水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (87)流動的

2020年03月31日 00時00分00秒 | #小説

 流動的・・という言葉がある。物事が確定できない状況や状態を表す言葉である。『衆議院予算委員会の審議が再開されるかは流動的で、再度、理事会で協議されることになりました。BSニュースを終わります…』などとBS国営テレビの奇麗どころが語るあの手合いだが、なぜ流動的なのか? は国民の立場で考えれば疑問で、固定的であって欲しいものだ。^^
 とある商店である。ご主人が、なにやら電話をしている。
「そうすると、まだ分からないと?」
『はい、なにぶん限定生産でして、流動的なもので…』
「なら、仕方ないですなっ! あれほど言っといたんですから、もう大丈夫だろうと思っとったんですよっ!」
『はい! 至らないことで誠に申し訳ございませんっ!』
「そこは、至って欲しかったですなぁ~」
『はあ?』
「いやなんでもありませんっ! それじゃ、出来るだけ早くお願いしますよっ! お客さんがお待ちなんですからっ!」
『は、はいっ! どうも…』
 電話は逃(のが)れるように切れた。
「ったくっ! だから流動的は困るんだよっ!!」
 ご主人は訳の分からないことで怒りながら受話器を置いた。
 このように、流動的なことはどうも心理不安を呼び覚まし、怒れるようだ。ただ、その原因は疑問が湧(わ)くところである。^^

                                


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疑問ユーモア短編集 (86) その気

2020年03月30日 00時00分00秒 | #小説

 その気にさせる・・という言い方がある。それまで、やる気がなかったものが、やる気になったとき、した状況や人はその気にさせた・・ということだ。そうなるのは、なにも人によってというだけではない。目の前の状況や本人の気分、緊迫感、好奇心、欲etc.あらゆる要因によってその気になったり、させられたりする訳だ。^^ 主体性[アイデンティティ]のない人ほど周囲の環境に左右され、その気になにやすいから困ったものだ。^^
 とある繁華街である。知り合いの二人の主婦が話し合っている。
「あらっ! 奥さま、そのドレス、なかなかお似合いでございますことっ!」
「ホホホ…そうですかっ!  この前、買った安物ですけどっ!」
 褒(ほ)められた主婦は、まんざらでもない顔で謙遜(けんそん)した。
「どのお店でお求めになったのかしら?」
 褒めた主婦が訊(たず)ねる。
「あらっ! お気に召(め)しましてっ?」
「はい、すごく…」
「ついそこの、ブランド鹿馬(かば)ですわっ」
「お高かったんでしょ!」
「それが、安いのなんのって。なんでも近々、お店を改装なさるとか。その処分品ですわ」
「あらっ! それはいいことをお聞きしましたわ。私も言ってみようかしら…」
 褒めた主婦は、ドレスが気に入り、ついその気にさせられた。ところが、話はそれで終らなかった。褒めた主婦がそのドレス色違いの同じドレスを着てPTAに出かけたのがいけない。どういう訳かその気の輪を広げることになってしまったのである。その気はその気を呼び、ついにそのドレスの一大ブームを全国に巻き起こしたのである。ホクホク顔なのはブランド鹿馬である。一年後には全国チェーン店を展開するまでに発展したのだった。
 だからその気は、なかなか侮(あなど)れない疑問な気分なのである。^^

                                


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疑問ユーモア短編集 (85)回り道

2020年03月29日 00時00分00秒 | #小説

 急がば回れ・・などと、よく言う。回らずに行った方が近い…と思えるのだが、^^ 強(あなが)ち、そうでもないようだ。その一例として、登山における巻き登り・・という一方法が挙(あ)げられる。険(けわ)しく過酷(かこく)な直登(ちょくと)が最短距離…と分かっている場合でも、そこはそれ、知恵を駆使(くし)して体力の消耗(しょうもう)を低減(ていげん)させる最善の方法を模索(もさく)したのが巻き登りである。登山隊のリーダーなら、なおさらこの判断力が要求されるだろう。二本のルートのうち、直登は結局、かなり時間を要し、体力を奪われる結果になったのに比べ、巻き登りは多少、時間は要したものの体力はほとんど奪われず、さらに直登より少し早く目的の標高に達したのである。言っておくが、岩登り[ロック・クライミング]で最短ルートを目指す方法があるが、この場合は、急がば回れ・・というよりは、急がば絶壁(ぜっぺき)・・なのだろう。^^
 同じクラス内で二人の受験生が話し合っている。
「どうだった、アレ?」
「ああ、アレか…。アレはアレだけのものさ、ははは…」
「ということは、結果はどうでもいいんだ」
「どうでも、よかないさ。けど、まあエクササイズだなっ!」
「エクササイズ? って、練習問題ってことだろ?」
「ああ! 僕の目指すのは最短の本番試験だけだからなっ!」
「そうなんだ…。僕は模擬試験もコツコツやってから受けるよ」
 Spring has come. となり、コツコツと回り道した生徒は合格し、本番試験の一発勝負に出た生徒は不合格だった。
 なぜっ? と疑問が湧(わ)くが、日々の積み重ねという回り道が、いらぬ緊張感を無(な)くさせ、成功へと導いたのである。
 回り道でも地道(じみち)に続けることが大事・・という結論に至(いた)る。^^

                                


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疑問ユーモア短編集 (84)きっかけ

2020年03月28日 00時00分00秒 | #小説

 物事が起こるには、きっかけが存在する。そのきっかけには、原因とか理由といったものが数多くある。きっかけが良くて、物事がいい方向に進めば、それに越したことはない。だが、世の中はそう上手(うま)く出来ておらず、良からぬきっかけで悪いことが起こることも、よくある。なぜ、そんなことで? と受けた側が疑問に思えることでも、きっかけを起こす側はそう思っていないからトラブルが生じる訳だ。ムシャクシャしたから壊(こわ)した、火をつけた・・というきっかけでは、壊されたり火をつけられた側は、堪(たま)ったものではない。予防しようもないから、世間は怖いということになる。^^ よく事件もののドラマがテレビに流れるが、それがきっかけで起きた三億円事件など、過去、二度も起きている。だから、あ~~怖い怖いっ!^^
 ばったり出合った老人二人の会話である。
「最近、俳句を始められたそうですな?」
「えっ!? ああ、まあ…。この前、一杯、店で飲んでましてなっ! そこで隣(となり)に座っていた方が有名な俳句の先生で、盛り上がった弾(はず)みで詠んだ句が大そう褒(ほ)められましたもんで…」
「なるほどっ! それが、きっかけですかな?」
「ええ、まあ…。きっかけというほどのきっかけではないんですが。以前から興味は少なからずあったもんでしてな、ははは…」
 俳句を始めた老人は罰(ばつ)悪く、笑って流した。
「いや、実は私も最近、川柳を少しばかり…」
「ほう! 川柳ですかっ! それは、いいですなぁ~」
「この前、ひょんなことで知り合いの二人が口喧嘩(くちげんか)を始めましてなっ! 仲裁(ちゅうさい)代わりに詠(よ)んだ句が馬鹿受けで、口喧嘩が沙汰やみになりました…」
「ほう! それがきっかけですかな」
「まあ、世の中が和(なご)めば、多少の功徳になるかと…」
「なるほど…。きっかけとは実に物事を起こしやすくしますなっ!」
「さようで…」
 二人の話は尽きなかった。そのきっかけは、気が合う二人が出合っ
てしまっことにある。^^

                                


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疑問ユーモア短編集 (83)修理

2020年03月27日 00時00分00秒 | #小説

 故障したというので修理に出したところ、修理するより買った方がお安くつきますよ・・などと言われれば、かなりテンションを下げることになる。^^
 この手の言い回しには、1]買う方が安価、2]在庫部品の保有期間が過ぎている、3]製造中止になった商品・・などがある。孰(いず)れも顧客のテンションを下げる現代的言い回しだが、販売した会社の経営トップが古い製品は買い替えて欲しい・・というケアなし経営方針なのだから、無理からぬ話ではある。えっ!? 直らんのかいっ! と、思わず疑問が晴れないまま諦(あきら)め、テンションを下げる訳だ。^^ 物は減価償却して傷(いた)むものだが、出来れば見限らない修理社会の到来を期待したいものだ。人の修理だと見限られたくない医学の治療となる。^^
 とある普通家庭の庭である。ご隠居が盆栽の棚(たな)を見ながら腕組みをしている。そこへ毎度、出入りしている八百屋がヒョッコリと垣根越しから顔を出した。
「ご隠居、腕組みされて、どうかされたんですかっ?」
「ああ、これは三河屋の八っつぁん! いやね、棚がどうも朽(く)ちて壊(こわ)れそうで修理を、と思ってね…」
「ああ、そうですか。そりゃ、いけねえやっ! お大事にっ!」
 三河屋はご隠居が悪い…と早とちりで口にしてしまった。
「? ああ、まあね…? これから注文訊(き)きかい?」
「いやいや! 今ね、お宅の若奥さんにお訊きした帰りなんですよっ!」
「そうかいっ! で、なにをっ!」
「菊菜(きくな)とシイタケ、それに長ネギを二本っ!」
 ご隠居は、今夜はスキ焼きだな…と思わずニタリとし、すっかり棚のことを忘れてしまった。
 修理には疑問を挟(はさ)む余地なくハングリー精神が必要ということだろう。^^

                                


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疑問ユーモア短編集 (82)人の姿

2020年03月26日 00時00分00秒 | #小説

 最近、人の姿をあまり見かけなくなったなあ~…と、今日、思ってしまった。思うつもりはなかったのだが、思ってしまったものは仕方がない。^^ というのも、昭和30年代の記憶がふと、脳裏(のうり)を過(よぎ)ったからである。道を走る車が信号の変化で列をなすときだった。小学校二、三年の頃と思うが、道を通行する人や物の観察・・という課題が出され、それを同級生と観察していた光景である。確か、お醤油屋の主人が配達途中だったのだろう。自転車で通られ、声をかけられた記憶が残っている。^^ 当時の道はアスファルト舗装(ほそう)がなされておらず、すぐに凸凹(デコボコ)道となり、雨のあとは水溜(みずたま)りになった。鶴嘴(つるはし)を手にした道路補修の人が、両脚(りょうあし)にゲートル[どういうものか? は、各自が検索などで調べてください。^^]を巻き、懸命に地面を平らにしておられた記憶も少し残っている。自動車が、ほとんど見られなかった時代で、三輪自動車が走り出したのは、この少し後(のち)の時代である。雨の降らない日が続けば、土埃(つちぼこり)が舞い、よく風呂の冷めた残り湯をバケツで撒(ま)かされたものだ。^^ 今の時代なら、危なくてとても出来ない芸当の子供のお手伝いである。当時は牛が田畑を農家の人に三つ鍬(ぐわ)を付けられ、鋤(す)いていた長閑(のどか)な原風景があった。文明進歩もいいが、人を余り見なくなったポイ捨てゴミの道に車ばかりが走る文明というのも、どこか味気(あじけ)なく感じるのは私だけなのだろうか?^^
 老人二人の会話である。
「いけませんなぁ~!」
「なにが?」
「危ない、危ないっ!」
「なにが?」
「いや、ここへ来るのは、命がけなんですわっ!」
「なぜ?」
「いやぁ~、アチラから渡るのに信号がないもんだから…」
「信号がないと、危ないですか?」
「そりゃ、危ないに決まってるでしょう。こう、車が通るんですからっ!」
「なるほど!」
「昔は車なんか見かけませんでしたがねぇ~。人の姿だけでした…」
「確かに…」
「どうなんですかね?」
「なにが?」
「いや、今の車社会ですよ」
「ああ、そういや、ガソリン価格が原油国の産出調整とかで上がるようですな」
「人も油、売ってないで、自分で動かないとっ!!」
「上手(うま)いっ! 車だけに、ですか?」
「ははは…まあ」
 走る車ばかりで人の姿が見られない文明社会・・進歩といえば進歩だろうが、少し疑問に思える進歩でもある。^^

                                


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疑問ユーモア短編集 (81)分かれ道

2020年03月25日 00時00分00秒 | #小説

 人生には行く先々に分かれ道がある。進む分かれ道の選択が正しければコトは順調に運んだり成功したりする訳だ。ところが、その反対を選べば、失敗や悪いコトが起こる・・と、まあこれが世の中の常である。ただ、人生の分かれ道には道標(みちしるべ)が立っていないから、注意しないと思わず間違ってしまうことになる。間違った・・と想っていても、『いや! それが、正解ですっ!』などということもあるから、世の中は実に面白いのだ。
 とある普通家庭の日曜日である。昼近く、茶の間で夫(おっと)が一幅(いっぷく)の掛け軸を眺(なが)めながら、売ろうか売るまいか? と、分かれ道に立たされ、思案に暮れていた。そこへ、妻が現れなくてもいいのにヒョッコリと現れた。
「もうっ!! さっきから呼んでるでしょ! 届いた天ぷらそばが伸(の)びちゃうじゃないっ!」
「あ~ん? ああ…」
 夫は気のない返事をした。勝手に伸びてりゃいいだろっ! くらいの気分である。
「その掛け軸、どうすんのよっ? 昼過ぎからずぅ~~っと見てるけど?」
「いや、なに…。売ろうか置いとこうか、とな…。お前、どう思う?」
「どう思うって、どうも思わないわよ。あなたの好きにすれぱっ!」
 妻は、鮸膠(にべ)もなく言い切った。
「骨董屋(こっとうや)の親父(おやじ)がな、今なら高く買いますよ! って言うんだが…」
「へぇ~、いくらよっ?」
「これっ!」
 夫は指を二本、立てた。
「二十万? なんだっ! だったら置いときなさいよっ!」
「いや、二百万…」
「にっ! 二百万っ! う、売りましょ! すぐにっ!」
 妻の脳裏(のうり)には、昨日(きのう)、買い物に出たとき見つけたお気に入りのドレスがあった。
「そうかぁ~? 俺は置いといた方がいいと思うんだが…」
「そおう? なら、好きにすればっ! それより、お蕎麦っ! 先に食べるわよっ!」
「ああ…」
 妻の頭の中にあるのは天ぷらそばで、素早(すばや)く撤収(てっしゅう)した。夫はようやく敵の攻撃を退(しりぞ)けた…という気分だった。
 数日後、その掛け軸は床の間にまだあった。結局、売られなかったのである。別れ道に立たされ、その家の夫が選んだ道は正しかった。その掛け軸は、重文[重要文化財]級の掛け軸で、二千万でも手が届かない超一級品だったのである。
 そんな貴重な掛け軸が、なぜこんな普通家庭にあったのか? は疑問だが、まあ、分かれ道に出くわしたときは、慎重に選ぶに限る・・とは言えるだろう。^^

                                


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疑問ユーモア短編集 (80)心

2020年03月24日 00時00分00秒 | #小説

 人の心ほど理解し辛(づら)いものはない。千差万別(せんさばんべつ)で、しかも状況やその時々で同じ人の心であっても変化するからだ。えっ! なぜっ? と疑問が湧(わ)くような真逆(まぎゃく)のことを考えたりするから厄介(やっかい)だ。高いところで仕事をしている人に大声をかければ危険なことくらいは大人なら誰もが分かる。子供はそれを理解する心に欠け、ついつい大声を出してしまう。驚いて落ち、怪我で済めばいいが、死亡でもすればどうするつもりだろう。子供はそれが分かっていない。ただ、その影で手を引き、子供を利用する大人がいたとすれば、それ以上の悪い心の持ち主(ぬし)と言わざるを得ないだろう。こうした人を心で仕向ける犯罪を教唆犯(きょうさはん)と呼び、実行者以上に、実は罪が重いのだ。今日はこうした怖(おそ)ろしく得体の知れない心という存在をテーマにしたお話である。
 Aという男性はBという女性を想い、Bという女性はCという男性を想い、Cという男性はDという女性を想っている。そして、Dという女性はAという男性を想っている。要はA→B→C→D→A・・という構図である。^^ 孰(いず)れも片想いなのだが、人を想う心だから、こればかりはどうしようもない。ところが、心とは奇なるものである。Bという女性を想っていたAという男性が心変わりしてDという女性を想うに至り、A⇔Dのカップルが誕生、めでたくゴールすることになった。そうなると、Dという女性を想っていたCという男性は他の女性を探さなければならなくなる。辺(あた)りを見渡せば、そこには自分を想うBという女性がいるではないかっ! で、B⇔Cのカップルが整うに至り、話は、たちまちめでたく終結したのだった。
 このように、心の変化には疑問となる点が多々、存在するから、けっして油断は出来ず、侮(あなど)れない。^^ 日本史における心の変化だと、明智光秀、小早川秀秋・・など、超有名どころの武将の名が挙(あ)げられる。^^

                                


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疑問ユーモア短編集 (79)引き際(ぎわ)

2020年03月23日 00時00分00秒 | #小説

 攻撃は最大の防御(ぼうぎょ)・・と言われるが、引き際(ぎわ)というのは、それほど難(むずか)しい。このタイミングを逃(のが)せば、組織は総崩れとなり、物事の場合だと潰(つい)えてポシャる危険性を秘めている。タイミングというのは実にビミョ~~で、んっ? と、誰もが疑問に感じるところでサッ! と鮮(あざ)やかに撤収(てっしゅう)できれば、オオッ! 見事な引き際! と絶賛される訳だ。攻撃だけが能ではない・・ということになる。人の上に立つ立場で指令を発する人には、特にこの冴(さ)えた判断力が求められる訳だ。
 時は戦国時代。あの三方ヶ原の戦いの真っ最中である。織田軍の援軍を得て浜松城から武田軍追撃に出た家康公は、魚鱗の陣立てで待ち構える武田軍と激突、鶴翼の陣立てで構えられた。だが、不利な形で戦端を開くこととなり撃破され、お味方は総崩れとなった。敗軍となり逃げ惑(まど)う将兵を尻目に『もはや、これまで…介錯(かいしゃく)をっ!』と言われたかどうかまでは定かでないが、^^ 『殿、お逃げなされませっ!』と家臣の鞭(むち)が家康公の馬尻(うまじり)に入り、馬は嘶(いなな)きとともに一目散(いちもくさん)に駆け出した。いや、のだろう。^^ この引き際の良さが、家臣の鞭入れにあった? のか、どうかまでは定かでないが、^^ 家康公は浜松城へと無事、逃げ戻(もど)られた・・と、史実では、まあこうなる。もしも、武田軍に家康公が討ち取られていれば、江戸時代や明治維新、それに今の私達の暮らしもなく、夢のまた夢・・ということになったに違いない。だから引き際は、疑問を挟(はさ)む余地なく大事なのである。^^

                                


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疑問ユーモア短編集 (78)破れかぶれ

2020年03月22日 00時00分00秒 | #小説

 破れかぶれ・・という言葉がある。どうにでもなれっ! と自棄(ヤケ)になった気分を表す言葉である。ある種、捨て鉢、投げやり、自暴自棄(じぼうじき)な気分だから、余り感心できた心の持ちようではない。だが、時として、この破れかぶれでやったことでコトが上手(うま)くいく場合がある。なぜか? という疑問が湧(わ)くが、時と場合によりけりだから運としか言いようがない。^^
 とある国際大会のスキー競技が行われている会場である。種目は男子50kmのノルディック複合競技である。前半のジャンプの得点がスタートの秒差になる。そして、いよいよ後半が始まろうとしていた。日本代表の禿尾(はげお)は周回の五周目、数人を牛蒡(ごぼう)抜きし、第一集団のトップに躍(おど)り出ていた。あと一周である。戻(もど)ったスタート地点で激しく鐘が鳴らされる。よしっ! これはいけるぞっ! と、禿尾は確信した。ところが、である。最後の下り坂でストックの片方が折れたのだ。二位との秒差は50秒である。スタッフが生憎(あいにく)、いない位置で折れたから堪(たま)らない。破れかぶれで、もう片方のストックとスケーティングでなんとか滑(すべ)るものの、減速はやむを得ない。瞬く間に二位との秒差は30秒に縮まった。禿尾はダメか…と諦念(ていねん)した。が、そのときである。ストックに頃合いの木の枝が使って下さいっ! とでも言うかのようにレース上にあるではないか! 禿尾は、神の助けか…と天を仰いで一礼し、その木の枝を借り物競争のように手にしてふたたび滑り始めた。おっ! これはいけるぞっ! と禿尾は滑る感触の良さを感じた。そしてラスト100mを見事に逃げ切り、金メダルを手にしたのである。めでたし、めでたし! ^^
 まっ! こんな馬鹿なことには百歩譲ってもならないだろうが、破れかぶれでしたことは、疑問が湧く奇想天外な結果を齎(もたら)すことは確かなようだ。^^

                                


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