OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

パワハラ防止の指針案

2019-10-27 19:07:40 | 労務管理

近年、パワハラに神経を使う企業や管理職が多いと思いますが、何がパワハラにあたるのかあたらないのかの線引きがとにかく難しく、その指針が示されるということで期待をしていたところ、10月21日の日経新聞に、『「該当しない例」示す 厚労省が指針素案』という記事が載り概略が表になっていました。

20年4月から大企業に適用されるパワハラ防止関連法では、職場におけるパワハラを
(1)優越的な関係を背景とした言動で
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
(3)労働者の就業環境が害されるもの
と定義し、企業に対策を求める。厚労省の指針はこれを踏まえ、職場での判断基準を示すのが目的だ。
労使の代表者らで構成する労政審に厚労省が示した指針の素案は、(1)~(3)のすべての要素を満たした場合にパワハラに該当するとした上で、それぞれの要素について具体的に示した。
 
素案では厚労省が公表済みのパワハラに関する6つの行為類型ごとに、具体的にどういった行動が該当するか・しないかの事例も示した。
例えば「暴行・傷害」の類型では「ケガをしかねない物を投げつけること」はパワハラとした一方、「誤ってぶつかる、物をぶつけてしまう等によりケガをさせること」は該当しないとした。
線引きが難しいとされる「過小な要求」という行為類型では、「管理職の労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること」をパワハラに該当するとした一方、「経営上の理由により、一時的に能力に見合わない簡易な業務に就かせること」は当てはまらないとした。
こうした内容に同日の審議では委員から「パワハラ認定するための定義が狭いのではないか」といった指摘や、定義への疑問の声が相次いだ。
日本労働弁護団は同日記者会見し、素案の抜本的修正を求める声明を発表した。「実効的なパワハラ防止策となっていないばかりか、むしろパワハラの範囲を矮小化し、労働者の救済を阻害する」などと主張した。
 
厚労省は年内の指針策定を目指すが、パワハラの明確な線引きが難しいことが改めて浮き彫りになった形で、議論は難航する可能性がある。
 
実際にはどのような指針案であるのか見てみたのですが、例えば<脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)> については、
  (該当すると考えられる例)
・ 人格を否定するような発言をすること。
 (例えば、相手の性的指向・ 性自認に関する侮辱的な発言をすることを含む。)
・ 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り 返し行うこと。
・ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う こと。
・ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相 手を含む複数の労働者宛てに送信すること。

 
(該当しないと考えられる例)
・ 遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動が 見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注 意をすること。
・ その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行っ た労働者に対して、強く注意をすること。

 やはり実際あてはめに使う線引きは難しい・・・。

事務所の周りが今後とても変化しそうで楽しみにしています。ヒカリエから渋谷駅に向かう通路の途中にいきなりエスカレーターができたり、同じく途中に渋谷ストリーㇺに通じる通路がターミナルの上にできたりとちょっとびっくりします。そのたびに人の流れが変わるのも面白いです。11月にはストリームに通じる手前にスクランブルスクェアが開業するそうで、テレビで時々紹介しているのを見ていると、日本初上陸店などなかなか魅力的です。渋谷の再開発はまだまだ途中で、駅の反対側は本当に腰が抜けるくらい大規模にビル を取り壊して更地にしたのですが、どうも再開発全体の地図みると、OURSが入居しているビルの手前までが再開発予定のようで少しホッとしています。お近くに来られたら是非お立ち寄りください。


派遣労働者の同一労働同一賃金

2019-10-20 21:54:29 | 法改正

働き方改革関連法の中で、時間外労働の上限規制や年休5日取得義務に続き、今年の秋は同一労働同一賃金について、まず有期・短時間労働者の不合理な労働条件の相違についてや職務分析についてもセミナーでお話しできるよう準備が進んだのですが、昨日やっと時間が取れて派遣労働者の同一労働同一賃金についても勉強し、だいぶ理解が進んだと思います。もう少し研究してみようと思いますが、まずはポイントだけあげてみようと思います。

①同一労働同一賃金は、2020年4月1日施行とされていますが、中小企業については2021年4月1日施行になります。注意が必要なのは「労働者派遣契約」の同一労働同一賃金については中小企業も含めて2020年4月1日施行であることです。

②派遣労働者についての同一労働同一賃金は、(1)派遣先の労働者との均等・均衡待遇方式、(2)一定の要件を満たす労使協定による待遇決定方式、のいずれかを確保することが義務とされています。

一般的に(1)の方法である派遣先均等・均衡方式の場合「賃金等の待遇に関する情報」を派遣先は派遣元に提供しなければならなため、(2)の労使協定方式を選択するケースがほとんどであろう思います。

しかし、賃金の決定方法について労使協定方式をとっている場合であっても福利厚生3施設(食堂・休憩室・更衣室)や職務に関連する教育訓練※については、派遣先の通常の労働者と同一の利用を認めなければならないとされています。

また3施設以外の福利厚生である、転勤者用社宅、慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除、病気休職、特別休暇、職務関連以外の教育訓練や安全管理に関する措置などは、派遣元の通常の労働者と同一の待遇としなければならないとされます。

③労使協定方式で定める各派遣労働者の賃金水準は、「賃金構造基本統計調査」又は「職業安定業務統計」などの統計をもとに示された一覧表に基準値に能力・経験調整指数を乗じた値が決められており、その値を基本として決めることになります。能力・経験調整指数は、基準値の0年~20年まで一定の区切りがありますが、例えば勤続5年の派遣労働者であっても5年の指数を使用する必要はなく、職務レベルであてはめてみることになります。

通勤手当は、原則として一般通勤手当(時給換算で72円)と同等以上であることとされます。

退職手当については、(1)退職手当制度を導入する場合は局長通達で示された額以上とする、(2)退職手当相当の時給換算額を賃金水準に上乗せし、一般労働者の賃金水準に退職費用分として6%を上乗せした額と比較する、(3)給与の6%以上の掛金で中退共に加入する、の3つの選択肢から選択することになります。

まだまだ色々実務対応についての疑問等が出てくるは思いますが、ともあれ上記を考えるとかなり派遣料金は上がると考えられます。上がった分は派遣労働者にきちんと渡ることを信じて・・・。

先週の大雨は各地で被害が出てしまい、テレビで被害の状況をみると心が痛みます。できるだけ早く日常が取り戻せることを祈ります。

ラグビーワールドカップは、南アフリカに負けてしまい残念でしたが、実力の差があったように思えましたので仕方がないですね。ここまで長い間楽しませてもらったことに感謝です。


雇用保険の基本手当の受給期間の延長について

2019-10-12 22:31:01 | 労働保険

雇用保険の基本手当は、原則、離職日の翌日から1年以内の受給期間内の 失業している日について、一定の日数分支給されます。この受給期間内に、妊娠、出産、病気等の理由で引き続き30日以上職業に就くことができない場合は、雇用保険法の「失業」の定義である労働の意思及び能力を有していないということで、その期間は基本手当は受給できません。

そこで、ハローワークに申請することにより、受給期間を延長することができます。どのくらい延長することができるかというと、本来の1年の受給期間にプラスして職業に就けない期間を加えることができるわけです。離職日の翌日から4年以内まで延長することができることになっていますが4年を超えて受給期間が延長されることはありません。離職日翌日から4年間、30日以上職業に就くことができない理由が継続すれば受給期間の延長をしても基本手当は受給できません。例えば1年間の受給期間うち離職日翌日以後の当初の6か月後、例えば2引き続き4か月職業に就くことができなくなった場合の受給期間は1年+24か月ということになり、事実上の受給期間は当初の6か月とその後24カ月(その間は病気であるため受給できない)経過した後の6か月間ということになるわけです。

受給期間延長のハローワークへの申請は、妊娠、出産等の理由により引き続き30日以上職業に就 くことができなくなった日の翌日以降、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば、申請が可能です。以前は1か月以内でしたが改正により平成29年4月から1か月経過しても延長申請は可能となっています。ただし、申請が遅い場合は、受給期間の残日数が不足して、受給期間延長を行っても基本手当の所定給付日数の全てを受給できない可能性があり、注意が必要となります。少なくとも所定給付日数の未受給の日数分は受給期間内に確保した上で申請する必要があり、そのためにはできるだけ職業に就くことができない理由が30日を経過した日の翌日以降早めに延長申請を行い受給を開始することが肝要です。

引き続き職業に就くことができない理由については、雇用保険法20条と施行規則30条に定められており、①妊娠、②出産、③育児、④疾病又は負傷、⑤①~④のほか管轄職業安定所長がやむを得ないと認めるものとなっています。

今回の台風は東京は土曜日に来ましたので、仕事がお休みという方が多かったのは幸いでしたが、いろいろなイベント等が中止となってしまいました。それでも大きな災害が起きていないと良いのですが、明日朝起きたときが少し心配です。

昨日(金曜日)仕事を終えて帰り道にスーパーで2日分の食料を買いこもうとしたところ、流石に8時過ぎに行ったのでは遅すぎて、パンもお惣菜もすべて棚は空っぽでした。それでもどうしても買いたかったシャインマスカットはまだ残っておりちょっと嬉しかったのと、卵があったのは救われました。電車も計画運休を早めに決めましたし、日本人も最近は何かと早めに安全を確保する習慣がついてきたように思います。 


高額薬価について

2019-10-06 21:17:18 | 社会保険

産経新聞の5月21日に高額薬価のことが載っています。少し難しいのですが私の勉強のためにも取上げさせて頂きます。

「厚生労働省は2019年5月15日、血液がんの白血病などに効く新しい治療薬「キムリア」に公的医療保険を適用することを決めた。その薬価(公定価格)は3349万3407円と3000万円を軽く越える。しかも1回分の価格だ。過去最高の薬価である。公的医療保険が適用されると、患者の負担は少なくて済む。だが、薬価の高い薬は医療保険の財政を圧迫し、日本の医療を支える国民皆保険制度を破壊していく。抗がん剤を中心に最近、抗がん剤の登場が相次ぎ、大きな社会問題となっている。」

キムリアはスイスの製薬会社が開発した遺伝子操作による治療を行うもので、その製造の流れは全工程で2カ月かかる「患者ごとにその患者だけに使うキムリアを作って治療するオーダーメイド医療であり」、「製薬や治療に高度な技術と専門的知識が求められ、その結果、薬価が跳ね上がる」ということです。

「キムリアが投与できる疾病は、がんの一種である「B細胞性急性リンパ芽球性白血病」と「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」のうち、これまでの薬が効かなくなった難治性のものだ。ノバ社によると、患者の数は最大で年間216人。だが今後、キムリアの適用が拡大されて対象の疾病が増えると、それに比例して患者数と医療費も増大する恐れがある。
薬代を含めた医療費の患者の自己負担割合は、1割~3割だ。さらに所得などに応じて払い戻される高額療養費制度が適用されるから、年収500万円の会社員の場合、キムリア投与の自己負担額は40万円程度になる。」

ここまで高額な治療が高額療養費のお蔭で誰もが受けることができる日本は素晴らしい国だとは思いますが、医療保険制度の持続可能性に影響があるであろうと心配になってしまいます。この治療が広く普及することで薬価も下がる仕組みは理解できます。年間3500万円だったオプジーボは4分の1まで下がったということです。しかし記事では薬価の決め方が不透明であるとも書かれています。

「最初に高額医薬品として問題になったのは、がんの免疫治療薬「オプジーボ」である。オプジーボは2014年に皮膚がんの治療薬として公的医療保険が適用された。その時点で、患者1人あたりの総医療費が年間3500万円かかると、高額な薬価が注目にされた。それでも患者数が470人ほどで少なく、医療費圧迫には至らなかった。ところが翌年に一部の肺がんの治療でも保険が適用されると、医療費が増大し薬価の見直しが進められた。2017年2月に薬価が半額まで引き下げられるなどしてオプジーボの薬価は現在、当初の4分の1となっている。」

「この「オプジーボ効果」で、2年に1回だった薬価の改定は、1年に4回に増えた。また今年4月からは費用対効果の評価による薬価引き下げの新制度もスタートした。こうした制度を柔軟に作って適用し、高額の薬価を引き下げてくことが大切だ。」ということです。

5月21日付の読売新聞の社説は「ただ、今後も超高額薬が増えていけば、医療保険財政を圧迫する懸念が拭えない」と指摘し「大切なのは、薬価が妥当な水準なのかどうか、検証できる体制を整えることだ。」。また、「公的医療保険で超高額薬をカバーしつつ、制度の持続可能性を維持するためには、軽症用の薬をどこまで保険給付の対象とするかを考える必要がある」「湿布やビタミン剤など市販品で代替が可能な薬は、保険適用から除外する案も浮上している。議論を深めていくべきだ。」とあります。

公的医療保険でカバーする範囲をどう決めていくか、気がもめるところではあり、今後注視していく必要があると思われます。

社労士の仕事をしていると勉強しなければならないことが沢山あり、しかしそれがとても面白く感じます。今年の秋は修士論文に取り組まなければならないので週末はパソコン前に座っていることが多いのですが、夕方からジムに行き汗を流すのが気分転換なります。ジムの帰りに立ち寄る美味しいお蕎麦屋さんを見つけて、ささやかながら楽しみになっています。