OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

休職期間満了による自動退職

2016-09-25 21:43:36 | 労働法

今年の東京会の前期必須研修は「社労士のメンタルヘルスの実務対応」で、講師の先生のお話は分かりやすく、OURSのモデル就業規則にも加筆しなければならない事項についての気づきもあり勉強になりました。勉強を元にOURSの休職・復職のモデル規定にいくつか加筆する予定です。

休職期間満了時に復帰困難な場合については、昔のモデル就業規則をみると「解雇」と規定されているものが多くありましたが、現在は「自動退職」となっているケースが多いかと思います。「解雇」となると解雇の手続きである「解雇予告又は解雇予告手当」の問題があり、休職期間満了時に復帰困難な場合にその手続きをとって退職というのは違和感を覚えますので「自動退職」と規定するのが良いのではないかと考えます。

この場合果たして「自動退職」は認められるのかということなのですが、安西弁護士の書かれた「採用から退職までの法律実務」」では、「休職は一種の解雇猶予の制度であり、本来ならば長期にわたる就労不能ないし困難事由が生じたのであるから契約の解除(解雇)事由が生じているので解雇してもよいのであるが、一定期間猶予してその間に病気の治癒等休職事由が消滅した場合には復職させて解雇しないこととする処分である。」とあります。そして、自動退職の有効性については、「①期間満了の翌日等一定の日に自動終了することを、②明白に就業規則に定め明示し、③かつその取扱いについて例外的な運用がなされていない、ならば定年と同じように終期の到来による労働契約の終了となり「解雇の問題は生じない」とされている(昭和27.7.25基収1628号通達等)」とあります。

それに対して、試用期間満了時の本採用の拒否は自動退職になり得るかという点ですが、試用期間の法的性質については、「解約権留保付きの雇用契約であり「本採用拒否は、留保解約権の行使、すなわち雇入れ後における解雇に当たると解されている(昭和48.12.12最高裁判決三菱樹脂事件)」とあり、「本採用しない、という意思表示は、留保されている解約権の行使であり解雇に該当するが、この場合、その本採用拒否通知の日が使用開始後14日を超えている場合には、労基法第20条に従って労基署長の「解雇予告除外認定」を受けない限り、30日分の解雇予告手当が必要である」ということで「自動退職にはなり得ない」ということになります。

最近、特に忙しく外出が多かったので出先でのちょっとした時間例えば会議と会議の間のお昼の時間などにスターバックスなどでノートパソコンを広げてレジュメ作りを少しでもやりたいと思っていたのですが、やっと昨日念願の1キロくらいの小さなノートパソコンの購入にこぎつけました。

これまでiPadminiを愛用しており、こちらは0.8キロを切るくらいの重さなのです、外出が長い時は必ず持ち歩いていました。しかしofficeが入っていないためレジュメの修正等はできないのでやはりノートパソコンが必要でした。事務所スタッフ用に同じものの色違い(これがなかなか素敵なブルーグレー、ちなみに私のはゴールドです。しかし3万円台ととても安価でした)とWi-Fiも2台購入して、昨日設定も完了しいよいよ明日からの新たな通信環境が楽しみです。


介護短時間勤務改正の影響

2016-09-19 16:55:28 | 雑感

連休3日間ともあまりお天気が良くありませんでしたね。今回の連休はとにかく月末にあるセミナーで2つのテーマで話すうちの1つ「改正育児・介護休業法」のレジュメと資料を仕上げることになっており、お天気が良くないことはかえって私にとっては落ち着いて仕事に専念できたように思います。

今回の育児・介護休業等の改正については、7月に労務行政さんから「改正早わかりシリーズ 育児・介護休業法・均等法・雇用保険法」で出版させて頂いており、今のところ有り難いことに毎月増刷ということで、ニーズの高さを感じています。ご購入いただきました皆様有難うございました。

8月には、施行規則や指針も出ましたので具体的な運用についてもだいぶ分かってきたところですが、レジュメを作りながら考えたのは今後の労務管理について、特に働き方についてこの改正も大きく影響しそうだということでした。

今回の改正では、介護休業と介護短時間勤務が分離されます。介護休業は、対象家族1人につき3回を上限として93日まで取得可能とされました。これまで93日に含まれるとされていた介護短時間勤務は選択的措置(短時間勤務、フレックスタイム制度、始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ、介護サービス費用の助成等)ということで会社が選択して規定できることにはなっていますが、ニーズとしてはやはり介護短時間勤務が多いのではないかと思います。

介護短時間勤務については、介護短時間勤務開始より3年以上の期間に少なくとも2回以上取得できるということになっており期間の制限はないため、最大で3年間の短時間勤務が可能ということになります。介護休業を取得できる対象家族については同居要件が今回の改正から外れるため、かなり広がります。例えば自分の父と母だけではなく、妻の父母も別居であっても対象家族になりますし、その4人について順次介護を行うとなると最大3年間×4人=12年間の短時間勤務も可能ということになると思います。

そうだとするとその短時間勤務はその人にとっては通常であり、会社で導入した短時間限定正社員も存在するとすると短時間の理由は異なっていても状況はほぼ同じになってくるのではないかという気がします。

そんなことを考えていると頭がこんがらかりそうになるのであまり深く考えないようにしているのですが、これからは限定正社員の3つのパターンである「職務限定」・「地域限定」とともに「時間限定」も増えてきて、働き方はそれぞれ様々、自分で選ぶような時代となり、それをいかに有機的に活躍してもらい生産性を上げていくか、複雑な労務管理が求められるような気がしてきます。少なくともAIが普及しても社労士の仕事はなくなりそうもないなと思いますが。

働き方改革は、OURSでも必要かもしれません。それぞれが望む働き方というのはやはりあるのだろうと思いますので、そのメニューをきちんと提供してあげると定着率も高まるのかなと思います。人数が増えてきて出入りもそれなりに多く、労務管理はますます課題のように思えてきました。もう少し考えてみたいと思います。

組織という点では同じですが、社労士事務所というのは会社とはやはり異なるものであろうと思います。それは専門職であるから、ということではないかと思うのですが、入社してみてその違いにびっくりする場合もあるようです。そういう意味では、専門職に進む気持ちになる前のステージを用意するのも一つの方法かなと思います。 職務限定正社員ということになるでしょうか。

ところで、先日聞いたのですが、みそ汁はとても身体に良いらしいですね。血圧を下げるとか、コレステロールにもよく、免疫力を高めるということです。それを聞いてから朝はパン食でも味噌汁を作って食べています。


労働時間法制について「かとく」送検事例(前々週からの続き)

2016-09-12 00:13:09 | 労働法

ここのところ今月末の長時間労働に対する法規制のセミナーの準備が仕事の中心になっているためブログもその話ばかりになってすみません。

過重労働による健康被害の防止などを強化するため、違法な長時間労働を行う事業所に対して監督指導を行う過重労働撲滅特別対策班、通称「かとく」が東京局と大阪局に昨年4月1日に新設されました。平成27年4月からの 書類送検 3件発表されています。以下がその内容です。未払い賃金ではなく長時間労働での送検というところに注意が必要です。

1.東京労働局過重労働撲滅特別対策班〈通称「かとく」〉は,大手靴小売会社並びに同社の取締役及び店舗責任者2名を,労働基準法違反の容疑で,平成27年7月2日,東京地方検察庁に書類送検した。

 〈事件の概要〉渋谷区に本社を置き,全国各地で靴販売を中心とした小売店を多店舗展開する会社が運営する,都内の2店舗について,

(1) A店において,従業員2名に対し,法定労働時間である1週40時間を超えた違法な時間外労働を,平成26年4月13日から5月10日までの4週間において,100時間前後行わせていたもの。

 (2) B店において,従業員2名に対し,平成26年4月11日から5月10日までの間に,労働基準法第36条に基づく時間外労働に関する協定で定める限度時間を超えて,100時間前後の時間外労働を行わせていたものである。

2.「大阪労働局と京都労働局は平成27年8月27日に、労働基準法違反の疑いを 認め 、同事業場と 同事業場のエリアマネー ジャ・店長 ら 16 名を、大阪及び京都地方検察庁に書類送した。

〈事件の概要〉国内外で フランチャイズを含め て大規模に 約 700 店舗の飲食を展開する事業場が、 労働基準監督署から過去幾度となく長時間に係る是正 指導 を受けておりながら 改 善を行なわかっため 、過重労働による基準法違反 過重労働による基準法違反 が疑われる大 規模で重悪質 な事案として 「かとく」が 事件 捜査に着手し た。 「かとく」 が京都労働局とも連携 の上で捜査を行った 結果、 同事業場 が経営する飲食 店の、 大阪府所在 15 店舗及び京都府所在 2店舗 において、 労働者に
① 最長 1か月間で 133 時間 31 分の時間外労働 をさせた。
② 法定の休憩時 間を与えなかった。
③ 時間外労働に対する法定の割増賃金を支払わなかった。

3.ディスカウントストア運営会社を違法な長時間労働で書類送検

東京労働局は,平成28年1月28日,ディスカウントストア運営会社並びに同社の支社長3名及び店舗責任者5名を,労働基準法違反の容疑で,東京地方検察庁に書類送検した。 

 〈事件の概要〉 ディスカウントストア2店舗において,従業員2名に対し,労働基準法第36条に基づく時間外労働に関する協定で定める限度時間(3か月120時間)を超えて,平成26年10月1日から同年12月31日までの3か月間に,最長で415時間45分の時間外労働を行わせ,また,ディスカウントストア3店舗において,従業員4名に対し,平成27年1月1日から同年3月31日までの3か月間に,最長で265時間30分の時間外労働を行わせたものである。

昨年4月の「かとく」設置についての厚生労働省の発表

http://www.mhlw.go.jp/photo/2015/04/ph0401-02.html

土曜日連続で大宮のグランドに9時から応援に行った甲斐があり、わが渋谷支部は4試合を全て2けた得点で勝利して、東京会の野球大会で優勝しました!

私は応援に行っているといってもベンチの最前列に立って赤いボンボンを振り回しながらメンバーの一員になったつもり(たぶん選手もそう思っている)で参加しているのですが、この行事も毎年行くようになってからすでに7、8年くらい経ち皆勤賞です。この優勝を機にユニフォームも購入してしまおうかと考えているところです。

 


労働時間法制について(前週の続き)

2016-09-04 23:57:44 | 労働法

先週は国の施策の中の労働時間法制を見ていたのですが、今週は国の施策とそれに連動した厚生労働省の施策をみてみようと思います。

「日本再興戦略」改訂2014(平成26 年6月24 日閣議決定)において、働き方改革が盛り込まれ、大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」が平成26年10月1日に設置されました。さらに平成26年12月22日には都道府県労働局に「働き方改革推進本部」が設置され長時間労働対策が検討されています。

●長時間労働削減推進本部設置以降の主な取組として、過重労働対策が一層強化されています。

①平成100時間超の残業が行われている事業場等に対する監督指導の徹底(平成27年1月から実施)
②監督指導・捜査体制の強化
③過重労働事案であって、複数の支店において労働者に健康被害のおそれがあるものや犯罪事実の立証に高度な捜査技術が必要となるもの等に対する特別チーム「過重労働撲滅特別対策班」(通称「かとく」)の新設(平成27年4月から実施)…これは東京労働局と大阪労働局に新設されました。

●さら平成28年4月1日に開催された「第3回長時間労働削減推進本部」ではさらに以下の法規制の執行強化が決まっています。

①執行面の対応として労働基準監督署による監督指導を強化 (速やかに実施)
【現状】月100時間超残業が疑われる全ての事業場を対象【対応】月80時間超の事業場も対象 (年間約2万事業場)
(自主点検を求め、確認できた全ての事業場に監督)⇒ 過労死認定基準を超えるような残業が 行われている事業場に重点的に対応していく

…80時間超の事業場の洗い出しについては、アンケート形式の自主点検票や36協定の特別条項を利用しているようです。

○監督指導・捜査体制の強化・全国展開
【現状】 東京局・大阪局に「かとく」を設置 (27年4月~ 書類送検 3件)
【対応】本省に対策班を設けて広域捜査の指導調整
労働局に長時間労働を指導するための担当官を設置

②取引の在り方や業界慣行に踏み込んだ取組等
○ 長時間労働の原因となり得る、「手待ち時間の発生」や「短納期発注」などの取引環境・条件の改善に向けた取組を、業界や関係省庁( 国土交通省や、中小企業庁・公正取引委員会)と連携して行う

 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/01_1.pdf

都道府県労働局の指導・公表の対象となるのは「社会的に影響力の大きい企業」であることとされ、具体的には「違法な長時間労働」が「相当数の労働者に認められ」、このような実態が「一定期間内に複数の事業場で繰り返されていること」とされています。

昨日は東京都社労士会の野球大会第1日目でした。一昨年までわが渋谷支部は3連覇していたにもかかわらず昨年は1回戦敗退という憂き目を見たので、今年はどうなることやらという気分で応援に出かけたのですが1,2回戦とも危なげなく快勝でした。来週は準決勝と決勝2試合頑張ってほしいです。私はすでにこんがり色に焼けました。

社労士になる以前は高校野球(それも予選から)や日本シリーズを熱心に見ていたのですが、社労士になってからはなぜか全く興味がなくなってしまい、ここ10年ほどは社労士会の野球専門です。社労士会の会員が年齢もかなりの幅がある中で、一生懸命走る姿を見て応援し、お昼にはアイスクリームを30個買ってきて差し入れして、終わったらクラブハウスで皆で乾杯するのが楽しくて仕方ありません。人生ってそういう一瞬が沢山積み重なってこその幸せではないかという気がします。