OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

テレワークについて

2020-01-26 21:35:12 | 労務管理

テレワークについて連合会で取り組むことになり先日部会で意見交換をしたのですが、同一労働同一賃金と同様にたくさんのセミナーを色々なところで行っており、助成金も沢山あることがわかりました。助成金はとても多くの予算が確保されているようなのですがあまり使われていないということ。助成金のことは以下のサイトを確認いただくと良いと思います。

東京都TOKYOはたらくネット http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/hatarakikata/telework/index.html

日本テレワーク協会HP テレワークに関する助成・補助 https://japan-telework.or.jp/

意見交換の中で出たのは、結局テレワークは行きつくところ通常の労務管理の話になり、労働条件の明示、就業規則の改定や時間管理の方法などが企業のご質問だということです。例えば時間管理などは統計を取ると通常の時間管理やフレックスを採用しているところが多いということです。中抜け時間は悩ましいところですが、時間単位年休を利用するとよいようです。外資系企業などはそこまできちんと時間管理をしておらず「成果」中心のような気がしますが、そこは日本人の勤勉さ、生真面目さでしょうか。

まずは、東京オリンピック対応でテレワーク導入企業を爆発的に拡大させ、その後今度は地方創生で地方に介護やUターンで戻ってもテレワークで企業数が比較にならない大都市の企業で働くことができる、というイメージを考えています。オリンピック対応については、小池都知事の話でロンドンオリンピックで爆発的にテレワークが広がったことを話しておられ、調べたところ「直前に」企業が危機感を感じて取り組んだということ。ここはもう少し調べてみたいところです。また、地方創生については、今や日本もどこでも東京から日帰りで仕事に行けるというのは最近の出張で実感しており、これからますます交通網が充実すれば地方に住みながら都会の企業で働くことは普通のことになるのではないかという考えに基づいています。地方に住むことは、都会に住んでいるときはできなかった趣味をもつこともできるらしく、定年退職後介護もあり地方に戻り月の半分東京で仕事というスタイルをとった方が最近サーフィンを始めるという話も聞いて豊かな生活をイメージすることができました。とにかくもう少しテレワークのことを勉強してまた情報をお伝えしようと思います。

1月はほとんど連日新年会等で夜が遅く、先週は2度日帰りで新幹線出張を断行していたところ流石に週末は疲れが出ました。いくら仕事が好きでも無理は禁物ですね。


厚生労働省就職氷河期世代活躍支援プラン

2020-01-19 23:50:44 | 労務管理

2019年5月に「厚生労働省就職氷河期世代活躍支援プラン 」が2040 年を展望した社会保障・働き方改革本部」から示されています。プランの背景及び趣旨としては、次の通りとされています。

 平成 18 年以降のフリーター・ニート等を対象とした再チャレンジ施策や、経済環境の 変化等により、就職氷河期世代1に概ね該当する現時点で 35 歳~44 歳の層の就業状況は、10 年前(当時 25 歳~34 歳)と比べ、フリーター等の数は約 36 万人の減少、無業者数は 概ね横ばいとなっている。(他の世代と同水準)。一方、引き続き不安定な就労、無業の状態にある方も一定数おり、そのような方につい ては、学卒時に不安定な就労、無業に移行したことや、就職できても本来の希望業種・企業以外 での就職を余儀なくされたことによる早期離転職等により、概して能力開発機会が少なく、企業に評価される職務経歴も積めていない。また、加齢(特に 35 歳以降)に伴い企業側の人事・採用慣行等により、安定した職業に 転職する機会が制約されやすい。不安定な就労状態にあるため、収入が低く、将来にわたる生活基盤やセーフティネットが 脆弱といった課題を抱えられていると考えられる。

1993年から2003年までの就職氷河期に社会に出た世代(1970年~1980年に生まれた世代・現在大卒でおおむね40歳~50歳)である就職氷河期世代は非正規雇用労働者も多く、この世代を中心に「フリーター・ニート」という言葉が生み出されています。この世代は、その就職期が、たまたまバブル崩壊後の厳しい経済状況にあったために、未就職、不安定就労等を余儀なくされ、引き続きその影響を受けているものであり、政府としてその活躍に向けて支援していく必要があるということです。

 厚生労働省の「労働経済の分析(平成12年版)」よればフリーターの数は2000年で193万人とされ、内閣府の国民生活白書(平成15年版)によれば「1990年の183万人から年々増加し、2001年には417万人となっている。1534歳の若年人口の9人に1人(12.2%)、学生、正社員以外の主婦を除いた若年人口全体の5人に1人(21.2%)がフリーターとなっている。」とあります。この就職氷河期世代が社会に出た時から既に20年以上が経過し、現在40歳~50歳の働き盛りの年齢となっているが、フリーターの高齢化も懸念されているところから上記プランが策定されたということになります。

社会保障の分野では、国民年金の保険料の納付特例がありますが、2005(平成17)年の制度創設当初は若年者納付猶予制度といわれ30歳未満の年齢制限があったものの、2016(平成28)年より50歳未満に拡大されています(2025年6月までの時限措置)。しかし、無業・フリーターの時期が長期であればあるほど、年金額に反映されない納付猶予期間も長期化している可能性があり、さらに10年以内に限る追納制度及び一定期間後の加算制度はハードルが高く、猶予された期間がそのまま保険料滞納期間に結びつく可能性が高いと思われ検討の余地があるように感じます。

昨日は恒例のBBクラブの勉強会があり、法改正やその時どきの旬なテーマ(今回は民法改正のうち「時効」を中心に受講生OBの息子さんである岩田憲明先生が講師でした)を学び、また私の講師1年目の受講生である竹内さんの開業体験談、私の大学院の報告(30単位取得のスケジュールや修士論文の取り組み)など盛りだくさんの内容だったと思います。

それにしても毎回100人を超える方の参加があり、2次会でないとなかなかゆっくりお話しできないということもあるのですが、それでも元気そうな顔を確認し、ちょっとした近況を聴くことができて本当にBBクラブを作って良かったと思います。第1回目から数えて今年で19年目ということになります。20周年を迎える来年は、幹事さんと一緒にいろいろ企画をしてみようと思っています。

各団体の新年会も多くまだ何となく年末年始のお休み気分が抜けないという感じですが、そろそろエンジンをかけて日常のペースを取り戻したいと思います。


雇用保険法の「受給資格」について

2020-01-14 00:41:17 | 労働法
ゼミで少し議論になったので雇用保険法の受給資格について取り上げてみたいと思います。
「受給資格」とはいかなる状態をいうかというと、原則として離職日以前2年間に通算12カ月以上の被保険者期間(賃金支払基礎日数11日以上)がある状態をいい、
「受給資格の決定」というと受給資格の要件を満たしたうえで職安に求職の申し込みに行き現実的には離職票を受給資格者証に替えた状態をいうというものです。
雇用保険法14条2項の定めで、被保険者期間を算定する場合に除外する期間として簡略すると以下の通りとされています。
(被保険者期間)
2 前項の規定により被保険者期間を計算する場合において、次に掲げる期間は、同項に規定する被保険者であつた期間に「含めない」。
一 最後に被保険者となつた日前に、当該被保険者が受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格を取得したことがある場合には、
当該受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格に係る離職の日以前における被保険者であつた期間
・・・ここでは「受給資格の決定」ではなく「受給資格の取得」となっており、
受給資格の要件を満たした離職であればハローワークに行こうが行くまいがその受給資格に係る「被保険者であった期間」を通算することはできない、
(離職にかかる期間について被保険者期間の算定には使えない)ということになります。
 
しかし、行政手引でこの扱いが緩和されており、
受給資格の決定を受けていなければ(取扱いとしてはハローワークに行き求職の申し込み及び受給までしていなければ)既に受給資格を得た被保険者期間を通算できる、
という扱いになっているということです。以下が該当の行政手引きです。
行政手引50103(3)被保険者期間
   (ロ) (イ)により被保険者期間を計算する場合において、次の期間は被保険者期間の算定の対象となる被保険者であった期間に「含まれない」。
a 最新の離職票に係る被保険者となった日前に当該被保険者が受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格の「決定」を受けたことがある場合
(当該受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格に基づいて基本手当、高年齢求職者給付金又は特例一時金を受給したか否かは問わない。)における当該受給資格、
高年齢受給資格又は特例受給資格に係る離職の日以前の被保険者であった期間

「決定」があるかなしか、ほんのちょっとした違いなのですが、受給資格要件を満たしただけで前後の通算はできないとする条文と異なり、
行政手引きでは職安に行き求職の申し込みをしていなければ(実際には受給していなければ)通算できるとするもので、
実務上大きな違いがあります(いずれにしても通算できるのは1年以内の期間に限られます)。

例えばA社に10年勤務した会社を退職し、1年以内にB社再就職した場合で8か月勤務して自己都合退職した場合、
B社では受給資格を得られておらず、A社では受給資格得ていたとして、
条文上でいえばA社とB社の受給資格は通算できず、B社退職後A社の受給資格で基本手当を受給することになります。
しかし、B社退職の時点では、A社の退職から少なくとも8か月は経過しており、
A社の離職日から1年間である受給期間が残すところ4か月となってしまいます。
そこで平成19年に行政手引きの変更により、B社の退職事由により、B社とA社の通算期間で受給資格を取得できるものとし、
受給期間の1年間も確保できることとしたということのようです。
 
平成19年というと法改正で「特定理由離職者」が創設されており、前年リーマンショックで雇止めが頻発し、
大変な不況時であったため受給要件を緩和したという経緯があります。
法改正なく行政手引の変更での対応については疑問が残りますが、その時の社会的背景を考えるととても面白く納得性があります。
また驚いたことに平成21年度の我らが「新標準テキスト」には詳細に上記のことが書かれていました。
(流石です。当時講師であったのにこのことはすっかり失念していました)
 
先週、修士論文を提出し終え、約半年ぶり位にゆっくりした休日を過ごしました。
しばらく買い物にも行っておらず、久しぶりにセールに出向きスーツを購入し、受講生OBからいただいた「ゴッホ展」にも行きました。
しかし・・・大学院での勉強は本当に楽しく、張り合いがありましたので、何とな心にぽっかりと穴が開いたような寂しさを感じます。
修士論文の最終面接が終了しいよいよ卒業となれば、何かあらたに勉強することを考えないといけないなあと思っています。 
ちょうどTACの講師を卒業したときの状態のような感じですので、もう少ししたら見えてくるかなと期待しています。

働き方改革の労働法制への影響について

2020-01-06 00:32:30 | 労働法

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

今年のお正月は毎日とても良いお天気で気持ちの良い日が続きました。OURS小磯社労士法人も28日から5日まで年末年始のお休みを頂いて、いよいよ明日から仕事始めとなります。9連休ということで世の中的には皆さんかなりゆっくりする時間が取れたのではないでしょうか。

私はこの年末年始は、初詣と母のいる実家に新年のあいさつに行ったものの、修士論文の提出期限が迫っているのでほとんどPCの前にへばりついていました。修士論文が無事に通れば2年間の大学院生活も修了となりますので、社会人学生として勉強したこの間の感想などブログに書く機会もあると思います。修士論文に取り組んでいる中でいろいろな書籍だけでなく裁判例、国会議事録などを調べたのですが、1年以上かけてそれらに取り組んでいく中で、最初は理解できなかった学説の内容が今になると理解できるということもあり、そういう面ではコツコツと取り組んだことで少し自分の考えが深まったのかなと感じて嬉しい気持ちになります。

その間「働き方改革」の進行度合いは急ピッチで進んだと感じており、OURSの中でもフレックスの導入やおまとめ休暇といってある程度まとめて交替で休める仕組みを作り、一定の役職者には在宅勤務を認めるなど、事務所で全員が揃っていない状態にもずいぶん慣れてきたと思います。セミナーなどでお話しする機会や、企業に訪問する際にも、労働時間だけでなく働く場所の環境整備がとても進んだところもあり、働きやすさを大事にするという企業の姿勢がだんだん本格的になってきたように思います。この取り組みが生産性向上につながればと思います。そのような中で、これまでの労働時間や働く場所の考え方が大きく変わっていくことにより、労働法制も大きな影響を受けることになるのではないかと強く感じるようになりました。

修論のテーマの関係で、労災保険の「労働者性」について取り上げる必要があり、裁判例をかなり見たのですが、これまでの判断基準は、昭和60年の労働基準法研究会報告(労働基準法の『労働者』の判断基準について )をもとにしていると考えてよいと思います。この判断基準では、簡単にいえば使用従属性が非常に重要な要素になるのですが、その基準を1.指揮監督下の労働(①仕事の依頼、業務従事の指示等に対するの諾否の自由の有無、②業務遂行上の指揮監督の有無、③拘束性の有無、④代替性の有無)及び2.報酬の労務対償性、でみることになります。

フレックスや裁量労働制などの柔軟な労働時間管理と在宅勤務やテレワークが当たり前になってくると上記基準の「業務遂行上の指揮監督の有無」や「場所的拘束性の有無」を要素とするのは極めて困難になるのではないかと感じます。そういう意味でここ数年で世の中が大きく変わる予感とともに社労士が扱う労働法制も影響を受け大きな転換期を迎えるかもしれないと感じています。

さて、お正月は当然のことながらお餅を食べすぎて大変なことになっています。明日からキリっと仕事に取り組み、エンジンをかけたいと思います。今年はまた何か新たなことが待っていそうな予感があり何となく楽しみな感じがしています。