OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

マクロ経済スライドの導入の経緯と基本的な考え方について

2019-06-30 21:27:32 | 年金

マクロ経済スライドが導入される平成16年の改正までは、5年ごとの財政再計算で、給付水準と当面の保険料負担を見直し、年金額及び保険料額を法律で決めていました。 

しかし、少子高齢化が急速に進む中で、財政再計算を行う度に、最終的な保険料水準の見通しは上がり続け、将来の保険料負担がどこまで上昇するのかという懸念もあり、年金への信頼が揺らいでいました。 

そこで、平成16年の制度改正では、将来の現役世代の保険料負担が重くなりすぎないように、保険料水準の上限を法律で決めました。この保険料水準を固定することで、保険料の上昇と最終保険料が見通せるようになったことは年金制度に安定感をもたらせたと思います。 

また、国が負担する割合も引き上げるとともに、積立金を活用していくことになり、公的年金財政の収入もその際に決め、5年に一度行う財政検証のときに、おおむね100年後に年金給付費1年分の積立金を持つこととして、年金額の伸びの調整を行う期間※1を見通すことにしました。 

そして、この収入の範囲内で給付を行うため、「平均余命の伸び率×公的年金被保険者数の変動(減少)率(2~4年度前の平均)=スライド調整率」を決め、マクロでみた給付と負担の変動に応じて、給付水準を自動的に調整する仕組みを導入したのです。この仕組みを「マクロ経済スライド」と呼んでいます。

※1 マクロ経済スライド調整終了時期は約30年後の予定。

イタリアから戻りまだ時差ボケが少し残っていますが、社労士制度の類似制度がある6か国で今後の情報交換や人事交流を行うための連携について世界社会保険労務士連盟を作り調印するという成果も出て、連合会の国際化事業は、一昨日の総会で一段落しました。引き続き連合会で国際化事業を担当できるかどうかわかりませんが、今後社労士が国際的な資格となることで、価値が高まるであろうとても意義のある事業と考えています。

国際化事業を行う中で、社労士会は厚生労働省からも評価を頂き、ILO,JICAなどの各機関と信頼し合うことができるようになったのも大きな意味があると思っています。

また、今回ヨーロッパの国とのディスカッションの中でわかったのですが、韓国も含めどちらかというとADR(裁判外紛争)など紛争解決にウェイトが重い国が多い中、日本の「労働環境を守る」という紛争の未然防止という考え方が高く評価されたことも、日本の社労士制度の価値を再認識させてもらうことができました。国際化事業に4年間関わらせて頂いたこと、とても感謝しています。

 本会議、世界社会保険労務士連盟発足 

 会議の帰り夜の街がとても雰囲気がありました


柔軟な働き方 時間単位年休について

2019-06-17 00:05:04 | 労働基準法

働き方改革については、特に経営者や管理職は「ガラッと意識を変えなければなりません」とセミナー等でお話しすることが多かったのですが、実際1億総活躍から始まりここ2年程経過してみると「柔軟な働き方」という考え方がだんだん浸透してきているような気がします。

テレワークで在宅で働く日があったり、フレックスで少し遅めに出勤したり逆に少し早めに退社する人がいたり、この春の法改正で年休も必ず年5日は取得しなければならないので、いつも社内のだれかがいないという状態になるかもしれませんが、これも慣れなのかもしれません。仕事のフォロー体制をしっかり決めたら案外柔軟な働き方は実現可能なのかもしれないと考えています。

高度経済成長期、特に日本の製造業を軸に作られた労働基準法の考え方は、工場労働の時間管理にはマッチしていると思います。しかしデスクワークを中心とした事務系の業務や、時間に捉われず良いものを作ろうとしている情報発信系や芸術系の現場では、労働時間を管理することによる労務管理はミスマッチと感じます。とすると変形労働時間制や裁量労働制などではなく、時間単位年休を導入することにより柔軟な働き方ができるようになるのかもしれないと思います。

たとえば2時間中抜けして、夕飯の買い物を済ませてしまうとか、風邪気味なので会社の近くにある医者に診てもらいに行く、友達とランチを楽しむなどについても遠慮せず勤務時間中に出かけられることで、時間単位年休についての社員から評判は上々の会社もあるようです。とにかく、任された仕事を完成することができるのであれば、勤務時間の途中で中抜けできることでむしろ時間管理の呪縛から解放されるような気がするのです。

時間単位年休は平成22年の労基法改正で導入できることになりました。導入については以下の通り定められています。

使用者と事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(当該労働組合が無い場合には労働者の過半数代表)が書面による協定を締結することにより、時間単位で年次有給休暇を使用することができます。

労使協定で締結しなければならない要件は、

  1. 時間単位年休の対象労働者の範囲
  2. 時間単位年休の日数(5日以内の範囲)
  3. 時間単位年休1日の時間数
  4. 1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数

になります。ただし、分単位など時間未満の単位は認められません。そのため、所定労働時間が7時間45分のような事業場は、時間単位年休における1日の時間数を8時間とするなどの必要があります。

また、今年の春の改正である年5日の年休取得義務の対象日としては時間単位年休は含まれないものとされています。

今日からジム通いを開始しました。続くか心配ですが、10年後の自分に期待して頑張ります。明日は筋肉痛かもしれません。

ヨーロッパに社労士類似制度があることは前にもブログに書きましたが、来週中ほどから6日間ミラノで開催される労働フェスティバルに出張して参ります。したがって来週はこのブログもお休みさせていただきますのでよろしくお願いします。  


請負事業の一括について

2019-06-10 00:29:32 | 労働保険
労働保険の保険料の徴収に関する法律(徴収法)で労働保険料の徴収について一括ができるものとして定められている保険関係の一括は、「有期事業の一括」「請負事業の一括」「継続事業の一括」の3つがあります。このうち継続事業の一括については、労災保険及び雇用保険に係る保険関係を一括することができますが、有期事業の一括と請負事業の一括については労災保険に係る保険関係のみを一括することになります。
 
この中で、請負事業の一括は、数次の請負で行われることが通常である「建設業のみに適用」されるものです。家を建てる時などの建設の仕事を思い浮かべてみるとイメージしやすいと思うのですが、下請けやさらにその下請けである孫請けなど混在して仕事をします。このような数次の請負で仕事が行われる場合、下請負事業ごとに分割して保険適用することは現実的には困難です。そのため、法律上当然に下請負事業を元請負事業に一括して、元請負人のみを適用事業の事業主として取り扱うこととされています。

この場合注意しなければならないのは、請負事業の一括の対象となるのはあくまで「労災保険の対象者である労働者」ということになります。元請事業の事業主だけでなく、下請負事業の事業主や孫請事業の事業主や一人親方についてはこの一括の対象にはならないわけです。従って請負事業の一括の仕組みがあっても下請負事業の事業主等については労災保険の特別加入をしなければ、労災保険の補償を受けることはできないということになります。

下請事業の実質的経営者が元請事業の労働者であったとして労災保険の休業補償給付を申請したところ「労働者」に該当しないとして不支給処分とされ、それを不服として裁判に訴えたもののやはり労働者性が否定された判決があります(「呉労基署長〈浅野建設〉事件、広島地判平成4.1.21)。元請けが下請負人に行った指示、指導については、労働者性の判断基準となる指揮命令ではなく「請負契約の内容に沿うよう債務の履行を求めているにすぎないもの」と判断されています。
 
なお、「下請負事業の分離」といって一定以上の規模の下請負事業である場合については、元請負人及び下請負人の共同の申請により元請負事業に一括することなく下請負事業を分離して保険関係を成立させることが可能ですが、そのためには厚生労働大臣の認可が必要です。この認可を受ける一定規模とは、下請事業の概算保険料の額が160万円以上又は請負金額(消費税相当額を除く)が1億8,000万円以上になる場合です。
 
久しぶりに小淵沢に行ってきました。昨年秋にお風呂をリニューアルして外の景色を見ながら露天気分になる予定だったのですが、前回までは寒くて寒くて窓を開ける気に全くならず、やっと今回はわざわざ陽のあるうちにお風呂に入ることにして、少し露天風呂気分を味わうことができました。家の前は畑とその向こうは森なので窓を開けてもたいがい大丈夫なのですが、いきなり畑の様子を見に来たのか軽トラが走ってくるのが見えて慌ててブラインドを下ろしてドキドキしました。天気が良い夏なら星を見ながらの露天気分になれるはずと楽しみにしています。

健康保険の被扶養者に国内居住要件

2019-06-02 22:54:16 | 法改正

来年春から健康保険の被扶養者の認定の際に国内居住要件が加わることになりました。5月15日の参議院本会議で可決、成立、施行日は、令和2(2020)年4月1日となっています

この被扶養者に対する国内居住要件の追加は、生活の拠点が日本にない親族を一時的に被扶養者にすることにより充実した日本の健康保険の給付を受けた後すぐに帰国するといったケースや不正な在留資格により国民健康保険に加入し給付を受けるというケースがかなりあることが一昨年判明したことによるもので、それに対応する健康保険法の改正となりました。

法案の名称は「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るため の健康保険法等の一部を改正する法律案」です。

健康保険の被扶養認定における国内居住要件の追加

・日本に生活の基礎があると認められるもの(留学生など)については 例外的に要件を満たすこととする。例外となる者の詳細は省令で規定されるが、留学生や海外赴任に同行する家族など例示が示される予定。

・いわゆる「医療滞在ビザ」等で来日して国内に居住する者を被扶養者の対象から除外する。除外対象の詳細は省令で規定。

国民健康保険の資格管理の適正化のための市町村における調査対象の明確化

・日本人を含む国保被保険者の資格管理等の観点から、市町村が関係者に報告を求めること等ができる対象と して、外国人については、留学先である日本語学校等や経営管理を行う企業の取引先等、日本人につ いては、勤務先である企業の雇用主等を想定し、調査対象として明確化する。

追加される条文番号及び文言は以下の通りです。

[健康保険第3条第7項 ]

日本国内に住所を有するもの又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められるものとして厚生労働省令で定めるもの

今日は気持ちの良い天気の上、少し時間的にゆったりできたのでベランダの花の手入れをしました。かなり若い葉が出てきていたのでしおれかけの花や葉を摘んで若い葉が伸びることができるようにしました。その後不要になった土をプランターに入れてまた新たな花を買ってきたらすぐに植えられるように耕しておき、ほんの少しの時間ですがそんなことをしていたら気分がとても晴れて頭の中が整理され、さらに前向きの発想が浮かんできました。やはり土いじりというのは、メンタル疾患にも良いといいますが人間の脳にとっても良い効果があるのかもしれないと思いました。

事務所は夏の決算に向けて、新たな方向性をつかみかけている感じです。アドバイザーとの契約で外部の意見を取り入れ、また積極的にいろいろな業界の方の説明を受けて、どんどん新しいものを採り入れていく姿勢をもっていたいと思っています。