OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

オンライン資格確認について

2019-07-28 22:06:20 | 社会保険

被保険者資格のオンライン資格確認は来年2020年春から開始予定です。

仕組みとしては、医療機関を受診する際に、健康保険証又はマイナンバーカードを保険医療機関等に提示すると、保険医療機関等が支払基金等に資格情報をオンラインで照会し、確認することができるということです。

この支払基金等が、被保険者の加入している保険者や医療機関への受診履歴等を全て管理することで、オンライン資格確認が可能になります。例えば健康保険証を持たず、緊急に医療機関にかかったときにも、医療機関がオンライン資格確認で加入保険者が確認できれば、10割負担をすることなく原則3割の自己負担分を支払い受診することが可能になることになります。

また、入院した際に請求することが多い高額療養費を保険者と医療機関の間で行ってもらうための「限度額適用認定証」の発行の手続きは不要となります。

さらに、すでに退職したにもかかわらず退職後に保険証を使ってしまうというようなことがあった場合でも、レセプト審査支払時点で被保険者の加入保険者が支払基金等においてわかるため、診療報酬の請求先保険者を誤ることがなく処理することができる、というメリットがあります。

現在、レセプト審査をオンラインで行っている医療機関については来春からスタートできる状況ですが、オンラインで行っていない医療機関については、まず必要な機器を導入してもらう必要性があり、補助金が出るようですがどこまで広がってくれるかが実効性の確保においては必要なことです。

いずれにしても資格取得情報を早く支払基金等が受け取れないと、転職した場合の保険者の確定ができずオンライン資格確認の効果が得られないため、資格取得届を企業や社労士はできる限り早いタイミングで支払基金等に把握してもらう必要があることになります(これについては現場では色々と課題もあるようですので具体的にもう少し研究してみます)。

また、オンライン資格確認を行うことになるため、健康保険証は個人単位になり、新規発行分から記号番号の番号に2桁の番号が追加されることとなります。ただし、2桁の番号がなくても発行済みの保険証は引き続き使用できることとされています。

参考

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000526856.pdf

最近仕事をしていて本当に経営者の感覚が1,2年前とがらりと変化したことを実感することが多いです。要するに働き方についての意識を柔軟に変化させることに成功したと感じるのです。私が担当させて頂いている会社は本当にここ1年で目を見張るといっても良いほど労働時間が短縮されました。やはりトップが時代に合わせて柔軟に考え方を変化させていかなければ企業は生き残れないのかもしれないと感じています。

梅雨明けとともにやっとやっと風邪が抜けてくれたようです。春学期の課題であるレポートを今週末何とか作り上げられましたので、8月からは夏休みと修論と体力作りで思い切り時間を使えそうで楽しみです。明日からは暑くなりそうでワクワクしますね。脱水症状には気を付けて、お水はしっかり採り良い夏にしましょう。


マクロ経済スライド キャリーオーバー制度について

2019-07-21 22:46:43 | 年金
6月30日のブログでマクロ経済スライドの基本的な考え方をとりあげたのですが、その続きということで今年度発動されたキャリーオーバーについて取り上げてみようと思います。
 
そもそも年金額は、新規裁定者は名目賃金変動率、既裁定者については物価変動率を乗じて賃金や物価の変動に合わせ毎年改定率を決め改定することになっています。マクロ経済スライドというのはこの改定率に調整を加えることで年金額を抑制する仕組みです。保険料収入、積立金等と支給する年金の収支の均衡が取れるようになったときマクロ経済スライドの調整期間が終了します。
 
マクロ経済スライドによる年金額の調整は、賃金・物価が大幅に上昇しなければなかなか発動されない仕組みになっています。その大きな要因として、前年度の年金の名目額を下回らないようにする「名目下限措置」があり、物価・賃金変動率がプラスの場合のみマクロ経済スライドを発動することになっています。 また、例えば、物価変動率が0.8%、マクロ経済スライド調整率が▲1.0%の場合、調整は▲1.0%行うのではなく0.8%分のみマイナス調整をするため、年金額の改定率は0.0%(前年と同額)となります。

これまでマクロ経済スライドの発動は、賃金変動率の低迷等により平成27年度のみでした。第31回社会保障審議会年金部会(平成27年12月8日)において議論された検討課題の中で以下の検討がなされています。
〇将来世代の給付水準確保を図ることが必要
・ 物価>賃金の場合に賃金変動に合わせる考え方を徹底
 ・・・物価より賃金の変動に合わせるということは現役世代の賃金額より年金額が上昇することを避けるということで、現役世代に配慮した考え方です。
・ マクロ経済スライドによる調整が極力先送りされないよう 工夫することが重要
 ・・・マクロ経済スライドの調整を先送りするということは、マクロ経済スライド調整期間が延びるだけであり、こちらも将来世代の負担を増やさない配慮ということです。
要するにマクロ経済スライドを実施しないと、どんどん将来世代の負担が重くなるということなのです。
 
キャリーオーバー制度は、将来世代の給付水準の確保や、世代間での公平性を担保する観点から、年金額の改定に反映しきれなかったマクロ経済スライドの調整率を、翌年度以降に繰り越すこととするものです。この年金額改定ルールの見直しは平成30年4月1日から施行されましたが、令和元年度初めて実施されることになりました。

平成30年度は、年金額が据え置きだったため、マクロ経済スライドによる年金額の調整は行われず、未調整分の調整率(▲0.3%)は翌年度以降に繰り越されました。令和元年度(平成31年度)は、当年度分のマクロ経済スライド(▲0.2%)に、平成30年度に繰り越された未調整(▲0.3%)も含めて調整を行った上で、なお0.1%のプラス改定となりました。 

なお、平成33年4月から、68歳以降の既裁定者の年金については、将来世代の給付水準の確保のため、物価変動の方が賃金変動より高い場合は賃金の変動に置き換え、賃金の変動に合わせて年金額が減額改定されることになっています。 
 
 
昨日は年2回の恒例のBBクラブの勉強会でした。私の法改正は(弁解ですが修論報告が同じ週にあり)今一つでしたが、台東支部の金光仙子先生の「外国人雇用の基礎知識~改正入管法「特定技能」を中心に~」は今聞いておいてよかった、頭の中がクリアになったととても好評で、今回も良い勉強会となりました。BBクラブもとうとう18年続き、いまだ参加者が100名を切ったことがないということで、受講生OBの勉強熱心には頭が下がり、また嬉しく感じます。
 
2次会はおおかたいつも残るメンバーでいろいろな話をしましたが、当時若かった受講生も40代から50代となり、企業で働いている人は中心的な存在となり話していて勉強になることが多いです。また気楽に情報交換や相談ができるという点でも勉強会終了後の飲み会も貴重な機会になっているようです。継続は力なり。BBクラブが私の頑張ろうという気持ちの源泉になっていることは間違いないところです。

「雇用類似」の働き手に対する保護のあり方について、検討会中間報告

2019-07-16 01:55:03 | 労働保険

 7月4日付け労働新聞に、「厚生労働省は、『雇用類似』の働き手に対する保護のあり方について、検討会中間報告(案)を明らかにした。」という記事が載っています。

 副業・兼業を認めていくという国の方針もあり働き方が多様化する中で、「雇用類似の働き手の保護」という観点から厚労省では検討会を行っています。その中間報告がまとめられ以下のような概要となっています。

雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会 中間整理について

https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000523663.pdf

 修士論文のテーマはかなり焦点を絞ることにしましたが大きく括ればテーマといってよく、興味があるところですが、「労働基準法の労働者性判断基準を拡張して、雇用類似の働き手を保護すべき」という意見に対して、「これまでに確立された知見を抜本的に見直す必要が生じる」ということで短期的には結論を出すことはできないということになりました。今後、保護ルールを検討する考えである、ということです。保護対象となる雇用類似の働き手の定義としては、「発注者から委託を受け、主として個人で役務を提供し、その対償として報酬を得る者」が中心になる、としています。

 厚生労働省のhpにある検討会の資料をみると、中間報告に至るまでにかなり詳細なヒアリングと分析がなされていて、その中では契約条件の明示、契約の締結・変更・終了などに関しては「書面等での明示」、報酬の確実な支払い確保、水準設定、最低報酬額などが課題とされており、最低報酬の設定、その他、安全衛生、就業時間、損害賠償の予定などについて優先的に検討するということです。

 検討会の検討内容とは違った視点からの切り口で自分なりの研究をしてみようと考えており、特に影響を受けるということはないのですが、「労働基準法上の労働者」についての判断基準については、確かに拡大するには大きな転換が必要だとは感じます。しかしヨーロッパは特に国によっては拡大を図っているケースもありその転換のきっかけや考え方のプロセスなど調べてみたいことは色々とあります。

先週のゼミの後で、修士論文の報告をして概ね方向性は良いでしょうという菊池教授のアドバイスを頂いて、かなりホッとしたためというわけではないのですが、週末は小淵沢に行ってきました。ほとんど雨でしたし、先月からひいている風邪が抜けないのでゆっくりしようと思ったのですが、ウィンブルドンの決勝があまりに凄い試合で、ジョコビッチが勝利するまで寝ることができず結局夜更かしをしてしまい、まだ咳が残っています(それにしても本当にすごい試合でした!)。

今週末のBBクラブの予習・本番と7月末の学期末までのレポートを仕上げたら、修論についてはどこから何をして書き出すかという方向性も決まりましたので安心してふと気が付いたら既に7月中旬になっており、社労士本試験にあと約1か月ということに気が付きました。

受験生とっては、いよいよここからが本当、勝負のかかった大事な時期になるので、集中して力をあげていって欲しいです。


労災特別加入の加入状況

2019-07-07 21:14:25 | 労働保険

 平成29年度末の数字ですので少し古いものですが、特別加入の加入状況をみると、中小事業主等が1,089,983人(中小事業主650,953人及び家族従事者439,030人)と圧倒的に多く、次いで一人親方等が569,918人、特定作業従事者が112,499人、海外派遣者が98,774人となっています。

 一人親方等においては、建設業の一人親方が556,634人とほとんどを占めており、個人タクシー・個人貨物運送業者が9,311人、漁船による自営漁業者が1,539人、林業の一人親方が1,704人、医薬品の配置販売業者が178人、再生資源取扱業者が450人、船員法第1条に規定する船員が102人です。

 また、特定作業従事者においては農作業従事者が98,768人、訓練従事者が10,377人、家内労働者が481人、労働組合等常勤役員が86人、介護作業従事者が2,787人となっている。

 この中で気になるのが家内労働者です。家内労働者とは、家内労働法等に基づき、通常、自宅を作業場として、メーカーや問屋などの委託者から、部品や原材料の提供を受けて、一人または同居の親族とともに、物品の製造や加工などを行い、その労働に対して工賃を受け取る人をいいます。「内職」と理解してよいと思います。この家内労働者のうち労災保険の特別加入に加入することができるのは、特に危険度の高い業務及び作業とされています。内訳をみてみると、金属等の加工の作業329人、洋食器・刃物等加工の作業25人、履物等の加工の作業65人、陶磁器製造の作業0人、動力機械等による作業62人、仏壇・食器の加工の作業0人となっています。いつからなのか分かりませんが、0人という作業が2種類もあるということで、見直しの必要性を感じます。 

※業種別、事業及び作業の種類別中小事業主等特別加入状況(平成29年度末時点 速報)

梅雨だから仕方がないのかと思いますが、雨の日が続きますね。意外に外に出ると暑くなく寒くもなくさわやかな感じがすることもあります。梅雨が明けたらきっとものすごく暑くなるんだろうなと想像しながら少しこの気温を楽しみたいような気がします。

来週は修士論文の2度目の経過報告をすることになっており、準備に苦心しています。試しに一部分ですが書き出してみたところ、あっという間に4,000字になってしまい、少し細かなところまで書きすぎなのかなと考えています。調べたことを全てアウトプットしたいというクセはTACの講師時代からですが、昨年医療の講義のレポートを作成する際に島崎教授に言われた「簡にして要を得ている」ということを念頭に頑張ってみます。