OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

請負による場合の労働時間の把握について

2020-11-29 21:22:45 | 労務管理

顧問先様からのご相談で請負で働いてもらう場合の労働時間の把握について、請負先の事業主はどこまで行ってよいのかというご質問があり、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和 61 年労働省告示第 37 号)」を久しぶりに調べました。

基本的には、雇用している従業員は管理職も含めて労働時間の状況把握が必要とされています。これは労働安全衛生法66条の8の3において、「面接指導を実施するため、労働者(次条第一項に規定する者〈高度プロフェッショナル制度適用対象者〉を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。(2019年4月施行)」とされています。

また派遣労働者の労働時間の把握については、労働者派遣法40条で「派遣先の講ずべき措置等」として、派遣先は「適正な派遣就業の確保等のための措置」を講じなければならないと定めており適正な就業環境の維持が配慮義務とされています。また、派遣法44条で定める労働基準法等の適用に関する特例の具体的な内容として業務取扱要領に、「労働時間、休憩、休日等の労働者の具体的就業に関連する事項については、派遣先の事業主が責任を負う(要領2(2)ハ)」とされているため、労働時間の状況把握は必要だといえます。

請負については、労働時間の把握をしてしまうと請負ではなく派遣と判断される可能性があるのではないかと考え調べたのですが、上記労告37号 に請負の形式による場合であっても、以下の場合を除き、「労働者派遣事業を行う事業主とする」とあります。要するに請負の場合は、労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであることとされており、「① 労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理②労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(①及び②ともこれらの単なる把握を除く。)を自ら行う必要があるということになります。ただ、この中で「単なる把握」は除かれており、労働時間について指示等するのではなくシンプルに把握するだけであれば労働者派遣事業を行う事業主と判断されるわけではないと理解しました。

感染者数が増えてきて心配ですね。とにかくあまり出歩かない方が良いと思っています。BBクラブの1月の勉強会についての幹事会を週末に行いましたが、やはりこの冬は無理であろうということで勉強会は中止とすることにしました。ただし、法改正の勉強はしたいという希望が多く(みんなえらいですね~)2月13日にウェビナーで配信することにしました。詳しくはまたお葉書で連絡する予定です。

幹事会の後、以前から行きたかった東急プラザにあるペッパーパーラーにお茶をしに行ってきました。席ごとに配置されたペッパー君がクイズなどを出してくれて結構楽しめました。


フレックスタイム制 コアタイムの設定

2020-11-23 14:32:08 | 労働基準法

フレックスタイム制におけるコアタイムとフレキシブルタイムについては、あまり細かいことが決められている印象はなかったのですが、在宅勤務が増える中で、フレックスタイム制を採用する会社が多く、コアタイムの設定について最近確認したことについて取り上げてみたいと思います。

フレックスタイム制の一番のポイントは、始業時刻と終業時刻を労働者の決定に委ねるという点だと認識しています。だいぶ以前にはなりますが、始業時刻から30分後がコアタイムの開始時刻、終業時刻の30分前がコアタイムの終了時刻では、労働者が選択できる時間が短すぎる、せめて1時間の間隔がそこには必要ということを監督署にアドバイスされたことがありましたので、以後そのようにアドバイスをしてきました。

ところが今回始業時刻とコアタイムの開始時刻が同じで、始業時刻より前2時間がフレキシブルタイムになっている(コアタイムの終了時刻は終業時刻より時間前)というケースがあり、その設定については問題ないという監督署の回答でした。私の認識とは異なると考え、通達やコンメンタールを見直してみたところ、特にそのようなケースについて言及されているものはありませんでした。以下通達とコンメンタールの関連部分の記載です。

フレックスタイム制を採用する際に就業規則で定める事項(昭和63.1.1基発1号、婦発1号、平成113.31基発168号)
 なお、法第89条は、就業規則で始業及び終業の時刻を定めることと規定しているが、フレックスタイム制を採用する場合には、就業規則において、始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねる旨の定めをすれば同条の要件を満たすものであること…フレキシブルタイムが極端に短い場合、コアタイムの開始から終了までの時間と標準となる1日の労働時間がほぼ一致している場合等については、基本的には始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねたこととはならず、フレックスタイム制の趣旨には合致しないものであること。

・・上記通達と照らすと、始業時刻とコアタイムの開始時刻が同じであってもコアタイムの終了時刻は終業時刻より前に設定してあれば、標準となる1日の労働時間とほぼ一致とはならないので問題ないという判断につながるものなのかと思います。

コンメンタール
フレキシブルタイム(労働者がその選択により労働することができる時間帯)が極端に短い場合、コアタイム(労働者が労働しなければならない時間帯)の開始から終了までの時間と標準となる1日の労働時間がほぼ一致している場合等については、基本的には始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねたこととはならない(昭63.1.1 基発第1号・婦発第1号、平11.3.31 基発第168号)。このため、例えば、始業及び終業のそれぞれのフレキシブルタイムが30分というようなものは本条のフレックスタイム制とはいえない。

(ロ) コアタイム
 コアタイムは、法令上必ず設けなければならないものではないが、これを設ける場合には、労使協定において、その開始及び終了の時刻を定めなければならない。
 コアタイムの時間帯は、労使協定で自由に定めることができ、コアタイムを設ける日と設けない日があるもの、日によってコアタイムが異なるものなども可能である。また、コアタイムを分割することも可能ではあるが、最初のコアタイムの開始の時刻から最後のコアタイムの終了の時刻までの時間が標準となる1日の労働時間とほぼ1致するような場合には、始業及び終業の時刻について労働者の決定に委ねたものとはいえず、フレックスタイム制とはいえなくなるものと解する。

・・こちらもほぼ同様の内容ではありますが、始業時刻のフレキシブルタイムが30分では認められないとされています。ただ10時始業であっても8時からフレキシブルタイムが設定されていれば2時間の選択する時間帯があるため問題ないということでしょうか?

どちらにしても、始業時刻とコアタイムの開始時刻が同じということについて腹落ちしたわけではないのですが、それを否定できるような根拠も見つからないということでした。私のようにどちらかというと夜型の人間は、始業時刻より少し遅めの時間帯から業務を開始できるコアタイムの方が嬉しいのですが、朝方が推奨され、正しいという雰囲気が醸成されつつあるように感じる昨今においてはあまり問題視されることでもないのかもしれません。

先週渋谷支部の代議員・理事選挙があり、無事代議員に選んで頂くことができました。厳しい状況と認識していましたが、お願いした皆様が投票所に駆けつけて頂き、貴重な一票一票を積み上げて頂いたと感じました。またここから一歩踏み出していこうと思います。応援いただきました皆様に御礼申し上げます。


新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金について

2020-11-15 18:35:45 | 法改正

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金は、なかなか申請が難しいと感じます。これまでも顧問先企業から「支給要件確認書」の休業したか否かの証明について、何件もご質問がありました。ご質問の内容としては、かなり自由度高くシフト勤務で働いていたアルバイトさんに対して、仕事自体がなくなってしまったケースなどであり、雇用関係が日々成立していたとも考えられ、そもそもそれが休業であるかどうかの判断が難しいと感じます。10月1日にQ&Aが出たのでご紹介しておこうと思います。まずは概要は以下の通りです。

制度の概要としては、 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により中小事業主に雇用される労働者が事業主の指示により休業し休業中に休業手当を受けることができない場合に休業前賃金の8割(日額上限 11,000 円)を支給するもので、労働者個人に支給されるものです。申請も事業主が行う場合と、労働者が行う場合のどちらのケースも認められます。

【Q&A ②対象労働者、対象事業主】に、日雇労働者は、 雇用関係が継続していない場合、対象とはならず、ただし契約上はいわゆる日々雇用であったとしても、実態として更新が常態化しているようなケースにおいて、更新により労働契約が継続されることを前提に、事業主が労働者を休業させる場合には、支援金・給付金の対象となります。また、フリーランスでの仕事が休業状態であっても、休業の前提となる雇用関係がないフリーランスの方は対象とはなりません、とあります。

この「雇用関係」の判断が難しと感じます。雇用契約の成立が日々行われていると考えられる場合は、指示した休業にはあたらないと思いますが、実態を見るということになると少し判断は変わってきます。

申請をするにあたり、支給要件確認書を提出することになるのですが、⑦-1に事業主(会社)が休業させたか否かを「はい」か「いいえ」で記入する欄があり、「はい」であればなぜ休業手当を払わないのか、「いいえ」にする判断は正しいのか、ということで悩ましい問題となります。
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000646894.pdf

【Q&A ③対象となる休業】として示されている中で確認しておく方が良いものを拾ってみました。

2-2 事業主から、新型コロナウイルス感染症がなければシフトを入れる予定であったが、シフトが決まる前に休業に入ったので、申請できないのではないか。また、申請すると不正受給になるのではないか心配だと言われました。申請できますか。という質問に対しては以下の回答となっています。
→ シフトが入らない状態が休業に当たるか否かは、前提となる労働契約の内容によりますが、この休業の前提となる労働契約は、労働者と事業主との合意によりその内容が決定されます。

2-3 労働者から休業支援金の支給要件確認書の記載を求められています。事業主の記載欄に休業手当を支払っているかどうかを確認する欄がありますが、「休業手当を支払っていない」と回答した場合、ただちに労働基準法違反となるのでしょうか。
→ 休業支援金は、中小事業主に雇用される労働者であって、当該事業主の指示により休業しており、休業手当を受け取ることができない方を対象とした制度です。・・・使用者の責に帰すべき事由による休業に当たるか否かは、個別の事案ごとに、休業の原因や、使用者の休業回避努力の状況などを総合的に勘案し判断されます。

3-1 事業主の支給要件確認書への記載は絶対に必要でしょうか。協力してくれない場合、個人からのみの申請は可能でしょうか。
→ 労働者の雇用、賃金支払いの事実や休業させていることの事実については、労働者からの申出のみで判断することは適当ではなく、この点について最低限事業主からの確認が必要です。仮に労働者が事業主に申し出たにもかかわらず、事業主が支給要件確認書への記載を拒むようなケースが生じた場合は、支給要件確認書の「事業主記入欄」の「事業主名」の部分に、事業主の協力が得られない旨を、事業主の主張その他関連する事情とともに記載の上、申請してください。その場合、労働局から事業主に対して報告を求めます。

結論としては、例えば週〇日勤務などの契約を結んでいる、または一定期間実態があったということであればシフトが決まる前の分であっても、契約した日数分の休業手当の支払いは本来必要であるということだと思います。判断が難しいという場合については、「はい」とする方が良いのではないかと考えます。

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000646900.pdf

Q&A
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000678085.pdf

対象期間・申請期限を延長
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000676013.pdf

コロナの影響で閉店しているお店が増えて寂しく感じる中で、新しくできたお店もあり、とにかく運動不足にならないため週末散歩をすると気になるお店が見つかることがあります。以前何度か購入していたオリーブオイルのお店がまた別の場所にできたりして、散歩もまた悪くないと感じます。だいたい頑張って10,000歩くらい歩くと7キロくらい歩いたことになるようです。今週末は、少し時間ができたので、最高裁の判決の解説動画を見たり充実した週末を過ごすことができました。感染者数が300人を超えて少し心配な状況なので、油断せず行かねばと気を引き締めようと思います。


半日単位の子の看護休暇・介護休暇について

2020-11-08 22:12:34 | 法改正

7月26日のブログでも「子の看護休暇・介護休暇の改正」については取り上げたのですが、先日の渋谷労働基準協会のセミナーのご質問で「半日単位の子の看護休暇・介護休暇」の扱いについて複数ありましたので再度触れておきたいと思います。

今回の改正(2021年1月1日)で、時間単位の子の看護休暇・介護休暇の付与が義務付けられました。改正前は、日単位又は半日単位の付与が義務付けられていましたが、「時間単位」の付与が義務付けられることにより「半日単位」の記述は条文からなくなっています。そのお話をしたところ、「半日単位」の子の看護休暇等を残してよいのかというご質問がありました。実際に運用を考えてみるとなかなか難しいと思いました。

今回の改正についてはQ&Aが出ています〈子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得に関するQ&A〉。

https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/content/contents/000618818.pdf

問2-2「半日単位での看護・介護休暇の取得を可能とする場合には、日単位で看護・介護休暇を取得する場合と比べて労働者にとって不利益とならないよう、看護・介護休暇1日の合計時間数が1日の所定労働時間数を下回らないものとする必要がある。」とありますので、半日単位を残しても良いということになります。

例えば、9時~18時の8時間の所定労働時間の会社であれば「9時~12時の午前3時間取得又は13時~18時の午後5時間取得=半日単位を取得」、という扱いでもよいということになります。

また、所定労働時間が7.5時間(9時半~18時)場合の半日単位が午前2.5時間、午後5時間というように定められているのであれば半日単位を残す意味もあります。

ただし上記問2-2にある通り半日単位が時間単位に比べて不利益になってはいけないので、午前休2.5時間を2回取得(計5時間)で1日分取得と扱うことはできないということは留意する必要があります。

金曜日は社労士試験の合格発表でした。合格率6.4%と例年並みで、合格者数2,237人。男女比男性64.0%対女性36%、最年少20歳・最高齢78歳、ということでした。お疲れさまでした。今回涙をのんだ方もまたあきらめずチャレンジしてもらいたいと思います。とにかくあきらめず地道に続ければ必ず合格できる時が来ますから。

この2日間はとにかく日ごろの運動不足解消のためかなり遠くまで散歩を兼ねて歩いていくことにして、1日10,000歩歩きました。しかし、到達点にして行ったパンケーキ屋さんでパンケーキを注文したところ凄いボリュームで、結果帰りも歩いたのですがおなかはパンパンのまま、という予想外の結果となりました。


雇用保険法 時間数による被保険者期間の算定 

2020-11-02 00:46:55 | 法改正

法改正セミナーで取り上げた雇用保険法等の一部を改正する法律の中で、「勤務日数が少ない者でも適切に雇用保険の給付を受けられるよう、被保険者期間の算入に当たり、日数だけでなく労働時間による基準も補完的に設定する(令和2年8月施行)。」という内容があります。

失業等給付の基本手当を受給する要件である「被保険者期間」は、原則として、離職日以前2年間の算定対象期間に通算して12か月以上あること(特定受給資格者に該当する場合については1年間に6か月以上あること)とされています。「被保険者期間」とは、資格喪失日の前日からさかのぼり1か月ことに区切った1か月の期間内に賃金支払基礎日数が11日以上である場合に「被保険者期間1か月」と算定されます。要するにある程度働いた月が12ヶ月以上あれば基本手当の受給資格を満たしたことにするというわけです。今回の改正でこの11日以上という要件について、「賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上であるとき」が加わり、来年8月から施行されることになりました。

被保険者期間を、日単位で拾うのではなく時間単位で拾う理由は、1週間の勤務が毎週同じではない場合に暦の区切りによっては11日被保険者期間を拾うことができない場合があり、運不運が発生していることについての対応です。今後、働き方が多様になるにしたがって被保険者期間が賃金支払い基礎日数日以上ではなく80時間以上も頻繁に利用されるようになるかもしれません。

ところでこの被保険者期間の時間単位で要件を満たす考え方は、育児休業給付や介護休業給付においても同じなのかというご質問がありました。これは調べたところ、同じ考え方をとるということがわかりました。改正条文は、雇用保険法第14条3項で定められたのですが、「14条の規定による被保険者期間」は、高年齢受給資格者、特例受給資格の他、高年齢雇用継続給付や育児休業給付及び介護休業給付の「みなし被保険者期間」についても同じ扱いになります。以下業務取扱要領よりご参考まで。

原則として、その休業を開始した日前の2年間に賃金支払基礎日数が 11 日以上ある完全月又は育児休業開始日が令和2年8月1日以降であって、育児休業開始日以前の2年間に賃金支払基礎日数の 11 日以上の完全月が 12 か月に満たない場合は、賃金の支払の基礎となった時間数が 80 時間以上である完全月が通算して 12 か月以上あるときに育児休業給付金の受給資格者となる。(育児休業給付は業務取扱要領59501、介護休業給付は同59801)

先週は出張で福岡まで行ってきました。行きの飛行機は空席もあり比較的ゆったりしていましたが、帰りの飛行機は満席で空港にも人がいっぱいでした。ただ、みんな黒っぽいスーツ姿ばかりで、女性は少なく、トイレも男性の方が並んでおり女性はガラガラという現象もありました。やはり観光はまだまだであり、仕事でのやむを得ない出張が主力ということなのだと思いました。

いよいよ11月に入り東京も寒くなってきました。本当はオリンピックで盛り上がる年がコロナで縮こまるような年になってしまいましたが、デジタル化、働き方などについて新たな将来に向かう転換の年になるかもしれません。あと2ヶ月来年に向けて準備は怠りなくしておきたいと思っています。