水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分析ユーモア短編集  <90> 晴れのち曇りのち晴れ

2019年02月28日 00時00分00秒 | #小説

 世の中の事象は、変化しやすく予断を許さない。50年以上前と比較すれば、最近の変化は非常に激しい傾向にある。文明が進んだことが主因(しゅいん)だが、人がその変化についていけなくなるにつれ、その傾向はより強まっている。いつ変化をするか予断を許さない・・という油断できない傾向の強まりである。この変化を気候に例(たと)えるなら、晴れのち曇りのち晴れ・・となるだろう。当然その逆もあり、曇りのち晴れのち曇り・・の場合もある。また、晴れのち曇りのち晴れ・・とかなんとか思わせておいて、急な豪雨(ごうう)や大雪(おおゆき)になる場合だってある。^^ 今回は晴れのち曇りのち晴れ・・という分かりやすい例(れい)で、この変化を分析してみたいと思う。
 証券取引所での一場面である。とある会社が一部上場(じょうじょう)した株がその日の朝、会社始まって以来の高値(たかね)をつけ、強含(つよぶく)みに推移(すいい)した。
 社内は、その知らせを聞き、沸(わ)きに沸いていた。
「ははは…快晴、快晴っ!!」
 課長が大声で課員達を見ながら叫(さけ)んだ。だが、沸かない男が必ず一人はいるものである。
「そうですかねぇ~~?」
「妙なことを言うヤツだな、君はっ! 素直に喜んだらどうだっ!」
「いや! 嬉(うれ)しいんですよ、嬉しいんです、ははは…。嬉しいんですが、雲が出てきましたから…」
 テンションが上がらない社員は窓に映る空を指さしながら言った。
「なんだ、天気か…」
 課長は一瞬、怒りを静めた。だが次の瞬間、もう一度、窓をマジマジと眺(なが)め、また怒り出した。
「なんだっ! 雲なんか一つも出とらんじゃないかっ!!」
「はい、確かに…。でも、そのうち出てくると思います…」
「馬鹿なっ! 君は先が見えるのかっ!」
「はあ、まあ多少…」
  テンションの上がらない社員がそう言った次の瞬間である。新しい株価の一報が社内に齎(もたら)された。
「か、課長っ!! えらいことですっ!! うちの株が大暴落ですっ!」
「なっ! なにぃ~~~っ!!」
 課長の声に連動するかのように、天候が急に雨(あま)寄り始めたのである。
「こりゃ、降るかな? …でも、大丈夫か…」
「だ、大丈夫なんだねっ! えっ、君!?」
「はい、…そう思います」
 テンションの上がらない男は、少しテンションを高めて返答した。次の瞬間、空の雲は遠退(とおの)き、ふたたび陽が射し始めた。
 分析の結果、晴れのち曇りのち晴れと世の中は変化しやすいから、一喜一憂(いっきいちゆう)することなく生きるのが最良の策(さく)・・という結論が導(みちび)き出せる。^^

                                  


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分析ユーモア短編集  <89> 言葉

2019年02月27日 00時00分00秒 | #小説

 良い悪いは別として、一度(ひとたび)、言葉を発すれば、一人でいる場合を除(のぞ)き、なんらかの影響を周囲の人々に与える。なかでも、自分の気持を人へ伝える場合、間接的な電話や手紙、メールなどとは違い、直接的な言葉はかなり有効な手段となり得る。世界各地には、いろいろと異なる言語があるが、そもそも、言葉とは? この言葉そのものをのんびりと分析してみたい。
そんなものを分析する時間があったら、大相撲でも見るわっ! …と思われる方もお有りだろうから、そうしていただいても、いっこうに構わない。^^
 とある老人会の会場である。二人のご老人が洗面所で入れ歯を外(はず)し、洗いながら入れ歯語で話している。入れ歯語は世界の共通語として使われてはいないが、入れ歯を外したとき、特定の老人にだけ分かる言葉なのである。
「マファカッ!! フガガ、フガフガッ!? フガフガフガガッ!」
「ファイッ!! フォノ、マファカデッ!! フガガ、フガフガフガ、フガガフガッ!」
「フガガッ!」
「ファイッ! フガガッ!!」
 二人は意気巻きながら握手し、仕出し弁当を食べ始めた。さて、これらの言葉を通訳すれば、こうなる。
「まさかっ! あそこが、ですかっ!? それは困りますなっ!」
「はい! その、まさかでっ! こうなれば、我々有志一同、断固阻止でっ!」
「断固阻止でっ!」
「はいっ! 断固阻止でっ!!」
 となる。
 分析の結果、言葉は通訳がいらないのが一番、分かりよい。^^

                                  


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分析ユーモア短編集  <88> 棒を折る

2019年02月26日 00時00分00秒 | #小説

 棒を折る・・とは、なにも木の棒をベシッ! と折る意味だけで使用されている訳ではない。^^ もっぱら使われるのは、途中で物事を諦(あきら)めたり止(や)めたりする場合が多いのだ。ただ、学校を中退したりする場合は、本人の都合や諸事情もあるから、棒を折る・・と一概(いちがい)には言えないだろう。この言葉を分析すれば、個人差がかなりある事実が見えてくる。短気な人は棒をすぐ折る傾向にあり、逆に気長な人だと棒はいつまでもそのまま存在することになる。ある意味で、気長な人は始末する倹約家(けんやくか)とも言える。三猿(さんざる)・・見ざる、言わざる、聞かざるの一つ、聞かざるだ。お猿さんのお尻が何故(なぜ)、赤いのか? までは知らない。^^
 とある魚河岸(うおがし)である。朝から威勢のいい掛け声で競(せ)りが行われている。競り師が浪曲師のような低音のいい声で器用に競り落とす様(さま)は、まさにプロと言わざるを得ない。
「鰻(うなぎ)がさっぱりだなぁ~」
「シラスが例年の一割っていうから、高値も仕方ねぇ~だろっ!」
「人工孵化(じんこうふか)は出来ねぇ~のかねぇ!」
「研究してんだろうが、棒を折って、鯰(なまず)で代用だろ!? やってらんねぇ~やっ、こちとらっ!」
「だなっ!」
 二人の業者は話しながら魚河岸(うおがし)から消えた。
 分析の結果、水産技術などを含む技術立国の我が国としては、棒を折ることなく達成していただきたいものだ。^^

                                  


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分析ユーモア短編集  <87> ケジメ

2019年02月25日 00時00分00秒 | #小説

 何事かを始めれば、当然、納得して終わる状態が来る。その何事かが終わらず中断する事態となったとき、中途半端(ちゅうとはんぱ)なまま放置せずにやってしまうことを、人はケジメをつける・・と言う。このケジメを、昼食を遅(おく)らせても、きっちりとケジメをつけて分析してみよう。^^
 日曜の朝、とあるサラリーマン家庭の一(ひと)コマである。朝食を済ませた夫は、楽しみにしていたDIY[Do It Yourself の略語で、日曜大工を指す]を始めた。垣根のペンキ塗り作業である。最初の目論見(もくろみ)では昼までには終わるだろう…と、夫は思っていた。作業は順調に進んでいくかに見えた。ところが、である。10時を過ぎた頃、突然、バイブ[振動による感知機能]設定をしておいた携帯が震(ふる)えた。出ると、会社からの急な呼び出しだった。常務からの電話で、聞けば部長昇格が決定したから詳細を伝えたいとの内容だ。気にしていた一件で、朗報だったこともあり、夫は作業を中断し、慌てながら部屋へ戻ると、背広に着替え始めた。
「あらっ! どうしたのっ?」
「会社の急用だっ!」
 部長だっ! 部長、部長っ!! と妻に言いたい気持をグッ! と我慢し、夫はニンマリした顔で玄関へと急いだ。
「おかしな人っ! 今日中にケジメつけてよねっ!」
 妻は中途半端に塗り散らかした垣根のことを暗に催促(さいそく)した。
「ああっ!!」
 妻の声を半(なか)ば聞かず、夫はすでに玄関を飛び出していた。
 その後、ケジメがどうなったのか? 読者の方々はどうお思いだろう?^^ 夫が常務と夜遅くまで祝いの酒を飲んでいた・・という事実はある。^^
 分析の結果、ケジメは本人の強い意志が求められる。^^

                                  


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分析ユーモア短編集  <86> ひと皮(かわ)剥(む)ける

2019年02月24日 00時00分00秒 | #小説

 今までより、どこかひと味(あじ)違った+[プラス]の妙味(みょうみ)が加わると、人はそれを、ひと皮(かわ)剥(む)ける・・と表現する。このひと皮剥ける・・という言い回しを分析すれば、どういう訳か竹の子が、ふと浮かんでくる。湯がいて酢醤油(すじょうゆ)などで食せば、たいそう美味(おい)しい一品(いっぴん)となる。まあ、そんな話は、どうでもいい。^^
 とある春先のデパートである。配属された新人の女子案内係が先輩と並んで座っている。
「先輩、よろしくお願いしますっ!」
「ああ、新しい子ってあなたね。こちらこそっ!」
 先輩の案内係は、少し偉(えら)ぶった声で返した。その日から接遇(せつぐう)のノウハウについて猛特訓(もうとっくん)が始まった。そして月日は流れ、いつしか夏になった。
「あらっ! しばらく休んでたと思ったら、焼けたわねっ!」
「ええ、ハワイですっ!」
「そうなの? ひと皮剥けたわねっ! お仕事もひと皮剥けて欲しいものだわっ!」
 分析の結果、ひと皮剥ける・・は、嫌味(いやみ)を込めたダジャレにもなるのである。^^

                                  


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分析ユーモア短編集  <85> 釣(つ)られる

2019年02月23日 00時00分00秒 | #小説

 他人に影響を受け、思わず同調したり乗ってしまう状態を釣(つ)られるという。この釣られる・・という状態を分析してみよう。
 釣られる・・ということは、釣る人が当然、いるということになる。釣る意思に作為がある場合、例(たと)えば魚を釣りに海へ・・となれば、釣る人は釣果(ちょうか)を楽しみにしたり期待して、作為で釣る訳だ。ところが作為がないと、これも一例(いちれい)を示せば、電車で座席をお年寄りに譲(ゆず)った人を見て、自分の前のお年寄りに思わず席を譲るという釣られる行為となる。この場合は仕方なく…といった釣られ方で、不作為なのである。今日は、そんな釣られて読みたくなるようなお話だ。^^
 高級住宅街に住む、仲のいい二人の主婦の会話である。
「栗山の奥さまったら、とうとう、あのお洋服、お買いになったそうよっ!!」
「あ~~らっ!! そんなに早くっ!?」
「ええ! なにせ、有名ブランドの最新作でござぁ~ましょ! 一番に買って、鼻高々(はなたかだか)じゃござぁ~ませんことっ!?」
「もぉ~~う!! 悔(くや)しゅうござぁ~ますわね、奥さま!」
「ええ! そう、ざまぁ~すっ! 次は負けられませんわよ、奥さまっ!」
「ええ、そうざまぁ~すっ! 必ずお先にっ!」
「ええ、ええ! そのためにも、お店の情報は日々、交代で…」
「分かりましたわっ!」
 次の日から二人の主婦は交代で店に入り浸(びた)ることになった。高級住宅街の主婦達は、有名ブランドの最新作を餌(えさ)にした店の経営者に、ものの見事に釣られることになったのである。
 分析の結果、釣られる・・という場合は、必ず心引かれる[何ものか]があるようだ。よく出来たお方ともなれば、態(わざ)と釣られた振りをして逆手(さかて)にお取りになる。^^

                                  


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分析ユーモア短編集  <84> 布(ぬの)

2019年02月22日 00時00分00秒 | #小説

 人は裸で生まれ、やがて裸で死んでいくが、その人生で身に付ける衣類は、上着、下着を問わず、すべて布(ぬの)で出来ている。当たり前だろうがっ! とお怒りの方もおられることだろう。そこはそれ、この辺(あた)りから分析の話を起(おこ)さないと話にならない ^^ から我慢してお読みいただき、煎餅(せんべい)を齧(かじ)りながらお茶でも飲んでいてもらいたい。^^
 布は縦糸(たていと)と横糸(よこいと)が織(お)り重なることにより、洋服や和服[着物]となっていく訳だが、その布にも当然、寿命があり、破(やぶ)れることになる。正確に分析すれば、破れは織られている糸が弱ることにより切れる現象である。今日は、そんな布に纏(まつ)わる話である。
 とある動物園である。朝から多くの入場客で賑(にぎ)わっている。ひと組の親子がオランウータンが見える位置で見物しながら立ち話をしている。
「父ちゃん、お猿さんはお洋服がいらないから安上がりでいいよねっ!」
「んっ? …ああ、そうだな。いっぱい生えてる毛が天然の服だからな! 熊の毛皮とかあるだろっ?」
「うん! 羊(ひつじ)さんは、その服を盗られるんだよねっ!?」
「ははは…そんな人聞(ひとぎ)き、いや、羊聞(ひつじぎ)きの悪いことを言うもんじゃない! 羊の毛は紡(つむ)がれたあと、織られて温かい布になるんだぞっ!」
「ということは、…稼(かせ)いでるんだっ!」
「そうそう! 餌代(えさだい)くらいは楽に稼いでるなっ!」
 それを聞いていたかどうかは知らないが、オランウータンが気分を害したように厚布のような毛を揺らし、親子の前から姿を消した。たぶん、『稼いでねぇ~で悪かったなっ!』とでも思ったのだろう。^^ 
 分析の結果、ご婦人の温(あたた)かに着ておられる羊毛のコートは、羊の働きによるものなのである。^^

                                  


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分析ユーモア短編集  <83> 平均(へいきん)

2019年02月21日 00時00分00秒 | #小説

 誰もが学生時代、馴(な)れ親(した)しんだ言葉に平均点がある。アベレージという言葉で教育以外でもお馴染(なじみ)だが、この平均という言葉を分析してみるのもいいのでは? と思える。暇(ひま)な人だな…と思う人もあるだろうが、まあ、そう思われても致(いた)し方がないだろう。しかし、爪(つめ)の先ほどの意味はあると考える。^^
 言うまでもなく、一度のいい結果や悪い結果に左右されることなく、総計[トータル]を一定期間や一定回数などで割った値(あたい)が、平均である。平均は、その数値(すうち)によって能力や傾向を知る上での重要な資料[データ]となる。
 とある小学校の教室である。テストの答案用紙が担任の鰻川(うながわ)から生徒へ次々に返されている。
「水産(みのう)さん、場内(ばない)さん、技術(わすべ)さん、稚魚(ちお)さん、成育(せいいく)さん…」
 一通(ひととお)り答案が生徒へ返されると、鰻川が厳(おごそ)かな教師めいた態度で口を開いた。
「… 今回の平均点は62点! 最低は18点、最高は98点でした。前回の平均点が58点でしたから、4点上がったことになります。今後とも、頑張りましょう!」
「は~~~い!」「は~~~い!」「は~~~い!」…
 異口同音(いくどうおん)に生徒達が返事する。
「私もやってみましたが、ド忘れがあったせいで97点止まりでした。前回は99点でしたから平均点は98点です。で、今後も頑張りたいと思いますっ!」
 教師めいた態度とは真逆(まぎゃく)の言葉を聞き、教室一杯に生徒達の笑声が広がった。
 人は神仏と違って完璧(かんぺき)な存在ではないから、平均が大事? というのが分析結果である。^^

                                  


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分析ユーモア短編集  <82> あの頃

2019年02月20日 00時00分00秒 | #小説

 年齢を重ねると少しづつ、過去のよかった頃の姿が見え隠れするようになる。あの頃・・である。あの頃を分析すれば、どういう訳か悪い記憶は薄れ、あるいは消え失(う)せていて、脳裏(のうり)を掠(かす)めるのは、あの頃はよかった…という、いい記憶が多いことが分かる。では、悪い記憶はどこへ消えたのか? だが、記憶に残っていることは残っているのだ。ただ、思い出さないよう、深層心理で脳が思い出さないようストップさせている訳だ。これ以上は医学で専門としている先生方にお訊(たず)ねいただきたい。私のようなド素人(しろうと)には皆目(かいもく)、分からない話である。^^
 とあるレトロな喫茶店で、いつも寄る顔馴染(かおなじみ)の老人二人が話をしている。
「いやぁ~最近は買い物袋も有料でしょ?」
「そうそう! つい、あの頃の癖(くせ)が出て、忘れてしまいますなっ、ははは…」
「はいっ! あの頃は世の中、まだ活気がありましたっ!」
「あの頃でしょ?」
「ええ、あの頃ですっ!」
「バブルの頃の」
「いやいや、1ドルが360円当時の…」
「ははは…随分(ずいぶん)、古いあの頃ですなっ!」
「ええええ、なにせ、あの頃はまだ紙袋でしたからなっ!」
「ははは…私のあの頃はポリ袋です」
「孰(いず)れにしろ、あの頃はよかったですなっ!」
「ははは…それは言えます」
 二人は席を立ち、レジで支払いを済ませると、あの頃からあるレトロな喫茶店を出ていった。
 分析の結果、あの頃は一人一人、違うことが分かる。^^

                                  


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分析ユーモア短編集  <81> 面(つら)

2019年02月19日 00時00分00秒 | #小説

 面(つら)とは物や人の外見(がいけん)を指(さ)す。もちろん、内見(ないけん)も含む訳だが、内見は外からは見えないから、外見を指す場合が多い。この面という言葉を暇(ひま)に任(まか)せて分析してみることにしよう。他にすることがないのっ! と怒られる方もお有りだろうが、間違ったことは言っていない積(つ)もりだから、そこは我慢してお読みいただきたい。^^
 面には内面(うちづら)と外面(そとづら)がある。美味(おい)しそうな食べものでも中が腐(くさ)っている、外面がいい美人やイケメンでも内面が悪い・・などと、面は一致しない変化を見せる。超ブスな女性が化粧品を塗りたくって美人に見せる・・というのは、また意味合いが違うと思うのだが…。^^
 とある植物園である。連休ということもあり、朝から多くの家族連れで賑(にぎ)わっている。バス旅行の案内ガイドが、知ったかぶりをして得意げに話す。
「この市営植物園は◎○△×年に開設され、今や多くの人々に親しまれるようになっておりますっ!」
「ガイドさん! あの木、何て言うのっ!?」
 突然、最前列にいた一人の子供が何気ない面構えで一本の木を指さしながら、ガイドに訊(たず)ねた。ガイドはその指さす方向に目を向けたが、生憎(あいにく)、その名を知らなかった。戸惑(とまど)ったものの、ここは引けないわっ! とばかりにガイドはその動揺を億尾(おくび)にも出さず、外面では笑顔で聞いていない素振りをし、内面では顔面蒼白(がんめんそうはく)になって焦(あせ)った。
「この木~~!!」
 子供は意固地(いこじ)になり、声を大きくした。ガイドの内面は失神寸前まで緊張した。そのときである。子供の父親が助け舟を出した。
「あれはガジュマルだ。沖縄ではキジムナーと言ってな、火の精霊が宿るとされてるんだ…」
「そうなんだ…」
 子供は納得して押し黙った。ガイドも、そうなんだ…と思いながら内面の汗を拭(ぬぐ)った。
「分かった? ぼうや?」
 さらに、外面でガイドは、さも、知っているかのような振りをして子供に念押しした。
「? うんっ!」
 子供は外面では素直に返したが、この人、知らなかったんだ…と、内面で思った。
 分析の結果、面はこのように使い分けられる。^^

                                  


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