OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

子の看護休暇・介護休暇2021年1月1日改正

2020-07-26 23:11:36 | 法改正

令和3(2021)年1⽉1⽇に施行される、育児介護休業法で定められている子の看護休暇と介護休暇の改正があり、これまで1日単位及び半日単位で取得できるものとされていた子の看護休暇と介護休暇ですが、時間単位で取得できることが義務付けられることになります。

またこれまで半日単位の取得ができないとされていた「1⽇の所定労働時間が4時間以下の労働者」の規定は削除され、労使協定で除外されたものを除くすべての労働者が時間単位で取得できるようになります。

※時間単位の休暇制度の対象から労使協定により除外することが可能とされるのは、「業務の性質若しくは業務の実施体制に照らしてその業務に従事する労働者」であり、半日単位の休暇制度からの変更はありません。

施行規則第34条及び第40条には、⼦の看護休暇・介護休暇は、「始業時刻から連続し、または終業の時刻まで連続するものとする。」と定められており、法令で求められているのは、いわゆる「中抜け」なしの時間単位休暇です。ただし、指針では、始業の時刻から連続せず、かつ、終業の時刻まで連続しない時間単位での休暇の取得(中抜け)を認めること等制度の弾力的な利用が可能となるように配慮すること、とされています。

実務対応としては、育児介護休業規程の改定が必要になります(時間単位の取得が認められらことにより事実上半日単位はなくなったとみて良いと考えます)。

子の看護休暇の場合の育児介護休業規程については、「子の看護休暇は、半日単位(1日の所定労働時間の2分の1)で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して取得することができる。ただし、1日の所定労働時間が4時間以下である従業員は1日単位とする。」と規定されているところを、「子の看護休暇は、『時間単位』で始業時刻から連続⼜は終業時刻まで連続して取得することができる。『4時間以下の部分は削除』」と改定することになります。

具体例を検討する場合の参考として、子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得に関するQ&Aが出ています。

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000582061.pdf

問2-4 はフレックスタイム制度との関係にも触れています。

コアタイムの無いフレックスタイム制度が適用される労働者の場合は、労働者自身が始業時刻や終業時刻を決めることができ、始業時刻から連続し、又は終業時刻まで連続する時間に介護等を行うニーズに柔軟に対応することが可能であるため、時間単位の看護・介護休暇の対象としなくてよいか。
(答)
○ 看護・介護休暇は、労働者の労務提供義務を消滅させる効果を有するものであり、一定期間内においてあらかじめ定めた総労働時間数の範囲内で労働者自身が柔軟に労働時間を設定することができるフレックスタイム制度とは趣旨が異なるものである。
○ したがって、たとえフレックスタイム制度のような柔軟な労働時間制度が適用される労働者であっても、申出があった場合には、時間単位で看護・介護休暇を取得できるようにしなければならない。

コロナ対応でフレックスタイム制を導入する企業が最近増えてきていると思われ、それもコアタイムなしといういわゆるフルフレックスタイム制をとるケースが多くなってきていると感じます。上記「看護・介護休暇は、労働者の労務提供義務を消滅させる効果を有するもの」と示された部分を元に企業のご相談に対する解を考えています。

宅地建物取引士資格試験のサイトに「受験申込みの自粛についてのご協力のお願い」が載っています。試験実施にあたっては、「『3つの密』を避けるため、試験会場における受験者間の間隔を確保するなど可能な限り努力」するが、「このため、早期の宅地建物取引士の資格取得を迫られていない方につきましては、なるべく今年度の受験申込みを控えていただきますよう、ご協力をお願いします。」とあり、かなり驚きました。

社会保険労務士の本試験の今年度の受験申込者数は約49,200人ということですが、「新型コロナウイルス感染症に罹患しているおそれのある場合、濃厚接触者と認定されている場合は、受験を自粛してください。」とあるだけで、受験自体の自粛は求めてはおらずホッとしています。受験生にとっては年に1度の人生をかけた受験であり、つつがなく実施されることを願っています。


育児休業給付の失業等給付からの分離

2020-07-19 22:03:53 | 産前産後・育児・介護休業

令和2年4月1日施行の改正雇用保険法で育児休業給付は失業等給付から分離されています。もともと失業「等」給付の「等」は雇用継続給付(高年齢雇用継続給付と育児休業給付)が平成7年に施行された際に加わったものであり、今回育児休業給付は雇用継続給付から独立することになりましたので、失業等給付+育児休業給付という位置づけになったことになります。

2019年12月13日付日経電子版によると、厚生労働省は、「出産後も働く女性が増え給付額が増加している育児休業給付を、失業給付と分けて料率算定することを明記した改正案を提出」とありました。「出産をした後も働き続ける女性が増えたことを背景に、育児休業給付は給付額が増え続けている。18年度は17年度比11%増の5312億円だった。一方、失業給付の基本手当は同1%増の5473億円で、19年度には育児休業給付が逆転する見通しだ。政府は男性の育休取得も促しており、雇用保険財政に与える影響はさらに膨らむと想定される。」ということで雇用保険財政の中でバランスが悪くなっていたようです(ただしこの後コロナウイルス感染拡大による雇用保険財政への影響は計り知れず、現状は12月の時点とは様変わりしていると思います。そのうち研究してブログで雇用保険率の弾力条項も含めて取り上げようと思います。)

労働政策審議会の2020年1月8日 第138回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録を簡単にまとめてみると以下のように審議事項の説明がされており、改正条文も同様の内容になっています。
①育児休業給付の新しい給付の体系への位置付けということで、失業等給付の雇用継続給付から削除。

②失業等給付とは別の章(育児休業給付の章)として、独立した章を新設し現行の育児休業給付金に係る規定を削除するとともに、新設する章に同内容を規定する。

③これまでの雇用保険の各給付において設けられている措置、未支給の失業等給付、返還命令等、受給権の保護及び公課の禁止の規定について、育児休業給付金についても準用する。

④国庫負担について、当該育児休業給付に用する費用の8分の1を負担する。

⑤一般保険料徴収額に育児休業給付率(1,000分の4の率を雇用保険率で除して得た率)を乗じて得た額は、これまでと同様育児休業給付に要する費用に充てるものとする。これに伴い保険料率の算定方法を分ける。現在、時限的な引き下げで年収の0.6%になっている保険料のうち0.4%を育児休業給付の料率とし、当面は据え置く。

「雇用情勢など景気に左右されやすい失業給付と、景気の影響を受けにくい育児休業給付を分けることで雇用保険財政を透明化する。将来的には育児休業給付の負担のあり方を見直し、雇用保険財政から切り離すことも視野に入れる。」ということです。さらに、2020年2月9日の日経電子版では「政府は育児休業給付金の支給水準を引き上げる検討に入った。賃金の最大67%の給付率を80%まで引き上げる案が現段階で浮上している。受給中は社会保険料などが免除されるため、育休取得前の手取り月収とほぼ同額を実質受け取れる。男性の育休取得や少子化対策を後押しする狙いだ。ただ、財源負担を巡り慎重な声もあり、議論は難航する可能性もある。・・・3月末までに策定を目指す「少子化社会対策大綱」に、給付率引き上げを盛り込む方向で検討している。」とあります。

少子化社会対策大綱を確認してみましたが給付率の引き上げは盛り込まれておらず、その後労働政策審議会上記部会もコロナ対応に追われており審議は今のところ止まっているようです。しかし、育児休業給付が雇用継続という位置づけではなく育児休業中の生計を保証するものという位置づけになったということは社会の育児休業に対する受け止め方がここ20数年で大きく変わったのだと実感するものになったと思います。

顧問先との打合わせも社労士会の会議も大学院の授業も100%オンラインという状況の中で、人に会いたいなあと思っています。やはりちょっとした雑談や相手の表情などはオンラインではわかりにくいように感じるからだと思います。先日支部の役員会のお知らせに久しぶりにみんなの顔が見たくなり出席の返事をしようとしたところほとんど全出席の登録には驚きました。流石、社労士はやはり人が大好きな人が多いのですね。

ただ、オンライン会議の効率の良さには感激します。1時間の予定の打合せで片道30分で計2時間必要なところ、雑談もなく4、50分で終わると時間的な余裕が生まれて有難いとも思います。今後もオンライン会議は対面での打合わせと上手く組み合わせて利用されることは確実です。この数か月の社会や仕事環境の変わりようは驚くべきものがあり、これからどこに着地点が来るのかあれこれ思うのも楽しくもあります。


株式報酬制度にかかる社会保険料

2020-07-12 23:03:10 | 社会保険

日経新聞の1面記事に「自社株を役員報酬、導入5割増 株主視点の経営促す」という記事が載っていました。以前事務所内でも株式報酬制度の話題が出ており、「役員に、自社の現物株を報酬として付与する制度」であるということなのですが、社会保険料の算定基礎にすべきか否かということでした。近年、採用する企業が増えており、「6月末時点で800社超と過去1年間で5割増え、上場企業全体の2割に達した。」ということです。

株式報酬制度を採用する理由としては、報酬と株価を連動させることにより株価を高める経営を役員が行うインセンティブになるという狙いがあります。「野村証券によると、譲渡制限付き株式の導入企業は6月末で811社と1年前に比べて46%増えた。譲渡制限付き株式では企業は報酬分の株式を新たに発行するか、すでに保有する自社株から役員に支給する。支給された株式は一定期間売却できない。短期ではなく、中長期での株価上昇を目指す経営を促す効果が見込まれている。」と記事にありました。

この譲渡制限付き株式による役員報酬とストックオプションはどこが違うのかということなのですが、ストックオプションは、「決められた期間に自社株を割安な価格で購入できる権利を与える。」という方法で、株式を渡すのか権利を与えるのかという点で異なっています。欧米では株式を渡す方式が主流になっているということで、権利を与えるよりは現物株を渡す方が株主目線での経営ができるということでストックオプションから切り替える企業が日本でも増えているということです。この株式報酬ですが、社会保険料の対象となるかということでこちらについてはQ&Aが出ています。

Ⅱ.株式報酬、業績連動報酬に関する Q&A
~平成 28 年度・平成 29 年度税制改正を踏まえて~ 
Q13 株式報酬を付与する場合、社会保険料の算定の対象になりますか。
健康保険・厚生年金保険の保険料の額や保険給付の額の計算の基礎となる「標準賞与額」の範囲は、賃金、給料、俸給、手当、賞与、その他名称を問わず、被保険者が労務の対償として受けるすべてのもののうち年 3 回以下のもの(ただし、大入り袋や見舞金のような臨時に受けるものを除く)とされており、役員に対する株式報酬についても、原則として標準賞与額に含まれるものと解されています。ということで標準賞与額として取り扱うことになります。

またストックオプションについては、「自社株をあらかじめ定められた権利行使価格で購入する権利を付与するものであり、権利の付与自体は社会保険料を徴収すべき報酬に該当しないとされています。また、権利行使による株式取得も社会保険料の対象とならない」と上記Q&Aで示されています。なお、労働基準法の賃金に当たるか否かという点については通達(平成9.6.1基発412号)で示されており、権利行使の時期や株式売却時期をいつにするか労働者が決定するものとしているため、ストックオプションから得られる利益は、労働の対償ではなく、労基法第11条の賃金にはあたらない、とされています。考え方としてはやはり株式を直接受けるのと権利を付与されるとの違いによるものという整理となるかと思います。

株式報酬、業績連動報酬に関する Q&Aは以下のURLから

https://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170428007/20170428007-1.pdf#search='%E8%AD%B2%E6%B8%A1%E5%88%B6%E9%99%90%E4%BB%98%E3%81%8D%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E3%80%81%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%99%BA'

東京ここのとこコロナ感染者が200人超えということで非常に心配な状況です。今週末も自発的緊急事態宣言ということで自宅でほぼ自粛生活を送りましたが、今日はお天気がここ最近では珍しく良かったので、クリーニングを出しに行くついでにほど近い庭園美術館が最近開館したので庭を散歩しました。お庭に入るだけでも200円の入園料がかかるのですが一面芝生で人も少なく、のんびりできました。

   建物は庭園美術館です


年次有給休暇の半日単位の区切り方

2020-07-06 01:00:55 | 労働基準法

年次有給休暇は元々は1日単位で付与するものとされていました。これは労働者が十分休息をとるためには1日単位で付与する必要があるという趣旨からであり、古い通達においても「法第39条に規定する年次有給休暇は、1労働日を単位とするものであるから、使用者は労働者に半日単位で付与する義務はない(昭和24.7.7基収1428号)。」とされています。半日単位で付与する義務はないということは半日単位で付与することは違法ではないということを示していると考えられ、また平成22年の改正により時間単位年休も認められた今となっては、かなり柔軟に年休を取得することが可能になっています。

半日単位の年休を設定する場合なのですが悩ましいと感じることがあります。例えば9時から18時までが就業時間である場合の半日単位の年休の設定は、午前休は9時から12時(勤務は13時から18時まで)、午後休は13時から18時(勤務は9時から12時まで)と決める場合が多いのではないかと思います。その場合午前休を取得した場合はその日は5時間働くことになり、午後休を取得した場合は3時間でよいということになりますので不公平だという点で引っ掛かります。

その場合の就業規則の規定の方法としては、始業時刻より4時間、終業時刻まで4時間の休暇という方法を提案します。要するに午前休の場合9時から昼休憩を1時間分はさみ14時まで(勤務は14時から18時まで)、午後休の場合14時から18時まで(勤務は9時から13時まで)ということになります。考えてみると午前休と午後休は接続している必要はなく、従って午後休の勤務終了が13時までであり午前休の勤務開始が14時からであっても問題はないわけです。むしろ勤務する時間数が同じであるというほうが良いような気がします。ただ、通常は12時から13時の時間帯は昼休憩としている会社がほとんどであるため、午後休を取得するといって昼休憩の時間帯に働くということに違和感があるという場合もあるかもしれません。

フレックスタイムを制を導入している場合さらに半休の考え方は難しいと感じます。標準時間帯は9時から18時であっても、例えばコアタイムが11時から16時、フレキシブルタイムは7時から11時までと16時から22時までというような場合はどうするかという問題があります。フレックスタイム制の場合に「標準となる1日の労働時間」を労使協定で定めることとしているのは「年次有給休暇を取得した際に支払われる賃金の算定基礎となる労働時間等となる労働時間の長さを定めるものであり、単に労働時間数を定めれば足りる(昭和63.1.1基発1号)。」とされているため、フレキシブルタイムやコアタイムにかかわらずやはり標準時間の時間数を分ける形で考えるのが妥当なのではないかと考えています。

コロナウイルス感染拡大の影響で働き方も急激に柔軟化してきており、在宅勤務の場合の年休の取得についても難しさを感じます。始業時刻より4時間、終業時刻まで4時間という上記半休の考え方はある意味時間単位の年休といってもよいと思われ、今後は1日単位や半日単位という考え方は消滅していってしまいそうな気さえしているところです。

ここの所また東京の感染者数が100人を超えてきており落ち着かない状況です。もう少しどのような行動をとった場合感染しやすいなどの状況提供があるとよいと感じます。社労士的には7月10日の年更・算定の期限までは何とか爆発だけは避けてほしいと願っています。

最近興味のままにイギリスの医療制度NHSのことが書かれている本を何冊か読みました。日本とは異なり社会保険方式ではなく税方式で運営され患者負担がなく無料でサービスが受けられ、また地元の診療所のかかりつけ医の診察を受けなければ原則として専門病院で診療を受けることができないなどのシステムで運営されています。かかりつけ医は、患者にとって最適の医療を提供する責任を負う一方、限られた医療資源がより有効に使われるように不必要な医療を減らし、患者指導を行うなどの役割も担うということです。例えば軽い風邪で来院した場合「しばらく家で様子を見るように。症状が何日以上続くようであれば再度連絡をください。」と患者に伝えることが多いということで、今回のコロナウイルスに対する日本の対応のモデルになっているのかもしれません。しかし「限られた医療資源」という点においては今後の日本医療制度の参考になるのかもしれないと考えています。