水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (15)御手洗(みたらし[い])

2020年01月19日 00時00分00秒 | #小説

 日本語の読みには疑問が湧(わ)くことが多い。以後の回もそんな話題を書くとは思うが、今回は御手洗(みたらし[い])という言葉を話題にしたい。そう読むんだからそう読むんだっ! と大上段に振り翳(かざ)されれば、そうです…と頷(うなず)く他はないが、よくよく考えれば、音訓的には、とてもそうは読めないのである。[御]の字を[お]と書いて、[お手洗]とすれば、訓読みは、どう考えても[おてあらい]となるだろう。[おたらい{し}]の読みは100%ないのだ。^^ 言語学者以外は、まっ! どうでもいい話なのだが…。^^
 とある公園のイベント会場前で、多くの人が並んでいる。そうなれば当然、トイレも混むことになる。
 二人の男がでイベント会場の列(れつ)に並びながら語らっている。
「御手洗(みたらし)なんですがね…」
「ちょっと見てきましょうか?」
「お願いします…。入場券は取っておきますから」
「さよでっ! そいじゃ、お願いしますっ!」
 そう言うと一人の男は駆け出し、列から姿を消した。そして、しばらくすると、ニヤけた顔で戻(もど)ってきた。手には、みたらし団子を両手に二本ずつ、合わせて四本を持っている。
「ありましたっ! みたらしっ! はいっ!」
 男は片手の二本を手渡そうとした。そうじゃないんですっ!! と言えない男は、笑顔で受け取らず、姿を消した。もちろん、お手洗である。
 御手洗[みたらし]という読みが誤解を招いた馬鹿馬鹿しい話だが、なぜそんな読みになったか? が疑問となる。^^

                             完


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