OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

育児休業期間中の賞与保険料の免除について

2022-03-27 22:19:47 | 産前産後・育児・介護休業

育児休業期間中の保険料(健保・厚年)については、現状「月の末日が育児休業期間中である場合の月額保険料及び賞与保険料が免除」されていますが、2022年10月の育児介護休業法の改正に合わせて10月から以下の2点が改正により追加となります。

①月額保険料については、「同一月内で育児休業を開始及び終了しその日数が14日以上である場合」が加わる
②賞与保険料については、「連続して1か月を超える育児休業を取得した場合」に限る

これまで短期間の育児休業であっても月末を含むことによりその月の保険料が免除されていましたが、月の途中で育児休業を開始し終了した場合の保険料は免除されませんでした。改正により同一月内の育児休業を開始し終了した場合であっても14日以上の休業であれば月額保険料が免除されることとなりました。

また賞与保険料についても育児休業の日数にかかわらずその月に支給される賞与保険料は免除されていましたが、連続1か月を超えない場合の保険料の免除は行われなくなります。

今回顧問先から「1か月超の育児休業の場合の賞与保険料の免除はどの月で行われるのか?」というご質問がありました。例えば12月20日から1月25日まで育児休業を取得した場合の、12月の賞与保険料は免除されるのかというご質問です。1か月超えた時点は確かに1月であり12月に支払われた賞与の保険料が免除されるか迷うところではありますが、この場合12月に支払われた賞与保険料は免除されることになります。

すなわち、「賞与月の末日を含んだ連続した1か月を超える育児休業等を取得した場合に限り免除」という考え方となります。例えば賞与月の末日を含まない、11月20日から12月25日までの育児休業の場合、12月に支給される賞与保険料は免除になりません。

育児休業期間中の保険料免除は「休業開始日の属する月から終了日の翌日の属する月の前月まで」です。12月20日から1月25日までの育児休業の場合は1月25日の終了日の翌日が属する前月は12月ということになりますので、12月の保険料が免除されることとなり、12月支給の賞与も休業期間が1か月を超えるのであれば免除されるということになるわけです。

これまで月末短期間の育児休業でも賞与保険料まで免除されていたという違和感は解消するわけですが、給与計算泣かせになるのではないかと危惧します。12月の賞与の支給時点では1か月超えて育児休業を取得する予定であり保険料免除としていたものが、終了予定日を繰り上げて休業期間が1か月に満たなくなった場合、保険料は徴収することになり再計算の必要が出てくる可能性があると思われるからです。

(参考)育児・介護休業法のあらましp99
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355354.pdf

今日は桜が満開になりました。お天気も良く満開の桜を満喫することができました。ベランダの花も満開でいよいよ春到来を感じます。コートを着なくても外を歩けるようになると気持ちも軽くなりますね。


改正育児介護休業法4月施行分準備

2022-03-21 23:47:36 | 産前産後・育児・介護休業

今年の人事労務関連の一番の大きな改正は、4月と10月施行の育児介護休業法ということで、いよいよ3月も後半に入り準備も追い込みになってきたと思います。ここ1カ月程度、顧問先企業の育児介護休業規程の改正対応を地道にお手伝いしてきましたが、10月改正分は出生時育児休業の就業をどうするかまだ未定である、また今回の改正に合わせて育児休業関連の施策を検討したいなどの要望があり、まずは4月施行分のみ対応という企業が半数程度でしょうか。4月改正対応については以下を準備しておく必要があります。

①育児介護休業規程の改定  4月に向けた改定は「有期雇用労働者の育児休業申出の要件緩和」と「同労働者の介護休業申出の要件緩和」の2点です。「引き続き雇用された期間が1年以上である者」を削除する必要があります。

これまで有期雇用労働者については法による除外ということで一定の要件を満たさないと育児(介護)休業をすることができないものとされてきましたが、だんだんにその要件が緩和されてきました。今回は1年以上の勤務実績要件が撤廃されることになり、子1年6か月(介護休業は開始予定日から93日+6か月)に達するまでに契約が満了しないことのみが残ることになりました。またこれまで法による除外と労使協定による除外が混同されていることも多かったのですが今回労使協定による除外は改定がなく、1年以上の実績を求める部分も残ります。有期契約労働者に引き続き1年以上の勤続実績を求めるのであれば正社員と同様に労使協定により適用除外と定めることは可能です。これまで労使協定による適用除外に有期雇用労働者が含まれていなかったということであれば、労使協定を新たに締結する必要があります。

②制度の個別周知と意向確認の準備 妊娠・出産を申出た社員への1)育児休業の制度、2)申出先、3)育児休業給付、4)社会保険料の取り扱いを周知をすることと、育児休業を取得するか否かの意向の確認を行う準備が必要です。

これまでも育児休業等に関してあらかじめ周知をする努力規定はありましたが、今回は「申出」があった場合に個別に制度を周知することと取得についての確認が義務になりました。育児休業を取得するつもりはない、と言っている社員に対しても個別周知は必要であるとQ&Aに示されています。意向確認は厚労省の参考様式を使うのが良いと思います。
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000852918.pdf

③雇用環境整備の措置の準備  雇用環境整備の措置は、1)研修の実施、2)相談体制の整備、3)自社の取得事例の収集・提供、4)方針の周知のいずれかを実施する必要があります

相談窓口は既にある場合、周知している等の要件を満たす場合であれば新たに設ける必要はありません。また研修は管理職はすべて受講している状態にすべしとされており、以下のイクメンプロジェクトサイトのダウンロードのページの研修動画などは有用だと思います。
https://ikumen-project.mhlw.go

 連合会の前副会長である石谷隆子先生が女性社労士として初めて叙勲されたお祝い会が大阪であり1泊で行ってきました。小柄ながらいつも堂々とされており、また祝賀会でのドレスアップもとても素敵でした。会議でも要所で的を得た発言をされるということで見習いたい先輩です。

「育児・介護休業法」について改正ごとに労務行政さんの書籍の執筆をさせて頂いて、今回4冊目となりました。2010年に初めて執筆させて頂いてから10年以上改正を追っていても育児介護休業法の条文は本当に難しいと思います。育児介護休業規程の改定もなかなか大変ですが、まずは改正内容を抑えてから改定作業に入ることがポイントになると思います。今回発刊された「育児・介護休業法(株式会社労務行政)」を参考にして頂けると幸いです。以下のサイト(URL)より購入可能です。

https://www.rosei.jp/store/book/9908


ワクチン休暇と積立休暇について

2022-03-13 22:54:09 | 労務管理

OURSでは昨年の初回のワクチン接種の時から、当日の離席後の勤務免除と翌日と翌々日は副反応で勤務が困難な場合などに取得できるワクチン休暇制度を入れています。状況を見るとやはりほとんどのメンバーは副反応はあるようなので一定の効果はあったと思います。長く勤務しているメンバーはなかなか1年に20日の年休を取得することは難しいようで残日数がかなりあり、ワクチン休暇があるかないかあまり影響はなさそうですが、入社して2、3年の場合はやはりワクチン休暇はあった方が助かるようです。

ワクチン休暇については、①無給の休暇取得を認める、②有給で取得できるようにする、③積立休暇を利用できるようにするなどが考えられますが、やはり②が妥当であろうと考えます。積立休暇を利用できるようにするのも良いですが、上記に書いたように、勤務年数によっては積立休暇はほとんど積み立てられていない可能性もあり、ワクチン接種については入社年次にかかわらず受けられれば受けた方が良いものと考えるためです。

またその他の検討事項としては、①接種当日接種後の勤務を免除するか否か、②翌日以降副反応が出た場合のみ取得できるとするか事前申請を認めるか、③接種後何日間休暇を認めるかなど、意外に検討事項は多いと思います。

ただ、最近積立休暇制度(有給の残日数を積み立てて、一定の目的を決めて利用できるようにする制度)はあっても良いかなと考え始めています。

というのも改正育児介護休業法の中で2023年4月から始まる公表制度において、男性の育児休業の取得率を計算する場合にも育児目的に利用できる積立休暇を含めて取得率を計算することができるということもあり、やはり100%の給与が支給される育児目的休暇は魅力があるのだろうと考えるからです。この公表は1000人超の大企業のみ対象なのですが、導入する施策としては中小企業にも参考になります。また長く勤務してくれているメンバーがけが等した場合には、永年勤続の功労の意味でも利用できる積立休暇があっても良いかもしれないと思い始めています(人生何があるか分かりませんから)。

ちなみに社労士になって初めて「積立休暇」にお目にかかった顧問先さんのネーミングは「やすらぎ休暇」というものでした。何となく優しさを感じて良いなあと思ったことをよく覚えています。

ワクチン休暇については、厚生労働省で以下の「ワクチン休暇導入してみませんか」というリーフレットを作成しており、「休暇制度を新設していただくほか、既存の病気休暇や失効年休を活用する」ことを勧めています。

https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/202108171334.pdf

また健康経営優良法人の認定を受けた会社さんでは、ヘルスケア・メンタルヘルスに対する取り組みに、「ワクチン休暇」を挙げているケースもあるようです。

先日の日経新聞では6か月後に4度目の接種を政府は考えていると載っていましたし、今後定期的にワクチン接種をすることになるのであればまだまだワクチン休暇の導入効果はありそうです。

今週は本当に忙しく、zoomの会議が1時間ごとにびっしり詰まってしまい、明日以降の週で講義するものの予習が全く手つかずで週末はほとんど予習にかかりきりになってしまいました。そうこうしている間に、今日あたりコートは暑くて着ていられないくらいになりましたし、ベランダはかなり花が綺麗に咲いてくれていよいよ春到来ですね。桜ももうすぐということで楽しみな季節になりました。とはいえまだ感染者は多いので気をつけながら過ごしましょう。


36協定本社一括届出について

2022-03-07 00:10:39 | 労働基準法

先週のブログにも書きましたが先週渋谷労働基準協会さんの36協定集中講座でお話しさせて頂きました。もう7年くらい毎年お話しさせて頂いており、その間働き方改革で時間外労働の上限が特別条項において決められたり、様式が変わったりと、色々な変更がありましたが、今年の一番の変更ポイントは本社一括届出について、特に電子申請で比較的簡単にできるようになったことだと思います。

元々36協定については、「事業の種類」、「事業の名称」、「事業の所在地(電話番号)」、「労働者数」以外の事項が同一である場合に限るとされています。上記には「労働者の過半数代表者」は含まれていないため、労働者の過半数代表者が同一である必要があり、すなわち協定の締結当事者は各事業場の労働者の過半数で組織された労働組合である必要がありました。つまり労働者の過半数で組織された組合があり、各事業場ごとに組合員が過半数である場合に、過半数組合の代表者が各事業場ごとの代表者となる=過半数代表者が同一、ということになり一括届出が可能とされていました。しかしこれが令和3年3月29日から変更になり、電子申請の場合に限り、事業場ごとに労働者代表が異なる場合であっても、36協定の本社一括届出が可能になりました。

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000724367.pdf

従って今年から複数事業場がある会社さんは、36協定を電子申請で一括届出をしようと考えるところは多いと思います。厚生労働省は詳細なパンフレットや一括届出事業場一覧作成ツールを出していますし、コロナ感染拡大防止の観点からも電子申請を推奨しています。同時に申請が可能な件数は36協定の場合最大30,000事業場となっていますので、店舗などがあり事業場数が多い場合はとても有用なのではないかと考えます。ポイントとしては36協定の入力画面で「事業の種類」、「事業の名称」、「事業の所在地(電話番号)」、「時間外労働させる労働者数(18歳以上者)」を入力することはできず、一括届出事業場一覧を作成して届け出ることになることです。いかにも入力できるような画面になっているので戸惑う場合もあるかもしれません。一覧で作成することとしたのは、事業の種類が異なっても届出を可能だということもあるかと思います。また、特別条項がない事業場と特別条項がある事業場は一括届出はできないことも注意が必要です。これからいよいよ36協定の届出が多く発生する時期になると思いますが是非電子申請で一括届出を試してみて頂ければと思います。

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000609355.pdf

ここのところかなり続いていたセミナーの仕事が来週3日間で一段落というところまで来ました。事務所は育児介護休業規程の改定に取り掛かっており、4月改定分だけであれば大変なことはないのですが、10月分の改定はかなりの集中力が必要な感じです。これはなかなか各企業の人事担当者も難航されているのではないかと思いますので、夏の終わりに育介規程改定セミナーをOURSで開催してみようかと考えています。10月の改正までに少し時間をかけて社内で法改正に合わせて施策を考えたいという会社さんもあり、規程の改定と合わせて色々工夫のある施策もご紹介できるようなセミナーにしたいと思っています。

ともあれ、今週末は残った仕事を片付けた後、確定申告を電子申請で終えました。こちらはマイナンバーを読み取り、例年通り昨年のデーターを取り込み、修正点を修正したり追加したりすればよく、サクサクと終ることができて、やはり電子申請は楽だなあ~と感激しています。36協定の電子申請はまだ取組んでいないのですが、同じように過去のデータを読み込むことができるようですので、今年まずは頑張れば来年からはかなり楽になるのかなと思います。何事もチャレンジ、チャレンジ。