予定という言葉がある。訓読(くんどく)すれば予(あらかじ)め定(さだ)める・・と読めるように、前もって決めておけば、たいそう助かり、安心してコトが運べるという事前措置(じぜんそち)を意味する。そうすると当然、楽しい気分に浸(ひた)れる・・と、まあ、話はこうなる訳だ。^^ ただ、総(すべ)ての事柄(ことがら)がキッチリと予定されれば、これはもう肩が凝(こ)ってコリコリになることだろう。それは困るっ!^^
とある俳句会で旅行計画が立てられている。旅行先で一句、捻(ひね)ろう! という企画だ。同人(どうじん)は十人程度で、そう多い人数ということではないが、行き先が決まらず、楽しい句会のはずが、どうも揉(も)めているようだ。
「それは違うでしょ! 削節(けずりぶし)といういい名勝の地があるんですからっ!」
「いやいや、削節よりは煮干(にぼし)の方が有名ですよっ! アチラならいい句が詠(よ)めるはずですっ!」
そこへ別の同人が口を挟(はさ)んだ。
「まあまあ、お二方(ふたかた)。二泊三日なんですから、削節で一泊、煮干で一泊、ってのは?」
「…」「…」
すると、そこへまた別の同人が口を挟(はさ)んだ。
「なるほどっ! 予定としてはいいと思いますよっ!」
そのとき、話を静かに聞いていた主宰者(しゅさいしゃ)がボソッと口を開いた。
「皆さん、私は昆布(こぶ)が適当と考えておるのですが…」
「おっ! 昆布ですか。アソコがありましたなっ!」
「ああ、アソコなら確かに…」
「ですなっ!」
「皆さん、いかがですかな?」
主宰者が威圧するような厳(おごそ)かな声で同人達を見回して言った。一同から、「異議なしっ!」の声が一斉(いっせい)に上がった。
予定は迷わせない強いリーダーシップがあれば、すぐ決まり、楽しい気分は損(そこ)なわれないようだ。^^
完