OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

海外勤務に労災適用 東京高裁、遺族が逆転勝訴

2016-05-08 20:59:46 | 労働法

先々週のブログに折しも取り上げた「海外派遣」と「海外出張」の判断に関する逆転判決が4月27日に出ました。

元々の東京地裁の判決(東京地判平成27.8.28)は、以下の通りです。

上海営業所の主席代表兼上海現地法人の総経理を兼務する者(仮にA氏とします)が急性心筋梗塞で死亡したところ、遺族が海外出張中の業務上の死亡ということで労災保険の遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求。中央労働基準監督署長は、出張業務中の死亡とは認めず、また海外派遣の特別加入の手続きも行っていなかったため労災保険の対象とならないとし、不支給とされました。

地裁判決の内容としては、労災保険法の適用は属地主義により国内に限定されており、海外の事業所での業務災害には適用はないとされています。海外出張と海外派遣の判断は、「期間の長短や海外での就労にあたって事業主との間で勤務関係がどのように処理されたかによるのではなく、労働者の従事する労働の内容やその指揮命令関係等その労働者の国外での勤務実態を踏まえ、いかなる労働関係にあるかによって総合的に判断すべき」としたうえで、A氏はその業務内容から海外事業所である事業に属しその事業に従事していたことから「海外派遣者」にあたるとされました。

しかし、先日4月27日の東京高裁の判決で海外派遣についての判断が覆りました。内容としては以下の通りです(日経新聞より)。

海外勤務中の死亡に労災保険が適用されるかどうかが争われた訴訟で、東京高裁(杉原則彦裁判長)は27日、保険を適用できないとした一審・東京地裁判決を取り消し、遺族補償の支給を認めた。赴任先の中国・上海で死亡した男性(当時45)の妻が逆転勝訴した。一般的に、海外出張中の死亡は労災保険が適用される。ただ、海外の事業拠点に転勤・所属すると、国内事業者の労働者とみなされなくなる。補償を受けるには、海外での労災も保険の対象とする「特別加入」の手続きを取る必要がある。判決によると、男性は2006年、運送会社の上海事務所に首席代表として赴任し、10年に急性心筋梗塞で死亡した。中央労働基準監督署は、男性が現地事業所に所属しており「出張中の労災ではない。特別加入もしていない」と遺族補償の支給を認めなかった。

杉原裁判長は、労災保険の適用について「仕事の内容や国内拠点からの指揮命令などを総合的に判断すべきだ」と指摘。東京の本社に業務の決定権があったことや、出勤簿を本社に出していたことから「男性は実質的には国内の事業所に所属していた」と判断し、労基署の処分を取り消した。妻の代理人弁護士は「これまでは海外で勤務中に死亡すると、労災適用を諦めて泣き寝入りするケースが多かった。意義ある判決だ」と話した。

東京高裁の判断は、業務の決定権や労務管理の状況から、「海外派遣」ではなく実態は「海外出張」としたもので、やはり「指揮命令権のありか」がポイントになったものです。

連休最終日の今日は暑かったですね。みなさんどのようにお過ごしでしたでしょうか。事務所の数名のスタッフをはじめとして社労士受験生はきっととアクセルを強めに踏み込み始め勉強一筋だったかと想像します。これからがいよいよ勝負の時。とにかく繰り返して繰り返して自分の中にたくさんの無意識の知識を蓄えることが肝要です。

私は申し訳ないのですが、この連休はほんの少しの親孝行のため実家に行き、小淵沢の家に行き改装したため大掃除をし、友人と明治座にお芝居を見に行き、今日最終日は法事で大磯のお墓と帰りに実家の鎌倉のお墓の両方に行き草むしりをしたりで(ドクダミ臭くなりました)、かなり遊び、充実して過ごすことができました。

もちろん例の原稿も何とか進んでいます。120ページの予定なのですが、今回は色々なメンバーに助けてもらいながらほぼ100ページくらいにはなったような気がします。

さて、気持ちの良い季節ですね。明日からまたもう一息頑張りましょう。

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