OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

5類感染症への移行後のコロナ対応

2023-04-30 20:18:42 | 労務管理

5月8日から新型コロナは、これまでの2類感染症から5類感染症の位置付けに移行することになりました。企業としては連休明けからどのように対応するか気になるところだと思います。

今後どのように変わるのか、NHKのネットの情報(2023年4月27日付)に詳しく記載があります。ポイントだけかいつまむと以下の通りとなるようです。

①検査費用の公費支援は終了し、PCR検査は有料。
②外来の診療費、入院費用等の公費支援は原則終了し、3割等が自己負担。
③外出自粛は、個人の判断による。推奨として発症翌日から5日間は外出を控えること、症状が軽減してから24時間程度外出を控えること。10日間が経過するまではウイルスを排出する可能性があり、マスク着用や高齢者との接触は控えること。  
④濃厚接触者について外出自粛が法律により求められることはない。
⑤ホテル療養などの施設は終了、保健所の健康観察は終了、相談については近くの医療機関を受診するか、都道府県の相談窓口を利用。
⑥発熱外来はなくなるため感染証明書は医療機関の発行する診断書による。
⑦検温やアクリル板については事業者の判断による。
⑧マスクは3月13日より個人の判断となっているが、医療機関や高齢者施設、通勤ラッシュ時など混雑した乗り物に乗車する際の着用を厚生労働省は呼びかけ。
⑨緊急事態制限による行動制限、入院勧告・指示、外出自粛要請はなく、海外からの入国についてもワクチン3回の接種証明は求めず。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/category5/detail/detail_51.html

4月27日付で厚生労働大臣名で発表された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る
新型インフルエンザ等感染症から 5 類感染症への移行について」は以下の通りです。
https://www.mhlw.go.jp/content/001091810.pdf

5類に移行することになると、会議などはどのようになるのかなと思って調べてみたところ、コロナ禍定着したオンライン会議の変化について帝国データバンクが調査、公表しています。その調査によると、『社内会議』の実施方法について尋ねたところ、「主に対面で実施」と回答した企業は61.8%で最も多く「主にハイブリッド」が26.3%、「主にオンラインで実施」は6.3%。

一方、『社外との会議』については、「主にハイブリッドで実施」が50.2%で最も多くなり、『社内会議』より23.9ポイントも高く、『オンライン会議を積極的に導入』(「主にハイブリッドで実施」「主にオンラインで実施」の合計)の割合は65.0%だそうです。
https://www.tdb-di.com/special-planning-survey/sp20230425.php

だんだん訪問や来所が増えてきたと感じているものの、やはり社外会議はオンラインが主流になりそうです。これは元に戻ることはないような気がします。

本の収納が限界に来ていたので絶対に連休中に整理してブックオフに持って行こうと思っており、昨日決行。今日ブックオフに持って行きました。2700円で買い上げてもらいました。お蔭でかなりすっきりとしたので、これで心置きなくまた本を購入することができそうで嬉しいです。

今度の日曜日は連休中なのでブログはお休みします。季節も良い時期ですし皆さんにとって良い連休となりますように。


自己都合退職の場合の失業給付の給付制限期間

2023-04-23 23:59:38 | 労働保険

デジタルやグリーンといった成長産業などへの労働移動を促すため、政府は、自己都合で離職した人への失業給付のあり方を見直す方針。自己都合で離職した後、原則2か月間受給できない制限措置の扱いが焦点となるという報道(2月18日NHKニュースより)ありました。岸田総理大臣は、先に、構造的な賃上げの実現には、グリーンやデジタルといった成長産業などへの労働移動を促す必要があるとして自己都合で離職した人への給付のあり方を6月までに見直す方針を明らかにしたということです。

現在雇用保険法第32~34条において給付制限が定められており、その中で「被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合」には、待期期間満了後1箇月以上3箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当を支給しない。」と定められています。
 1箇月以上3箇月以内と定められているものの、正当な理由がない場合の自己都合退職については2か月又は3か月間が給付制限されます(3箇月の給付制限が令和2年10月1日以降の離職については「5年間のうち2回までは給付制限を2箇月とする」ということになりました)。この給付制限期間は法や施行規則に定められているのではなく、雇用保険業務取扱要領に載っている行政手引52205(5)給付制限期間に定められています。
 
調べてみたところ、給付制限期間については、元々1箇月であったものの昭和59年の改正により3箇月に延長されたようです。経緯としては、①受給資格者の6割が正当な理由のない自己都合退職であり、その傾向は若年者層において顕著(29歳以下82.2%)、②これは、給付制限期間が1箇月と短期間であることが安易な離職を誘う結果となっているのではないかと指摘されていることから、給付制限期間を延長することにより、離職を決意する際の慎重な判断を期待し、安易な離職を防止するとともに、離職後の再就職意欲を喚起するため、給付制限期間を延長することとしたもの、とあります。
 
自己都合退職の場合の給付制限期間が、給付制限がかからない会社都合の離職に比べて3箇月とされているのは、自分の都合で会社を辞めたのだから合理的と考えてきましたが、確かに労働移動を阻害する要因になることは否めません。
2023年2月16日付日本弁護士連合会は「雇用保険の抜本的な拡充を求める意見書」を出しています。「給付制限は、自己都合退職の場合、保険事故を自ら作り出す側面があることからモラルハザードを防止すること、また、離職が予見可能であることなどを理由に正当化されてきた。・・・失業手当受給者の半数以上が『正当な理由のない自己都合退職』として給付制限をかけられている現状は、不合理である。これは、転職の自由(職業選択の自由や勤労権に含まれる)が不当に制約されていると評価され得る。
※モラルハザードとは、「保険によって補償される」という意識により保険事故(ここでは失業状態)を回避する努力が阻害される現象のことである。
上記意見書においては、「離職理由による受給資格の区別の廃止」も上げています。
 
終身雇用が当たり前とされていた時代とは異なり、新たな産業に労働力が移転していかなければならない現状においては、これまで合理的とされてきた仕組みが不合理となるわけで、社労士としても様々点検していく必要があると思いました。
 
今年初めて小淵沢の家に行ってきました。久しぶりにおいしい空気を吸ってくることができた感じです。小淵沢はまだ寒くて、あちらこちらで桜が咲いていました。家の前の畑にあるまだ小さな桜も咲いていました。また山の斜面には藤の花が沢山咲いており真っ盛りでした。先日「藤の花はなかなか強いのよ」と先輩がご飯を食べながら話してくれたことを思い出して、苗木を買ってみようかなと思っています。

専門業務型裁量労働制の廃止の際の留意点

2023-04-16 23:40:30 | 労働法

労働政策審議会労働条件分科会で検討されていた①無期転換ルール及び労働契約関係の明確化についてと②裁量労働制の新たな手続きの追加の2つが、労働基準法施行規則の改正により2024年4月1日に施行されることになりました。

このうち専門業務型裁量労働制について、改正で本人の同意が必要になるという点については、会社によってはかなり大きなインパクトになると思います。来年の施行規則改正までに対応を検討する企業もあると思い調べたのですが、専門業務型裁量労働を廃止する際の留意点についてまだあまり触れている資料等はないようなので自分で考えてみました。

1つ目は働き方の急激な変化についての対策です。
専門業務型裁量労働制とは、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として特に定められた業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。

裁量労働制はフレックスタイム制と違い必ずしも「始業及び終業の時刻」を労働者に委ねる必要はありません。弁護士の安西先生のご著書にもありますが「裁量労働は自由勤務と同じであり、出退勤はもとより仕事の進め方も気が向いたときに行えばよいといった全くの勝手気ままな勤務のようにも理解されがちである。しかしこれは個々の業務遂行の手段方法や時間配分について具体的な指揮命令をしないということであり・・・労働者は誠実義務があるので労働日には出勤し、職場秩序を守り、同僚等と協調して職務の自主完遂にあたらなければならない」とあります。これまでの運用次第ですが、出退勤の時刻が自由という運用であると、裁量労働を廃止する場合に労働者が大きな負担(制約)を感じる可能性があり、代替措置としてフレックスの導入などの検討が必要になるかもしれません。

2つ目はみなし労働時間と実労働時間の乖離がある場合です。
みなし労働時間と実際の労働時間(時間外労働)に乖離がある場合、割増賃金の増加が予想されます。廃止する前に、これまであまり意識せず労働時間を消費していた仕事のやり方を見直して、できるだけ効率的に働くことで労働時間の適正化を図る必要があります。ことによっては時間外労働について許可制を導入することが必要かもしれません。

3つ目は裁量労働制の問題点へのリカバリーです。
2014年に裁量労働制を廃止した企業の事例では、裁量労働の一定の効果を認めつつも、テーマの業務量や進捗管理に対する上司の管理意識の低下、時間外労働の手当反映がなくなったことによる、「時間の使い方」に対する上司・部下双方の意識の低下などの問題点があったそうです。上司のマネジメント力の低下がみられ、今後人材の多様化において様々な人材をコントロールする必要があり廃止に踏み切ったとあります。確かに裁量労働がゆえにむしろ本人任せにしなければならなかったところ、廃止となれば一定のマネジメントを意識的に行うことが必要になります。

今のところは上記3点について気が付きましたが、今後さらに留意点は増えると思います。

2024年4月1日施行 「裁量労働制の改正について」リーフです。
https://www.mhlw.go.jp/content/001080850.pdf

最近質の良い睡眠に興味があり、パジャマに凝っています。時々ショートスリーパーといわれるほどに睡眠時間が短いので、少しでも質の良い睡眠をとった方が良いかもしれないと思い、ネットで検索して快眠のためのパジャマを購入しました。2か月前ほどにまず冬用の暖かなパジャマを購入したのですが、これが予想外に良い眠りを得ることができる実感があり、先日春用のものも購入しました。これまで部屋着なのかパジャマなのかわからないようなものを適当に着て寝ていたのですが、質の良い睡眠のためにはそれに適したものがあるのですね。


社労士とビジネスと人権

2023-04-09 21:19:30 | 労働法

今週はILOと連合会が行う「ビジネスと人権」の研修を2日間受講しました。これは2月の研修に引続くもので、今回でだいぶ理解が進んだと思います。社労士会が取り組むビジネスと人権はこれからなのですが、企業に対してどのように支援していくか、実際にロールプレイをしてみると社労士にとってはほとんど日常的に企業に行っている業務内容の延長でとても親和的であると実感します。

そもそもビジネスと人権は1999年の国連グローバル・コンパクトの提唱、2008年の人権を保護する国家の義務・人権を尊重する企業の責任・救済へのアクセスをうたったジョンラギー国連事務総長特別代表の草案などかなり長い期間をかけて、2011年ビジネスと人権に関する指導原則が国連人権理事会で承認に至る、という歴史をたどってきました。それを踏まえて日本政府は2020年10月「ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)」を策定し、2022年9月に関係省庁が「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」をしました。

ビジネスと人権に対する企業の取組みについては、企業は、その人権尊重責任を果たすため、①人権方針の策定②人権DDの実施③負の影響を引き起こし又は助長している場合の救済の実施の3つが柱です。その中で人権DDは、いわゆる労務DDと共通しますが、人権DD実施後の是正措置、評価、外部への公表まで含み、定期的に確認していくという特徴があります。

また、下請等のサプライチェーンの労働環境までカバーする必要があること、国内の労働法だけでなく国際労働基準も遵守の必要があること、ステークホルダーエンゲージメントが重視されることが大事な要素になります。

ビジネスと人権のリスクとしては、ハラスメント・長時間労働・差別(ジェンダー)などがありますが、一番のリスクは強制労働(今の技能実習生の制度は強制労働のリスクをはらみます)です。これらのリスクがないか、サプライチェーンまで確認していくのがビジネスと人権の人権DDということになります。

まだまだ理解が浅いところですが、特に技能実習生については4月3日に技能実習生が妊娠した際の対応について、技能実習の中断や中止ができない旨の注意喚起とお願い(※)が発出されました。技能実習生への海外からの視線は厳しく、今後法改正も予測され、今後社労士にとっても大きなテーマになると思うので、勉強していこうと思います。

(※)https://www.otit.go.jp/files/user/210713-71.pdf

やっと体調が通常に戻り、延期してもらった会食なども予定できるようになりました。今日は新たな年度の始まりに合わせて、服の整理や衣替えをしたのですが、外は思いがけずまだ寒いので油断は禁物です。

最近若手の社労士が来所されお話しする機会が多いのですが、それぞれ社労士としての「戦略」を模索していることを素晴らしいと感じます。手続・相談業務や給与計算というオーソドックスな社労士業務ではなく、システム開発や事業承継関連業務などテーマを持ち、また制度全体の底上げの必要性についても視野に入れていることに、これまでにないタイプの社労士が出てきたという期待感があります。


取締役の健康保険資格について

2023-04-02 22:44:50 | 社会保険

取締役と会社との関係は、民法第643条に定められている「法律行為を相手方に委託し、相手がこれを承諾することで成立する」という委任契約です。雇用契約ではなく、いわゆる業務委託契約などと同様に労働保険では労働者性を認めず、特別加入を除いて労災保険及び雇用保険の被保険者になることはありません。

それでは健康保険、厚生年金保険についてはどうなのかということですが、こちらについては取締役に就任して委任契約となったからといって資格喪失をすることはありません。その根拠は何だったか先日ご質問があり古い通達を確認しました。一応何かの折には確認できるように取り上げておきたいと思います。通達は以下の通りです。

○法人の代表者又は業務執行者の被保険者資格について(昭和24.7.28保発第74号)各都道府県知事・各健康保険組合理事長あて厚生省保険局長通知

法人の理事、監事、取締役、代表社員及び無限責任社員等法人の代表者又は業務執行者であつて、他面その法人の業務の一部を担任している者は、その限度において使用関係にある者として、健康保険及び厚生年金保険の被保険者として取扱つて来たのであるが、今後これら法人の代表者又は業務執行者であつても、法人から、労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者の資格を取得させるよう致されたい。なお、法人に非ざる社団又は組合の総裁、会長及び組合及び組合長等その団体の理事者の地位にある者、又は地方公共団体の業務執行者についても同様な取扱と致されたい。

なお、個人事業主については、労働者的性格は認められないので社会保険においても被保険者になることはありません。

4月に入りました。3月は書籍の執筆もありまた体調も今一つだったこともありお花見に行くことができなかったのですが、今日まで桜は咲いてくれていましたので行ってきました。目黒川でも目黒駅から中目黒にかけてはテレビで見ても凄い人出のようでしたが、大崎方面はそれほどのことはなくて、気持ちよく散歩ができました。

昨日は長年の仕事の相棒のお別れの会を教え子さんやBBクラブのメンバーと行いました。社労士になって30年間教材作りを手伝う中で様々なことを教えてもらい、研究したことと実務のすり合わせを沢山話すことが楽しく、その中でお互い成長してきた相棒でしたので、まだまだ時間が欲しかったです。でも昨日思いがけず多くの方に集まって頂いて、一つの区切りをつけることができそうです。本当に有難うございました。新たな年度の始まりです。