10000分の1=0.01%という実感の差に似通(にかよ)っている。それでも、元の状態よりは変化している訳だ。このごく僅か・・という存在が、どうしてどうして、なかなか侮(あなど)れないのである。1000兆規模にまで膨(ふく)れ上がった国の公債発行残高ひとつを取って見ても、お分かりだろう。^^ まあ、そんな小難(こむずか)しい話は政治家諸氏にお任せするとしよう。^^
 ここは、とあるよき時代の田舎(いなか)の家庭である。皐月(さつき)の鯉の吹き流しが清風に誘われ、小気味よくはためいている。柱(はしら)の前へ立たせ、弟の身長を測(はか)る兄。粽(ちまき)を頬張りながら弟が言う。
「兄ちゃん、伸びたかっ?」
「こらっ! 動くなっ!」
「うん!」
「…去年よりはごく僅か、伸びたか…」
「ごく僅か・・ってことはないだろ」
 この瞬間、弟は爪先(つまさき)を少し上げ、ズルをした。
「? 測り間違えたか?」
「だろっ?」
「ああ、ごく僅かってことはないか。ははは…伸びた伸びたっ!」
 二人は笑い合った。笑った瞬間、弟は爪先を思わず下げてしまった。
「? あれっ、また低くなったぞっ?」
「もういいよ、兄ちゃん」
「だなっ!」
 こういう場合は、それでも! と正確さを求めて測らず、暈(ぼ)かすのがいい。^^

                                  


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それでもユーモア短編集 (47)やるっ!

2019年04月26日 00時00分00秒 | #小説

 やるっ! と思わないと、あるいは思えないと、すべてのコトは前へ進まないし成し得ない。要は、やるかやらないか・・というその一点に尽(つ)きる訳だ。梃子摺(てこず)ることでも、やろう! と思えば、それでも出来るのだが、多くの人はやるっ! という気分までには至らず、断念したり諦(あきら)めてしまう。自分がやらないで誰がやるっ! という気力が大事なのだが、その見えない心のひと声がなかなか聞けない訳だ。CMで超有名なロック歌手の方のひと声なら聞けるのだが…。^^ 
 やるっ! と意気込むのはいいが、先の結果が見えない、やるっ! はダメだ。ただ単なる向こう見ずとなる。それでもやるっ! と徹底して思えるコトは、ダメなようでも何か意味がある内容に違いない。
 大相撲好きのとある老人が、楽しみにしていた千秋楽のチケットが手に入らず、テンションを下げて家へ戻(もど)ってきた。
「どうしたんです、父さん?」
 初老の息子が訝(いぶか)しげに訊(たず)ねた。
「いや、なんでもないっ!」
「そうですか? なら、いいんですが…」
「ああ…」
 否定した老人だったが、その内心は、よっしゃ! こうなったら、なにがなんでも手に入れてやるっ! だった。息子も息子で、その半時間ばかり前、超有名なロック歌手のチケットが売り切れで手に入らず、よっしゃ! こうなったら、なにがなんでも手に入れてやるっ! と燃えていたところだった。そこへ父親のご帰還(きかん)となった訳だが、そんな思いは億尾(おくび)にも出さず、父親に訊ねた・・と、話はまあ、こうなる。
 その後、二人はそれぞれ駆け回った挙句(あげく)、コトを成就した。チケットが入手出来たのだ。
 このように、それでもやるっ! と意気込めば、大よそのことは、めでたしめでたし・・となる訳である。^^

                                  


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それでもユーモア短編集 (46)空腹

2019年04月25日 00時00分00秒 | #小説

 人は食べないと腹が減る。この空腹となる現象に十人十色(じゅうにんといろ)の違いはない。誰もが同じように空腹となる構造に人の身体(からだ)が出来ているからだ[ダジャレではない^^]。空腹なのに、それでも食べないでいるのは身体に余りよくない。夜に食べれば悪いとかよく言われるが、朝型の人のバイオリズムでの話で、取り分けて夜型の人に悪いということではない。それより、空腹のときに食べるのが一番、身体によく、食べないと悪いらしい。身体が生理的に食べることを要求する・・それが空腹という現象らしい。かといって満腹になるまで食べる・・というのもよくないらしい。━ 腹八分目 医者いらず ━ の格言めいた言葉どおりではある。^^
 一人のサラリーマンが昼の二時過ぎ、フラフラと社員食堂へ駆け込んだ。
「おばちゃんっ! 何でもいいから、すぐ食べられるものっ!!」
 見れば、空腹で今にも倒れそうだ。
「どうしたのよっ! 飯盛(いいもり)君」
「落城寸前なんですよっ!」
 そう言いながら、飯盛は崩れるようにテーブル椅子へ、へたり込んだ。
「落城寸前?」
「ええ、落城寸前の白虎隊っ!」
「なに言ってんのよっ! しっかりなさいっ!」
「ぅぅぅ…あと30分、仕事、切り上げるべきだった!」
「そんな大げさなっ! はい、お水!」
 食堂のおばちゃんは、水の入ったコップを飯盛が座る前のテーブルへ置いた。
「ああ、これでひとまず五稜郭(ごりょうかく)っ!」
「五稜郭?」
「はい、五稜郭。水だけではいずれダメでしょうが、ひとまずは…」
「なるほど…。チャーハン定食ならキャンセル分があるけど、それでいい?」
「いい、いいっ! もう、なんでもいいですっ!! それでも…まさか、桜田門外の変ってことは?」
「あるわきゃないでしょ!!」
「食中毒・・あるわきゃですよねっ! ははは…これで明治維新だっ!」
 食堂のおばちゃんは笑いながら黙って頷(うなず)いた。
 やや冷えてはいたが、それでも飯盛は、置かれたチャーハン定食を貪(むさぼ)るように食べ始めた。
 残り物であろうとなんだろうと、空腹になれば、それでも人は食べて生き続けるのである。^^

                                  


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それでもユーモア短編集 (45)気力

2019年04月24日 00時00分00秒 | #小説

 人生を生き抜く上で気力は大事だ。気力が失せた状態が無気力だが、こうなればなにをする気にもならず総(すべ)てが前へ進まない。それどころか次第に鬱屈(うっくつ)した気分となり、やがては心身ともに病気へと悪化することになる。気力といってもいろいろあり、元の気力、すなわち元気が第一となる。気力があっても元気の気力でないと無気力と大した変わりはなく、返ってよくない。^^ お金を首に括りつけた猫・・猫に小判では役に立たない・・ということと同義である。^^
 老人会がとある公民館で開かれている。婦人会の主催で、70歳以上のお年寄りが招待され、大そう賑(にぎ)わっている。
「やあ! お久しぶりですなっ! お元気そうでなによりですっ!」
「はいっ! お蔭(かげ)さまで…」
「私なんか、全然、ダメですわ。お見かけしたところ随分、溌剌(ハツラツ)とされてますな。何か秘訣(ひけつ)でも?」
「ははは…よくぞ訊(き)いて下さいましたっ! 言いたくてムズムズしとったんですわっ、ははは…」
「と、言われますと?」
「気力ですよ、気力! 何事にも気力で望む! これが元気の源(みなもと)ですなっ!」
「ほう! 気力ですか?」
「はい、気力です。何事にも、それでも! と、前向きの心で望んどりますっ!」
「なるほどっ!」
「ははは…あなたも、気力でっ!」
「有難うございます。そうさせていただきますっ!」
 言われた老人は次の日から何事にも気力で望むようになり、元気になっていった。
 人生は、それでも! と、気力で望むことが大事なようだ。^^

                                  


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それでもユーモア短編集 (44)略語会話

2019年04月23日 00時00分00秒 | #小説

 口で言うだけなら誰にだって出来る。要は、━ 言うは易(やす)し 行(おこな)うは難(がた)し ━ となるが、まあ、そこまで言えば味も素っ気もなくなるからやめよう。^^
 誰しも、ああしたい! こうしたい! ああなればいいのにっ! こうなればいいのにっ! と思うものだ。ところがそう上手(うま)くいかないのが世間で、望みを潰(つぶ)そうと忍び寄る。それでも! と思うなら、口にしないことだ。口にすれば、誰もが知るところとなり、コトはおおよそ潰(つい)える・・としたものだ。こういう場合は、略語会話がいい!^^
 とある会社の退社時である。二人のサラリーマンがデスクの書類を片づけながら目配(めくば)せ した。
「…SGでなっ!」
「ああ! AF30M!」
 皆さんには、この意味がお分かりだろうか?^^ お分かりになる訳がなかろうから解説しよう。
『…サマーガーデンでなっ!』
『ああ! 30分後!』
 となる。もう少し詳しく言えば、
『…◎◎ビルの屋上のサマーガーデンで一杯っ!』
『ああ! 30分後に行くっ!』
 といった内容になる。それを傍(そば)で聞いていた課長は、二人の略語会話の意味が分からず気になった。まあ、いいか…と会社を出たのはいいが、それでも気になる課長は、あとを尾行した。そして二人がビアガーデンで飲み出したのを見届け、溜め息を一つ吐いた。
「なるほどっ! SGな…。それで俺はEXか…」
 これも通訳せねばならないだろう。^^
『なるほどっ! サマーガーデンな…。それで俺はイクスセプト[除外]か…』となる。
 このように、それでも口にしたいときは、略語会話で分からないよう暈(ぼ)かすのがいいようだ。^^

                                  


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それでもユーモア短編集 (43)気になる

2019年04月22日 00時00分00秒 | #小説

 表立(おもてだ)っては、「ははは…いや、別にどうでもいいんだよっ!」とかなんとか言ってはみたものの、それでも気になるのが人の本性(ほんしょう)だ。一度、気になると、どうしても知ったり解明したくなる・・というのが人の生まれ持った性質なのかも知れない。ただ、この場合のそれでも! と気になる度合は個人差があり、そう大して気にならず、いつの間にか忘れてしまう人と、他のことを後(あと)回しにしても知りたくなる人のように、様々な違いがある。
 二人の男が通勤電車の中で話し合っている。いつも同じ時間の電車に乗る顔見知りのサラリーマンだ。
「えっ? どのアレです?」
「嫌だなぁ~、金曜の朝、お願いしていたアレですよっ!」
「ああ、アレ。アレはまだ…」
「まだなんですかっ!? あれだけアレを! って言ったじゃないですかっ!」
「ああ、確かに聞きました。聞きましたけどね。こちらにも急用とか、いろいろ出来るじゃないですかっ!」
「そらまあ、そうですけど…。あれだけアレをお願いしておいたんですからっ!」
「分かりました。明日の朝には…」
 迫(せま)られた男は、とりあえず逃げの返事をした。返事をしたのはいいが、この男、全然、気になるタイプではなかったから、アレがなんだったかを忘れてしまっていた。迫られた男の本音(ほんね)は、『弱ったな…アレが分からん。といって、今更(いまさら)、訊(き)く訳にもいかんしな…』というものだった。
「頼みましたよっ!」
「はいっ! アレは重要ですからねっ!」
「いや、私は関係ないんですが、妻の方が…」
 相手の返答に、迫られた男は、『妻の方? …家庭のことか?』と推測した。
「アレは奥さんがお気になされる・・ってことでしょうか?」
「そりゃそうですよっ、アレですからっ!」
「はあ、確かにアレはね…」
 拙(まず)いことに、迫られた男はアレが何のことか、皆目(かいもく)、見当もつかなかった。
「明日は期待しとります」
「はあ…}
 迫られた気にならない男は、今夜は気になって眠れそうにないな…と思った。
 気にならない者でも、社会生活の中では、それでも気になることが生じるのである。^^
 ここで皆さんにだけコトの真相をお話しよう。アレとは、連合婦人会の総会が開催される日だった。連合婦人会の会長である立場上、忘れまして…と訊く訳にもいかず、夫を通じて密(ひそ)かに訊ねたのだった。訊ねられた男の妻は連合婦人会の書記だった・・と、まあ真相はこうなる。^^

                                  


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それでもユーモア短編集 (42)兎(と)に角(かく)

2019年04月21日 00時00分00秒 | #小説

 ダメと分かっていて、それでもやることを兎(と)に角(かく)やる・・と人は言う。兎も角やる・・とも言われるが、まあ、どちらでもいい話だ。^^
 どこにでもいる二人の老人が春の陽気に誘われ、語り合わなくてもいいのに訳の分からない話を語り合っている。^^
「いや、それは兎に角やっておかれた方が無難(ぶなん)でしょう」
「そうですかな?」
「ええ、そう思いますが…。いえ、思えますなっ!」
「さよですか? なら、やっておきましょう。取り分け変わらないとは思うんですがな…」
「いや、それは変わるでしょうなっ! 食べたあとで出すか、食べる前に出すか・・の違いですが、やっておけば安心して食せます。食べている途中で催(もよお)す・・ということも考えられますからなっ! この場合は兎に角やっておくべきでしょう!」
「出しますかっ!」
「ええ、出しておいてください。私は出して来ましたから…」
「では、出すことにします」
 一人の老人は、そそくさと近くのトイレへ入っていった。
 その後、二人は観光バスに揺られながら、買っておいたコンビニ弁当をパクついた。お茶を飲み終え
、二人は人心地ついた。
「どうです? 催さないでしょ?」
「はあ、さようで…。兎に角よかったですなっ!」
 それでも兎に角やっておけば、安心して寛(くつろ)げるのである。^^

                                  


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