今回で在職老齢年金について取り上げるのは最終回です。在職老齢年金については、平成29年5月10日、自民党一億総活躍推進本部が発表した「一億総活躍社会の構築に向けた提言」の中で、「廃止を含めた見直し」の検討が提言されています。「就労を阻害する」という影響を持つ点で、今後一億総活躍の場面では在職老齢年金制度は廃止する必要があるということなのです。それではこれまで在職老齢年金はどのような役割を果たしてきたのか、今後の方向性については、という2点を考えてみたいと思います。
60歳代前半を対象とする在職老齢年金の役割については、昭和40年の導入当初は「低賃金に対する所得補償」でした。平成6年の改正により就労促進を図る仕組みに改正した後も、「低在老」は定年後の60代前半の所得を補填する役割を果たしています。
それに対して、昭和61年の改正で一回廃止された後平成12年の改正において復活した「高在老」についてはその目的は「低在老」とは異なったもので、年金受給世代の高所得者の年金額を一定額または全額停止すると現役世代とのバランスを保つための調整機能を果たすというのが主な目的でした。
老齢厚生年金の支給開始年齢の65歳引上げが完了する2025年(女性は2030年)には「低在老」の対象者がいなくなるため、今後課題となってくるのは65歳以降の在職老齢年金である「高在老」ということになります。それでは高在老で高所得者の年金を支給停止にすることによりどの程度年金総額が削減されているのかという点を調べてみました。
平成30年4月4日に行われた、第1回社会保障審議会年金部会の参考資料(資料2-1)の中の「今後の検討課題―在職老齢年金について」に、低在老の対象者が約98万人・支給停止額が約7千憶円、高在老の対象者が約28万人・支給停止額が約3千憶円という数字が出ています。
公的年金受給者の年金総額は、平成28 年度末現在で54 兆8千億円と約32兆1千憶円とされていますので、比べてみると支給停止額はほんのわずかといえ、支給停止の効果は薄いといえます。また、70歳以上については被保険者の資格喪失をするため保険料を納付する必要はないのですが、現役世代並みに就労している場合「70歳以上被用者届」を出して在職老齢年金の支給停止の仕組みは残ることとなっており、違和感のある制度となっています。
平成29年版高齢社会白書(内閣府)に高齢者の就業状況が載っており、現在仕事をしている高齢者の約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答。70歳くらいまでもしくはそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえる。
であるとすれば、「老齢」を支給事由とする例外的措置である在職老齢年金については廃止し、「退職を前提とせず」「老齢を支給事由として」在職中であっても老齢に該当すれば支給することとするのは、高齢者の就労のためにも必要なのかもしれないと考えます。
一昨日春学期が終わり、3つのレポートも無事提出することができました。レポートの1つの締切りが、連合会の韓国出張中になっており、どうしても行く前に提出しなければならず、またその提出日に午前中授業、午後BBクラブがあり翌日韓国出張の上、帰国日後に2つのレポートの締切りがあるという超過密スケジュールではあり、流石に大丈夫かなあと心配だったのですが無事乗り切りました。BBクラブの打ち上げでめちゃくちゃおいしそうな「牡蠣」があったのですが、万が一のことを考えて食さず正解でした。
韓国の公認労務士制度については、10年前の社労士制度40周年の時に大槻最高顧問が交流を開始し、現会長である大西会長が熱意をもってつないで来られ、今年で10年が経ち新たなステージを迎えたわけですが、今回の3泊4日の訪問で、1年半前に参加したときより、かなり充実した意見交換や交流ができたように思います。今回は日本の社労士制度を紹介する担当でしたが20分程度の持ち時間でしたので比較的気持ちは楽であったのと、夜の懇親会ではGoogle翻訳が大活躍で、韓国公認労務士会の女性会員とかなりお互いの状況を交換することができて、本当に楽しかったです。
今後さらに意見交換を重ねていくことを約束しましたので、やはりハングル文字が読めるようにはならないといけないなと思ってしまいました。