水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第ニ百七十八回)

2011年03月31日 00時00分10秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百七十八
「あっ! どうも…。それで、沼澤さんは最近、一度も寄られてないんですか?」
「それそれ! 私も早希ちゃんも少し気味悪いしね。どうしようって云ってたとこなのよお~」
「沼澤さんって、一人暮らしでしたっけ?」
「分かんないわ。霊術師たる所以(ゆえん)ね。それに私、一度も行ったことないから…。なにせ、連絡は電話だけだったからさあ…」
「妙に気になりますねえ。…そういや、店で最後にお会いした夜、『皆さん、お元気で!』って云ってらしたですねえ。それが少し気がかりです」
「まさか、最近さ、巷(ちまた)で流れてる独居老人の孤独死、ってんじゃないでしょうね」
「いやあ…それはないと思いますが、何かに思いつめて自殺、なんてえのは強(あなが)ち、否定できませんよ…」
「ちょっとした、サスペンスじゃない?」
「いや、ちょっとしたスリラーでしょ、この場合」
 二人は大笑いした。まあ、笑えるような不確実な世間話だからいいんだが…と思えた。その後、しばらく話し、最後に早希ちゃんと二人で是非、霞ヶ関へ遊びに来てくれるよう招待して電話を切った。十一時中ば頃の深夜だったが、寝酒の酔いも去り、妙に頭が冴えて寝つけなかった。私はベッドを離れ、テーブルに置いたブランデーをもう一杯、喉へと注ぎ込んだ。


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シナリオ ⑧ 「初恋」 冒頭部

2011年03月31日 00時00分09秒 | #小説

  ━  初恋  ━   水本爽涼
                            
 登場人物

 キャスト表による(別添)

○ 秋の信州連峰 遠景

 青空にぽっかりと浮かんだ白い雲。その下に連な
 る信州の連峰。小鳥のさえずり。

○ リンゴ畑 細道

 格子模様の着物に袴姿の老人が杖をついて歩いて
 いる。一瞬、佇んで信州の連峰を懐かしんで見る。
 腰に下げた手拭いを引き抜くと、うっすら滲んだ
 額の汗を拭き取る。また、懐かしんで信州の連峰
 を見渡す老人。

○ 秋の信州連峰とリンゴ畑

 老人。青い空。樹にたわわと身をつけたりんごの
 実。

○ リンゴ畑 細道

 ふと、我に帰った老人、手拭いを袴の腰に挟むと、
 何事もなかったかのように、ふたたび歩き始める。

○ 秋の信州連峰とリンゴ畑

 青い空。樹にたわわと身をつけたりんごの実。下
 の小道を歩く老人のゆったり歩む姿。また、何を
 思ったか、歩みを止める老人。懐かしく辺りの樹
 々を見る老人。
 樹にたわわと身をつけたりんごの実。
 O.L
 樹にたわわと身をつけたりんごの実。
 T「六十年前」

 青い空。樹にたわわと身をつけたりんごの実。下
 の小道を歩く青年の歩む姿。音楽が流れる。その
 背景の中を「初恋」の詩が字幕で下から上へと流
 れては消え去る。

 青年M「まだ上げそめし前髪の
     林檎のもとにみえしとき
     前にさしたる花櫛の
     花ある君と思いけり

     白きやさしき手をのべて
     りんごをわれにあたへ(え)しは
     薄紅の秋の実に
     ひと恋初(そ)めしはじめなり

     わがこころなきためいきの
     その髪の毛にかかるとき
     楽しき恋の盃を
     君が情けに酌みしかな

     林檎畠の樹の下に
     おのずからなる細道は
     誰(た)が踏み初(そ)めしかたみぞと
     問ひ(い)たまうこそこひ(い)しけれ」

○ メインタイトル「初恋」

○ 旧制中学校 校舎 遠景 昼

○ 同 教室内 昼

 授業風景。 


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特別寄稿(シナリオ) コント⑦ ━ くつろげる場所 ━

2011年03月31日 00時00分08秒 | #小説

 ━ くつろげる場所 ━    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
  登場人物

  パパ … 30代 キャスト表による
  ママ … 20代 キャスト表による
   娘 … 小学生 キャスト表による

○ 浴室 前廊下  夕方

 娘がやってくる。

 娘「パパッ! 早く上がってね!(内に向けて)」

○ 同 中  夕方

 浴槽に浸かるパパ。

パパ「んっ? ああ!(外に向けて) …」
パパM「くつろげんな…」

 白い湯けむり。

○ メインタイトル「くつろげる場所」

○ 台所 食事風景  夜

 家族三人が食事をしている。娘、食事を終え、食器
 を持って立ち、洗面台へと歩く。

パパ「おおっ! 感心だな(食べながら娘の方を向き)」
 娘「だって、これしないとママがお小遣い上げてく
   れないもん!(食器を洗いながら、淡白に)」
パパ「…」
ママ「…、早く寝なさい(取り繕うように)」
 娘「はぁ~い(上辺だけ返して)」

 洗い終わった娘、台所の二階への階段を登り始める。
 台所の側壁にかけられた時計が七時頃を指してい
 る。パパが食べ終え、立つとそのまま去ろうとする。

ママ「パパッ!!(強く)」

 パパに一瞬、目線を遣るママ。振り向くパパ。合う目
 線と目線。ママの目線がパパの食器に落ち、ふたた
 びパパを威圧ぎみに見る。

ママ「…」
パパ「はい…(抵抗できず)」

 後戻りし、食器を洗面台へと運ぶパパ。

○ 同 洗面台  夜

パパM「ここも、だめか…(食器を洗いながら)」

○ 日の出と家の外景 朝

 小鳥のさえずり。地平線から昇る朝日 

○ トイレ 前廊下  朝

 

 娘がパパが出るのを忙しく待っている。

 娘「パパ、遅刻するから早く出てよっ!(内に向け
   て)」

○ 同 中   朝

 便座に腰を下ろしたパパ。

パパ「んっ? ああ…(外に向けて)」
パパM「やはり、だめか。くつろげる場がない…(テ
    ンションを下げて)」

○エンド・ロール

 スタッフ、出演者等

 T「おわり」


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特別寄稿(シナリオ) コント⑥ ━ 困った人 ━

2011年03月31日 00時00分07秒 | #小説

 ━ 困った人 ━    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
  登場人物


  老 人 A … キャスト表による 
  老 人 B … キャスト表による
  喫茶店主 … キャスト表による
     N   … 男声、女声、どちらでもよい

 

○ とある喫茶店内 近景 昼

 ご近所の茶飲み仲間、老人AとBがボックス席に腰
 を下ろし、コーヒーを飲みながら対面で話している
 近景。

老人A「それは悪いでしょう!(声高に否定して)」
老人B「いえ、そんなことないです(納得させるように)」
老人A「そうですかねえ?(窺うように)」
老人B「ええ、そんなものは当然のサービスですから…」
 云い返せず、黙り込むA。テーブル上のコーヒーカ
 ップを手に持ち、啜り始めるしたり顔のB。


 

○ 同 喫茶店内 遠景 昼

 二人が話す遠景。      

N 「この二人、いつも極上のスイーツを目当てにこ
   の店へ来ては食べて帰っていく常連客である」 


 

○ メインタイトル「困った人」


 

○ 同 喫茶店内 近景 昼

 二人が話す近景。

老人A「だって、スイーツですよ?(腑に落ちず訊き)」
老人B「ええ、そうですよ。ただのスイーツです」
老人A「いつもは悪いですよ、ご主人に…」
老人B「いやあ、ご主人は納得されとるんですから…」 

 至極、当然といった態度のA。盆上にサービスのスイ
 ーツを乗せて現れる、二人と同年配の店主。

店 主「えらく盛り上がってますなあ、おふた方(盆か
    らスイーツ皿を二人の席に置きつつ微笑み)」
老人B「ああ、いつも、すいませんな(さも当然、と云わ
    んばかりに)」
店 主「ははは…、お気にされず。お二人がみえられ
    ると、なぜか心が安らぐんですな、これが不
    思議と」

 Aは申し訳なさそうに、ただ黙って恐縮し、頷くだ
 け。片や、Bは動じず、強気である。

老人B「おお、そうですか。そりゃ、よかった! 話は変
    わりますが、いつもいただくこのスイーツ、な
    かなか美味いですな」
店 主「そうですか? そりゃ、よかった。お口に合っ
   たようですな。まあ、たかだか数千円のもん
    ですから…」
AとB「エエ~~ッ!(声を合わせて驚き)」
店 主「そんなに驚かれずとも…。代金はちゃんと、奥
    様方から、いただいとりますから…(軽く嗤っ
    て)」
AとB「エエ~~ッ!!(再度、声を合わせて驚き)」  
  
○ エンド・ロール

 スタッフ、出演者等

 T「おわり」


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特別寄稿(シナリオ) コント⑤ ━ あわてなさんな ━

2011年03月31日 00時00分06秒 | #小説

 ━ あわてなさんな ━    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
  登場人物

  頑強そうな浮浪者 … 中年男(キャスト表による) 
  セレブでひ弱そうな子 … 小学生(キャスト表による)  

○ とある公園 昼下がり

 枯れ葉が時折り舞い落ちる。ベンチにうらぶれたボロ着
 を纏い、座っている頑強そうな浮浪者の男。木漏れ日が
 暖かく男に降り注いでいる。サッカーボールを一人で蹴
 り、無心に遊ぶ蝶ネクタイをしたセレブな身なりの小学
 生。そのひ弱そうな小学生を、ただじっと遠目に見続け
 る男。

○ 青空と秋の雲 昼下がり

 太陽がクロス光線(カメラ・フィルター効果)を描いて青
 空に輝いている。

○ メインタイトル 「あわてなさんな」

○ 同 公園 昼下がり

 小学生の何げなく蹴ったボールが男のベンチまで転が
 ってくる。拾って軽く手で返す男。転がって小学生の足
 元へ戻るボール。

小学生「おじさん、ありがとう(笑顔で元気に)」
 男  「ああ…(少し照れて)」

 何回か軽く蹴って、ボールを止める小学生。男の方を
 振り向く小学生。

小学生「おじさん、この辺りじゃ見かけない人だよね?」
 男  「ああ、そうだな。…坊主、それが、どうかしたか?」
小学生「ママがね、余り見ず知らずの人と話しちゃ駄目
     だって云ったんだけど…」
 男  「なら、話さなきゃいいだろ」
小学生「…そうだけどさ。おじさんの服がさ、珍しいから
     …(小さく笑い)。そんなの見たことないもん」
 男  「おお、そうか…。どうだ、なかなか、いいだろうが
    (自慢げに)」
小学生「んっ! すっごく格好いい。え~とね、ちょっと待
     って…」

 ポケットに手を突っ込み、デジカメをとり出す小学生。

小学生「おじさん、撮っていい?(カメラを手で男に示し)」
 男  「ああ、いいぜ、坊主…」
 小学生、デジカメのシャッターを幾度となく切る。撮り終
 えてポケットへカメラを納める小学生。反対側のポケット
 から帯封付きの百万円の札束をとり出す小学生。男に
 歩いて近づく小学生。

小学生「これね…。少ないけど、ほんのお礼」

 札束を男の目の前へ差し出す小学生。眼前の札束に、
 少しとり乱す男。だが、すぐ威厳をとり戻す男。

 男  「ぼ、坊主…。じゃねえや、坊ちゃん。それは、い
     けねえぜ(拒んで)」
小学生「そうなの? 多い?(分からず)」
 男  「多いの、なんのって…(呆れて)。坊ちゃん、人生
     は長いんだぜ(云い聞かせるよに)、そうあわてな
     さんな。そんな大金を俺なんぞに…」
小学生「そうお? 今日のお小遣いの半分だけだよ?」

 口をポカンと開け、唖然とする男。

小学生「おじさんって、からっきし、なんだね?」

 返す言葉がない男。札束をポケットへ戻し、ボールの方
 へと去る小学生、ふたたびボールを蹴り始める。ボー
 ルを蹴って遊ぶ小学生を、ただじっと見続ける男。

 男M 「あわて過ぎた…(威厳を失った声で)」

 ボールを蹴って遊ぶ小学生を、ただじっと見続ける男。

○ エンドロール

 出演者、スタッフなど。

 T「おわり」


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特別寄稿(シナリオ) コント④ ━ クリスマス・モドキ ━

2011年03月31日 00時00分05秒 | #小説

 ━ クリスマス・モドキ ━    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
  登場人物

   格好いい若者 男 … キャスト表による
   格好いい若者 女 … キャスト表による
   マッサージ師 男 … キャスト表による
   マッサージ師 女 … キャスト表による
  

○ とある噴水前の待ち合いベンチ 夜

 男がベンチに座っている。クリスマス・イブのBG
 Mが、どこからともなく流れてくる。ビルの街頭に
 設置された電光掲示板。そこに映し出された時報テ
 ロップが8:10を示している。

○ メインタイトル「クリスマス・モドキ」

○ 同 待ち合いベンチ 夜

男「遅いな…(腕時計を見ながら)」

 息を切らせて小走りに現れる女。ドラマの名シー
 ンを彷彿とさせる二人。

女「… … 待ったぁ?(息を切らせて)」
男「いやあ、そうでもないさ…(わざと否定して)」
女「そう? …」

 一瞬、流れる沈黙の時。ドラマの名シーンを彷彿
 とさせる二人。

男「じゃあ、行こうか…」

 ベンチから立ち上がる男。

女「…」

 黙って頷き、立ち上がる女。

○ とある整体の専門店 外景 夜

○ 同  マッサージルーム 夜

 二床の整体用ベッドが平行に並んでいる。その上に
 男女がうつ伏せに寝てマッサージを受けている。男
 には男のマッサージ師、女には女のマッサージ師が
 担当している。先ほど流れていたクリスマスのBGM
 が小さく聞こえている。

マッサージ師 男「イブにマッサージを受けられるカッ
           プルは余りおられません(小笑いし
           て揉みほぐしながら)」
男と女「…(返答できず)」

○エンド・ロール

 キャスト、スタッフ等

 T「おわり」


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特別寄稿(シナリオ) コント③ ━ 足の靴ダコ ━

2011年03月31日 00時00分04秒 | #小説

 ━ 足の靴ダコ ━    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
  登場人物

  男 … キャスト表による
  足の靴ダコ N… キャスト表による
  
○ リビングルーム 夜 

 バスローブを着た風呂上りの男が新聞を読みなが
 
ら長椅子に座っている。読み終えて何げなく新聞を
 前のテーブルに置き、立ち上がる男。室内の小物
 入れより爪切りを取り出し、ふたたび長椅子へ座る。
 足裏を見る男。

○ 男の足裏

 男の靴ダコができた足裏。靴ダコ(カメラアップ)。
 
○ メインタイトル「足の靴ダコ」

○ 同 夜

 足の爪を切り始める男。一瞬、切る手を止め、足裏
 の靴ダコを、ふたたびシゲシゲと見る男。

○ 男の足裏

 靴ダコ(カメラアップ)。

男声「靴ダコも伸びるから不思議なんだよなあ~」

N  『そりゃ、わてかて伸びまっせ!』

○ 同 夜

 ふたたび、足の爪を切る男。爪を切り終わって、立
 ち上がり、小物入れよりハサミを取り出し、また
 長椅子へ座る。靴ダコを切り始める男。

N  『そない荒けのう切ってもろたら痛いがな。優し
    ゅう切ってや。…そうそう、ええ具合やがな。あ
    んた、切るの上手いな』

 聞こえない男、切り続ける。やがて切り終え、切っ
 た爪と皮の始末を始める。手の平の上の切られ
 た爪と皮。汚そうにテーブル上のティッシュに、く
 
るめる男。

N  『あんたのもんなんやさかい、そない汚ながらん
    でも、ええがな』

 聞こえない男、立ち上がって部屋隅の屑籠へ狙い
 を定めて投げ入れる。スンナリと屑籠へ入るティ
 ッシュ。

男  「うまいっ!(自己満足して微笑み)」

○  同 屑籠 夜

 屑籠の中。捨てられたティッシュ。

N  『あほらし! なにが、「うまいっ!」 や!!』 

○ 同 夜

 満足げな男。立って、爪切りとハサミを小物入れ
 へ戻す。ふたたび、テーブル上の新聞を手にする
 男。長椅子へ座り、
新聞を読み始める男。

○エンド・ロール

 キャスト、スタッフ等

 T「おわり」


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特別寄稿(シナリオ) コント② ━ ユルキャラ ━

2011年03月31日 00時00分03秒 | #小説

 ━ ユルキャラ ━    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
  登場人物

  ユルキャラA … 男
  ユルキャラB … 女
  N …男声、女声、どちらでもよい
  
○ とある街の駅 出口 昼 

  駅構内付近の喧騒な人々の出入り。

○ 駅沿いに植えられた木々 遠景 昼  

 歩道に植えられた冬の木々。木枯らしが舞っている。
 ほとんど枝葉を落とした木々。(流し撮り)

○ 同 近景 昼

 背景の空は、どんより曇った鉛色。

○ 同 梢 昼

 木々の梢。わずかに一枚残った枯れ葉が風に震える。
 やがて、その一枚が梢から離れて道路下へと落ちて
 いく。ゆっくりとスローモーションで落ちる枯れ葉。
 ストップモーション。

○ メインタイトル「ユルキャラ」

○ 駅沿いに植えられた木々 梢 昼

 スローに梢より幹へ、幹から歩道へ。(カメラのパン)

○ 同 梢下の歩道 昼

 俯瞰。ユルキャラが、歳末大売り出しの街頭宣伝を
 路上で繰り広げている。賑やかなパフォーマンス。
 余り気に留めず行き交う通行人の群れ。

○ 空と街 昼から夜

 どんより曇った鉛色の空から暗黒の空へ(時間経過)。
 街頭の灯やネオンがカラフルに輝き始める。

○ 歩道 夜

 パフォーマンスをやめる二人。まばらに行き交う通行
 人の姿。

N「この二人、実は、太陽の三倍の質量をもつシリウス
  系の異星人なのである(厳粛な声で)」
A「五時か。さっ! そろそろ終わろうや…」
B「そうね…」
A「六時からは人間だから忙しいよな」
B「ええ…」

 撤収を始める二人。

N「皆さんには、二人が話した話の内容が理解できる
  だろうか(厳粛な声で)」

○ ビル影の着替え部屋 夜

 窓に外のネオン光が映る薄暗い部屋。ユルキャラか
 ら抜け出る二人。やや疲れ気味の二人。椅子に座り
 溜息をつく二人。

N「二人はこれから、人間を演じるのである。ネバネバ、
  ネチネチとした人間を、である。二人が真の姿を取
  り戻すのは、あけ方なのである。その時、二人は人
  間の皮を脱ぐのである(厳粛な声で)」

○ 歩道 夜

 まばらに行き交う通行人。

N「あっ! 勘違いしないでくださいね。ネバネバ、ネ
  チネチと云ったって、そんなイヤラシイ意味じゃ
  ありませんよ(明るく軽い声で少しニヤケぎみに)」

○ エンドロール

 キャスト、スタッフなど

 T「おわり」


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特別寄稿(シナリオ) コント① ━ 酔っぱらったタコ星人 ━

2011年03月31日 00時00分02秒 | #小説

 ━ 酔っぱらったタコ星人 ━    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
  登場人物

  タコ星人 … 異星人
  会社員A … 先輩社員 男
  会社員B … 新入社員 男
  酒屋の主人 …男

○ とある街角 歩道 夜

 薄暗い歩道。酒に酔った新年会帰りの会社員二人が
 話しながら歩く歩道。ビルの隙間に潜み、二人の姿
 を観察するタコ星人。ヨロめきながらも、少しずつ
 タコ星人の方へ近づく二人。

○ メインタイトル「酔っぱらったタコ星人」

○ 同 歩道 夜

 手にした小型翻訳機(地球上には未だない)で会話
 の言葉を異星語に翻訳するボタンを押すタコ星人。
 二人の会話に、首を捻ったり、うなづいたりするタ
 コ星人。

タコ星人「○×△§?[タノシイノカ?] …※■△、☆
     ◆。%&#*! [ …ソレニシテモ、ナゼサワ
     グ ヒツヨウガアル!]  ◎?[シゴトカ?]…◇
     ”●<>★[…ドウモソノヨウダ]」
 
 相変わらずフラフラと千鳥足で歩く会社員二人。
 かなり出来上がっている。タコ星人の潜む方向へ、
 なおも近づく二人。

会社員A「ハハハ…。お前、なかなかいい声してたぞ
      ぉ~、ウィッ!(呂律が全然、回らない)」

会社員B「なに云ってんスカっ! 先輩もなかなかい
      い喉してましたよお~~。酒も美味いし、最
      高っスねぇ~、ウィ!(呂律が時折り回らな
      い)」

 楽しげで、気持ちよさそうにフラついて歩く二人を
 ただじっと、ビルの隙間に潜み、観察するタコ星人。
 翻訳機の声に耳をそばだてるタコ星人。

タコ星人「○、◇×。[サケトハ、ウマイヨウダ。]…▽! 
      &、◎◆□#![…ヨシ! ヒトツ、ノンデミル
      コトニシヨウ!]」

 ビルの隙間に潜むタコ星人に気づかず、通り過ぎる
 二人。タコ星人から遠ざかる二人、次第に小さくな
 る。ズボンベルトの真ん中のダイヤルを回すタコ星
 人。スウ~っと透明になり、姿を消す。

○ 酒屋 自動販売機前 夜

 スウ~っと、現れるタコ星人ズボンベルトの真ん
 中のダイヤルを元の位置へ戻し、眼前の自動販
 
売機(酒)をじっと見るタコ星人。

タコ星人「★◎![コレダナ!]」

 タコ星人、指のリングを自動販売機(酒)に向ける。不
 思議な光がリングから出て、自動販売機を照射する。
 ボトン! という音とともに出る酒カップ。それを
 取り出して飲むタコ星人。すぐ、ヨロめきだす。

タコ星人「◎、○![イイ、ホシダ!] …¥、&□$[…
      
ッソク、ナカマヲヨブコトニシヨウ](ヨロめき
      ながら)」

○ 同 自動販売機前 翌朝

 酒屋前に散乱する、ゆで上がったタコの山。ガラス戸を開け
 
て出てきた酒屋の主人。
 
酒屋の主人「だれや! こんなとこに捨てたんは…(ゆでダコ
          の山を覗き込んで)。よっしゃ! これはメッチ
          ャ、もうかるでぇ~。正月やしな、
酒のアテに
          
なっ!(ニタリと笑い、カメラ目で)」

タコ星人(M)「×、★●~![ ソ・ン・ナ、ア・ホ・ナ~!]」

○エンド・ロール

 スタッフ、出演者等

 T「おわり」

 


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特別寄稿(シナリオ) コント(0) ━ バナナを見続ける男 ━

2011年03月31日 00時00分01秒 | #小説

 ━ バナナを見続ける男 ━    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
  登場人物

  男…中年男性
  バナナ… N(男声、女声、どちらでも構わない)


○ 安アパート とある部屋 夜

 うす汚れた部屋。机の上。ただ黒ずんだひと房のバ
 ナナだけがある。それをじっと腕を組んで見続け、
 考え込む一人のうらぶれた男。男を照らす吊り下げ
 られた電球一個の灯り。

○ メインタイトル「バナナを見続ける男」

○ 同 部屋 夜

 両手を合掌して、食べようとするが、ふと思いとど
 まる男。そして突然、絶叫し、ブツブツと呟き始め
 る男。

男「なんでや! なんでお前は黒うなるんや。一週間
  はいけると思てたんや! いや、十日はな(涙声
  で)。お前は生命線なんやで…あかん! 黒うな
  ったらあかん! あかんにゃで~(言い聞かせる
  ように)」
 
 突然、語りだすバナナ。

バナナ「私はバナナです」

男「えっ? (自分の耳を、指で擦りながら)ええ~
  っ! それは分かったるにゃ。分かったるにゃで
  ぇ~~。お前はバナナや。(バナナが話すという
  こと自体を疑うように、バナナを覗き見て)」

バナナ「私は黒くならなければダメなのです。それが
    生命線なのです。私は食べられてナンボのも
    のなのです。分かって下さい~(懇願するよ
    うに)」

男「いや、いやいやいや、それはおかしいわ。それは
  あまりにもワガママや。自分勝手や。そんなら、
  このワイはどうなる? どうなるんやいな? 云
  うて! 云うてんか!(やや切れぎみに)」

バナナ「わ、私にどうしろと云われるんですか?」

男「そんなん…。今、云うたやないか。黒う、黒う
  ならんとってくれたらそれでええんや。簡単な
  ことやないか。バナナな君なら分かるやろ。…
  バナナな君か・・、これは自分でも上手いこと
  云えたな。ほめてあげたい。自分をほめてあげ
  たい。なんや、こんなこと云うてたマラソン選
  手いたなぁ~」

バナナ「何を云っておられるんですか?」

男「なんや! なんにもないわい! 馬鹿にしくさっ
  て…(泣いて)」

バナナ「馬鹿になんぞしておりません。ただ、私は
    私の存在価値を述べたまでです」

男「ほなら、ワイの存在価値はどこへ行ってしもたん
  や? わいはバナナ以下かい! バナナ以下なら
  なんやねん!」

バナナ「…知りません」

男「まあ、ええわ。…百歩、譲って黒うなるのは我慢
  しよやないかい! (急に懇願調の声になり)ほ
  んでいったい、どれだけもってくれんにゃいな?
  十日はいけるんか? 三日は、かなんでぇ~。ほ
  れはあかん。きつい」

バナナ「分かりました。こうしてお話ししてても、切り
    がありません。何とかしましょう」

男「えっ!? どないすんにゃいな?」

 バナナ、突然、純金に変身する。

男「かなんなぁ~。これでは食えんがなっ!(悲しそ
  うに)

 バナナを見続ける男。

○ エンド・ロール


 スタッフ、出演者等

 T「おわり」


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする