水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (68)効き目

2022年08月31日 00時00分00秒 | #小説

 効き目が足らないと、今一、効果が薄い。怒ったとしても、怒られた当の本人が分かっていなければ効き目はない訳だ。昨今、騒がれているワクチンにしたって、効き目がなければ意味がない訳だ。罹患(りかん)した人になぜ筋注しないのか? が私には分からない。注射をした患者が全快すれば、効き目があったことになり、治療薬となるのである。予防薬では困るその辺りのところを、お上は是非、理解願いたいものだ。^^
 とある家庭である。主婦がキッチンで何やら料理を作っている。
「ダメだわ…。なぜかしらっ?」
 味を調えようと隠し味の香辛料を入れ始めたのはいいが、今一つ思いの味にならず、主婦は手を止めた。そこへ、主人が現れなくてもいいのに現れた。
「おいっ! 夕飯にしようと言ってから、もう半時間だぞっ! どうなってんだっ!」
「ごめん、ごめんっ! ビーフストロガノフの味がね…」
「ビーフストロガノフ? なんだ、それはっ!? ビフテキの親戚かっ!?」
「他人なんだけどね…」
「なんだ、他人か…。いや、そんなことはどうでもいいっ! 夕飯を早くしてくれっ!」
「はいはいっ! もう少し待ってね。どうも香辛料の効き目が…」
「効き目なんかどうでもいい! 食えりゃいいんだっ、食えりゃ!」
 主人は、食えりゃを強調した。
「そうはいかないわよ、料理は味よっ! 味を調えないとっ!」
 主婦は味を強調した。
「なんだか、今のワクチンのような話だな…」
 主人は効き目を、ふと、思った。
 効き目は、完璧に効いてこそなのです。足らない効果でも有効でもダメで、技あり、一本っ! が求められる訳です。よろしくっ!^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (67)時間

2022年08月30日 00時00分00秒 | #小説

 皆さんは物事をやっているとき時間が足らない場合、いかがされますかっ? また、やりゃいいさ…と軽くやめられる人は悩むことなく幸せな方です。仕方なくやめなければならない心理が尾を引いて、あとあとまで影響が出る人は不幸な方でしょう。なにせ、あとのことが手につかなくなる心境なのですから、いい気分ではない訳です。この時間という存在は目に見えず足らないと間に合わず困りますから、生活には時計が必要となる訳です。^^
 とある小学校である。授業中でで、先生は腕時計を見た。
「…少し時間が足らないようですから、今日はこれまでにします」
 生徒達は解放された被害者のように、急に元気になった。
 時間が足らないと、元気になるようです。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (66)呪(まじな)い

2022年08月29日 00時00分00秒 | #小説

 呪(まじな)いが必要な状態とは、確固とした先の予測がつかない状況下にあるときが多い。見えない力に縋(すが)りたいその状況下に置かれた人の気持は計り知れないだろう。現代のようにコンピューターによる科学的なシミュレーションや情報機器を使った予測が出来なかった遠い過去の時代の呪いは、かなり高い精度の信憑性(しんぴょうせい)を人々に与えていた。当時は、呪いを信じないものは信心が足らない者として世間から異端視されたようである。今日はそんな昔々のお話である。^^
 とある山村に不吉な出来事が続いていた。村の庄屋は、呪いで何とかその災いから村を救おうと、いつの頃からか村に住みついていた祈祷師を呼び寄せた。
「お願(ねげ)ぇ~しますだっ!」
「分かりました、やってみましょう! で、どのような災いですかなっ!?」
「実は…年頃の娘が村から次々と消えましてのぅ」
「ほう! それは奇怪(きっかい)なっ! 野武せりの仕業(しわざ)というようなことはっ!?」
「いや、そのようなことは、ございませんでのう。皆が気味悪げぇ~ておるんでごぜぇ~ますよ…」
「さようか…。では、今宵から三日三晩、護摩木を焚(た)きもうそう」
 その日の夕刻から祈祷師は村の鎮守の社(やしろ)に籠(こも)り、祈祷を始めた。そうして、三日が過ぎ去っていった。
「庄屋殿っ! 呪いの卦(け)が出ましたぞっ!!」
「ど、どのようなっ!?」
「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)が、夜な夜な、娘御(むすめご)を攫(さら)っていくのでござるよっ!」
「まことでっ!? あの素戔嗚(スサノオ)神話の大蛇でございますかのうっ!?」
「さようじゃっ!!」
「そのようなことがっ!?」
「いや、まことでござるっ!」
「さすれば、いかようにっ!?」
「この社の境内(けいだい)に、たっぷりと酒を注いだ大甕(おおがめ)をご準備されたい…」
 それを聞いた庄屋は訝(いぶか)しく思ったが、一応、首を縦に振った。
 次の日の深夜、庄屋と村人達が社の様子を隠れて秘かに窺(うかが)うと、大甕を前にすっかり泥酔した祈祷師が大鼾(おおいびき)を掻(か)いて眠っていた。庄屋と村人達は憤慨し、祈祷師を縄目(なわめ)にかけた。次の日の朝、祈祷師は山裾(やますそ)の代官所へ突き出され、打ち首獄門となった。八岐大蛇として退治された訳である。攫われていた娘達は無事、連れ戻され、親の元へと返された。めでたし、めでたし…。^^
 呪いは信心が足らない人がやるべきではない・・という結論が導ける。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (65)本物と偽物(にせもの)

2022年08月28日 00時00分00秒 | #小説

 人は物を本物と偽物(にせもの)で区別する。では本物とは何か? 何が足らないから偽物なのか? を説明できる人は恐らくいないだろう。本物、偽物は評価する人の価値の違いで決まるからである。あなたは本物ですか?^^
 他の短編集にも登場した、とある骨董屋である。これも何度か登場した絵師、猿翁寒山の掛け軸が他の何幅(なんぷく)かの掛け軸とともに飾られている。それらの掛け軸を見歩きながら二人の老人が話し合っている。
「こりゃ~ダメだっ! 偽物、偽物っ! こんなの買っちゃダメですぞっ!」
「ええっ!? 私は猿翁寒山だと思ったんですがな…」
「ははは…あなた。こんな店に寒山の本物が掛かっている訳がないでしょ!」
 その声は、店の隅(すみ)で巻かれた数軸の埃(ほこり)を払っている店主の耳に入った。店主は、『こんな店で悪かったなっ!!』と立腹しながら話に割り込んだ。
「ははは…お客さん! 私程度の店ですと、これくらいの贋作(がんさく)が丁度いいんですよっ!」
「やはり贋作でしたか…。私は寒山だと思ったもんで…」
「なんでしたら、お安くしときますよ。なにせ、贋作ですから…」
「そうですか。でしたら、お願いします」
「分かりました…」
「私はこちらの本物を…」
「おおっ! 目利きでらっしゃるっ! この一幅は他のお軸と違いましてな、正しく墨峰(ぼくほう)の真筆(しんぴつ)でございますよっ! 少しお高くなりますが…」
 店主は、『墨峰の贋作とも知らずに、いい気味だっ!』と思いながら、ケチをつけた客に笑顔でヨイショした。
「墨峰でしょ! 私も墨峰だと思ったんですよっ!」
「ははは…」
 店主は『思ってりゃ、いいさ…』と軽く嗤(わら)った。
 その後、二人の客はそれぞれの掛け軸を購入し、店を出ていった。
 本物と思った客は本物を安く入手し、贋作とケチをつけた客は贋作を高く入手した・・という、ただそれだけのお話である。眼力(がんりき)が足らないと偉い目にあいますから、皆さん、注意しましょう。^^

 ※ このお話に登場した墨峰も、猿翁寒山と同様、私が創作した超有名絵師です。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (64)買い物

2022年08月27日 00時00分00秒 | #小説

 買い物をしたあと家に戻り、冷蔵庫へ収納したとき、あっ! ○○が足らない…と思ったことはありませんか?^^ まあ、買い忘れなら言い訳ですが、問題は家へ持って帰れていない・・すなわち、持ち帰り落しです。レジでお金を出して買ったのですから、これはゆゆしき事態です。まさか、取られた・・という犯罪構成はないのでしょうが、紛失という過失責任はある訳です。皆さん、足らないことのないよう、買い物は最後の最後まで慎重にしましょう。実は、今日の私もその一人で、買い落して買い足した・・というようなお粗末がありました。^^
 とある家庭である。スーパーの買い物から帰った主婦が買い物袋の品物を冷蔵庫へ収納しながら独りごちている。
「あら、◎□がないわっ! 怪(おか)しいわねぇ~。確か、買ったんだけど…」
 こちらはスーパーである。レジ前に敷設されたサッカー[作荷]台の上に置き忘れられた
◎□が独りごちている。
『奥さん、忘れちゃったよっ! 買ったんなら持って帰ってくれなきゃ!』
 そのとき、店の店員が置き忘れられた◎□に気づいた。
「あらっ! 忘れたんだわ…」
『そうなんですよっ!』
「仕方ないわね…」
 その後、◎□がどうなったか? 私は知らない。たぶん、他の人に買われたとは思うが…。とにかく、買い物は足らない品がないよう十分、注意することが大事となる。これには、買い忘れ以外の持ち帰り落しも含まれる。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (63)説明

2022年08月26日 00時00分00秒 | #小説

 説明が足らないと、いらぬ誤解を招(まね)いてしまう。誤解は招かないよう、招待しない方がいいだろう。^^ まあ、説明する人の説明の仕方にもより、上手(うま)い下手(へた)で説明を受ける側の態度も大きく違ってしまうことになる。今日のお話は、そんな説明が足らない偶然、起きたエピソードの一話である。
 とある家庭である。連休で道が渋滞しているという情報がテレビに映し出された。
「ほう! あれだけお偉方が説明しているのに伝わらないんだなぁ~」
「今一、説得力がないんじゃないっ!」
「いや、説明しているお偉方も、今一、終息の自信がないんじゃないか?」
「出歩かないよう予防するしかないのかしら?」
「だって、渋滞してんだから出歩いてるじゃん!」
「そうよね…。なんか、今一、シックリしないわっ!」
「オリンピック話も半煮えだしな…」
「きっちり、お料理できないのかしら?」
「ははは…いい先生がいないんじゃないかっ!」
「笑い話じゃないわよっ!」
「だな…。今年の連休も、去年に続いて美味(うま)いスキ焼で我慢するか…」
「バーベキューも忘れないでっ!」
「ああ! 美味い料理に説明はいらないっ!」
「ええ…」
 説明には、納得させられる話の道理が必要となる。足らないと人は靡(なび)かない。今回のコロナ騒ぎの道理は、予防ではなく説明できる治療の発明、発見だろう。世界の研究をされている先生方、お願い致します。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (62)燃料

2022年08月25日 00時00分00秒 | #小説

 朝、大欠伸(おおあくび)をしながら目覚めれば、今年も田植えがあちらこちらで始まっている。着替えて窓を開ければ、通勤の自動車が信号待ちで列をなしている。よくよく考えれば、私達は全(すべ)て燃料で生きていることが理解できる。電車、電話、電気…これらも全てエネルギーという燃料で生み出されているのである。その燃料が足らないと田植えも、通勤も、日々の暮らしさえも、私達は出来なくなる。食物は私達の燃料で、燃料様々なのだ。^^
 とある田舎の町役場である。閉庁のチャイムがいつものように鳴った。
「おい、終わりだっ! どれ、今日は久しぶりに燃料を補給するとするかっ!」
「コロナだぜ。店より家で補給した方がよかねぇ~かっ!」
「ああ、そうだった…」
「燃料といやぁ~俺の車もガス欠だった…」
「俺もだ…」
「お前は電車だろっ?」
「俺だよ俺! 腹減ったぁ~」
「大して仕事してねぇ~のになっ!」
「ちゃ~~んとやってますっ!」
「ああ、そうですかっ! じゃ~なっ!」
 二人はデスクを立つと庁舎をあとにした。
 このように、私達は足らない燃料を日々、補給しながら生きいるのである。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (61)無理

2022年08月24日 00時00分00秒 | #小説

 無理な状況や物事は、理が足らないから無理になるのである。では、どれほど理が足らないから無理なのか? と問えば、その程度は数に表せないから、非常に難しいことが分かる。さらに、無理な状況や物事も、人によってその程度が異なってくる。ある人には理が足らないから無理だろう…と思えても、別の人には十分、理が足りているから無理じゃない…と思える訳だ。^^
 山頂にある、とある寺への参道を二人のお年寄りが登っている。ご利益を授かろうという訳だ。
「フゥ~~、私はもう無理です。あなただけお参り下さい。私は下山致します…」
「もう、少しじゃありませんかっ! なんとか頑張りましょう!」
「いえ、私にはもう…」
 一人の老人は、息も絶え絶えに、手をブラつかせて、無理無理! の手話をした。
「そうですか…。寺の境内に出来たお店の甘露そばは美味(おい)しいそうですよっ! 残念だなぁ~」
「ええっ! そんなお店がっ!」
 息も絶え絶えな老人は、その話を聞いた途端、無理が無理でなくなった。この老人の無理だった原因は。空腹だったからである。^^
 このように、無理になる原因は、なんでもない物や事が足らないことで無理になるケースが多い。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (60)常識

2022年08月23日 00時00分00秒 | #小説

 常識が足らないと世間から白い目で見られる。黒い目では見られないのか? という疑問には、分からないからお答えしかねるのだが…。^^ この常識という存在は、人々が作り出した概念で、見えないから厄介だ。
 とある町はずれにある森の一角で、一人の老婆が腰を下ろして立ち止まった。そして、とある方角を向いて手を合わせ、拝(おが)み始めた。そこへ、別の老人が通りかかり、その老婆の常識外の行動を訝(いぶか)しく思ったのか、立ち止まった。
「あの、どうかされましたか?」
 老人としては、なぜ老婆が拝んでいるのか? が分からない。
「いえ、ただただ有難いからお参りさせていただいております…」
 老人はこの森を古くから知っていたから、老婆がなぜ有難がるのかが今一つ理解できなかった。
「…有難いとは?」
 老人は、ふたたび訊(たず)ねた。
「実はこの樹々の間から射し込む光に目が眩(くら)み倒れたのですが、立ち上がった途端、それまでの腰痛がピタリと消えましてのう…」
「ほう! そのようなことが…」
 老人は老婆の常識外の行動の意味が分かり、老婆の拝む方向へ同じように手を合わせて拝んだ。老婆の常識の足らない行動が、老人にとって常識へと変化したのである。その後、この話は老人から他の老人に伝わり、この森の一角が有難い場所として町の常識になったのである。
 常識の足らない非常識な行動でも常識へと変化する可能性はあるのである。^^

                   完


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足らないユーモア短編集 (59)一心不乱(いっしんふらん)

2022年08月22日 00時00分00秒 | #小説

 一心不乱(いっしんふらん)に物事をする。実に見上げた心である。周(まわ)りの状況がどうであろうと気に留めることなく、集中してコトに当たるという気概である。一意専心(いちいせんしん)という四字熟語に似通った意味合いだが、一意専心よりはさらに集中して懸命にやるという意味合いの深い心構えで、大将には足らない、さらに上の元帥のようなものに違いない。…少し違うかも知れないが、まあ、いいだろう。^^
 とある木工職人の作業場である。有名作家とその弟子が、何やら懸命に木を彫っている。弟子は去年、国際的な賞を受賞していた。有名作家も応募したのだが、今一つ国際的な受けが悪く、入選したのが関の山だった。
「いや、アレは偶然だっ! 私から言わせれば、まだまだお前は技巧が足らない。私の半分といったところだ…」
「はいっ! 心しますっ!」
「そうそう! その心構えでな…」
 口ではそう言った有名作家だったが、自分の技巧が弟子に及ばないことを薄々、感じていた。そして、何が足らないんだろう…と、鑿(のみ)を手に一心不乱に掘る弟子の手元をチラ見した。
 一心不乱が足らないと、人々の感動を呼ばないようです。^^

                   完


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