水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

驚くユーモア短編集 (39)ペット

2023年12月31日 00時00分00秒 | #小説

 愛玩(あいがん)動物といえばワンちゃんネコちゃんが代表格だが、中にはワニさんの代表格、クロコダイルのクロコさんとかイグアナのイグちゃんとかをペットにされる愛好家もおられるから驚く。まあ、何を飼おうと自由だが、チィ~~ンと鳴るお終(しま)いまできちんと面倒をお願いします。^^  とある動物愛好家さん達のパーティが行われている。 「おおっ! ラバのキミちゃん、久しぶりにお元気な姿をお見かけしましたよ、ははは…」 「そう言われるのは、イグアナのイグさんでしたか。相変わらず、お動きになりませんな、ははは…」 「いやいや、いつものことですよ、ははは…」  そこへ、スゥ~っと近づいてきたのは、チンパンジーさんを連れた紳士だった。 「やあ、皆さん! やっておられますかなっ!!」 「これはこれは、チンパンジーのヨシコさんでしたか…。お元気そうで何よりですっ!」 「いや、皆さんも、ははは…」  そこへ、イシガメさんにリールをつけたご婦人が、ゆっくりと近づいてきた。カメだけに、歩く速度は実に遅い。当然、ご婦人も遅い。 「あら、皆さま、お元気で。ホホホホホ…」  驚くことに、動物愛好家のパーティは仲違(なかたが)いすることなく、にこやかに続くのでした。  政治家さん達の党[パーティ]も、仲違いして分裂することなく続いて欲しいものですね。^^

                   完

 


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驚くユーモア短編集 (38)空腹

2023年12月30日 00時00分00秒 | #小説

 一定時間が過ぎれば、健康な者なら空腹になるだろう。この空腹の感覚は突然、感じる場合もあるが、大抵(たいてい)は、小腹が空くとかの感覚の場合が多い。ただ、これには個人差があり、食べても食べても空腹を感じる人には驚く他はない。^^
 とある普通家庭である。
「おじいちゃん、今、食べたばかりでしょ!」
 息子の嫁に注意された祖父は、テーブル椅子に座ったまま訝(いぶか)しげに考え込んだ。
「いや、まだ食べとらん…」
 祖父が出した答えは、まだ食べていない・・というものだった。
「なに言ってるのっ! 五分前に食べたでしょ! ほら、食べ終えたお茶碗が、ちゃんと目の前にあるでしょ!」
 祖父にすれば、なんと言われようと食べてない! である。現に祖父は空腹を覚えていた。ただし、覚えてはいたが、息子の嫁が言ったとおり、祖父は五分前に食べ終えていたのである。
「ああ…。だが、腹が減っとるから、まだ食べよらんと思うがのう…」
「でも、食べたんですっ!!」
 息子の嫁は少し声を大きくして断言した。
 年を取れば多くのことは忘れますが、空腹を忘れないのには、ただただ不思議と、驚く他はないようです。^^

                   完


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驚くユーモア短編集 (37)逆転

2023年12月29日 00時00分00秒 | #小説

 何事でもそうだが、それまでの経過から恐らくそうなるだろう…と予測したことが逆転すれば驚くに違いない。その予測の確率が高ければ高いほど、当然ながら驚きの度合いも大きくなる。
 とある市役所で春の人事異動が発令された。
「ははは…僕がっ!? んっな訳、ないだろ…」
「いや、本当なんですって、白富士(しろふじ)さんっ!」
 裾野(すその)はエントランスの掲示板に貼られた発令書を見て、白富士が課長に昇格した事実を知ったのである。
「ははははは…またまたまたっ! 裾野君、今日は四月一日じゃないぜっ!」
 白富士とすれば、万年係長の俺が、課長補佐を飛び越えて二階級も昇進!? そんな訳がない…と思えていたから、暗にエーブリル・フール[四月馬鹿]を引き合いに出したのだ。
「本当ですって! エントランスの掲示板を見て下さいよっ!」
「嘘(うそ)だろっ!?」
 人事異動があれば、先んじて暗黙の内示があるのが通例となっていたから、白富士とすれば、内示がなかったことから余計に信じられなかったのである。
「僕が嘘を言いますかっ!?」
 裾野は、少し怒り口調で断言した。白富士は、まだ信じられなかったが、そこまで言われれば…と、掲示板が設置されたエントランスへと向かった。そして、白富士が目にしたものは、自分の名が書かれた人事異動の発令書だった。
━ 白富士雪男 右の者、健康福祉課係長の任を解き 商工観光課課長を命ず ━
 掲示板の発令書を見た白富士は内心で仰天するほど驚いたが、表面上は驚く素振りも見せず平静な態度で課へ戻っていった。ただ、両足だけが、いつの間にかスキップを踏んでいたのを本人は知らない。課長候補一番手の宝永(たからなが)を逆転して課長になった無上の喜びが噴き出した形だ。
 逆転するような嬉(うれ)しい出来事で驚くと、どうも気持が隠せないようです。^^

 ※ 逆転したとはいえ、人事考課の点からか、相互の摩擦を避けるために同じ課での異動は少なく、別の課への配転[配置転換]による昇格人事が一般的なようです。白富士さんとしても、宝永さんに噴火されては困りますからね。^^

                   完


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驚くユーモア短編集 (36)茹(う)だる

2023年12月28日 00時00分00秒 | #小説

 炎天下の日々が続いている。驚くことに、茹(う)だると人は怒りへの思考が暑さで低下し、冷静になる傾向がある。汗が噴き出すことで、状況は怒っているどころの騒ぎではなくなっているのである。よくもまあ、これだけ…と、本人も驚くほど汗がポタボタと吹き出し、すでに下着も汗でビチョビチョになっている訳だ。これではもう、どうしようもない。^^
 職員が十人にも満たない、とある地方の村役場である。
「フゥ~暑いな…。虫干(むしぼし)君、空調は大丈夫なのかい?」
「それが課長、生憎(あいにく)、調子が悪く業者に修理依頼をしたところなんです…」
「なんだい、それは…。呆(あき)れたな。それじゃ私達は蒸し焼きじゃないか」
「ええまあ、そうなりますかね。ははは…」
「馬鹿っ! 本当に君には驚くよっ! こんなとき、よくもまあ冗談が言えたもんだっ!」
「どうも、すみません…」
「君が謝ってもしょうがない。早く何とかしなさいっ!」
「はいっ!」
 虫干は蛇に睨(にら)まれた蛙のように身を竦(すく)めた。
「ったくっ! 私は取り敢(あ)えず助役室にいるから、修理出来たれば内線で連絡しなさい」
 課長はビチョビチョになったワイシャツを脱ぎ、汗を絞り出しながら愚痴った。
 茹だると人は暑気から逃避しながら愚痴る傾向があるようです。^^

                   完


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驚くユーモア短編集 (35)横切る

2023年12月27日 00時00分00秒 | #小説

 予期せず、突然、自分の前を横切る者がいれば、誰しも驚くだろう。まあ、そんな場合が起きても、驚く個人差は当然、あるに違いない。勝手に私の前を…と、怒る人もいれば、何も感ぜず、ただ遣(や)り過ごす人もいる訳だ。どちらがいい悪いは別として、そういう場が存在するのも人の世・・ということは言える。
 とある田舎(いなか)の小道を一人の男が我が家へと帰路を急いでいる。残暑が男を照らしているが、真夏のギラついた日射しは既(すで)にない。時折り、道の左右に広がる田畑に赤トンボが飛び交っている。男はいつもの家路をいつもの速度で歩いていた。すると、十字路に差し掛かったそのときである。通ることなどまずない一台の乗用車が、突然、男の前を猛スピードで掠(かす)め去った。男が驚くことはまずなかったが、このときばかりは驚いた。この日に限って…と、男には思えた。続けて、何ごとだっ! と、また思えた。しかし、その後は事もなく、男は自宅まであと五分の所まで近づいていた。男が十字路を曲がろうとしたそのときである。また、一匹の豚が猛スピードで男の前を駆け抜けていった。男は、今日は俺の前を横切る物体が多いな…と、驚くことなく漠然(ばくぜん)と思った。
 突然、横切る第三者、第三物があったとしても、驚くことなどないのです。冷静に遣り過ごせばいいのです。これが修羅場を作らず、円滑(えんかつ)に物事を運ぶ、世の定理となっているのです。^^

                   完


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驚くユーモア短編集 (34)年月

2023年12月26日 00時00分00秒 | #小説

 老いれば、年月の進む速さに驚くことが多くなる。個人差こそあれ、そう感じるこの現象は、誰しも同じようだ。現に、この私でさえ、そう感じて驚く日々が続いているのである。^^
 一人の老人が、離れの隠居部屋で、しきりに書類を探している。
「妙だな…。確か、ここへ入れておいたはずだが…」
 老人は文書箱の中を出しては入れ、入れては出しながら、ついには動きを止め、腕組みして考え始めた。
「確か、二年前…そうそう! やはりそうだ! お隣(となり)の手計(てばかり)さんから譲(ゆず)ってもらったんだが…」
 老人が探しているのは、とある戦国武将が配下に認(したた)めたと伝えられる古文書だった。
「━年月、人を待たず━ とは言うが、まだ二年前だ。古文書が勝手に歩く訳がないしな…」
 そこへ老人の息子の嫁が部屋へ入ってきた。
「お義父さま、お茶を淹(い)れましたわ。美味(おい)しいお菓子もあります。キッチンへどうぞ…」
「これはこれは、未知子さん。今、行きます…」
「何かお探し物ですの?」
「えっ! ああ、まあ…。お隣から譲り受けた古文書を…」
「ああ、それなら、一年前、美術館へ寄贈されたんじゃなかったんですか? 重文級とかなんとかで…」
「あっ! そうそう、そうでしたっ! うっかり忘れておりましたな。見つからないはずだ」
 二人は笑いながら立つと、渡り廊下からキッチンへと向かった。老人は年月の速さと記憶力の低下に、思わず驚くことになった訳である。

 ※ 風景シリーズより、湧水家のお二人にご登場をお願い致しました。^^

                   完


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驚くユーモア短編集 (33)自然

2023年12月25日 00時00分00秒 | #小説

 文明進歩を続けた人類だが、まだ自然の壮大さを把握しきれてはいない。それだけ自然とは変化を見せ、人が驚く現象を様々に見せつける神秘の世界なのである。最近、頓(とみ)に発生する突然の異常気象や病害もその一つの現れだろう。
 とある海水浴場である。猛暑日の中、多くの海水浴客で砂浜はごった返している。その中で、泳ぎもせずビーチパラソル下のチェアーに腰掛ける老人二人が話をしている。
「ははは…これでは芋の子を洗うようですな。風光明媚(ふうこうめいび)な自然を眺(なが)めようと家族を乗せ、やって来たんですがな…」
「まさか、ここでお出会いするとは…。この前、お会いしたのは経団連のパーティーでしたか…」
「そうでしたな…。で、あなたは?」
「ああ、私も家族連れで…。ほら、あそこで娘夫婦と孫が泳いどります」
「なるほど…」
 指をさされた老人だったが、芋の子を洗うような人の多さに、その姿を特定できず軽く受け流し、ペットボトルの水をグビリグビリと飲んだ。もう一人の老人も、釣られてグビリグビリとやった。
 その頃、二人のお抱え運転手は、駐車場で車のクーラーを入れ、風光明媚な景色を眼下にして、優雅な気分で眠っていた。
 自然は驚くような場所でも楽しめる訳です。^^

                   完


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驚くユーモア短編集 (32)癖(くせ)

2023年12月24日 00時00分00秒 | #小説

 本人が気づかないうちに自然と体が動いている・・それが、癖(くせ)と呼ばれる身体の動きだ。貧乏ゆすりを知らず知らずのうちにやっていて、怒られた経験をお持ちの方もおられることだろう。自分が知らないうちに身体(からだ)が勝手に動くのには驚く。古文書(こもんじょ)によれば歴史上の人物である徳川家康公も、手の爪(つめ)をよく噛(か)まれたそうだ。かく言う私も、食事で物を食べているとき、口をピチャピチャと言わせて母親に注意されたものだ。注意されて以降、気をつけた所為(せい)か、いつの間にか、しないようになった記憶がある。
 とあるフツゥ~家庭である。母親に子供が怒られている。
「ったくっ! 誰に似たのかしらっ!」
 そこへ洗顔を済ませた旦那さんが現れた。
「…んっ!? どうしたんだ?」
「あなた、聞いてよ。豚(とん)ちゃんがね、またオネショしたのよ」
「…豚也が?」
「ええ…」
 旦那さんは自分が幼かった頃、よくオネショして親に怒られたことを思い出した。
「ははは…俺もよく怒られたもんだ」
「あなたもっ!? フフフ…親子ねっ!」
 母親は癖の遺伝に思わず笑みを漏らし、驚くことになった。
 遺伝する癖もあるようです。^^

                   完


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驚くユーモア短編集 (31)ニュース

2023年12月23日 00時00分00秒 | #小説

 最近のニュースは驚くことが多い。驚くことが多いと、少々のことでは次第に驚かなくなる。最近、巷(ちまた)を席巻(せっけん)している新型コロナのニュースなどは、分かりよいその一例だろう。
 とある片田舎である。家の縁側でご隠居二人がヘボ碁を打ちながら話をしている。
「よかったですなっ!」
「さようで…。これでウイルス関連の心配は、ひとまずなくなりました」
「まさか治療法と新薬が発明されるとは思っとりませんでした」
「いや、それは私もです。…これで終局ですな。あとはダメを詰めてと…」さか
 二人は整地をし、地(じ)を数え始めた。
「…持碁ですなっ! ということは、後手番のあなたの勝ちですぞ」
「まさか持碁で勝つとは…。ははは…驚きました」
「驚くのも、こういう場合はいいですな」
「さようで…。では、もう一局…」
 二人はデリバリーで届けられた天婦羅うどんを啜(すす)りながらガナるテレビのニュース画面を観た。
『世紀の発見に世界は驚愕(きょうがく)をしています…』
「ははは…こちらも驚愕しておりますが…」
「ですなっ! ははは…」
 こういう驚く事態になって欲しいものですね。^^

                   完


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驚くユーモア短編集 (30)人類対地球

2023年12月22日 00時00分00秒 | #小説

 ここ最近の異常気象は人類の文明進歩によって齎(もたら)されたもの・・との説が有力になりつつある。人類は文明を進歩させることで自分達に都合のいい生存形態を様々と構築した。だが、その一方で、その都合のいい構築によって多くの生物が犠牲となり、絶滅種や絶滅危惧種が増加している事実は隠しようもない。人類も、人類以外の生物も、地球なくしては生存できないのだが、人類はその大事な地球を壊しつつある。他の生物も人類からその身を守らねばならず、地球軍の一員として人類と戦っている訳だ。その最前線にいる人類以外の生物の一つがここ最近、蔓延(まんえん)しているミクロ(微視的)世界に住む変異ウイルスなのである。変異ウイルスや人類が悪性新生物と呼んでいる細胞は、いわば地球軍から派遣された人類と戦う最前線の兵士なのだ。それに気づかないアホな人類は、驚くことに国の侵略戦争、防衛戦争とかなんとか、訳の分からない戦いを続けているのである。馬鹿でアホでマヌケで、もぉ~どうしようもない地球のゴキブリ的存在、それが人類なのだ。今や、人類対地球の戦いの時代だと断言していいだろう。
 西暦2180年、地球から人類が絶滅し、ようやく放射能に打ち勝つ微生物が驚くことに陸上を覆い始めていた。海の底でも熱水鉱床から派生した新生物が増えつつあった。人類が築いた文明は死に絶え、壊れ果てた大都市の残骸にも緑の芽生えが始まっていた。ただ一つ、地球上でホモ・サピエンスと呼ばれた生物は、一人として見ることが出来なかった。驚けない、当然の結果と言えた。
 こんな未来、嫌ですよね。^^

                   完


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