健康診断を実施するための費用については、会社が負担すべきかどうかということについては通達が出ています。
「労働安全衛生法(安衛法)の定めによりる健康診断を実施する場合、その健康診断の実施に要する費用は、労働者が事業者の指定する医師(歯科医師)以外の医師(歯科医師)による健康診断を受ける場合を除いて、事業者が負担しなければならない」(昭47.9.18基発第602号)とされています。
これは安衛法第66条の1項に、事業者の健康診断実施義務が定められていることが根拠になります。
それでは健康診断を受診後の再検査についての費用は事業者が負担すべきかどうかという点ですが、これは事業者に再検査の費用負担の義務はないということになります。
健康診断の事後措置として労働安全衛生法66条の5に定められているのは、「労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備等」です。この中には再検査の受診は含まれておらず、再検査の実施は安衛法に定められた事業者の義務ではないということになるため費用の負担義務がないということになります。
なお、健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(平成8年健康診断結果措置指針公示第1号)において以下の通り示されています。
(5)その他の留意事項
ハ 再検査又は精密検査の取扱い
事業者は、就業上の措置を決定するに当たっては、できる限り詳しい情報に基づいて行うことが適当であることから、再検査又は精密検査を行う必要のある労働者に対して、当該再検査又は精密検査受診を勧奨するとともに、意見を聴く医師等に当該検査の結果を提出するように働きかけることが適当である。
なお、再検査又は精密検査は、診断の確定や症状を明らかにするものであり、一律には事業者にその実施が義務付けられているものではないが、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則、高気圧作業安全衛生規則に基づく特殊健康診断として規定されているものについては、事業者にその実施が義務付けられているので留意する必要がある。
ストレスチェックについての費用負担については同様に、実施が事業者に義務付けられているため費用負担は事業主に義務があるということが以下Q&Aに示されています。
ストレスチェック制度関係 Q&A
Q0-5 ストレスチェックや面接指導の費用は、事業者が負担すべきものでしょうか、それとも労働者にも負担させて良いのでしょうか。
A ストレスチェック及び面接指導の費用については、法で事業者にストレスチェック及び面接指導の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものです。
先週は東京都社会保険労務士会の倫理研修の講師としての役目が何とか無事終わることができて、ほっとしました。今回倫理研修を行うことになり、当初どのようなこを話せばよいのか全くイメージがなく非常に不安だったのですが、テキストを読み込んであれこれ他士業の倫理についての考え方などを調べていくうちに非常にこれも奥が深い話なのだということに気が付きました。
究極「倫理」は社会保険労務士としてどこに立脚して仕事をしていくのかというところに行きつくように思うのですが、国家資格者としての社会保険労務士という立ち位置を常に心にとどめておく必要があるということを感じました。
自分自身もそうですが、資格取得をする前の「社労士資格」というのは国家資格の一つで非常に高い目標を目指して受験勉強に励んだのだと思います。それは自分のクラスで学んだ受講生を思い起こしてもみんな合格した時は国家資格を手にしたということで喜び誇らしく感じていたと思います。
仕事を始めるとまわりは社労士ばっかりであり、長年社労士として仕事をしていればそれほど国家資格者であることは意識しないようになるのかと思うのですが、やはり一般の人たちから見れば100人に10人も合格しない(昨年は100人に2.6人)難関資格を突破した国家資格者であるということはとても輝かしいことなのではないかと思います。その合格した時の気持ちを忘れないことが倫理にとっては非常に大切なことなのではないかと思います。