OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

令和3年版厚生労働白書

2022-08-07 22:16:57 | 社会保障

今年もはや明日で8月第2週ということでOURSも11日(木)の祝日から16日(火)までお盆休みに入りますが、それがあけると本試験まであと残すところ約10日といよいよ追い込みの時期に入ります。今年は事務所の受験生数名と毎月「本試験対策ルーム」を開き勉強してきたこともあり、いつも以上にどのような問題が出るのか気になっています。おおよそこの時期に授業も終わり、後は本試験まではこれまでやってきた問題を徹底的に繰り返してできるだけ確実に得点できるものを増やしていくことが大事だと思います。かたや白書などに目を通してみるのも良いと思うのですが、事務所で購入しようかと提案したところとても見る余裕はないとのこと。しかし考えてみると今は全部厚生労働省のHPで見ることができることを思い出し、直近令和3年版厚生労働白書にどのようなことが書かれているかを確認してみました。

第1部 新型コロナウイルス感染症と社会保障
 第1章 新型コロナウイルス感染症が国民生活に与えた影響と対応
  第1節 新型コロナウイルス感染症を契機に国民生活はどう変わったか
  第2節 特に大きな影響を受けた人々・活動への対応
 第2章 社会的危機と社会保障
  第1節 リーマンショック時との比較
  第2節 海外の取組み
  第3節 新型コロナウイルス感染症の感染拡大と社会保障

第2部 現下の政策課題への対応
     (以下略)
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/20/

上記について項目を眺めつつスクロールしながら内容をざっと見ておくと良いと思うのですが、まずは「はじめに」は1頁なので読んでおくと良いと思います。
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/20/dl/hajime.pdf

また、コロナ感染症抜きには語れないことから、以下雇用調整助成金のリーマンショック時とコロナ感染拡大時の違いは興味深いと思いました。コロナ感染が始まり雇用調整助成金の活用が決まったときの「特例」はリーマンショック時にならったものだったのですが、途中からリーマンショック時の特例をはるかに上回る特例を設定していったことが印象的でした。その話です。

(1)雇用調整助成金(P.116 カギ括弧は加筆)
(支給額は、リーマンショック時を大きく上回る)
 雇用調整助成金については、リーマンショック時、新型コロナ感染拡大時、いずれも支給要件に関する「特例措置」が設けられている。さらに今回の新型コロナ感染拡大時においては、第1章第2節で述べたとおり、「雇用保険の被保険者ではない労働者」を雇用する事業主に対する雇用調整助成金に準じた助成金「(緊急雇用安定助成金)」が設けられている。
 これらの特例措置の支給額(新型コロナ感染拡大時は緊急雇用安定助成金を含む。)を見ると、助成額の上限(1人1日当たり)や助成率の引上げ等の特例措置により、リーマンショック時を大きく上回っており、累積の支給額で見た場合、リーマンショック時は、特例措置の施行日である2008(平成20)年12月からの1年4か月で「6,600億円程度」であったのに対し、新型コロナ感染拡大時には、2020(令和2)年2月からの1年2か月で「3兆円を超える規模」となっている

特に雇用保険の被保険者ではない労働者に対する助成金の導入は、今後「雇用されている労働者」だけでなく「フリーランス」など広く就労者への補償をしていく方向性が今回見えたと思います。

お盆があけるとセミナーがいくつか控えており、また書籍の執筆の締め切りも迫るので今からある程度作っておく必要があるものが結構あり、夏休みには流石にゆっくりするために頑張っているところです。ここでコロナに罹ると色々なことが滞ることが心配なので自重するだけでなく、万が一の自宅療養の際、自宅に籠ることに備えて、オキシメータ、ロキソニンと抗体・抗原検査キットを購入しました。使わないで済むことを願っています。

来週は夏休みということでブログはお休みさせて頂きます。暑い日が続きますので熱中症にも気を付けて密はできるだけ避けつつ、久しぶりに行動制限のないお盆をお過ごしください。


被用者保険の適用拡大について

2022-07-24 21:33:05 | 社会保障

これまで部分的に取り上げてきた被保険者の適用拡大ですが、医療保険への影響を調べてみようと思いあれこれ検索したところ2019年12月25日の第123回社会保障審議会医療保険部会の資料がなかなか面白く充実していたのでその中から何点か論点を抜粋してみようと思います。

●適用拡大の基本的な考え方は、3つのポイントがあります。
①被用者にふさわしい保障の実現
②働き方や雇用の選択をゆがめない制度の構築
③社会保障の機能強化
確かに同じ雇用されている立場であるのに、労働時間が短いため医療・年金の事業主負担がされないことは不自然であると思いますし、130万円の壁を意識しすぎることは雇用の選択をゆがめるといえます。また全国民共通の年金である基礎年金水準の確保に効果があることは、財政検証のオプション試算において示されています。

●今回の適用拡大における企業規模要件のみ財政影響の機械的試算を見ると、100人超の企業に適用を拡大した場合の対象者数約45万人、うち国保被保険者が約25万人、健保被扶養者が約20万人です。保険者への影響としては、拡大による加入者増の影響と加入者減の影響(被扶養者が別の保険者に被保険者として適用される等により)があり協会けんぽにおいては10億円の負担増と試算されています。

●適用における考え方は適用拡大のQ&Aが出ていますので確認できますが、令和4年10月改正の適用の考え方の気になるポイントだけ触れておこうと思います。

①事業所の規模 常時100人超・・・規模判断のための従業員は週労働時間が通常の労働者の3/4以上の者とし、それ未満の短時間労働者は含みません。
②短時間労働者 1週間の所定労働時間が20時間以上・・・週20時間の判定は、契約上の所定労働時間により行うのであり、臨時に生じた残業等を含みません。
※なお、実労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、なお引き続くと見込まれる場合には、3か月目から保険加入することになります。
③賃金  月額88,000円以上・・・結婚手当等臨時に支払われるもの、賞与等1か月を超える期間とごと支払われるもの、残業代等割増賃金、家族手当等最低賃金に算入しないものは判定の際に含みません。なお、年収106万円以上というのは参考値だそうです。
④勤務期間 継続して2か月を超えて使用される見込み・・・適用除外となるのは、契約期間が2か月未満で、書面上更新可能性の記載がなく、更新の前例がない場合に限られます
⑤適用除外 学生ではないこと・・・学生であっても、適用事業所に使用され4分の3基準を満たす場合は被保険者となります。

●最後に適用拡大による個人の受益と負担(月収8.8万円の場合)は以下の通りとなります。給付については、以下①~③すべてについて傷病手当金等の支給があり、厚生年金(月額約4,600円)の上乗せがなされることになります。 

①単身者、自営業者の配偶者(国年第1号被保険者・国民健康保険被保険者)
国民健康保険+国民年金保険料(19,100円)
 →健康保険・厚生年金保険料(本人負担12,500円・事業主負担同額)

②サラリーマン家庭の主婦等(国年第3号被保険者・健康保険の被扶養者)
被扶養者のため保険料負担なし
  →健康保険・厚生年金保険料(本人負担12,500円・事業主負担同額)

③60歳以上の者(国民年金非加入・国民健康保険被保険者)
国民健康保険保険料(2,700円)+国民年金保険料はなし
  →健康保険・厚生年金保険料(本人負担12,500円・事業主負担同額)

●「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集」(令和4年 10 月施行) https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/QA0410.pdf

先日ちょっと不満なことがありました。今春、あまりに肩が凝るので、バックの中身をリストラして小ぶりのバックを持つことにしたため、ちょうどセールの時期でもあり、UV加工をした軽い晴雨兼用の折り畳み傘を購入しました。店員さんには、この傘は骨が細いので壊れやすい、もし壊れたときは修理できるので持ってきてくださいといわれたので心強いなと思いました。使用3回目の朝、自宅近くの駅前でびゅうッと風が吹き傘がおちょことなり直してみたら骨がポッキリ折れていたので、想像以上に弱いなあと思いつつ早速お店に持っていったところ、一度使ってあるから直しは有料ですとのこと。修理できるといわれたのに1度も使わないで壊れたときだけというのもおかしな話では、と粘ったのですが、ご案内が悪かったかもしれませんが修理は3,300円ですとのこと。セールで購入したので、それではほとんど新品と変わらない金額になるため、納得できなかったです。風がちょっと強く吹くと折れる傘を作ったメーカーが悪いのか、修理できるといったときに修理代金を言ってくれなかった店員さんが悪いのか、持ち込んだ際の店員さんの全く悪びれない様子が悪いのか・・・。今後あの店で傘を買うのはやめようと思いました。


傷病手当金の受給原因

2021-07-18 23:24:44 | 社会保障

傷病手当金の受給の原因となった傷病別に件数の構成割合をみると、精神及び行動の障害が31.30%で最も高く、次いで新生物が18.63%ということです。精神および行動の障害(いわゆるメンタル疾患)が傷病手当金の受給原因のトップにいつ頃なったのかと気になったので調べてみました。

「年度別に傷病手当金の受給の原因となった傷病別の件数の構成割合をみると、消化器系の疾患は、平成 7 年は 14.64%であったが、令和元年3.55%と大幅に減少しており、一方、精神及び行動の障害は、平成 7 年は 4.45%であったが、平成 15 年には 10.14%と 10%を超え、令和元年には 31.30%と大幅に増加している」。

ちなみに平成22年の調査報告の数字では、精神及び行動の障害が 25.64%で最も高く、次いで新生物(20.13%)と既に精神および行動の障害が最も高くなっていますが、平成25年においても精神及び行動の障害が 25.67%で最も高く、次いで新生物(20.40%)と大きな変化は見られません。その後の推移を見ていくと、じわりじわりと数字が上がってきており、とうとう30%を超えたのが令和元年という状況です。平成15年の時代でも約10%だったものが約15年後の令和元年には30%超えということで、これは実感と近いものであると言えます。

全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律が来年施行されることになっており、1月の施行で、「 労働安全衛生法等による健診の情報を保険者が保健事業で活用できるよう、事業者に対し被保険者等の健診情報を求めることを可能とする」という項目があります。これは 現在、40歳以上の者を対象とする特定健診については、保険者が保険事業を行う上で活用する情報提供の仕組みがあるが40歳未満の者については、同様の仕組みがないためということで、「40歳未満の者に係る事業主健診等の結果が事業者等から保険者へ提供される法的仕組みを設ける」ということです。データ分析を活用して「精神および行動の障害」が減少するような何らかの対応ができると期待します。

※令和元年度「現金給付受給者状況調査報告 (全国健康保険協会)」他より。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat740/sb7200/sbb7206/

昨日はBBクラブの勉強会をzoomで開催しました。ウェビナーで2時間法改正講義をした後ミーティングに切り替えてzoom懇親会をしたのですが、とても楽しくあっという間に時間が経ってしまいました。在宅勤務でこの1年2回しか会社に行っていないという話とか、ワクチンの職域接種の話とか、人生ハイリスクハイリターンで行く方がよいのかローリスクローリターンを狙うべきかなど30名弱が懇親会にも参加してくれてあれこれ話をして過ごしました。もう20年以上のお付き合いになる方もいて、本当にBBクラブがあって良かったと改めてしみじみ思いました。

※BBクラブのhp7月17日のページに私の御礼コメントを入れました。受講いただいた方の感想などコメント入れて頂くと嬉しいです。

いよいよオリンピックが始まりますね。どんなオリンピックになるのか想像が今一つつきませんが、楽しみたいとは思っています。受験生は心配でしょうけれどメリハリつけて勉強に集中したら、時間を決めてテレビで観戦するのは気分転換に良いのではないでしょうか。


2025年問題を見据えた医療保険制度改正について

2021-01-24 22:10:37 | 社会保障

2025年問題とは、団塊の世代が2025年ごろまでに75歳以上の後期高齢者となり、医療費など社会保障費の急増が懸念される問題のことをいいます。後期高齢者の窓口負担の在り方などの給付と負担の見直しが議論の中心となった社会保障審議会医療保険部会ですが、令和2年12月23日付で「議論の整理」が取りまとめられています。

後期高齢者の窓口負担割合の見直しの他、傷病手当金の見直し、不妊治療の保険適用に向けた検討、任意継続被保険者制度の見直し、育児休業中の社会保険料免除の見直しなど実務に直結する内容が含まれています。

育児休業中の社会保険料については、被保険者の経済的負担に配慮して、免除される仕組みが設けられており、免除期間については、育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間とされています。部会では以下のような議論がなされました。

当部会においては、育児休業の取得促進や公平性の是正、事務負担の軽減といった観点から、現行制度を含め以下の課題について議論した。
① 新たな仕組みについて保険料免除の対象とすることの是非
② 月末時点で育児休業を取得している場合に当月の保険料が免除される一方、月途中に短期間の育児休業を取得した場合には、保険料が免除されないこと
③ 賞与保険料については、実際の賞与の支払に応じて保険料が賦課されているにも関わらず、免除されており、賞与月に育休の取得が多いといった偏りが生じている可能性があること

これらの課題について以下の通り意見が取りまとめられました。

現行制度及び新たな仕組みに関し、以下の措置を講じるべきである。
・ ②月途中に短期間の育児休業を取得した場合に保険料が免除されないことへの対応として、育休開始日の属する月については、その月の末日が育休期間中である場合に加えて、その月中に2週間以上の育休を取得した場合にも保険料を免除すること。なお、その際には、同月内に取得した育児休業及び新たな仕組みによる休業等は通算して育休期間の算定に含めること
・ ③賞与保険料が免除されることを要因として、賞与月に育休の取得が多いといった偏りが生じている可能性があることへの対応として、育休が短期間であるほど、賞与保険料の免除を目的として育休取得月を選択する誘因が働きやすいため、連続して1ヶ月超の育休取得者に限り、賞与保険料の免除対象とすること

これまでも現場では育児休業を月末1日だけ取得することや賞与月にやはり1日だけ取得することで、その月の保険料免除を受けることについては納得がいっていなかったのですが、賞与月については連続1か月超の育休取得者に限られることで本来の趣旨である形で育休対象者への免除が行われることになりそうです。これに対して、月末1日のみの育休については「その月の末日が育休期間中である場合に加えて」とあるように残ることになりそうで、まだ審議会のとりまとめ段階ではありますが、若干心残りです。

社会保障審議会医療保険部会資料等 (mhlw.go.jp)

年に2回行っているOURSセミナ―ですが、今年の冬も2月26日(金)に予定しています。今回のOURSセミナーから少しリニューアルをして、まず私が1時間法改正全体をお話しして、その後1時間は事務所メンバーが旬のテーマをいくつか深堀りしてお話しするという企画になります。今週末は、その土台となる2月13日(土)にウェビナーで行うBBクラブの勉強会(これは私一人で2時間法改正のお話しします)のレジュメづくりにいそしんだのですが、コロナに気を取られている中でも、次の法改正や政府の施策は着々予定されていると感じました。今週末は緊急事態宣言中である上に、雪が降るかもしれないということで外に出たくなるような雰囲気ではなく集中して色々と処理することができたのはよかったです。


法源について

2018-11-12 00:00:19 | 社会保障

法源として認められる形をとる規範には、当然に法的拘束力が認められます。どこまでの範囲で法的拘束力があるかというのは社労士業務の中でも大事だと思います。法源のリストとしてあげてみると以下のものがあります。

①憲法、②条約・・・条約と憲法のいずれが優位かについては議論があります、③法律、

④命令・・・政令や省令など、行政機関によって作られる法規規範をまとめて「命令」といいます。命令のうち最も重要なのは内閣で定める「政令(施行令)」です。その他内閣総理大臣が定める「内閣府令」、各省の大臣が定める「省令(施行規則)」、各委員会・各庁の長官が定める「規則」などがあります。

⑤条例・規則・・・地方議会が定める「条例」、都道府県知事や市町村長が定める「規則」などがあります。

⑥慣習法・条理‥文章にはなっていないが慣習が法として認められた慣習法や社会通念と呼ばれる条理(法)があります。

ところで「告示」は法的拘束力を持つかどうかというと、これは法的拘束力を持たないものとされていますが、官報等に掲載されるという点では法律や政省令と同じであり、個別判断で法的拘束力があるといえるような場合もあります。

また「通達」は、行政において重要なものではありますが、法源のリストには入っておらず、法ではなく行政内部規範にとどまるものです。

今年の社労士試験の発表が金曜日にあり、OURSでは2人が合格するという事務所開設以来の快挙でした。仕事をしながらの受験勉強は大変だったと思いますが良く頑張ってくれました。資格を取得したことで、これまでとはまた違った仕事への気持ちが生まれるのではないかなと思いますが、社労士としてどのように育っていってくれるか楽しみにしています。今回合格した2人は昨年の夏事務所で開いた勉強会の参加メンバーだったので勉強の進度や状況もある程度わかっていたので嬉しかったです。私の受験指導の知識は心もとなくなっていますが、受験生に迷惑にならない程度に来年はまた開催してみようかなと思いました。

今回涙をのんだメンバーや受験生については、また気持ちを新たに合格を目指して欲しいと思います。社労士の受験については合格するまで続ければ「成功」なのですし、人生の中で社労士の資格を取得するということは大きな財産になるですので、決してあきらめないでもらいたいと思います。


老人保健法が廃止に至った理由

2018-10-21 23:19:42 | 社会保障

先週に引き続き「老人保健法」が廃止に至った理由を少し触れてみようと思います。老人保健法が廃止に至ったのは、先週も触れていますが、加入者按分率を創設当初は50であったものが100にまであげてしまったこととされています。

老人保健拠出金の計算は以下のように定められていました。

(A式)当該保険者の老人医療費総額×(全保険者の平均老人加入率÷当該保険者の老人加入率)×加入者按分率×(1-公費負担割合)

(B式)当該保険者の老人1人当たり医療費×当該保険者の加入者数×全保険者の平均老人加入率×加入者按分率×(1-公費負担割合)

「加入者案分率」とは、老人医療費のうち老人が加入している割合の格差による負担の不均衡をどの程度まで調整するかという役割を担っています。調べたところによると次のような変遷をたどっています。1982年2月~50%、1983年度47.2%、1984年度45.1%、1985年度44.7%、1987年1月~80%、1987年度~90%、1991年度100%。これをみると1987年からいきなり財政状況が悪くなったためなのか、加入者按分率が急速に引きあげられたことがわかります。

加入者按分率が100まで上がったという理由については、老人保健法の制度成立当初の退職被保険者の数に読み違いがあり、要するに被用者保険者が負担する予定であった被用者OB分の額が見込み額に比べて少なく、国民健康保険が負担する費用が予想より大きくなってしまったためだったということです。

退職被保険者になるには、「被用者年金加入期間が20年以上もしくは40歳以降に10年以上」を要件としており、実際老齢(退職)年金を受給している必要があります。今は経過的に若干残っている制度となってしまいましたが、老人保健法が廃止される前はサラリーマンが定年退職後ほとんど適用となっていた制度です。ちなみに、何故医療なのに年金受給が条件なのかと思っていたのですが、「対象となる退職者を把握するには過去のデータを持っている被用者年金を利用する」というある意味アイディアがあったようです(「戦後社会保障の証言―厚生官僚120時間オーラルヒストリー―」〈有斐閣〉より)。

医療保険制度については、後期高齢者医療制度も含めて再度見直される公算が大きいと思います。今後医療制度全体について真剣に抜本的な改革を検討することになると思いますので、過去の制度の総括し、振り返る価値はあるのかなと思っています。

今回ゼミで上記の書籍(オーラルヒストリー)を取り上げることになったため、読んでみて実感したのは、なかなか書籍の中で文章とはなってこない「語られること」は文章と伝わってくる内容が違うということでした。文章ではある程度結果的な事柄が書かれているわけですが「語り」においては結果より経緯が詳しく語られ、その中の一言で鮮やかにイメージできたりすることが何回もありました。そういう意味では授業やセミナーも同じなのかもしれないと感じました。

先週、尊敬すべき女性の先輩とランチをしたとき、スマホにキンドルを入れてバンバンそれも源氏物語や蜻蛉日記から夏目漱石まで読んでいると教えてもらいました。スマホで読むと7分間だけ電車に立っているあいだであっても読めるし文字も適度な大きさにすることができて、又無料版もたくさんありすごく良いということでした。すごいなあと思うと同時に元気をもらいました。キンドル版が大学院で使う書籍にはほとんどないので残念ですが、早速キンドルをスマホにダウンロードしました。


児童手当と子ども手当について

2018-09-30 23:22:06 | 社会保障

児童手当は、1971(昭和46)年に創設された社会手当の代表的なものです。児童手当のモデルになったのはフランスの制度であり、歴史的に事業主の拠出を主として発展してきたということがその理由だそうです。事業主による拠出については制度の設計当初より重要と考えられており、その理由は被用者・被用者等以外のすべての財源を無拠出制で賄うとなると、生活保護に代表される社会扶助として、資産調査を伴う救貧政策の延長とならざるを得ないという懸念があったからということです。

とにかくこれまで改正が非常に多かった児童手当なのですが、1972年の実施3年後には制度見直しの議論がされており、1978年の改正においてはその目的も改正されています。その後頻繁に改正された後、更に2009(平成21)年の政権交代によって、民主党中心の政権与党が「子ども手当」という新たな制度を創設しました。この子ども手当はその目的が「子どもの健やかな育ちを支援する」とされ、所得制限をしないという、それまでの児童手当とは異なった制度ではあったのですが、従来の児童手当を廃止したのではなく、生かしつつ財源構成がなされていました。しかし公費による財源確保が困難となり、わずか2年で廃止されています。その後「平成23年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法(特別措置法)」等の特別措置法などでつなぎ、現在の児童手当は2012(平成24)年に新たな児童手当が施行されています。

現在の児童手当の目的は、「家庭等の生活の安定に寄与するとともに時代の社会を担う児童の健やかな成長に資する」とされており、子ども手当施行前の児童手当とほとんど変わっていません。家庭に「等」が追加されているのは、従来受給資格者が監護・生計同一の父母又は児童を養育している者であったため、親の虐待等により施設に入所している児童について受給できないという問題などがありましたが、上記特別措置法により施設の設置者等に対しても支給されることになった等の改正点を引き継ぎ追加されたものです。

支給対象は、中学校修了までの国内に住所を有する児童とされており、支給される月額は以下の通りです。(所得制限があり、夫婦と児童2人の場合年収ベースで960万円未満とされています)

○0~3歳未満一律15,000円
○3歳~小学校修了まで
・第1子、第2子:10,000円(第3子以降:15,000円)
○中学生一律10,000円
○所得制限以上一律5,000円(当分の間の特例給付)

財源については、国・地方(都道府県・市町村)、事業主拠出金で構成されていますが、事業主拠出金で賄われるのは、所得制限未満・3歳未満の児童手当だけであり、あとは公費で賄われており、受給対象が中学校修了前までと拡大されたためか、事業主の拠出はかなり児童手当全体からみると割合的には小さいものとなっていると感じます。なお、公務員については各省庁が全額負担ということにはずっと変わりありません。

児童手当も調べてみると色々な点で発見があります。勉強してみると民主党政権時代の施策により評価される部分も知ることができて興味深く感じます。

今晩はひどい雨風の台風です。山手線なども早くに運休となってしまったので、日曜日で家にいることができてよかったと思います。午前中に選挙に行き、ついでに夏枯れしてしまったベランダの花をあれこれ買ったのですが、家の中に避難させました。

いよいよ明日から10月です。本当に1年があっという間で驚きますが、事務所は秋からまた少し大きな仕事に取り組むことになりますので、できるだけうまく皆が業務を進められるように、方向性を明確にしながら、環境を整えていきたいと思います。


高齢化のスピード

2018-04-08 21:37:59 | 社会保障

日本の高齢化については、世界に類を見ないスピードで進んでいるということは以前よりよく耳にしていたのですが、社会保障・特に医療の分野での高齢化の影響はとても大きく、沢山の問題点を抱えながら現状も進んでいます。問題点についてのとりまとめもう少し勉強してからにしますが、日本以上に高齢化のスピードが速い国があることを知りました。以下通商白書2010年版にある通り、シンガポール17年、韓国18年、タイ22年などアジアの国々で、日本以上のスピードで高齢化が進展することが予測されています。ちなみにヨーロッパ諸国では、フランスが115年、スウェーデンが85年、英国が47年ということです。

(2)早いペースで高齢化が進むアジア

各国が高齢化社会から高齢社会になるまでにかかる期間(倍化年数)

フランス 115年
スウェーデン
85年
英国 47年
日本 24年
シンガポール 16年
韓国 17年
タイ 22年
マレーシア 23年
中国 25年
東アジア全体 25年
資料:木原隆司(2008)「高齢化する東アジアの金融市場育成と社会保障整備」国連(2008)他から

 一般的に、高齢化は経済成長の制約要因として働く可能性がある。生産年齢人口比率が低下し高齢化が進展すると、労働投入量の減少、国内貯蓄率の低下を通じた投資の減少1とともに、医療費・年金負担の増加などを通じた財政や家計の圧迫をもたらすことが想定される。ただし、労働力人口が減少しても、生産性の上昇率が高ければ、経済がマイナス成長に陥ることはないと考えられる。女性・高齢者等の積極的な活用などによる労働力人口の増加とともに、教育を通じた人的資本の充実、イノベーション(新技術の取り込みと創意工夫)を通じた資本効率の改善など生産性を向上させていくことが重要である。(通商白書2010年版より抜粋)

高齢化が始まる前の昭和30年代に国民皆保険・皆年金制度という全ての国民が健康保険と年金制度に加入することを整備したことは、現在から考えると本当に素晴らしいことであり、高齢化対策と社会保障制度の整備を同時に行わなければならないアジア諸国は大きな困難に直面していると思われます。しかしそれにしても、2010年の時点での白書の記載については今の「働き方改革」の原点そのものであることに驚かせられます。いまどのような国づくりを目指すのか真剣に取り組むことは50年後の日本のために必要なのだと思います。

もう少し新しい資料とグラフはこちらよりご確認ください(平成28年版高齢社会白書)。

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/zenbun/s1_1_5.html

最近心掛けているのは、「1時間早めに」です。単純なのですが、まず朝1時間早く起きる、1時間早く仕事を終える、1時間早く寝る。これまでとにかく時間との勝負のごとく、てきぱきとこなすことを考えてきたのですが、「もう少しゆとりをもって!」という心の声を聴いたような気がしたので、素直にそうすることにしました。1時間早く起きても、ベランダに出て花の様子を見たり、朝のテレビをぼーっと見ていたりして出かける時間はあまり変わらないのですが、顧問先へお約束の時間に向かうのも少しゆとりを持つようになったような気がします。

それにしても今年は花粉症対策に失敗しました。もう少し早めに対策しておけばよかったのかと思いますがかなり苦しんでいます。


高齢社会対策大綱

2018-03-18 23:24:33 | 社会保障

高齢社会対策大綱が平成30年2月16日に閣議決定されました。

高齢社会対策大綱は、高齢者政策の新しい指針とされており、その中では65歳以上を一律に高齢者とみる一般的な傾向について、現状に照らせば現実的でなくなりつつあるとしています。70歳やそれ以降でも、個々人の意欲・能力に応じた力を発揮できる時代が到来しており、「高齢者を支える」発想とともに、意欲ある高齢者の能力発揮を可能にする社会環境を整えることが必要である、とされています。

ここで「一般的」に65歳が高齢者とみるということになっているのは、各法律で高齢者の定義が異なっており、制度間で統一した「高齢者」という法律上の定義づけがされていないということによります。そういう意味では現状65歳になって自分が「高齢者」だと思う人は比較的少なく、よく耳にするのは75歳の後期高齢者になった際に「いよいよ後期高齢者になった」というお話のように感じます。

大綱の中で社労士の関係する分野としては、1.就業・所得、2.健康福祉の部分になりますが、特に1.就業・所得は、これからの方向性を見極める上でも一読しておくと良いように思います。

65歳まで働けるような安定的な雇用の確保や、65歳を超えても、70歳を通じ、またそもそも年齢を判断基準とせず年齢にかかわりなく希望に応じて働き続けることができるような雇用・就業環境の整備を図るとともに、社会保障制度についても柔軟な制度となるよう必要に応じて見直しを図るとあります。

就業については、多様な形態による就業機会等の確保や再就職の支援だけでなく、高齢者の企業の支援などについても記述があり、資金融資を含めた支援を行うなどかなり具体的な内容になっています。

さらに、年金については受給開始時期について現在の60歳から70歳までの支給繰上げ・繰下げ制度をさらに拡大し、70歳以上の受給開始を選択できるようにするなどの記述もあります。また、在職老齢年金についても弾力的に対応する観点から制度の在り方について検討を進めるとあります。

これらの内容を見ている限り、今後定年60歳から65歳への延長もそう遠くないような気がします。健康寿命男性71歳、女性74歳を平成20年には1歳以上延伸、平成25年には2歳以上延伸ということが目標になっており、この年齢までは平均的な人であっても働けるということであれば現状より5年延長はおかしくないのかなと思います。

高齢社会対策大綱

http://www8.cao.go.jp/kourei/measure/taikou/h29/2-2.html

話はそれますが、このところ3月末までに「無期転換の規程」を作りたいというご依頼が多くて毎日無期転換のことを考えています。その中でも一番問題になるのが60歳定年後に無期転換権が発生した際の対応ということで、第2定年を設けるということがまっとうな対応なのですが、第2定年を70歳としてもまだそれ以上の社員がいるという会社が業種によってはありなかなかその点では工夫が必要なのです。高齢社会対策大綱を読んだとき、70歳以降も意欲に応じて働ける世の中を作るというのであれば、なぜ無期転換権発生の特措法の特例を「定年退職後引き続き雇用される場合に限る」ではなく「60歳以上」としてくれなかったのかと、これはかなり強く思っています。60歳定年後は、これまでと異なり柔軟な働き方をするためにもかえって無期転換権の発生により契約期間の上限などを会社に設定されるよりは、無期転換権を発生させず有期雇用で働くことが良いのではないかと考えるためです。

春がもうすぐそこに来たという感じで、ベランダの花たちがとても元気で毎朝楽しみです。シクラメンはいよいよ5年たちますがまた今年もきれいに花が咲きました。例年1月~3月に集中するセミナー等講師の仕事も一段落して、後はいくつかの規程を年度末までに完成させるためあと一息です。

25周年の記念パーティーや記念旅行も終了したところで、また新たな課題が頭の中で芽を出しはじめ、事務所を移転するかどうか自分の中で検討を始めています。いまの事務所は既に手狭になり、顧問先の方がもっとご相談に来ていただくにももう少し駅に近い立地がよいように感じています。今度移転したら個室を作る方が良いかなとも考えています。集中して勉強するためにも、またお客様との打ち合わせももちろんなのですが、スタッフとの色々な話をする際もその方が良いのかなという気がしています。まだ夢なのではありますが。


社会支出の対国民所得比の国際比較

2017-12-17 23:07:49 | 社会保障

最近面白いなと思うのが政府の社会保障政策の成り立ちについてです。国際比較の統計等を見ていると、日本は昭和30年代に完成度が高い年金制度を作ったほか、高齢化を見越して作られた介護保険制度など、常に将来の人口推計等に基づき手を打ってきたことがわかります。想定外に速い速度で進む高齢化についての対策はまだまだ様々な面で課題が山積しており社会保障制度の方向性、財源等をどうするか安定政権の中でしっかりした政策を打ち出す必要があります。広い視点でものを見たいと思い勉強のために受講してみる研修会では、年金についてはある程度給付抑制の仕組みも導入できてある程度の見通しは立つようになったという説明が多いです。問題は医療・介護の今後の方向性だと思うのですが、保障をどこに持っていくかは項目だけではなく、世代に対する振り分けも重要であり、今政府の打ち出しているのは全世代型の社会保障制度ということになります。

安倍政権としては、高齢者に対する社会保障よりも若い世代にもっと社会保障を手厚くするべきだということで打ち出しているため、ネットを見ているとかなり批判があるようです。しかし日本の社会保障は高齢者に偏ってかなり手厚く、若い世代へ社会保障の財源を振り分けるということは国際比較から見ても必要なことなのだと感じます。

国立社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計(平成26年度)」で社会支出の対国民所得比の国際比較が示されています。高齢、遺族、障害・業務災害・傷病、保健、家族、積極的労働政策、失業、住宅、生活保護その他の9項目を日本とフランス・スウェーデン・ドイツ・イギリス・アメリカの6か国で比較しています。この中で一番特徴的なのは日本の「高齢」に対する支出の高さです。日本47.3%に対して、アメリカ32.9%、イギリス31.9%、ドイツ31.4%、フランス39.7%、スウェーデン34.4%です。それに対して「家族」に対する保障は日本5.4%、アメリカ3.6%、イギリス16.7%、ドイツ8.5%、スウェーデン13.1%、フランス2.7%となっており、高齢者への保障が手厚く、バランスとしては家族(子ども・子育て)へ社会保障を振り分けるという必要があると認識することができます。

国立社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計(平成26年度)」

 http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/fsss-h27/H27.pdf

ここのところ「労務監査」的な仕事が多く、とにかく運用を中心にローラー的に検証してどのように問題点を解消するかをご提案するのですが、だいぶ形になってきました。もう少し安定させて労務監査のパッケージをご提案できるようにする予定です。

週末ゆっくり起きたりしてやっと風邪が抜けた感じです。12月は毎日夜に予定が入り忙しいので体調管理をして気持ちよく年末年始を迎えたいなあと思っています(まだインフルエンザの注射ができていないのでちょっと心配です。昔TACの講師時代に40度近い熱がありながら隠して授業をして懲りたので毎年注射はしています)。


雇用類似の働き方

2017-11-12 22:50:50 | 社会保障

働き方改革実行計画に盛り込まれている雇用類似の働き方ですが、いよいよ動き出し、10月24日に第1回「雇用類似の働き方に関する検討会」が開催されています。この検討会の主な検討課題は以下の通りとされています。

主な検討課題
①雇用によらない様々な働き方がある中、「雇用類似の働き方」にはどのような者があると考えるか。
②近年、クラウドソーシング事業やシェアリング・エコノミーの普及などにより、新しい働き方が発生している。このような新しい働き方について、どのように位置付けるか。
③これらについて把握した上で、雇用類似の働き方に関する保護等の在り方について、どのように考えるか。

これまで「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」は定められていました。このガイドラインは、「 在宅ワークは、請負契約に基づく就労であり、基本的に労働関係法令が適用されないため、発注者が在宅ワークの契約締結時に守るべき最低限のルールとして、策定」されています(平成12年6月策定、平成22年3月一部改定)。

そもそも「労働者」の定義は、労働基準法、労働契約法及び労働組合法では異なっており、一般に、労働法令においては、適用対象となる「労働者」に該当するか否かは、契約の名称にかかわらず、実態に即して判断することとされています。 

検討会の資料には、諸外国での「労働者」について整理された部分があり、非常に面白いと思いました。各国における労働法の適用対象となる「労働者」の範囲とその拡張例等
「『労働者』の法的概念に関する比較法研究」(2006年(独)労働政策研究・研修機構)より。)というもので、その中でドイツなどは雇用類似の労働者には「連邦年次休暇法、就労者保護法(職場におけるセクシュアル・ハラスメント防止法)、労働保護法、労働協約法、労働裁判所法が適用される。」とあります。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11909500-Koyoukankyoukintoukyoku-Soumuka/0000181992.pdf

労働者の定義が各法律で統一的ではなく、また名称の如何を問わず実態で判断する日本では、雇用されていない雇用類似で働く場合労働関係諸法令の適用がないのは、線引きがあいまいなだけに今後非常に問題になってくるであろうと考えます。社労士に対してのご質問も増えてくるのではないかという気がします。

ちなみに、資料によると、在宅ワークによる平均的な月収は、「5万円以下」(27.7%)が最も多く、次いで「10~19万円」(18.5%)、「6~9万円」(18.0%)となっています。非雇用型在宅ワークであれば最低賃金法の適用もないため、法の隙間になっていると考えます。

金曜日は社労士試験の合格発表の日でした。昨年及び一昨年よりは合格率は高かったものの6%台と相変わらず厳しい結果でしたので、残念だった受験生も多いと思います。やはりこの試験は覚悟を決めて取り組まなければ合格までたどり着けない試験であり、それだけに合格すれば価値ある国家資格だと思います。

それでも合格したらそれでゴールというわけではなく、日々勉強して新たな知識を得ていく努力が必要ですし、受験時代に勉強した内容も含めて知識を仕事に生かしていくために経験を積み上げていく必要があり、それが社労士という職業の限りないやりがいになっているといえます。

今回涙をのんだ受験生も、その過程にいるのだと考え、新たな気持ちで来年を目指してもらいたいと思います。


健康情報の収集(先週の追加)

2017-10-09 22:21:47 | 社会保障

先週「健康情報の収集」の件を書いたのですが、「労働者の個人情報保護に関する行動指針」が古いものでした。指針には以下の文章が冒頭に載っており、ここにお詫びしてその後個人情報保護法の改正も踏まえた情報をご案内したいと思います。

「労働者の個人情報保護に関する行動指針(平成12年2月)」には以下の文章が冒頭にありました。

「労働者の個人情報保護に関する行動指針(平成12年2月)」は、個人情報保護法が制定・施行(平成17年4月施行)される前に研究会の考え方をとりまとめたものですので、現在は、こちら(以下雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項(平成29年5月29日))に掲載されている指針をご参照いただくようお願いします。

雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項(平成29年5月29日)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000167762.pdf

1 事業者が健康情報を取り扱うに当たっての基本的な考え方
(1)健康情報については労働者個人の心身の健康に関する情報であり、本人に対する不利益な取扱い又は差別等につながるおそれのある要配慮個人情報であるため、事業者においては健康情報の取扱いに特に配慮を要する
(2) 健康情報は、労働者の確保に必要な範囲で利用されるべきもあり事業者は、労働者の健康確保に必要な範囲を超えてこれらの健康情報を取り扱ってはならない。
2 法第 17 条に規定する適正な取得及び法第 18 条に規定する取得に際しての利用目的の通知等に関する事項
(1) 事業者は、法令に基づく場合等を除き、労働者の健康情報取得する場合はあらかじめ本人の同意を得なければい。
(2)また 、事業者は、自傷他害のおそれがあるなど、労働者生命、身体又は財産 の 保護のために必要がある場合 等を除き、本人に利用目的を明示しなければならない。
(3)略

なお、健康診断又は面接指導(以下「健康診断等」)の結果についての情報提供については大きな変更はなく以下概略の通り記載されています。

安衛法基づく健康診断等については、事業者は実施を義務付けられており、外部機関に健康診断等の実施を委託する場合には、必要な労働者の個人情報を外部機関に提供する必要がある。さらに安衛法において、事業者は健康診断等の結果記録及び当該に係る医師又は歯科医師から意見聴取が義務付けられており、また健康診断結果の労働者対する通知が義務付けられている。

事業者がこれらの義務を遂行するためには、健康診断等の結果が外部機関から事業者への報告(提供)されなければならず、事業主が委託するために必要な労働者の個人情報を外部機関に提供し、また、外部機関が委託元である事業者に対して労働者の健康診断又は面接指導結果を報告(提供)することは、 それぞれ安衛法に基づく事業者の義務を遂行する行為であり、法第 23 条第 1項第号の「法令 に基づく場合」該当し 、本人の同意を得なくても第三者提供の制限は受けない

また、健康保険組合等に対して労働者の健康情報の提供を求める場合、健康保険組合等は当該事業者に当該労働者の健康情報を提供することを目的として取得していないため、法第23条の第三者提供の制限に該当し、健康保険組合等は被保険者である労働者の同意を得る必要がある。この場合においても、事業者は、あらかじめこれらの情報を取得する目的を労働者に明らかにして承諾を得るとともに、必要に応じ、これらの情報は労働者本人から提出を受けることが望ましい。

先週の内容は、8月に発行された資料を基に書いたのですがやはり第1次資料にあたらないといけないことを痛感しました。

3連休の中日に、受講生OBからチケットを頂いていた「ボストン美術館の至宝展」を鑑賞しに行きました。お天気も良く、混みそうでしたので朝早めに行ったのでゆっくり鑑賞できました。最近絵を見るのがとても好きになりました。

 


日本の社会保障制度の基礎

2017-07-23 22:17:12 | 社会保障

先日ILOの「国際労働基(ILO条約・勧告)」について触れましたが、社会保障制度については1950(昭和25)年の社会保障制度審議会「社会保障制度に関する勧告(50年勧告)」が戦後の日本の社会保障制度構築の指針となっています。

この勧告では、「社会保険、国家扶助(生活保護)、公衆衛生及び医療、社会福祉」の4部門からなる基本的枠組みが提示されています。この中で社会保険が中心とされ、他の部門が補完する役割になっているといえます。その後の社会状況等の変化により、勧告には示されていない制度の創設があるものの、日本の社会保障制度の基本についてはこの50年勧告であることは間違いないところです。

その後高度経済成長期の中で各社会保険制度が発展し日本は充実した社会保障制度を有する国になりました。社会保障制度の発展とともに、1980(昭和55)年代以降急速な高齢化社会を迎えることとなり財政面での引き締めが始まり、その後1995(平成7)年「社会保障体制の再構築」が社会保障制度審議会の最後の勧告として出されています。この勧告では以下のとおり社会保障の多様性に対する取り組みの必要が提示されています。

(一部抜粋)このような理念に立つとき、我が国の社会保障は、これまで十分に対応してこなかった残された問題、21世紀に向かってますます重大化し、その対応に真剣に取り組まなければならない問題、さらに安定した多少とも余裕のある生活が実現するにつれ、生活に多様性が生じ、社会保障もその多様性にこたえなければならない問題などと、真正面から取り組まなければならない。

その後社会保障制度審議会は、1999(平成11)年4月27日 閣議決定で「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」の中で廃止する審議会等(121審議会等。必要な機能が存置される審議会等に移管されるものを含む。) に含まれることとなり、2001年(平成13)の中央省庁再編に伴い廃止され、その機能の総論的な部分は内閣府の経済財政諮問会議に、また具体的な部分は厚生労働省の社会保障審議会に引き継がれた上で、廃止に至っています。

昨日はクラスの合格者の集まりであるBBクラブの勉強会がありました。今回も申し込み124人ということで沢山のOBが集まってくれて楽しい一日でした。一番古いクラスの受講生はすでに初めて会った時から22年が経過しており、当時慶応大学の4年生の若者もお子さんのいる40代になっています。毎年2回お会いしているので私も昔通りリラックスして法改正の話の前に近況報告をするのですが、皆さん嬉しそうな感じで私の近況を聞いてくれています。「先生に元気をもらいに来ている」と言われたりするとこちらの方が元気になり、勇気を頂きます。BBクラブで講義頂くのは2度目の北岡大輔先生の長時間労働監督指導に関するお話も元監督官らしく予想通り有用な情報が多く楽しく受講できました。また、開業体験記の鶴見さんのお話もとても分かりやすく開業当初は心配したものの最後は軌道に乗ってハッピーエンド、という良いお話で、年2回の法改正を学べるBBクラブはとても有難いと言って頂いたのは嬉しかったです。

平成13年に初めてあと数年で20周年のBBクラブをこれからも大切にしていこうと思います。


70歳未満の高額療養費について

2014-07-13 22:30:52 | 社会保障

高額療養費は大きな病気をした場合にはとても心強い制度です。

原則として、医療費の3割を自己負担することになっていますが、自己負担限度額が定められており限度額以上については高額療養費として医療保険者が支給してくれることになっています。本来いったん3割の自己負担額を支払っておいて、高額療養費の支給申請をすることで自己負担限度額を超えて負担した額を戻してもらっていました。近年「限度額適用認定証」を保険証と併せて医療機関等の窓口に提示すると、1ヵ月 (1日から月末まで)の窓口での支払いが自己負担限度額までとなったので、さらに被保険者にとっての利便性は高まりました。

自己負担限度額は、年齢および所得状況等により設定されています。

※70歳以上の高額療養費は仕組みが少し異なりますので今日は70歳未満の高額療養費に限って考えてみたいと思います。

70歳未満の被保険者の自己負担限度額

上位所得者

(標準報酬月額53万円以上)

150,000円+(医療費-500,000円)×1%
一般 80,100円+(医療費-267,000円)×1%

低所得者

(住民税非課税)

35,400円

例えば、一般の場合で医療費が500万円かかった場合の自己負担限度額は80,100円+(5,000,000円-267,000円)×1%=127,430円となります。

(この1%の考え方が改正により出てきたときには、TACの講義で1%などという小さい数字ではあまり負担は変わらないというような話をしたことがありますが、医療費がかなり高額になるとそれなりの数字になりますね。)

本来は5,000,000円の医療費の3割である1,500,000円を自己負担しておいて、高額療養費の請求をして1,500,000円と自己負担限度額の127,430円のとの差額を戻してもらっていました。しかし、高額療養費が振り込まれるのは2,3か月かかるとされているため一時的であっても大きな額となると負担も大きいです。やはり限度額認定証の提出により患者の負担を経ずに保険者と医療機関との間で精算をしてくれるのはとても有難いことだと思います。

なお、自己負担限度額は以下の区分により算定します。

・同一月・一の医療機関の一部負担金等(医療機関から交付された処方せんにより調剤薬局で調剤を受けた場合は、薬局で支払った自己負担額を処方せんを交付した医療機関に含めて計算します)

・歯科・歯科以外区分

・入院通院別

なお差額ベットなどの特別料金等保険外診療部分、食事療養標準負担額、生活療養標準負担額についてはこの算定には含めず、別途自己負担が必要になります。

世帯で複数の人(協会けんぼに加入している被保険者とその被扶養者)が同じ月に病気やけがをして医療機関で受診した場合や、一人が複数の医療機関で受診したり、一つの医療機関で入院と外来で受診した場合は、自己負担額は21,000円以上のものに限り合算世帯合算することができ、その合算した額が自己負担限度額を超えた場合は、超えた額が払い戻されます。

例えば、被保険者[通院]+被保険者[入院]、被保険者+被扶養者、被扶養者+被扶養者の自己負担額21,000円以上について合算して上記表の自己負担限度額を超えた場合高額療養費として請求することができます。

さらに直近の12か月間に、既に3回以上高額療養費の支給を受けている場合には多数回該当とされ44,400円がその月の負担上限額になります。

世帯合算による払い戻しの場合や多数回該当の場合については限度額認定証を提出していても、なお高額療養費の支給申請をする必要があります。

BBクラブの勉強会が7月26日に行われますが既に150人の方の申込みを頂いています。合格者OBの変わらぬ勉強意欲がとても嬉しくできるだけ皆がそれぞれに何かを掴んだり、元気が出るような勉強会の1日となることを願い、私も楽しみに、頑張ろうと思います。